最後のジョーク
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 白いメイクを施した俺はもう余命少なかった。蝙蝠男との戦い、留置所に送られ、そこでとある女医に手助けしてもらい脱獄した。

 そんな俺は再び、蝙蝠男の前に立っていた。正直立つこともままならないくらいには身体が限界だ。だが、この状態でなければならない。今しかないのだ。

「よう、蝙蝠男。どうした、そんなしかめっ面してよぉ」

 こいつがここに来る前にかなり精神的に追い詰めたからな。そうとう頭にきてるらしい。

「なんだよ、全部ジョークじゃねえか。なに本気になっちゃってんだよ。たかが人の命だろ? ヒャヒャハハハ」

 無理して笑う。足が震えてる。笑いによる震えではない。本当に余裕がないのだ。多分もう後がない。

 蝙蝠男がすさまじい形相で俺によってくる。それでも、自分に課したルールのせいで俺を殺すことなんてできないんだろうな。けれど……

「うおおおおおおお!!」

 蝙蝠男は俺に渾身の一撃を決めた。その瞬間、俺は悟った。

「なぁ……その程度で俺を殺せるとでも?」

 その瞬間、蝙蝠男も同じことを悟ったらしい。

「その通り、死ぬんだよ」

 もう病気で体がぼろぼろの俺は、この男の一撃に耐えられるほどの力は残っていない。つまり――

「これでお前は俺を殺した。たとえどんな極悪人を殺さないお前は、俺を殺したんだ。たとえどんな理由があろうともな」

 蝙蝠男は自分のしでかしたことを後悔するような顔をしている。だが、俺はこう答えてやった。

「さぁ、これからお前はどうなるんだろうな? 俺は地獄で高笑いしながら見ているぜ」

「あ……あ……」

 そして俺は最後に渾身の笑い声を響かせてやった。そして最後に一言――

 

「Why so serious?」

説明
即興小説トレーニングにて作成

http://webken.info/live_writing/novel.php?id=49898
お題:小さな愉快犯
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ナイスジョーク(紅羽根)
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