超次元ゲイム学園 2次元目
[全7ページ]
-1ページ-

〜朝 ラステイション寮 1157号室〜

 

「……」

 

目覚める、というのは不思議な感覚だ。

時には記憶は夜の時点で途切れ、次の瞬間朝となっている。まるで時間が飛んだかのようだ。

時には夢という不確かな物を魅ながらもそれが現実に引き戻されるような感覚を感じる。

このときのわたしは前者だったが、時には後者の場合もある。

…何を考えているんだろうか、わたしは。

 

目を覚ますと、天井がものすごく近い。立ち上がるほどもできないほどに。

少し見渡すと、いつもの家とは違うことに気づいた。………ああ、学校の寮か。

 

「おーいちびっ子ー。起きないと朝食逃すですのー」

 

下のほうから声がした。ちびっ子とは言っているがどう考えてもわたしより幼い声色だ。

…正直ちびっ子はどっちだといってやりたいがそこは抑える。わたしが一種の寝坊をしたことは事実なのだから。

 

 

私の名はネロ・ストラース・シュバルツシスター。ゲイムギョウ界学園女神候補養成科の一年だ。

姉のユニ・ストラース・ブラックシスターとともにこの学校に入学したはいいものの、この学校は全寮制でありあろうことかそのユニねーさんと離れ離れになってしまった。しかも私のルームメイトは両方二年らしい。これは何の嫌がらせだろうか。

…文句を言っても仕方ないか。

 

二段ベッドから降り、ルームメイトの待つ居間へ向かう。

1部屋三人の寮という聞くだけでは二段ベッドと歩く隙間だけという窮屈空間な感じがするのだがその実は違う。

寝室は二段ベッド*2というここまではまぁ普通だ。問題は居間といえる場所が存在することだ。

アパートのワンルーム+前述の寝室があるという広々空間である。あろうことか台所まである。小さいながらもバスルームまである。

完全な居住空間となっているこの寮だが、元々この寮の建物自体がおかしいほどに大きい。階層自体は全4階なのだが横幅がおかしい。恐らくこの寮の廊下だけでフルマラソン(42.195km)できる。

学園長及び理事長開発の謎ワープ施設によって自分の部屋に行くことは難しくない。他人の部屋に行くことは難しいが。

 

とまぁこんな窮屈感0の広々寮だが、問題はある。ルームメイトに恵まれなかった場合だ。

わたしの場合、このルームメイトが問題なのだ。

 

普段着(制服はあるが着用義務はないらしい)に着替え、居間に移動。

テーブルにはどこから持ってきたのはわからないが多数の料理が置いてあった。

その周りには二人、白い短髪(ついでに緑色の目)の人とどう見ても子供が座っていた。こいつらが私のルームメイト。先ほど言ったとおり【両方二年】だ。

 

「おせーぞ末妹。飯の準備できてるし」

「ホームシックになるにはまだ早いですの」

「なってない。それにねーさんたちには学校であえる」

 

私を末妹と呼んだこの大きいほう。名をメイ・グレイフィードと言っていた。だが本人は自分の名前がすきではないらしく自分ではフロムと名乗っているようだ。戦闘技術科の二年。

口の悪い(わたしも人のことは言えない)ちびっ子ががすと。本人がそう名乗っていた。フルネーム走らない。正直信じられないが錬金術科の二年らしい。

 

この二人の先輩がルームメイトなのだが、正直わたしは苦手だ。わたし自身人付き合いがよくわからないというのもあるかもしれないが…。

 

「とりあえず朝飯ですの。腹が減っていれば戦はできぬですの」

「どっから沸いて出たんだ、これ…」

「がすとが錬金術で創った」

 

…錬金術って、すごいんだな。

目の前の料理は確実に料理店で出てきそうなレベルのものだ。いくら錬金術科の二年といっても、そんなものまでやるのだろうか…?

 

「素材を気にする必要はないですの。錬金術は単なる混ぜ物とは違うんですの」

「そーそー。こいつ錬金術の腕と頭脳だけは確かだからな」

「お前はがすとを何だと思ってるんですの?」

「え、気違った偽幼女だろ?」

「大体あってるですの」

 

何の疑問もなく談笑しながら食事を進める二人。

…意を決し、わたしも目の前の料理を口に運んだ。

 

「……。もぐもぐ」

「あれ、がすとお前ちゃんと食えるもの作れるのか」

「お前さっき言ったこと思い出せですの」

 

おいしい。

ちゃんと食える。錬金術というのは本で見た程度の知識しかなかったのだが普通に食べれるものを創れる。それどころかおいしいとはすごいものだ。

少しだけ尊敬した。

 

 

「そういやがすと。お前新入生から面白そうなの見つけたのか?こいつ除いて」

「まぁ、ネロを除けば一人二人ってところですの」

「……?」

 

わたしが静かに箸を進める間、二人は何かしら話し込んでいる。わたしの名が出てはいるもののそこまで関係がある話題ではなさそうだ。気にせず食事を進めることにした。

 

 

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 

食べ終わった後、食器を片付ける。食器まで用意しているらしく、全部捨てていいとのこと。洗って使わないのだろうか……?まぁいいか。

 

現在時刻、午前7時……全然寝坊してねぇ…。

大体この学校の始業時間が大体8時半。寮から歩いて校舎までおおよそ2〜30分。

つまり一時間半程度の猶予があるわけだ。

…正直入学二日目だ。そう急ぐ理由もないが早めに登校しておくのもいいだろう。

 

「お、もう行くのか?まじめだねぇ新入生」

「自分で不真面目って言ってるようなものだろうそれ…」

「私らは不真面目だよ。不良だよ。なぁがすと?」

「まぁがすとは不良を通り越して極悪人ですの」

「違いない」

 

HAHAHAHAHAと乾いた笑いを上げる二人を尻目に私は準備を負え、寮の部屋を出る。

わたしはあのノリにはついていけない。本気で。

 

部屋を出ようと扉を開けた瞬間。一瞬の光と同時に扉の先に外の景色が広がった。

謎のワープ組織の応用か寮の部屋を出ようとすると寮そのものを出ることになる。どういう原理かはわからないが出るのも早い入るのも早い便利な機能だ。違う寮部屋に入ることは難しいが。

 

部屋を出、扉を閉める。閉めた扉は一瞬で消え、元の場所に戻る。さて、登校だ登校。

-2ページ-

〜7:26 超次元ゲイム学園 1-B教室〜

特に誰かと会うこともなく登校終了。ホームルームまで一時間近くある。

私の席は窓際の中列辺り。ここが一番目立たないと思いここを私の席にした。

一時間もあることだし、鞄から5冊ほどの本を出す。一つ一つが辞書ほどに厚い。こうしてみると何故か陰鬱になる。

本の内訳は【八法全書一巻】【世界のプロレス辞典】【素手での殺し方】【広事苑】【超次元ゲイム学園の謎】。プロレスと素手での(ryはわたしの趣味だが、それ以外はユニねーさんに渡されたものだ。

…勉強しろということなのだろう。

読書が嫌いというわけではないのだが、この辞典級(つか三冊ほど実際に辞典)五冊は読まなければならないという謎の強制感からの陰鬱。一冊ずつ持ってくればよかったと今更ながら後悔。ここが私がねーさんと違って機転の利かないところ。

 

とりあえず素手での(ryだけ残し、他を鞄に押し込む。とりあえずまずは好みの本から読んでいこう。何度も読む必要もあるんだしな。

右肩に埋め込まれた円盤状の機械を軽く捻る。ビキッ、となりそうな痛みの後私の右腕が一瞬光、機械的に変わった。

わたしの武器、鉄機腕だ。…埋め込まれた経緯は余り思い出したくない。

 

とにかく、左手で本を開き、それを読みながら右腕の指を少しずつ動かしていく。

同時にイメージ。相手を殴り、つかみ、潰す。腕力しか自慢できることがない(しかも女神として弱い)わたしにとってはこういったモノが必須だ。ユニねーさんやさらに上のノワールねーさんもこんな苦労はしていないのだろう。羨ましいことこの上ない。

 

何かしらで試したいことはあるのだがそんな都合のいい相手は存在しない。あくまでも亜種型のモンスター相手にするしかない。仕方ない。

…………。

-3ページ-

〜一時間後 8:30〜

…頁は、250…まだ1/3と言ったところだ。

結構読んだつもりだったが意外と残っていた。これがあと4冊あるのだから恐ろしい。興味のあるジャンルでこれなのだから余り気が進まないジャンルでは…やめよう、うん。

 

武器という武器が鉄機腕という、通常と違いリーチがないわたしにとってはこういうのを読むのが必須であり、わたしもこういう本を読むのは好きだ。女神の心得を学ぶ場としてはこうしてある程度の予習をしていくのがただしい生徒像だとわたしは思っている。…実を言うとねーさん以外に対して何を話せばいいのかわからない。

フロムとがすと。あいつらはわたしをからかう目的ではあるが積極的に話しかけてくる。それならそれで対応もしやすいというもの。

…こういうのをコミュニケーション力欠如症候群、略してコミュ症というのだろうな。

 

ノワねーさんも友人がロクにいないと悩んでいたし、ユニねーさんも得意というわけではないらしい。

…血筋なのだろうか。

後ろのほうからかすかに会話も聞こえる。

 

「…アリスちゃん、何してるの?」

「いえ。少し気になったことがありまして」

 

そういえば、わたしが特殊なのであって普通は同じ一年で寮一部屋だったりするよな…。

なんだろうかこの複雑な気分は。

 

「始業時間だ。全員席に付け」

 

前方、巨大パネルのほうから声がした。大きいわけでもないが不思議とよく通る声だ。

どうやら担任のようだ。とりあえず栞(手製)を挟み鞄に入れておく。…今思ったけどこの鞄どうなってんだ。辞典五冊って。

 

「本日は一日校内見学だ。一日で回りきれる広さではないので主要な施設のみの見学になる。危険地帯も多いため決して案内からはぐれないように。はぐれた場合命の保障はできない。」

 

知っていたことだが酷い有様だよな…。

この学校、理事長の趣味か学園長の気まぐれか広さがおかしい。

改築に改築を重ね今となっては理事長と学園長の人外コンビにしか全貌を把握できていない、と言われている。

曰く人間が済めそうにない火山地帯があるとか、曰く別世界に通じているとか。

…女神養成科は、行くんだろうなぁ。そういうところに。

 

「では出席確認の後「失礼します」」

 

担任の言葉を遮り、扉の開く音と同時に別の声が聞こえた。

ふよふよと本に乗りながら浮かぶ少女(サイズ的には幼女っつか人間じゃないが)、学園長イストワールだった。

何で学園長が……?

 

「こほん、おはようございます。学園長イストワールです。本日、校内見学とのことで私と理事長が案内を勤めます。私が訪れたクラスがA班、理事長が訪れたクラスがB班です。多人数の行動なのではぐれることのないように。その注意とお知らせです。先生、これを」

「わかりました」

 

学園長が担任に渡したのは紙の束。それを数束に分け、それぞれの列の先頭に渡す。

わたしら生徒へのプリントか何かということか。

プリントがわたしのところへ来たので一枚とって後ろに。

プリントには妙にかわいいフォントでこう書いてあった。

 

 

【超次元ゲイム学園生徒の心得

 

・立ち入り禁止区域には教師の許可なく入らないこと!最悪命の保障はできません(`ω´*)フスー

・学園での授業、課外科目(以下クエスト)は一人では難しいものも多いです。なので友達は作りましょう(*´ω`*)ホッコリ

・サークル・部活の設立は検査を通れば自由です。楽しくも有意義な学園制圧をヽ(・ω・ゞ)ィェーィ】

 

……顔文字の衝撃で内容が何一つ入らん。

とりあえず、コミュ症に生きる場所はないと暗喩で言われた気もする。

ねーさん…今どうしてるかなぁ。

 

「さて、一通り読み終わったことでしょうし出発しましょう。各自離れないように私についてきてください。先生、細かく点呼を。断ってあるとはいえ入学二日目で死者、行方不明者が出るのは好ましくありませんし、ね」

 

さらりと恐ろしいことを言いながら学園長は教室を出た。

続いて担任の確認後、揃って教室を出る。周りには複数の学園長と理事長(といっても三人ずつ程度…十分おかしいな)が各クラスを纏めている。増えるのか、学園長。

 

「では、はぐれることのないように付いてきてください」

 

複数の学園長が集まり、一人に戻ったところで先導して集団を案内し始めた。

…嫌な予感がするな。

-4ページ-

〜危険地帯前〜

わたし達の目前に存在する門状の何か。

薄い膜の先は紫色に蠢いており、その先が明らかに人間の立ち入るところではないという予感がしている。

心なしか誘うかのようなうめき声も聞こえてくる。幻聴だろう。そう今決めた。

 

「一年では訪れることもあまりないでしょうが、くれぐれもそういった指令なしに入らないように。一年生の手には余りますよ。二三年の方と行くのがいいでしょう」

 

学園長の説明を話2/3で聞きながらじっと門を見続けるわたし。

…なんだろう、言い表しようのない不安感だ。

 

「では、次に行きますよ」

 

学園長の声とともにぞろぞろと移動を始めた。私も後ろのほうで付いていく。

…ん?

 

 

「危険地帯…面白そうじゃん?」

「はーあ…。しょうがないよねぇ」

 

二人、列から離れて門に近づいていく生徒が見えた。誰も気づいて、ない……?

うまく教師、生徒の目を盗んでいたのか誰も二人に気づいていないのか。

さっき死にたくないならって言われたろうに…!

 

「大丈夫なの?何か物凄く禍々しいんだけど…」

「だいじょーぶだいじょーぶ。学校のこういうのは誇大表現だって相場が決ま」

 

-ザシュッ-

 

門に張られた膜を過ぎた途端、【何か】が出た。

意気揚々と門を過ぎた少女は揚がった血滴と引き換えに消失した。その瞬間ははっきり見えた。

 

続いて声を上げる暇もなく、膜を過ぎていた後ろの少女の腕が引かれ奥に引きずられていった。

そのとき、一瞬目があった。…クソッ!

とっさに走り出し、右腕の装置をひねる。

右腕が変化したのを確認し、右腕を盾のように目の前に置きながら門を通り過ぎる。

 

紫色の膜を通り過ぎた瞬間、奇妙な感覚を私が襲った。妙に体が重くなり、気分も悪い。

長くはいられないだろうと思い辺りを見渡す。妙に紫がかっていて見難いがすぐ近くにいた。

 

…いや、あった。

すぐ近くにさきほどいたと思われる少女の脚が見えた。だが、私わたしはそれをみて安著などできるはずもなかった。

 

脚しか、なかったのだ。

ちぎられたような断面のより上がない。つまり足の先までしかない。

無造作に置かれたそれからは血がどくどくと流れ出て小さな血溜りを作っていた。

 

思わず、足が止まった。

ぴちゃっ、という水音と同時に右足に変な感覚が走った。

 

……手だ。人の。それだけ。手だけだ。

咄嗟に離れ、近場の壁を背にする。息が切れている。疲労は微塵も感じない。恐怖は嫌というほど感じる。

人の死体というものを見たことがないというわけではない。だが、こうやって残骸となっているものを見るのは初めてだ。

…想像以上に気分が悪い。逃げろと何かが言っている気がする。

その言葉に従い、はいってきた門の方向を見た―――

 

「……どういうことだ、おい…」

 

思わず声が出た。

門が、ない。入ってきたはずの場所は既に壁に変貌していた。

…逃げられない。そう悟った。

 

- バリ ぎちゅ ボキ-

 

不快な音が耳に入ってくる。音源を想像するだけで吐き気がする。

わたしは恐る恐るその音の方向に視線を向けた。

…即座に後悔した。

 

「…ッ……!!」

 

 

- ゴリ ブチュ  ゴクッ -

 

そこでは、獅子型のモンスターが地面に口をむけ何度も蠢いている。

普通に見れば食事か何かの光景だ。これもそれと同じだろう。……だが、あいつは何を食っている…?

見難いが、少しだけ見えているものがあった。指だ。手だ。顔だ…。

既に何も映さなくなった目が、わたしのほうを向いている。

 

 

-ぐチュ ボリ   ガリ-

 

わたしに気づいていないのか、モンスターは一心不乱に【食事】を続けている。

…よく見ると、わたしの周りにも【食べ残し】らしきものが散乱していた。

先ほどの二人だけじゃない、もっと多い……それだけの【食べ残し】。

一部腐っているのか、腐敗臭まで感じてきた。

 

クチャ、と足元で音がなった。

思わず後ずさりしたか、血溜りの一つを踏んでしまったようだ。

その音に反応してモンスターがこちらを見る。二つの眼光がわたしを刺すように見つめてくる。

新しい餌だ。そう言いたげにモンスターは深く息を吐く。

もう今まで食べていたものには飽きたかのようにわたしだけを見ている。

殆ど胴体はちぎられ、頭の一部分だけとなっていたそれがちらりと見えた。

 

わたしも、ああなるというのか。あのようにちぎられ、食われ、残骸の仲間入りを果たすというのか。

 

「絶対に、断る…!!!」

 

わたしの声とともにモンスターがわたしに飛び掛った。

とっさに右腕を構え、モンスターの軌道上に向けて拳を置くように突き出す。

 

ガッ、という音とともにモンスターの口に食い込んだ。

ガリガリと齧る音が聞こえるが、噛み千切られはしていないようだ。…噛み千切られたら詰んでいたな。

 

「ど、ッラァ!!」

 

掛け声と共にモンスターをたたきつける。ドゴォ!という快音が響き、衝撃で噛み付く力が弱くなったのを感じ、もう一度腕を振り投げ捨てる。

 

モンスター自体は離れたがダメージはないのかくるりと宙返りしてそのまま血溜りの上に着地。

『グルルルルルル…』

 

モンスターが呻き声をあげている。口から涎のように垂れている紅い液体を見て背筋がぞっとした。

あの液体はさっきまで命の一部だったのだろう。モンスターはそういった命を簡単に噛み千切る。腕以外の所を噛まれたら抵抗する暇もなく千切られるだろう。想像したくもない。

少し右腕を見ると、あの紅い液体が多量についていた。さっき噛みつかれたときについたのだろう。このときの腕に触感というものはないが、妙な違和感を感じる。

液体が鉄機腕の駆動系統に入り込んでしまったのだろうか。ギシギシと異音がしている。

どれだけ強靭な顎をしているんだ、あいつは…。鉄機腕をあっさり噛み千切られないことだけが救いか。

 

しかし、どうすればいい…?さっき壁に叩きつけてもダメージ一つ見えない。一、二発殴ってどうにかなるようにも見えない。逃げ場はない。助けを呼ぶ?あの二人が悲鳴を上げなかったとは思えないし、つまりはこっちの音は聞こえない。

…ああもう、考えるのは面倒くさい。単純なことだ。一発二発じゃどうにもならないならどうにかなるまで殴ればいい。

腕を盾にすれば何回かは噛まれても大丈夫だろう。大丈夫じゃなかったら死ぬ。そもそも腕以外を噛まれたらそれだけで死ぬんだ。

……よし。殺る。往く。

 

『グル、グルルル・・・』

 

…?モンスターの様子がおかしい。

思えばわたしがこう考えている間、あいつは一歩も動かなかったようだ。何かに怯えている、のだろうか?

何にせよ好都合だ。今殴れば多少は早くなるだろう。

 

「そのデカい牙を叩き「無理すんなよ一年嬢っと」!?」

 

走り出そうとした瞬間、聞いたことのある声が聞こえた。後ろから、か…?

 

「ヒャッハー!キマイラ一匹頂きィー!!」

 

そんな声とともに横を人影が通過した。白い髪と二挺の長い銃がちらっと見えた。

それは物怖じするどころか嬉々としてモンスターとの距離を詰めていく。突如として現れた影を敵と認知したモンスターが腕を振り下ろす。

長い銃を斜めに構えて腕を逸らし、牙を向けていたモンスターの口の中にもう片方の銃を差込、引き金を引いた。

 

『逝っちまいな!』

 

その一言とともに銃を引き抜いた途端、モンスターが爆散した。

大量の血や肉片が飛び散り、少し離れたわたしにまで血がシャワーのようにかかった。気持ち悪い。

 

「…まぁ一体一発なら黒字、かねぇ」

 

つぶやきながら血を掃う人物。わたしには見覚えがあった。

ルームメイトの先輩、フロムだった。何で、ここに…?

 

「フロム…」

「ようちびっ子、随分命捨てた行動じゃねぇの。学園長先生のありがたーい説明聞いてなかったか?」

 

「まぁまぁメイちゃん許してやれですの。ほら、やんちゃものだからですの」

「メイちゃんいうな」

 

いつの間にか、がすとがわたしの後ろに立っていた。

がすとが宥めているが、事実わたしも入り込んでしまったわけだ。…早とちりだったよな、確実に。

 

「二人、列から離れてここに入ろうとした奴がいて、二人ともいきなり消えたから追ったら…この通りだ」

「見捨てればよかったのに」

 

信じられないほど淡白な答えが返ってきた。

まぁ、こいつらにとっては見知らぬ後輩だし助ける義理自体は無いのだろうが…それを言えばわたしからだって見知らぬ同級生だ。…混乱してきた。

 

「まぁ私等に道徳を期待するだけ無駄だ。こちとら不良なんでな」

「で、ネロ?脱出アイテム持ってるんですの?」

 

脱出アイテム…?聞いたことはない。というよりあのゲートが一方通行であることすら知らなかったんだ。持っているわけない…というのは逆ギレだな。

素直に持っていないと言おうとするとがすとは呆れたように首を振った。

 

「期待はしてなかったけどまさか本当に持ってないとは。死にに来たんですの?」

「うっさい。…そもそも脱出アイテムっていう存在すら知らなかったんだ。仕方ないだろ」

「…あ、そうだがすと。面白いこと考えた」

 

フロムががすとに近づきこそこそと話をしている。

全く聞こえない辺りわたしに聞かせる気はないのだろう。こういう目の前でする内緒話は聞こえるものだと思っていたが。

 

「ふむ。ネロ、ルームメイトのよしみで助けてやらんこともないですの」

「…何させるつもりだよ」

「いやな、私とこいつで少しサークルをやってるんだが部員が足りなくてな。どうだ?」

 

どうだ…って、そのサークルに入れ、といいたいのだろう。半ばどころか完全に強制だこれ。

背に腹は代えられないしわたしには承諾しか道はないのはわかってる。だが何させられるかわからない。自分を極悪人と称する奴だ、何をしでかすかわかったものじゃない。

 

「…わかったよ」

「いぇーい(棒」

「部員ゲットー(棒」

 

棒読みで喜ばれるととても…ウザい。

思わず殴りたくなるが後々何をされるかわからないのでぐっとこらえる。我慢は必要。

 

「で、一応聞かせてほしいことがある。そのサークルって、何をするところなんだ?」

 

「ああ、簡単だよ。とても簡単だ」

「至極単純なお仕事ですの」

 

フロムとがすと、二人とも面白いものを見つけた、と言いたげな悪い笑顔のまま言い放った。

 

「「喧嘩だよ」ですの」

 

この時、わたしは悟った。

 

さようなら学園生活、こんにちは不良地獄。

こいつらにかかわった時点でわたしに平和というものは訪れないのだと。

-5ページ-

〜生徒紹介その2〜

 

名前:メイ・グレイフィード 別名/ニックネーム:フロム

 

生物的特徴について

性別:女  種族:人間  年齢:16(高等部2年)

 

外見的特徴について

身長:156cm      体重:42kg

髪:白い(本人曰く銀髪)無造作な短髪。寝癖ではなく自分でぐしゃぐしゃにしている。

瞳:エメラルドグリーン

服装:モノクロのブレザー。改造されており大量のポケットが仕込まれている(ただし使われない)。

その他特徴:背中にガンダ○ケルディムのシールド○ットっぽい装甲がついている(武器庫らしい)。

 

能力的特徴について

他人よりできること・できないこと:そこまで力が強いわけでもないのに何故か大量に荷物を持てる

本人しかできないこと:正確な遠距離砲撃。大体20kmまでは制度は落ちない(自己申告)。

 

性格的特徴

性格:金とノワール以外には基本的に面倒の一言で済ませる面倒くさがり。ただノワールがかかわると途端に饒舌になる。

本人はどう思っているか:特定個人にしか興味を抱けない異常者。

他人はどう思っているか:一種のヤンデレじゃないんですの?byがすと

好きなモノ:金・大火力武器

嫌いなモノ:ノワール

しゃべり方:〜だ、〜だな、等

 

経歴的特徴

出身:ラステイション

家族構成:天涯孤独(両親はモンスターに食われた)

 

物語的特徴

一人称:私

二人称:お前、あんた

三人称:呼び捨て

遭遇する事件とか:ノワール、がすと関連

抱えている悩み・葛藤:ノワールを追い続けて数年立っているからか憎しみが薄れ掛けている

 

人間関係的特徴

他の登場人物との関係は?

→がすと:悪友。馴れ初めは不明だが互いにそれなりに気に入っているとか

→ネロ:弄りやすい後輩にしてルームメイト。ノワールの妹とかは関係ないらしい

→ノワール:本人曰く親の仇。ここ数年ずっと命を狙っている。

→ユニ:憎んでいるのはノワールだけで妹のユニはどうでもいいらしい。「末代まで呪うとかないわー。呪うなら対象一人にしておけばいいのに」byフロム

 

その他

超次元ゲイム学園高等部の戦闘技術科に所属する二年。だが授業の殆どをサボり必要最低限しか受けていない自他共に認める不良。

実力自体はありグレネードライフル二挺という重火力武器ながらある程度の近距離戦闘もこなす。本業は遠距離砲撃らしいのだがそんなことをやっているのを誰も見たことがない。

 

ノワールを親の仇といい憎んでおり、常日頃から命を狙っている。毎度妨害されたまにギャグ扱いもされるが憎しみは本物なのか決して諦めようとはしない。

 

本名はメイ・グレイフィードだがその名は余り好きではないらしく基本的にフロムと名乗っている。フロムという名は本人が29秒で考えたもの。

-6ページ-

名前:ガスト_ex.魔種 エアフォルク 別名/ニックネーム:がすと

 

生物的特徴について

性別:女   種族:人間     年齢:17(高等部二年、一回留年)

 

外見的特徴について

身長:112cm 体重:19kg

服装:mk2準拠

仕草・クセ:暇なときには腹部ポケットを漁る

 

能力的特徴について

他人よりできること:全体的に頭がいい。計算能力などなどが高い(自称人間一賢い)

本人しかできないこと:超高度な錬金術(学校で習うレベルを超えている)

 

性格的特徴

性格:悪女。面白いものは引き込み面白くないものは玩具にして陥れる。

本人はどう思っているか:正しい悪者ですの。

他人はどう思っているか: 寧ろこいつが悪いことをしていないのを想像できないbyフロム

好きなモノ:面白いもの・日本一(無自覚)

嫌いなモノ:つまらないもの

しゃべり方:〜ですの。極稀だがキレるとですのが消える。

 

経歴的特徴

出身:ざーるぶるぐ(詳しい場所不明の閉鎖都市)

家族構成:不明(正直知らんですのbyがすと)

 

物語的特徴

一人称:私・がすと(人を馬鹿にするとき)

二人称:あなた

三人称:呼び捨て・○○様(馬鹿にするとき・敬意を払うとき)

遭遇する事件は:日本一関連、ネロ関連

抱えている悩み・葛藤:最近自分で起こす出来事のネタがなくなってきた

 

人間関係的特徴

他の登場人物との関係

→フロム:悪友。見かけからは想像もできないががすとが年上。

→日本一:がすとが悪者になったことにより絶交した元幼馴染。

→トリック・ザ・ハード:悪巧み仲間。がすとの姿が幼女なこともあり結構仲がいい

 

その他

錬金術科の二年生。技術、知識は教師をも超え自他共に認める天才なのだが性格が最悪で成績よりも娯楽を優先し【入学してきたフロム・日本一と同じ学年になる】という目的で留年までやらかす問題児。

二人が上がってきても授業は面倒くさいという理由で必要最低限を受ける気しかない。

 

さらに自他共に認める極悪人でもあり【人の不幸はローヤルゼリー】が座右の銘。人を不幸にする、煽って争わせるのが趣味。

かつては日本一とともにヒーローをやっていたらしいが飽きたので悪人として生きている。そのため日本一に追われる立場になっているがそれなりに楽しんでいる模様。

 

がすとの名前はざーるぶるぐに置ける固体識別番号のようなものらしくこれを知られる=個人情報全てを漏洩するということでかなりの機密事項。ざーるぶるぐを既に追われているため名乗って特に何かあるわけではないが明らかに人の名前ではないという理由で今もがすとのみを名乗っている。

-7ページ-

名前:ネロ・ストラース・シュバルツシスター 別名/ニックネーム:シュバルツシスター

 

生物的特徴について

性別:女   種族:女神      年齢:15(高等部一年)

 

外見的特徴について

身長:152cm(女神時151cm)体重:39kg(42kg)

髪:黒の長髪+小さいツインテール(腰まで届く白の長髪)

瞳:ブラウン(スカイブルー)

服装:(http://www.tinami.com/view/476592)←一枚目

仕草・クセ:右肩に埋め込まれた丸い装置を弄る

 

能力的特徴について

他人よりできること:モンスター顔負けの腕力。

本人しかできないこと:腕を機械っぽく変換し伸ばしたりできる(鉄機腕と名づけている)

 

性格的特徴

性格:意地っ張りかつ単純。基本殴って解決しようするが殴ってだめなら考え出す。

本人はどう思っているか:ねーさん(ノワール)みらいに機転が聞けば、とは思う

他人はどう思っているか:悪い子じゃあないのよ。前しか見えてないだけ…byユニ

好きなモノ:ねーさん達(ネプテューヌ・ノワール・ブラン・ベール・ネプギア・ユニ・ロム・ラム)

嫌いなモノ:女神が嫌いな奴

しゃべり方:〜だ、〜だな、等フロムと似ている。なお↑のねーさん達に対しては敬語。

 

経歴的特徴

出身:ラステイション

家族構成:姉(ユニ・ノワール)

 

物語的特徴

一人称:わたし

二人称:お前・あなた(ねーさん達に対し)

三人称:呼び捨て・○○ねーさん(ねーさん達に対し。二文字程度に略される。)

遭遇する事件は?:女神関連

抱えている悩み・葛藤は?:ねーさん達(ユニ・ノワール)に比べて明らかに自分は弱い

 

人間関係的特徴

他の登場人物との関係は?

→ねーさん達:敬愛する相手。ユニ、ノワール以外とは血縁関係はないはずだが何故かねーさんと呼ぶ。ロムラムでさえ。

→フロム・がすと:ルームメイト兼先輩。あんまり関わりたくはないと思っていても結局この二人に引き込まれる。

→フウ:同級生。ネロの中では何らかの区別がされているのかフウをねーさん呼びすることはない。

 

その他

女神候補養成科に入学した一年生。一年生ながら女神化が使える。

ユニ・ノワールの妹なのだが詳細なプロフィールに不明な点が多々ある(女神化した場所・時期など)。さらに同い年であるネプギア、ユニ、ロムラムをねーさん呼びするなどかなりの謎がある人物。

 

女神化が可能という点を差し引いてもかなりの腕力を持っている。腕力、という点に絞ればモンスター接触禁忌種にも匹敵するとか。

だが性格も直情的で変化させたときの腕以外は防御力もないので決して強いわけではない。強大な腕力を持て余しているというわけでもある。

 

女神化すると普段右腕限定の鉄機腕が両腕になり、機動力も上がる。女神化前後の戦力としての差はかなりある。(胸囲の)戦力は余り変わらない。

ラステイションの女神の性か女神化すると縮む。本人は余り気にしていない。

説明
やっとカケター!

実はもうちょいツバキちゃんのところのキャラと絡ませる予定が色々あって無理でした。これじゃあ出ないと一緒じゃないか(呆れ)
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
915 768 1
コメント
>ヒノ氏 がすと「ぼのぼのはシュールシリアスだろ!いい加減に(ry」フロム「ぶっちゃけほのぼの得意なの三人の中で一人だけだしな。」ネロ「あのライオンは…危険種、なのか?」フロム「あれはTDN雑魚。ゲーム(V)的に言えばLv400。」ネロ「……」(リアルではおぜうタイプ@復帰)
ユウザ「ぼのぼの・・・・・」デバッカ「得手不得手仕方なしだ。」チータ「そういやお前、危険種狩りやってたんだっけ?何人で殺ったんだ?」ユ「一人でだよ?」チ「いや、お前人間だし・・・・」ユ「女神一人も相手に出来ないから、駄目駄目だけど。」デ「お前の基準は凄く可笑しい。」(ヒノ)
>ロージュ&ミヤウエ御中 フロム「なんかとっても深読みされてる」がすと「フルその場の思いつきなのに。行き当たりばったり執筆なのに。」ネロ「苦労してるんだな……。誰でも。」(リアルではおぜうタイプ@復帰)
>クリケット氏 ネロ「怖かった……」いーすん「学園内はゲイムギョウ界のさまざまな地点に繋がるゲートがあります。あれもその一つです。なので一概に学園内に放っておいてるわけでもないんですよ。」フロム「まぁあの程度の奴らなら二年になったら腐るほどやるけどな」(リアルではおぜうタイプ@復帰)
>あさひ フロム「二人ですんだだけ平和だよ(棒読み」がすと「たった二人なら平和ですの。ほのぼのですの。」ネロ「ゲシュタルト崩壊してきた」(リアルではおぜうタイプ@復帰)
>SHZH御中 ほのぼのだから(震え声)これほのぼの学園がコンセプトだから(白目(リアルではおぜうタイプ@復帰)
>雪鈴氏 いーすん「かわいいと思ってたんですけど…。」がすと「チョイスが悪い。」フロム「センスが悪い。」ネロ「そもそも顔文字を使うなプリントに」(リアルではおぜうタイプ@復帰)
>ツバキちゃん フロム「友達は大事だね」がすと「死人だってでるさ、ほのぼの学園だもの。」ネロ「どこのホグワー○だよここ……」(リアルではおぜうタイプ@復帰)
ネロのまじめさゆえの苦労ってやつですね。人生なんてそんなもんだよ、乞食みたいな奴らなんて棺桶入れて海に沈めりゃいいと言えればどれだけ人生楽なことだろうかとこれ見て思い出します(柏中ロージュ&ミヤウエ)
氷室「ネロ、御愁傷様。」 レオン「てか学園内にあんなモン放っておくとかこの学園、狂ってんだろ…。」 エスター「ま、あれだけ女が居れば獣の餌には困らないんじゃないですかい?」 ライ「少なくともお前と言う獣の食事になるよりは数倍マシだろうな…。」(クリケット)
クァム「平和だな!…平和…だよな?」ユゥラス「ちゃんと読めよ」クァム「読んださ!人が死んだ!」ユゥラス「平和か?」クァム「…と、とにかく平和だ!Hahahahaha!!へいわへいわ」(駆蘭)
byZ 何かと思ったらほのぼの学園じゃないですか(ブルブル泣)Hの書いてた奴とは違う面白さがあって良いです。( Z ハデス)
いーすんの顔文字ウゼェw( ´∀`)=○)3`*) イヴ「学校が始まって間もないころに死人が出るとは…なんだ、ほのぼのじゃないか(諦め」 さて、最後にこの学園の敷地に立っていられるのは何人なんでしょうね… イヴ「なんだ、ほのぼのじゃないか(震え声」 さて、ようやく私にバトンが回ってきたけれど… イヴ「なんだ、ほのぼのじゃないか(しろめ」(銀枠)
フウ「コミュ障に、生きる場所はない……」 アリス「大丈夫ですってフウちゃん。フウちゃんには少なくとも3人は既に友達いますから」 ステラ「まー、4人程度じゃどうにもならないのもいるけどねー。にしても早速死人…はぁ、めんどくさ」 フウカ「…理事長、その発言はどうかと」 ステラ「この学園を舐めてたら死ぬ、って、良い見本だよ」(風音ツバキ)
タグ
学園ネプ

リアルではおぜうタイプさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com