真恋姫†夢想 弓史に一生 第六章 第三話 義妹 |
〜聖side〜
張超の首を持って、俺達は広陵城まで戻ってきた。
既に後続隊も広陵城に来ており、主だった将は全て集まった。
「皆お疲れ様。予定通り張超を打ち破り、広陵城を手に入れることが出来た。これで、俺たちの拠点の城が出来たわけだ。」
「これでようやく、一諸侯として立つ事が出来そうですね〜。」
「ようやくだな。」
「私達にしたら、遅すぎるくらいなのです。」
「でも、これでようやく、聖の夢に一歩踏み出した感じだな。」
「今回の戦いで…お兄ちゃんの実力も…伝わっているはずですし…。」
「各地から、ご主人様の名声を聞いて、志願兵が集まるでしょう。」
「行商人の方々も、こぞってこの町に集まり、市も直ぐに拡大しますわ。」
「そうなれば、税収の方も安定するだろうし♪」
「……一躍、大都市の仲間入り。」
「全部上手くいけば…だけどな。」
「上手く行くって!! なんたって、ひーちゃんだし!! 私達も居るし!!」
雅の言葉に、皆同時に頷く。
俺だけの力じゃ出来ないだろが、皆が居ればそれが出来る…。不思議とそんな気がしてくる…。
皆の顔を見れば、まっすぐに俺の目を見つめ返し、その目は、私達に任せろと言っているようだった。
「あぁ。何だか、そんな気がしてくるから不思議だな!!」
俺がニカッと笑うと、その場に居た皆もつられて一緒に笑う。
玉座の間には穏やかな雰囲気が流れて始めていたが、玉座の間に入ってきた勇の一言が、この空気をガラリと変えるものとなった。
「お頭!! 捕らえた相手の将を連れて来やした!!」
「……おう。ご苦労様。」
「へい。さぁ、こっちだ!!」
俺の前に、縄で縛られた状態の太史慈が連れてこられた。
辺りには、先ほどの穏やかな空気は霧散し、肌がピリピリするような緊迫した空気が流れている。
「さて、まずは…。」
「…殺せ!!」
「…ふむ。降る気はないと?」
「…。(コクン)」
チャキッ!!
俺は無表情で磁刀を構える。
太史慈は死を覚悟したのか、こちらを一度睨んだ後、目を閉じ唇をかみ締める。
フォン!!! カチン…。
次の瞬間、俺は太史慈を縛っている縄を切った。
「…えっ???」
当然、斬られると思っていた太史慈は、目を点にして驚いている。
「降る気はないんだろう? だったら、何処へでも行きたい所に行けば良い。」
「…はっ??」
「ん?? 伝わらなかったか? 君はこの城を出て、生きたい様に生きれば良いんだよ。」
「殺さなかと??」
「勿論。殺すには惜しいからね…。」
「そんなもの、武将にとっては恥じたい!!」
「恥??」
「武将にとって、相手に情けばかけられるんは、恥以外のなんもんでもなか!!」
「なら、君はその恥を感じて、自決するとでも?」
「そうたい!!」
「ふざけるな!!!」
「っ!!!???」
「この世にはな…。生きたくても生きられねぇ様な奴だって、たくさん居るんだ。そんな奴らからしてみれば、君はどれだけ恵まれた存在だと思っているんだ!! 武将の矜持?? 知るか、そんな物。 もし、今回のことで君の名に泥が付いたと言うのなら、それを恥じて死ぬのではなく、生きてその汚名を雪げ!! 死ぬことで逃げれるなどと思うな!!」
「……。」
彼女は何も言えずに俯いている…。
これで、少しでも命の大切さを学んでくれれば、きっとこの娘は強く、優しい武将になれる…。その為にも、自殺することの愚かさだけは分かって欲しいものだが…。
「…分かったとよ。まちっとだけ、生きてみる!!」
「あぁ、それで良い。」
太史慈は、少し困ったような笑顔を俺に向けてくれる。俺は、それだけでも嬉しかった。
「それに、俺は君のその言葉遣い、好きだぜ??」
「ぁ…あああぁ!!! またやっちしもた…。」
「…何でそんな隠すかな??」
「……変だとからかわれるけん…。」
「何処が変なのさ?? 他の人には無い、君の特徴じゃないか!! それに、何たって可愛いじゃん!! なぁ、一刀??」
「俺に振るのかよ!!」
「まぁ、良いじゃねぇか…。それより、どうなんだよ??」
「え〜っと、さっきから気になってたけど…やっぱりそれって博多弁だよな…。」
「多分な。 まぁ、霞も関西弁だったしありなんじゃねぇ?」
「そういうもんかな…。でも、俺も可愛いと思うな。」
「……!!!!( ///)」
見る見るうちに、太史慈の顔が赤く染まる。まるで、茹で蛸のようだ。
「だよな、一刀。 ほらっ、言葉遣いなんて気にせずに話せよ。 俺達は寧ろ歓迎するぜ??」
「……。 ふふっ…あははっ!!! 変なもんやね?あんたたちは…。」
「そうか? 俺にとってはこれが普通だぜ??」
すると、太史慈は片膝を付け、顔の前で手を組み、拱手する。
「名は太史慈、字は子義、真名は((音流|ねる))。今こん時ば以って、御使い様にお仕えするとよ。」
「…良いのか??」
「うん。なんか、ここ楽しそうやし、それに…。」
そう言って、俺の顔を見る音流。
「……ポッ…。( ///)」
「ん〜????」
この瞬間、聖以外の全員は思った…。『あぁ〜またか。』と。
「まぁ、良いや。音流、これからよろしくね。 俺は、徳種聖。呼びたいように呼んでくれて構わないから。」
「…じゃ…じゃあ…あんちゃんって呼んでよか??」
ごほっ…。良い飛び道具持ってんじゃねぇか……。
しかして、何故ウチの武将たちは妹になりたがるんでしょうね…?? まぁ……。
「可愛いから許す!!」
「やた〜!!! あんちゃん…へへへっ…。」
俺と一刀はその様子にほわ〜と癒され、残りの娘達は『今度の娘も強敵だ』と頭を悩ませていた。
〜麗紗side〜
此度の戦いで、広陵のお城を手に入れることが出来た私たちは、まずは内政を安定させるべく、皆、身を粉にして働きました。
中でも、資金源である豪族を纏めるのがまずは肝心です。
初めこそ、張超寄りの豪族達に反抗されていましたが、そこは流石お兄ちゃんです。言葉巧みに、自分達に付く利を解き、歯向かうならと力で威し、付いた人たちには手厚い歓迎。
これだけされれば、人の心とは動きやすいもので、この辺りの豪族は全て、お兄ちゃんの支援に力を貸してくれることとなりました。
資金源が安定すると、私たちの軍には優秀な文官がたくさん居ますから、内政は飛躍的に進歩し、市も活気付き、前居た町と同等くらいまで経済が回復するのに時間は掛かりませんでした。
このことは色々と噂になっているらしく、他国から来る行商人も増え、市も賑わいを見せています。
私たちが身を粉にした結果、この町もいつの間にか、有数の大都市へと変貌を遂げていたのでした。
そんな、内政での戦いが一段落すると、もう一つの戦いが幕を開けるのです。
そう、お兄ちゃんの取り合いです…。
……私の立場は揺るがないものだと思っていたのに。
徳種軍で、お兄ちゃんの妹となっている私は、他の人とは違った位置に居れていると自負していました。
ところが今回、新たに加わった音流さんが、私と同じ立場になっているではありませんか…。
……このままでは、お兄ちゃんが盗られてしまいます。
どうにかして、この状況を改善しなければ…ともすれば、音流さんより先に…。
因みに、音流が増えたことで、今の徳種軍の女の戦いは、途轍もなく不毛な争いとなっていたのだった。
とにかく私は、お兄ちゃんに抱かれれば良いと考え、どうにかその機会が無いかと伺っていました。
そして、非番が重なった日。私は、早速行動に出ました。
お兄ちゃんの昼食を作り、一緒に居れるこの時を見計らって、時間を作ってもらおうとしたのです。
「お兄ちゃん…。 今日って…確か午後は非番…でしたよね??」
「あぁ。そうだな。」
「何か…する予定はありますか??」
「別段、決まってないんだよね〜…。」
「で…では…私と…一緒に…。」
「やっほ〜!!! ひ〜ちゃん!!!!!」
すると突然、厨房に雅さんが入ってきました…。
「おぉ〜。いつも元気が良いな、雅は…。」
「もっちろん!!! ねぇ〜、ひ〜ちゃんて今日、確か午後非番だよね!?」
「あぁ、そうだぞ。」
「じゃあさ、私と町に買い物に行こ!!」
「まぁ、別段やることないし…別に良いぞ?」
「やった〜!!!!!!」
「……。」
「ん。 そう言えば、麗紗も何か言おうとしていたな??」
「い…いえ…。何でも…ありません…。」
「そうか…。悩み事があるならちゃんと相談してくれよ?」
「…はい…。」
……雅さんって凄いな…。
あんな風にお兄ちゃんに積極的に迫っていって、それに加えて女の人としてとても魅力的で…。
お兄ちゃんの隣にいても全然遜色ないくらいの美人さん…。
それに引き換え…自分は、女としての魅力がまだ幼く、消極的で…。
お兄ちゃんの隣にいても…差を感じてしまう…。
そんなことを考えながら雅さんを見ていると、私の視線に気付いたのか、私の方を向き、しばらく眺めたかと思えば、微かに口元を綻ばせた。
「あ〜!!! そう言えば、私やることがあるんだった!!! ゴメンね、ひ〜ちゃん。買い物はまた今度ね♪」
「なんだ、そうなのか…。ちょっと残念だけど、やることがあるなら仕方ないな。」
「うん!! またね。」
そう言って、厨房から出て行こうとする雅さん。
出て行く最中、すれ違い様に。
「これで、貸し一つね♪」
「っ!!?? どうして??」
「あなたは顔に出やすいの♪ じゃあ、頑張ってね。」
と言って。
雅さんは…やっぱり凄い人でした…。
「ふぁ〜……。 ご馳走様。 さて、雅に振られたし、寝て時間を潰そうかな…。」
そう言って、厨房を出て行こうとするお兄ちゃん。
誘うなら、今しかない!!
「お兄ちゃん!!」
「ん??」
「あ…あの…。 お暇なら…私と…一緒に町に行きませんか!!!」
言えた…。ようやく言えた…。
お兄ちゃんは、私が声を張り上げたのに少し驚いた後、笑顔で、
「よしっ。じゃあ行くか?」
と言ってくれました。
これだけで、幸せな気持ちになる私の心は、変なのでしょうか…。
「それで。麗紗は何か見たいものでもあるか?」
「そう…ですね…。 えっ…と…。 うん…と…。」
「特にない…と。」
「あうぁぅ…。でも、最後に小川に…。」
「小川?? 森の中のかい?」
「…はい…。」
「分かった。じゃあ、最後はそこに行こうか!!」
「あの…良いんですか?? 私の我侭に付き合って…。」
「良いさ!!今日は麗紗の行きたいとこに行くって決めたんだから…。じゃあ、それまでは適当にぶらぶらしながら、色んな店を見ようぜ!!」
「はい!!」
私たちは、賑わいを見せ始めた市へと繰り出すことにしました。
市には数多くの往来客が居て、一度逸れればまず会う事は不可能。こんな時は…逸れないように…。
「いや〜混んでるな。」
「そう…ですね…。」
「逸れないように…な!!」
そう言って、お兄ちゃんは左手を差し出してくれました。
それだけ…たったそれだけの事なのに、胸の動悸が治まりません…。
あぁ、こんなにも幸せを感じていられる私は、幸せ物の一人なのでしょうね…。
キュッ!!
私は、逸れないように強く、お兄ちゃんの手を握りました。
お兄ちゃんの手は大きく、剣を振っているにしては珍しく、ごつごつとしていない綺麗な手で、そして、暖かかったです。
「……。( ///)」
「どうしたのさ、麗紗? 顔真っ赤だぞ? 暑いか??」
「っ!!?? い…いい…いいえ!!! そ…その…そのようなことは…!!!」
どうやら、顔が赤くなっていたらしい。でも、嬉しくて同時に恥ずかしいんだから…仕方ないと思うんですが。
「…はい、じゃあとりあえず深呼吸しようか。 吸って〜…吐いて〜…。」
「すぅ〜…ふぅ〜…。」
「はい、吸って〜吸って〜…。」
「すぅ〜…すぅ〜…。」
「はい、吸って〜吸って〜…まだまだ吸って〜…。」
「す…すぅ〜…。う…うう…。」
……まだ吸うんですか?? いい加減…苦しい…。
「はい、まだまだ〜…。」
「………。(プルプル)」
……も…もう…息が…。
「はい、吐いて〜。」
「はぁ〜〜〜〜〜………。」
何だか、余計に呼吸が乱れた気がするんですが…。
「はははっ。麗紗、素直だな〜お前は。そんなに吸ったら苦しいだろ??」
「分かっててやらないで下さいよ!!!!」
「おおっ!!? 麗紗が怒った!!?」
「そりゃ、あんなことされたら、誰でも怒りますよ!!」
「いやっ、やらなきゃ良いだけなんだけどね…。」
「そ…それは…まぁ…。」
「ははっ。そうやって困ってる麗紗も可愛いな。」
そう言って頭を撫でてくるお兄ちゃん…。
ずるい…。そんなことされて…そんな事言われたら…怒るに怒れない…。
何だか、お兄ちゃんはそこら辺、分かっててやっているような気がする。(麗紗の思い込みで、聖は特に分かってやってはいません。無意識にやってます。)
……はっ!! と言うことは、お兄ちゃんは、女の人を虐めるのが好き…??
と言うことは、今の私を困らせるのも、お兄ちゃんの愛情表現の一つで、この後、もっと過激なことを要求されて……大勢の人に見られながらも、私の羞恥心を煽るようなことをさせて…そして、ゆくゆくは………。
「えへっ…。えへへ…。」
「……麗紗、大丈夫か?? 暑さで頭がおかしくなったか??」
「はぅ!!! いえ、何でも…ないです…。」
「一瞬、麗紗が壊れたかと思ったよ…。一体どうしたっていうのさ?」
「それは…その…。」
「ん??」
このような事を、私の口から言わせようと言うのですか??
やはり、このような人の往来が激しい場所で言わせることで、私の羞恥心を煽りたいんですね。
「お兄ちゃんの…すけべ!!!」
私は、お兄ちゃんと顔をそらしてそう言いました。
この時、言われた当の本人は、『ん?? 何故??』と思っていたのは、周知の事実であったりして……。
何だか、お兄ちゃんとこうして歩いていると、周囲からは私とお兄ちゃんが付き合っているように見えるでしょうか?? もし見えているなら…嬉しいな。
この後も、二人で市を回って…とあるお店で早めの夕御飯を食べました。
「ふぅ〜。食ったな…。」
「そうですね…。ここのお料理…美味しかったです。」
「だな!!」
すると、奥からお水を持った女将さんが出てきて。
「御使い様、今日はお連れ様と逢引でございますか??」
なっ…なんてことを!! それは…その…勿論…逢引ですけど…。急にそんな事を言われると…その…恥ずかしいと言うか…。
「はははっ。違いますよ。麗紗は俺の妹みたいなものだから、こうやっていると、兄妹みたいで…逢引とかそういうのとは違いますよ…。」
「えっ…。」
その時、私の中で何かが音をたてて崩れた気がしました。
お兄ちゃんは、私を妹としか見ていず、恋愛感情など無い…と…。
私は、悲しくて、悔しくて、一人舞い上がっていたのが恥ずかしくて……その場から走って立ち去りました。
「麗紗!!!?」
私の後ろから、お兄ちゃんの声が聞こえますが、私は立ち止まる事無く、ただひたすら走り続けました。
後書きです。
今話では遂に太史慈ちゃんの真名を登場させました。
音流って名前が作者的には予想以上にぴったりと来ていて、割と好きなんですがいかがでしょうかね??
また、後半部分は若干の拠点内容に入ってます。
次話に関しても拠点だったりするんですが……ここらへんで書いておかないと、と考えた結果ですのでご了承ください。
それにしても……やはり、麗紗を書くのは楽しいですね……。
妄想爆発するような女の子を描くって言うのは意外と楽しかったりするものなんですが……面白おかしくかけていれば幸いです。
次話は日曜日に上げようと思います。
それでは、次話にご期待ください。
説明 | ||
どうも、作者のkikkomanです。 プライベートでの忙しさの山を一つ越え、あと二つの山を越えるまで予断を許さない状況なんですが、今回はこうしてアップ出来て良かったです。 思えば、十数話の時点で立てたと言うか匂わせていた張超の小物臭を回収するのにここまでかかってしまいました……。 もう少し書き方があったかとも思うんですが、如何せんこうなってしまったことをお許しください……。 |
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コメント | ||
<魔界発現世行デスヒトヤさん コメントありがとうございます。 まぁ、普通はそうなんですけどね………近くに居るという事では恋人と比べても差はないかと……。(kikkoman) まぁ・・・普通は兄妹関係で恋愛に発展するなんて思うほうが変なんですよね〜(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ) |
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