シャングリラの罪歌 |
「ん・・んん・・・?」
深い闇から目を開ける
「ここは・・・?」
俺は辺りを見渡す
目に入ってきた情報を、鈍くなっている頭で解析する
俺の回りにあるのは、随分使われていない機械や、古びた鉄クズなどがあった
「どう考えても、工場だよな」
しかも廃工場
「俺・・・何でこんなところにいるんだろう?」
ふと疑問に思い、鈍い頭を使って記憶を辿る
たしか俺は大学を終えて、自宅に帰ろうとした
その途中に、訳の分からん女に襲われたんだけ?
んでその女は自分のことを『シャングリラ』とか言ってたっけ?
それで、それで・・・
・・・
これって俺、『拉致』られてる?
ウワーオ、コレナンテドッキリ?
「目が覚めたかな?」
いつの間にいたのか、俺の背後にはあの『シャングリラ』さんがいた
「ここに連れてきたのはあんたか?」
「まぁ、そうなるね」
コイツ・・・
内心で舌打ちをしながらも次の質問をする
「なぜ俺を拉致した?」
「珍しかったから」
「珍しい?俺がか?」
そう言うと『シャングリラ』さんはえぇと頷く
「だって本気を出していなかったとはいえ、私の攻撃を白羽取り・・・素手で受け止めたもの。それを珍しくなかったら何が珍しいのか教えてほしいな?」
「・・・」
確かにあの時の攻撃はそこらの魔法とは違った
現に両手を見ると包帯が巻かれている
相当の出血をしたらしい
「それでここに連れてきた本当の『理由』はなんだ?」
「君・・・勘もいいんだね」
嫌な勘しか当たらんがな
「君をここに連れてきたのは・・・君をこのアジトの仲間にするためだよ、『閃光のシャングリラ』柄澤 拓馬さん」
嫌なあだ名を言いやがる
「なぜお前がその『あだ名』を知っている?」
「それはもう私の学校では有名だからだよ」
俺のあだ名が有名ということは・・・
「あんた、『聖・イクリア学園』の生徒か?」
「おおまかには当たってるね」
そして彼女が言うにはこういう事だった
聖・イクリア学園には二つの学舎がある
一つは普通の魔法などを習う、【魔女】クラス
二つ目は彼女みたいな『異常者』が通う【シャングリラ】クラス
この【シャングリラ】クラスは政府から極秘されており、そのようなクラスがあることは、社会人や学生などは知られていない
「まさかそんなクラスがあったとはな・・・」
「えぇ。してそのクラスに入るか否かで結構頭を悩まされたらしいよ、『閃光のシャングリラ』」
「マジかよ・・・。所でそのあだ名で人を呼ぶのやめろ」
「えぇ〜?」
「えぇ〜、じゃない。名前知ってるんだったら名前で呼べ」
「ん〜、わかったよ」
「それでなぜ俺がそのクラスに入るか否かで悩んでいたんだ?」
「拓馬先輩は基礎魔法・・・ましてや五体要素魔法が使えない」
それは自分でも理解している
ちなみに五体要素魔法というのは、火・水・雷・風・土のことだ
さらに基礎魔法とは基本的に回復のことを指す
「だけど拓馬先輩は・・・古代魔法は使えた」
「・・・よく知っているな」
否定はしない
事実そうだからだ
俺は五体要素魔法と基礎魔法は使えない
しかしなぜか古代魔法だけは使えた
古代魔法は普通の魔法とは違う
普通の魔法は主にその魔法の名を唱えれば簡単に出せる
なかには少しばか詠唱を唱えなくてはならない魔法もある
しかし古代魔法は違う
詠唱を唱えることには代わりないが、普通の魔法とは比にならない長さなのだ
さらに言えば古代魔法を使うには莫大な魔力が必要だ
ゆえに古代魔法は通常の魔法とは違い、かなり難しいと言われる
「そりゃあ知ってるよ。学園で他校と戦った時に使ったんでしょ?」
あぁ、使ったな
あの時は気まぐれに使ったからな
それにしても・・・
「なぜあんたはそこまで知っている?」
いくらなんでも知りすぎた
第一、俺が古代魔法を使えること事態、誰も知らないはず
ましてや俺の家族も知らない
「フフフ。稲川先生って言ったら分かる?」
「!!」
なるほど・・・
あのクソ教師か・・・
確かにあのバカなら言いかねんな
あのバカなら俺の古代魔法のことも知っている
「なるほど・・・して、それを知ったお前はどうしたいんだ?」
「だから言ってるじゃん。私達の仲間になってて」
「私『達』?」
「あぁ、そうだね。まずは紹介しておかなくちゃね」
そう言うと彼女は奥の部屋に入っていった
「さて紹介するね。この子は嘩李 香(かり かおる)。普段は大人しいけど戦闘になると周りが見えなくなるからね」
「嘩李 香です。よろしくお願いいします」
ペコリと綺麗にお辞儀をする
髪はショートカットで髪の色はオレンジ、全体的に童顔だ
「んで次が、嘩李 雫(かり しずく)。この子は普段からがさついからね。注意して接するように」
「誰ががさついだ!まぁよろしく頼むよ、先輩」
この子はガシガシと頭をかきながら挨拶をすます
髪はロングヘアーで髪の色は前の子と一緒でオレンジ、全体的に童顔だ
「この子たちは双子か?」
「まっ、そんなとこだね」
「そしてこのチームのリーダーこと私・・・遠坂 零(とおさか れい)です!」
ドドーンと無い胸をはるシャングリラ・・・零
「それにしてもあんたら・・・俺は入る気はないぞ」
俺は素っ気なく返事をした
「えぇ〜?」
「えぇ〜と言われても入る気はない」
そう言い俺は廃工の扉を開けようとした
次の瞬間―――
―――ドス―――
ドアノブを握る右手にナイフが突き刺さっていた
「っ!!」
俺はナイフを抜き取り、その場に倒れこんだ
体が・・・痺れている!?
「仕方ないよなぁ・・・零姉、香。こうなりゃ実力行使しかない」
と雫は周りに目配りをしながら同意を求める
「うん・・・仕方ないよね」
「うん・・・」
ヤバいヤバい・・・
これは俺が分かったと言わなきゃ殺されるパターンじゃないか?
しかしあんな血生臭い『場所』なんかにいたくない
その間にも雫はどんどん近づいてくる
ヤバいヤバい!!
そして雫は俺の目の前に立ちナイフを振りかざす
「分かった!分かったから、やめろ!!」
その言葉に雫の動きが停まる
「その言葉、ホントか?」
「あぁ、本当だ!だからやめてくれ!!」
「ふむ・・・だったらやめよう」
そうして俺は一命をとりとめた
「それで、俺がここに入ったがはいいが何をするんだ?」
「今話題になってる、連続殺人犯を捕らえる」
「おいおい・・・そんなの警察や魔女に任せておけばいいじゃないか」
そう俺が返すと
「この殺人犯は魔女や警察の手にはおえない」
「はっ?」
「この殺人犯は私たちと同じ・・・『シャングリラ』の力を持っている」
「何言ってんの?」
俺はこいつらが言っていることが分からなかった
シャングリラ?
そんなに存在するのか?
「正解にはシャングリラの力を持った『武器』を持っている・・・ということです」
香がおどおどしながらも詳しく教えてくれた
「武器?」
「そうだ。名前はたしか・・・『青龍刀』という武器だったな」
その名前を聞いて、驚きを隠せなかった
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