魔法少女リリカルなのはStrikerS〜二次創作〜 第28話 「日常、不思議な1日」 前編 |
「うーん・・・」
朝、気持ちいい日差しが差し込み今日が晴れだということ を認識させる
「うーん・・・?」
寝ぼけ眼で近くの机を漁っていつも御世話になっている目 覚まし時計を探す
「・・・」
その目覚まし時計はいつもの起床時間を指していた
また今日も一日が始まるのである
ご挨拶が遅れました
俺はダンテといいます
普通の高校生だったんだけれども、数ヶ月前にこの世界に 文字通り落っこちてきてから、まぁ色々あってダンテと名 乗らせていただき機動六課という場所で働いています
働いているというよりはアルバイトですね
たぬ・・・起動六課の部隊長にヘッドハンティングされ、 それ以降同居人に迷惑をかけないよう必死に働いているわ けです
職場の人たちはみんなとても親切で、部隊長には正式に局 員にならないかと毎日のように勧誘され、副隊長には模擬 戦をやらないかと誘われ、もう一人の部隊長にはぜひ訓練 出てみないと誘われ、またまたもう一人の部隊長には、オ ドオドしながらも、無理してない?と身体を気遣っていた だいたりなど、とってもいい職場だと思います
さて、説明も終わったところで丁度着替えも終わりました ので仕事に向かうとしましょう
俺はドアを開けリビングへと向かった
「・・・いつも通りだね」
リビングにあるテーブルには、俺の朝ご飯がラップにかけ て置いてあった
神様とシャムに感謝しながらそれを食べ終えると、俺は同 居人の一人であるヤドカリくんを連れて職場へと向かう
ちなみにシャムっていうのは、同居人であり俺の拾い主ね
右も左もわからず、半分パニック状態になりながら街を駆 けずり回った挙げ句、色々なことがあって倒れた俺を介抱 してくれた命の恩人です
彼女がいなかったら今頃どうなっていたか
それはさておき、この日一日は俺が機動六課で暮らした日 々の中で、一番不思議な一日だったと思う
なんというか・・・どう説明していいかわからないくらい 、不思議な一日だった
ーーーーーーーーーー
〜早朝、機動六課医務室〜
「ないないない〜・・・」
朝早くからドタバタと荷物を出してはよけ、探ってはずら すという不審な影が機動六課の医務室に一つ
「おっかしいなぁ、昨日はあったのに・・・」
その影は、着慣れた白衣を翻し次々と部屋を漁っていく
見たところ、この医務室の主のようだ
「まさか、どこかに置き忘れたとか?まぁあれは人が飲ん でも特に害はないけど・・・」
「朝から騒々しいな、シャマル」
「あ、ザフィーラ。ごめんなさい」
入口に目をやると、一匹の狼が呆れたように医務室の主、 シャマルのことを見ていた
「その様子だと、よっぽど重要な探し物らしいな」
「そうなのよ、『これは革命が起きる!』ってシャムちゃ んが」
また別の場所を探すが一向に見つからない
どんどん物が散らかって余計に部屋が狭くなるだけだ
「あの娘、たまにとんでもないものを持ってくるからな」
「ええ。さて・・・どこにいっちゃったのかしら?」
ーーーーーーーーーー
「ふぅ・・・よっこいしょっと」
無事機動六課に着いた俺は、カウンターにヤドカリくんハ ウスを乗せる
「・・・」
食堂には誰の気配も感じない
人がいればガヤガヤして音が絶えることはないのだが、朝 のこの時間だけ、俺はこの食堂を独り占めできるわけだ
「・・・〜♪」
少し口笛を吹きながら、朝日の差し込む食堂のカウンター にヤドカリくんを放す
「ほれ、あんまり悪さするなよー」
放すと同時に、器用に脚を動かしのっしのっしとカウンタ ーを歩きまわっている
「・・・やりますか」
そうして作業に取り掛かろうとしたその時だった
コツンコツン・・・と、ガラスのような何かをこれまた固 そうな何かで叩くような音が聞こえたのだ
もちろん誰かが入ってきたわけでもないし、ここには俺と ヤドカリくんしかまだいない。おばちゃんは後で来るが
ということは
「こらこら、あまり悪さするなって言ったっしょ?」
音の正体は、ヤドカリくんであった
今いる場所からは死角になっていたため見えなかったので ある
「で?何やってんだお前は・・・ん?」
ヤドカリくんを拾い上げて、音を発していたものを確認す る
「・・・栄養ドリンク?」
そこには、販売店などでよく目にする栄養ドリンクのビン が三本置いてあった
誰かが忘れて行ったのだろう、中身はまだ並々残っていた
ラベルもまだ新しい
「いったい誰・・・ってシャムのだ」
ラベルをよーく見てみると、開発、シャモニー・ガライヤ と書いていた
「・・・隊長さんたちにかな?」
普段ご多忙な隊長さんたちにシャムが差し入れでもってき たのか・・・
とにかくよくわからなかったので冷蔵庫に入れておいた
「さぁてと・・・」
作業に取り掛かろうとしたときにシャマル先生が食堂に入 ってきた
入り口付近で何かを探すような仕草をしていたが、すぐに 出ていってしまった
「・・・?」
特に気にせず作業に戻った
ーーーーーーーーーー
「はい、定食お待ち!」
「ダンテちゃん、これお願い」
「ガッテンおばちゃん!」
「おーい!ダンテくーん!これお願い!」
「はいはい!ただいま!」
いつも通りのてんてこ舞いな忙しさ
客足は途絶えることなく、次から次へと押し寄せてくる
「ふぅ〜・・・」
だけど、その分やりがいがある
趣味も仕事も楽しめれば一緒と誰かが言ったが、その意味 がなんとなく分かってきた気がする
「ダンテちゃん、これお願い」
「あ、はい」
好きこそものの上手なれ・・・かな?
ーーーーーーーーーー
「じゃあ今日はフェイトさんとシグナムさんはいないんで すね」
「うん、二人でお仕事。今日は夜まで六課にいないんじゃ ないかな?」
「そうですか・・・」
「なんやなんや、ダンテくん寂しいんか?」
はやてさんが意地悪そうにクスクスと笑っている
「ち、ちがいますよ!ただ、めずらしいなと・・・!」
「ムキになるところがまたあやしいわ〜」
「・・・もう」
いつもと同じように隊長さんたちと、いつもと同じように 朝食をとる
「そういえば、スバルさんたちもいませんね。ヴィータさ んも」
「スバルたちは一足早くデスクワーク。ヴィータちゃんは そのみんなのサポート」
いつもの席を見渡してみると、そこはガランと誰も座って いなくて、いるのは前に向かい合って座っているなのはさ んと、左隣に座っているはやてさんだけだ
「なのはさんたちはどうするんですか?」
「私もこの後午前中はデスクワークかな」
「私は書類の整理や。やっぱため込むのはいかんな」
「なのはさん、レポートは?」
「う・・・書き終えました。反省しております・・・」
あの訓練場の騒動に関して、やはりそれなりの対処という か処分は下されたわけで、今回はレポート提出という形で 事なきを得たようだ
「でもでも、ダンテくんと戦えたのは初めてだったからち ょっと楽しかったというか・・・」
「なのはちゃーん?まーだ反省が足りないようやなぁ」
「わわわ!い、今のは純粋に感想だよ感想!」
「あはは」
二人のやりとりに自然と笑みがこぼれた
もしかしたらもう、この日常が染み付いているのかもしれ ない
この当たり前であり当たり前ではない日常が
だからこそ、ふとした変化に気づく
「なんだか・・・いつもよりちょっと寂しいですよね」
「まぁ、みんながみんないつも一緒にいるわけやないしな ぁ。今までが少し珍しかっただけや。管理局はただでさえ 多忙やからなぁ」
「この三人もめずらしいよね。いつもはみんないるから」
なのはさんの言うとおり、確かにこの三人はめずらしい
部隊をまとめる隊長と、その部隊すべてをまとめる隊長
エースオブエースに大隊長だ
管理局員なら恐縮してしまうと思う
「・・・あの」
「なに?」
「なんや?」
二人が俺の方を見る
「・・・俺と居て、嫌じゃないですか・・・?」
「どういう意味かな?」
「深い話か?」
「いえ、その・・・そうじゃないんですが、・・・俺、特 に話すのが上手いわけでもなくて、そもそも管理局員じゃ ないんです。仕事の辛さとかも知らないし・・・ましてや 戦場の厳しさとかも知らないんです。だからなのはさんた ちの苦労とかもわからなくて・・・。俺といてもなんか・ ・・いいのかなって・・・」
「・・・ダンテくん」
「はい?」
「ダンテくんは、私たちと居て、こうやってお喋りするの 嫌い?」
「いえ・・・!決してそんなことは!」
「私は好きだな。こういう時とか、夜仕事が終わったあと のんびりダンテくんとお話しするの」
「それは・・・光栄です」
「ダンテくん、なにも話が面白いから一緒にいたいとかそ ういうわけやない。一緒にいるだけでホッとできる人って いうのもいるんや。ダンテくんは嫌いな人と一緒にその場 に居たいか?」
「・・・居たいとは思いません」
「せやろ?私たちも同じや。局員だとか、仕事の辛さがわ かるとか、そんなの関係ない。ダンテくんのことが好きや から一緒に居るんやで」
その言葉になのはさんも頷いていた
「私も、ダンテくんと居たらホッとするし楽しいよ?」
「な?ダンテくんのこと好きやもんな?」
「うん。それはもう」
そっか・・・そうなんだ
俺は、恐かったのかもしれない
こちらから近づいて、拒否されるのが
俺自身を人に否定されるのが
でも、この人たちはそんな人たちではない
本当に俺の事を考えてくれてるのか・・・
「・・・そうやって面と向かって言われると・・・」
「言われると?」
「・・・照れます」
「ダンテくん大好きー。愛してるー」
「大好きやでー、私も愛してるわー。抱いてー?」
「ぶっ!!なのはさんはいいとしてはやてさん!」
「あははは!ダンテくんにはちょいと過激すぎたか?」
「ふふふ」
たまには、こういうお喋りもいいかなと思った
ーーーーーーーーーー
「きびきび仕事に励もうかな」
「書類整理、気が遠くなりそうやわ〜」
「頑張ってくださいねー」
厨房に向かいながらはやてさんたちに挨拶する
はやてさんたちは小さく手を振りながら食堂をあとにし、 俺はそれに軽く会釈した
「・・・ふぅ」
誰もいなくなった食堂
おばちゃんは用事があるので、皿洗いは俺に任せてすでに 六課を後にしている
食堂には俺が皿洗いしている音と
『トコトコ・・・』
ヤドカリくんが歩いている音しかしない
「・・・」
こう周りが無言になると、人はいろいろと考えてしまう
・・・俺だって、なるべくならみんなと仲良くしたい
だけど、あと一歩・・・その一歩が踏み出せないんだ
言葉にできない・・・何といったらいいのか
とりあえず顔を上げる?
前を向いて進む?
前向きに考えるのはいいけど失敗したときが恐いのかな?
何かきっかけさえあれば変われるかもしれない
でも・・・そのきっかけを見つけるのも難しい
どうしたらいいのか・・・
「・・・」
・・・たまに、お前が羨ましくなるよ
「じ〜・・・」
「・・・」
金色
それが率直な感想だった
その一瞬なんだかわからない金色が顔を上げた瞬間に目の 前に飛び込んできた
徐々に思考が落ち着いてきて、冷静に物をみれるようにな ってきたらそれが何なのかだんだんわかるようになってき た
目、鼻、口、それに金色の髪をした何かが、カウンターを はさんで俺のすぐ目の前にいた
よくよく見たら、それがじっとこちらを見ている
その瞬間
「わぁ!」
「キャッ!」
当然のように俺は驚いた
「フェ、フェ、フェイトさん!」
「もう、驚かさないでよ」
「こっちのセリフですよ!」
目の前で俺のことをじっと見ていた犯人は、紛れもなくフ ェイトさんでした
「一体どうしたんですか?はやてさんからはシグナムさん とパトロールに行ったと」
「うん、そうなんだけどまだ時間あるからダンテの様子を 見にね。それに・・・」
フェイトさんが目で自分の後ろを見る仕草をした
見てみると、フェイトさんの後ろの席でシグナムさんが腕 を組んで座っていた
「テスタロッサ、用事は済んだのか?」
「うん。一応ね」
「なら、いつまでも脂売ってないでとっと行くぞ。主はや ての御命令だ」
「もう・・・そんなこと言って。食堂に寄ろうって言い出 したのはシグナムじゃない。それに、まだ少し時間あるし 」
「な・・・!貴様それは・・・」
「ダンテはちゃんと仕事をしているのだろうか?・・・っ て」
フェイトさんが少しシグナムさんの真似をしてそう言った
こんなお茶目なフェイトさんを見るのは初めてだ
「ち・・・違う!あれはそういう意味では・・・!」
「へぇ〜」
「お、お前もそのニヤニヤした顔はやめろ!」
シグナムさんがめずらしく慌ててまるで子どものようにこ ちらを指差している
シグナムさんも、こんなに顔を真っ赤にすることがあるん だ・・・
「まったく・・・」
またシグナムさんは腕を組んで椅子に座ってしまった
少しからかいすぎてしまったのかもしれない
「それにしても、パトロールなんて大変そうですね」
「それでもやらなきゃ。何事もなく終わってくれるのが一 番いいんだけどね」
「うーん・・・あ、そうだ」
俺は冷蔵庫へと向かい仕舞ってあったものを取り出してき た
「これどうぞ」
「これは?」
フェイトさんが不思議そうな目で、差し出された小さな瓶 を見つめる
「シャム特製の栄養ドリンクです。話を聞いたところ大変 そうなので、良かったらどうぞ」
「いいの?ありがとう」
「シグナムさんもどうぞ」
「・・・本当に栄養ドリンクか?」
「シグナム。疑いすぎるのも良くないよ」
「シャムが作ったんで、まさか悪いものではないと思いま すが・・・」
「まぁ、確かに。悪戯心があるとはいえ、食堂に毒をもっ てくるわけもあるまい。ありがたくいただくとしよう」
「じゃあ俺も残りの一本を・・・わぁ!」
瓶の蓋を開けた瞬間、手が滑ってカウンターにこぼしてし まった
「ヤドカリくん大丈夫かい!?あーっと!布巾布巾・・・ 」
ヤドカリくんにかかってしまったが、直ぐに拭いたおかげ でそれ以上の被害が出ることはなかった
「あーあ・・・もう残ってないし・・・」
ぶちまけたお陰で瓶の中身はものの見事に空になっていた
「ごめんよヤドカリくん・・・」
俺は、濡れてしまったヤドカリくんの体を丁寧拭く
そのあとヤドカリくん何もなかったかのように歩き始めた
「普通の栄養ドリンクだね」
「確かに、変な味がしたわけではない」
「良かったです」
なんとか喜んでもらえたようだ
あ、そういえば忘れてた
「すみません。おばちゃんから頼まれていたことがあった ので少し席を外します」
「うん。もしかしたら帰ってくる頃には私たちはいなくな ってるかもしないから、これありがとね」
「ありがとう」
「いえいえ。あ、その瓶はカウンターに置いておいてくだ さーい」
ーーーーーーーーーー
「行っちゃった。ダンテも忙しそうですねシグナム」
「きちんと働いている証拠だ。さて、そろそろ時間だ。い くぞ、執務官殿」
「はい、わかりました。シグにゃ・・・む・・・」
「テスタロッサ?一体どう・・・し・・・」
「・・・」
ーーーーーーーーーー
食材を運ぶ・・・というのも俺にとっての仕事である
週に何回か機動六課に食材が運ばれてくるのでさそれを食 堂の厨房まで運ぶというわけだ
今日はいつものように大量に運ばれてきたわけではなく、 追加で少しの量が届けられただけなので一往復するだけで いいようだ
「・・・こんだけかい」
幸いにも両手で持てる量だった
そして再び食堂へと引き返す
・・・午前も午後も、機動六課は慌ただしい
道行く人が書類を片手させっせと走ったり歩いたり
その様子からどれだけ多忙かが伺える
その点に関してははやてさんたちを心から尊敬する
「ふぅ・・・やっと着いた」
後はこれを厨房に置いて食堂を後にするだけだ
久しぶりに時間もあるし、またスクライアさんのところに 行って調べものでもするかな
「はー・・・、はい?」
扉を開け中に入ってみると
誰もいないはずの食堂の窓辺にぽつんと
長く腰まで伸びたさらさらな赤い髪をした、白いひらひら したワンピースを着た女の子がいた
扉を開けた音に気づいたのか、その女の子がこちらを向く と、手には可愛らしい子猫が二匹抱かれていた
女の子の顔立ちもそれはそれは整っており、誰が見ても美 少女と答えるような、でもどこか不思議な雰囲気がある・ ・・そんな感じだった
「・・・おっといけない」
女の子に見とれてしまっていてついつい入り口た立ち止ま ってしまった
厨房に向かい食材を置く
・・・にしても誰なんだ?
新しい局員の人かな?
キャロちゃんやエリオくんみたいな年齢の子もいるんだ考 えられなくはない
しかし・・・
「うーん・・・うわ!」
背後に気配がしたので振り返ってみると、いつの間にかそ の女の子が俺の後ろに立って、じっと俺を見ていた
その、今にでも吸い込まれそうな赤い色をした目で
「君は・・・誰?」
「・・・」
「お兄さんかお姉さんを捜してるの?」
「・・・」
女の子は始終無言でじ・・・っとこちらを向いているだけ 、何にも一言も喋らない
「お父さんかお母さんかな?」
「・・・」
変わらず、眠っている子猫を抱きかかえたままずっと無言 だ。うんともすんとも言わない
「まぁ・・・とりあえずこっちに・・・」
このままでは埒があかないので、とりあえず食堂にあるテ ーブルに案内した
子猫をテーブルの上に乗せ、俺と向かい合わせになるよう に女の子は座ったが、やはり俺の事が気になるのかじっと こちらを見ている
誰かに似ている・・・わけでもない
こっちに来てから確かに色んな人に出会ったけど、どの人 とも特徴が一致しないし、第一何も喋らないんだから何も わからない
「・・・ニャー」
「にゃー・・・」
俺たちの話しに気づいたのか、二匹の子猫が目を覚ました
一匹は真っ白で、右耳にピンク色のリボンをした可愛いい けど少し凛々しさもある子猫
もう一匹は黒を基本とした体に黄色いしましま入っている という少しめずらしい子猫だった
「君の猫?」
俺が尋ねると、女の子少しだけ首を左右に振った
どうやら俺の言葉は通じるようだ
・・・ただ何も喋ってくれないだけで
「ニャ・・・ニャニャー!ニャーニャー!」
「にゃー!にゃー!」
・・・猫が何やら俺に話し掛けてきているような気がする が、俺は猫語というのをまったく勉強したことがないので 何を言っているのかさっぱりわからない
誰か他の局員の猫かな?
いや、でも食堂に連れてきてそのまま置き去りってことは たぶんないし
迷い込んだ・・・といっても、忙しい午前中廊下をあっち こっちに行ったり来たりする局員に全く見つからずに食堂 まで来れる確率はほぼ0%に近い
参ったなぁ、はやてさんやなのはさんやヴィータさんらは デスクワークだし、シグナムさんやフェイトさんはパトロ ールだし
「どうしようかな・・・」
「ニャー!ニャニャー!」
「にゃ〜・・・」
「・・・」
ピンク色のリボンをした子猫は鳴きまくってるし、金色の 模様が入った子猫は落ち着いてはいるけどなんだか泣きそ うになってるし、女の子は女の子でさっきと同じようにず っと黙りっぱなしだし
このままでは何もできない
「こうなったら・・・」
もうなすがまま、午前中がつぶれようがもう後には引けな い
この子たちを放っておくわけにもいかないし
「飼い主を捜すか。女の子の方は保護者か・・・」
というわけで、飼い主&保護者散策作戦がスタートした
ーーーーーーーーーー
〜機動六課、廊下〜
「ニャ・・・ニャ」
「・・・にゃー」
「・・・」
現在、俺が子猫二匹を抱きかかえ機動六課の廊あ移動中で ある
女の子はそんな俺の後ろを無言でスタスタとついてきてい る
・・・なんともいえない
これが会話があれば少しはマシなんだろうけど本当に一言 も喋らない
「君・・・名前なんていうの?」
「・・・」
「今日はなんで機動六課に?」
「・・・」
・・・これじゃあまるで、俺が少女に必要以上に声を掛け る変態みたいじゃないか
「・・・はぁ」
とりあえずまずは、この施設の総指揮官のところへ行って みるかな
ーーーーーーーーーー
〜機動六課、部隊長室
「うーん・・・」
「どうですか?はやてさん」
「う〜ん・・・悪いけど、私も見たことないなぁ」
「そうですか・・・」
女の子と子猫を交互に見るも、はやてさんにもわからない らしく、首を傾げていた
ということは、機動六なの職員ということではないという ことがわかった
ますます謎が深まるばかりである
「とりあえず整理すると、ダンテくんが食堂に戻ってくる わずかの間に食堂に入っていた・・・っちゅうわけやな」
「はい、そうなると思います」
「うーん・・・」
するとはやてさんは椅子から立ち上がり、女の子の前で目 線の高さになるまでしゃがみこみ問い掛ける
「君は誰?お名前言えるかな?」
「・・・」
「お家はどこや?ミッドに住んでおるんかな?」
「・・・」
「・・・ダンテくん」
「俺に聞かないでくださいよ、会ってから一言も喋らない んです。言葉はわかってるみたいですが・・・」
女の子は、はやてさんと目を合わせるもそれ以外はピクリ とも動かず、ずっとはやてさんとにらめっこをしていた
「はやてちゃ〜ん、書類の提出終わったです〜」
「お、ご苦労さんやなぁリィン」
「はいです〜。あ、ダンテさん」
「こんにちは、リィンさん」
「こんにちはです!わぁ〜、可愛い子猫さんたちです〜! 」
「ニャー!」
「・・・にゃ〜」
部隊長室の扉をあけ、リィン曹長が少女サイズで入ってき た
さすがにミニミニサイズでは書類を運ぶのは難しかったの だろう
「えっと・・・こちらの女の子は?」
「一応・・・迷子ということになるかと・・・」
「こんにちは!恐がらなくても大丈夫ですよ〜」
「・・・」
「はやてちゃんに会いに来たですか?」
「・・・」
「・・・はやてちゃん?」
「さっきからこの調子でなぁ。この子の事なんにもわから んのや」
「すいませんリィンさん。はぁ・・・」
リィンさんが女の子と話すも何の応答もなし、一体どうし たものかと思っていたその時だった
女の子は、突然リィンさんの両腕を
ガシッ!
と掴んだ
「・・・ふぇ?」
「・・・」
すると、女の子はリィンさんを
「な、なんですむぎゅ!」
「・・・」
力いっぱいギューッと抱きしめた
「お?やっぱりリィン知り合いやったんか?」
「わ、わからないでむぎゅ!」
「・・・」
女の子はこれでもかというほどリィンさんをギューッと抱 きしめていた
一方リィンさんは不思議そうな表情をしていた
「あれ?でもなんだか初めてじゃない気がします〜」
「どういうことや?リィン」
「はい、なんというか・・・似たような事があったような 、そんな感じです〜」
「似たような?」
女の子はリィンさんから離れると、リィンさん指差し、そ のあとに親指は人差し指でちょっとというサインを作った
「へ?あ、わかりました」
するとリィンさんは何かを察したのか、少女サイズからミ ニミニサイズへと変身した
「えっと、これでどうすれば・・・ひゃあ!」
女の子は、ミニミニサイズになったリィンさん今度は頭の 上に乗っけた
「うわぁ〜」
「この子・・・リィンが小さくなれることを知っとる・・ ・」
「・・・」
・・・一体、君は何者なんだ?
ーーーーーーーーーー
〜機動六課、部隊長室前〜
「じゃあその子のことよろしくなぁダンテくん」
「はい」
「また来るです〜」
「・・・」
俺は見送ってくれたはやてさんとリィンさんに軽くお辞儀 をし、女の子た小さく手を振っていた
「ねぇ、リィンさんと知り合いかなにか?」
「・・・」
「・・・ですよね」
今度こそは喋ってくれるかと思ったが、やっぱ黙りこんだ ままだ
「お前たちは〜?」
「ニャー!ニャー!」
「にゃ〜・・・」
ピンク色のリボンをした猫のほうは、興奮しているのかよ く鳴き、金色の模様のほうは緊張しているのか大人しい
結局飼い主も分からずじまいだ
「さてと、次は・・・」
なのはさんたちはデスクワーク中だ
となると・・・
ーーーーーーーー
〜機動六課、研究室〜
「この子たち?うーん・・・知らないかなぁ」
「やっぱりか・・・」
「ニャー!」
「・・・にゃ〜」
最後の頼みの綱ということでシャムのところを訪ねたもの の、やはりわからないらしい
よくよく考えてみれば、はやてさんが知らないということ はなのはさんたちの知り合いである可能もか限りなく低い
うーん、選択肢が完全に潰されてしまった
「にしてもこの子たちかわいいねー!子猫ちゃんだー!」
シャムは夢中になって子猫を抱き上げモフモフしている。 せめて、この子たちの飼い主さえ見つかれば・・・
「ニャーニャー!」
「うん?かわいいリボンの君、なんだい?」
「ニャニャニャー!」
「なんて言ってるのかな?」
そういえば、さっきからこのピンク色のリボンをした子猫 は鳴いているなぁ
何か伝えたいことでもあるのかな?
「とりあえず、わかったよシャム。ありがとうね」
「うん、ダンも頑張ってね」
「それじゃ」
「・・・って、久しぶりの登場なのに私の出番これだけ! ?」
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