必然 |
最近オープンしたスーパーに俺はいる。
「わー!!」
そう言ってルカは目を輝かせながらスーパーの中を見渡している。
なぜ俺がスーパーにいるのかというと、ルカが原因だ。河川敷の野原で寝ていたとき、ルカがやって来て、一緒に買い物に行こうと言ったからだ。
オープンしたばかりということで、品物が安く売られているということもあって、中は人でごった返している。こういう人の多いところは苦手なのだが、
(「ま、いいか・・・」)
もともと買い出しに行くつもりだったんだ。
仕方ないと思っていると――
「ルカくん、はぐれないように気をつけてね」
ルカをはさんで俺の横にいるコンウェイって奴が、はしゃいでいるルカに注意した。ルカが寝ている俺に話しかけに来た時にルカと一緒にいた奴だ。
(「・・・いけすかねぇ奴」)
正直気にいらない。会った最初からずっと笑顔だが、その笑顔が胡散臭い。
ただルカはこいつと仲がいいらしい。ここに来るまで楽しそうにこいつと話していたし。今だって―
「うん!」
笑顔を向けている。
「じゃあ、まず野菜の方に行こうか」
コンウェイはそう言ってカートの方へ歩いていく。ルカはそれに付いて行く。俺はここで離れようかっと思ったが――
「スパーダ!行こうよ!」
ルカにそう言われた。
「ん・・・ああ・・・」
俺はルカと一緒に行くことにした。
コンウェイがさっき言った通り、俺たちはまず野菜売り場へ向かった。
「うーん・・・」
コンウェイが野菜を見ながらどれにしようか迷っている。
「コンウェイ、これは?」
「あっ、いいね」
それにしよう、コンウェイはルカの頭を撫でながら言う。ルカはそれが嬉しいようで、えへへと笑っている。
俺はその様子を見てイライラしていた。のだが、―
「ルカくん、選ぶのが上手になったね」
コンウェイのその発言に驚いた。
(「は・・・・・・?」)
俺たちは野菜売り場を見終わって、今は肉売り場にいる。
「ねえ、コンウェイ、お菓子を見てきていい?」
ルカがそう言った。お菓子売り場は肉売り場に垂直な位置にあり、肉売り場から様子がわかる。
「いいよ。でも気をつけてね」
「うん!」
ルカは喜んでお菓子売り場の方へ走っていった。俺はルカのそんな様子を見ていた。見ながら、コンウェイに尋ねた。
「・・・・・・なあ」
「何だい?」
コンウェイは肉売り場の方から視線を外さずに俺の声に応えた。
少しイラついたが、俺はそのまま続けることにした。
「・・・お前ら、いつも一緒に買い出しとかしてるのか?」
なるべく平静にと、そう思いながら俺は尋ねた。
「そうだよ」
だが、俺の心の中とは無関係にコンウェイはあっさりと答えた。不自然なくらいに。
俺はそれに少しムカついた。
「へー・・・仲がよろしいことで」
「まあね」
コンウェイは痛くもないというふうに応えた。その瞳が少し昏くなったような気がしたが。
「君は家に帰らなくていいのかい?そろそろ食事時だろう?」
帰れってことかよ、と思って俺はイライラした口調で応えた。
「俺が帰って来なかろうが誰も気にしないんでね。メシだって家のなんか食えるかよ」
コンウェイは少し目を見開いて驚いたように俺を見た。けど、すぐ真顔になって、俺に聞いてきた。
「じゃあ、いつも君はどうしているんだい?」
何でこんな質問をしてくるんだと思ったが、答えて困る質問ではないので答えることにした。
「家に置いてある食材とかを食べたり、自分で作ったりしてるんだよ。たまに外で買ったり、食ったり。
今日だって、買いに来たんだよ」
俺が答えている間、コンウェイはずっと俺のことを見ていた。
(「何だよ・・・?」)
俺が答え終わると、コンウェイは俺から視線を外して少し俯いて、そう、とだけ呟いた。
同情でもしてんのか、と思ってイラっとしたが、コンウェイの瞳は同情しているようではなかった。ただ何かを考えているようだった。何を考えてんだ、とコンウェイに聞こうとしたとき――
「ねぇ、コンウェイ!これ買っていい?」
ルカがお菓子を持って戻ってきた。
コンウェイはルカの方に視線を向けた。表情は俺と話す前の微笑に戻っている。
「いいよ。ただし一個だけね」
「うっ・・・はい・・・」
ルカががっかりしたような顔をする。コンウェイはそれを見てクスクス笑っている。
さっきまでの重い空気が、和やかなものになっていた。
「スパーダ!これ一緒に食べよう」
ルカはそう言って、選んだお菓子を俺に向けて言った。突然のことに俺は驚いたが、
「ああ」
ルカはニコニコして、次の瞬間何か思いついたようで、それを俺に提案してきた。
「あっ!ねえ、スパーダも一緒にごはんを食べようよ!」
「え・・・・・・?」
俺はさっきよりも驚いた。そして、どう答えれば良いか迷った。迷って、何て答えようか考えていると――
「いいんじゃないかい?」
コンウェイが俺にそう言った。
「えっ・・・?」
「僕らと食べても問題はないんだろう?なら、いいんじゃないかい?」
どういうことだ、とコンウェイに問い詰めようとしたとき
「うん!スパーダ、一緒に食べようよ!」
ルカが笑顔で俺に言った。目がキラキラと輝いている。そんなルカを見ていると、断るのは悪い気がしてきて、
「・・・ああ」
少しぶっきらぼうな感じになったが、ルカはテンションが高くなっているためか、それは気にならなかったようだ。
「やった!」
ガッツポーズをして喜んでいるルカを見ると、なんだかむずがゆいような気がしてきた。
(「そんなに喜ぶことか・・・?」)
一緒にメシを食うことをこんなに喜んでもらったことはない。
何となく恥ずかしいような気はしながらも、ルカが喜んだことに喜んでいると――
「今度からは、家の食材を持ってきてね」
コンウェイがニッコリと俺にそう言ってきた。
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TOI-Rの現代パロの7話目です。 | ||
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