いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した
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 第九十話 『嘘』と『真実』

 

 

 

 「…女の子?あの子が『砕け得ぬ闇』?」

 

 はやてがそう呟く。

 黒い太陽から現れた目の前にいる女の子からは敵意のようなものが一切感じられない。

 

 「…王様。私、『砕け得ぬ闇』。いえ、システムU―Dが人型なんて聞いていないんですけど」

 

 「ええいっ、黙れ!我とて状況が状況過ぎて困っているのだ!」

 (…というよりも、我等マテリアルも人型をしていなかったような)

 

 自分達を追い詰めているアサキムと自分達を止めようとしている輩が現れたことにより二人はややパニックになっていた。

 アサキムと八神ファミリーの三つ巴になれば戦力的には自分達が圧倒的に不利だからだ。

 

 「…システムU―Dを起動。…外部からの転送反応を感知!」

 

 「っ」

 

 システムU―Dを名乗る少女とアサキムが何かに気が付いたかのようにキリエや王様。はやて達とは別の空間に目を向けるとそこから数人の男女が現れる。

 

 「はやてちゃん!皆!大丈夫!」

 

 「すまない!遅れた!」

 

 シャマルとクロノがいつもより大きめの魔方陣を自分の足元に展開しながら現れる。

 

 「『傷だらけの獅子』。彼女は…」

 

 「この感じは…。スフィア、なのか?」

 

 ガナリーカーバーを持ったリインフォースとガンレオンを身に纏った高志もそこに現れる。

 高志の足元にはシャマルの作り上げた魔方陣の上にいるお蔭で空中の上でも立っていられる。ただ、その上から飛び出れば重力に従って下に落ちる。

 

 「…やはりこの世界は最高だね。スフィアがこうも集まってくる。何かあるのかなこの世界には」

 

 高志やリインフォースを見てアサキムは微笑む。

 まるで長らく会っていなかった友人に会えたかのように…。

 

 「…『知りたがりの山羊』。あなたが私の力が欲しいのなら渡します。…だから」

 

 「待て!U−D!お前は我の者だ!」

 

 「…?ディアーチェ?ディアーチェですか?」

 

 ディアーチェは現れたU―Dの言葉を聞いて慌てて彼女を言い留める。

 自分に意識が向いたことにディアーチェは破顔する。

 

 「そうよ!まったく長い間、探させよってからに…。あまつさえ『知りたがりの山羊』に我等の力を簡単にあげようとするでない」

 

 「…全くです」

 

 ディアーチェがU―Dを叱るように言いつけるとそこに第二・三の声が入ってくる。

 

 「王さま〜!あっ、シュテルんも〜」

 

 「すいません。ディアーチェ。あの子達は思った以上に強くなっていたので、なかなか振りきれないでいました」

 

 「…シュテル。レヴィ。…?あなたは?」

 

 「て、こらっ。リニス!我をさりげなく呼び捨てにするでない!」

 

 シュテルに続いてレヴィとリニスもやって来た。

 

 「リニスと言います。今は王やレヴィの使い魔をやらせてもらっています」

 

 「…そうですか。それでは、彼女達を今すぐこの場から逃げてください」

 

 「っ。待て、U―D!」

 

 U−Dはリニスを見てこの場から逃げ出すように言う。

 と、同時にU―Dの背中から巨大な四本もの赤黒い巨大な水晶の腕が生えた。

 

 「私が、私でいる間に…」

 

 「まずは君からか!『偽りの黒羊』!」

 

 その四本の腕はまるで翼のように。そして、大蛇のようにU―Dを飛翔させながらアサキムに襲い掛かる。

 

 「あああああああああああっ!!」

 

 「はははははははははっ!精々足掻き続けるといいよ!そうでなければ僕も『揺れない天秤』、クロウから手に入れた『原作』も役に立たない!」

 

 二人の影がぶつかり合うと同時に無音の爆発がその辺り一帯を震わせた。

 

 アサキムもまた片手に赤黒い細身の剣を召喚するとU―Dの攻撃とぶつかり合う。

 その衝撃はその場にいた全員を吹き飛ばしそうになる。

 

 「ぐっ!主はやて!お下がりください!」

 

 「なんや!?あの二人がぶつかり合っただけでこの衝撃なん!」

 

 ザフィーラはその衝撃に思わず障壁を張って、はやてに届かないように堪える。

 だが、その余波ははやての体を吹き飛ばそうとする。

 

 「…滅茶苦茶だ。どう見ても魔力S。いや、SSはゆうに超しているぞ!」

 

 「…あれが、スフィアリアクター同士の激突なの?」

 

 「私達でも近づけない。だ、と」

 

 「あんなのにどう勝てっていうんだよ!」

 

 クロノと守護騎士も思わず腕を前にして二人のぶつかり合いを前にして怖気づく。

 

 「ぐっ!U―D!」

 

 「…凄い魔力。というよりもこれは魔力といってもいいでしょうか?」

 

 「にゃああああああ?!」

 

 「レヴィッ!しっかり捕まっていてください!」

 

 マテリアルもその衝撃に吹き飛ばされそうになるのを堪える。

 ただ、レヴィだけはしっかりとリニスの腰にしがみついている。

 

 そんな状況で吹き飛ばされていない影が二つ。

 『悲しみの乙女』と『傷だらけの獅子』だ。

 

 「…いきなり全力でぶつかりあっている。彼女は何を焦っているんだ?いきなりスフィアを全開にして戦えば自分自身に負担がかかるというのに。あのままでは自滅する」

 

 リインフォースはU―Dがいきなり全力でぶつかりあっている彼女を見て不思議に思っているが高志は違った。

 『偽りの黒羊』は『知りたがりの山羊』との相性が悪すぎるからだ。

 

 「…リインフォース。いつでも飛び出せるように準備しておこう。この均衡はすぐに崩れる」

 

 「っ。勿論だ。だが、あの二人の両方を同時に相手にするのは…」

 

 「…いや、俺達が狙うのはアサキムだ」

 

 高志がそう言った瞬間。

 アサキムは迫りくる四本の腕をくぐり抜けて、本体であるU―D自身にその剣を振り降ろす!

 

 「U―D!!」

 

 「王!?無茶です!」

 

 ディアーチェがその場面を見て思わず飛び出そうとしたが…。

 

 バキャンッ。

 

 アサキムの剣がU―Dに届いた瞬間に、少女の姿をしていたU―Dは赤い水晶の人形に変わる。

 と、同時にアサキムが躱していた四本の腕のうちの一本がU―Dに変化する。

 

 「幻影魔法!?あれだけの威圧感を感じさせていたのに幻だったの?!」

 

 シャマルは思わず声を荒げてしまう。

 サポートのエキスパートである彼女ですらも砕かれた水晶をU―D本体だと思っていたからだ。

 

 ドオンッ!

 

 U―Dが剣を振り降ろしたアサキムの後ろから無数の水晶の魔力弾を撃ち込む。

 

 「…甘いよ。『偽りの黒羊』。トラジック・ジェノサイダー!」

 

 だが、アサキムはその魔力弾に対して黒い烏を召喚して相殺する。

 そのフェイントすらも読んでいたかのように。

 

 ズガガガガガガガガガガガガガガガッ!!

 

 「っ!やはり…」

 

 ギィイイイイインッッ!

 

 U―Dとアサキムはお互いにスフィアの力を解放する。

 無数の赤い水晶と黒い烏がお互いに砕きあう。

 

 「君もわかっているはずだよ『偽りの黒羊』。君では僕には勝てない」

 

 ジャミングやフェイント。騙すという『嘘』を力にする『偽りの黒羊』。

 嘘を、真実を解き明かす『知りたがりの山羊』。

 どんなに『嘘』を強めてもそれを暴く『真実』には勝てない。

 無数の水晶を砕きながら黒騎士は少女を守る腕を破壊しながら彼女本体に剣を振り降ろす。

 彼女を守る腕はもうない。

 彼女が偽るものが無くなった今、振り下ろされた剣が捉えたのは((本物|UーD))。

 

 「そのスフィアを僕に捧げろ!」

 

 その言葉が発せられた直後。

 アサキムの持つ剣が金の髪を切り裂いた。

 

説明
第九十話 『嘘』と『真実』
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コメント
誤字修正しました。ルビの指摘ありがとうございます(たかB)
誤字ですが、タイトルの『嘘』と『(真実』に余計な括弧がある、最後のルビは((本物|U―D))→((本物|U―D))にしないとダメ。(翡翠色の法皇)
すいません。誤字修正しました。どうもです(たかB)
誤字?発見です。 にかかる負担がかかるというのに ちょいと意味が分らないです。(神薙)
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