鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第六十六話 |
〜バンエルティア号〜
『嫌です!それだけは絶対に嫌です!』
チャットが、涙目で首を猛烈に横に振っている。
アンジュの案に、全力で拒否しているのだ。
『私たちができることは、もうこれしかない。現に何度もここを攻撃されたじゃない。』
『だけど!ちゃんと守ってこれたじゃないですか!』
『お願いよチャット・・・こうするしか無いの・・・』
アンジュが、切実に願い、チャットはたじろいた。
うめき声のような泣き声が船内に響き、
拳を強く握り、壁に手をつけて呟いた
『・・・・・・お爺ちゃん・・・ごめんなさい・・・』
〜ヴェラトローパ〜
光と闇が、殺し合いをしている。
相入れぬ同士、異なる種族同士
全く逆さまの生物の筈なのに、元はひとつの精霊だった者
光を受けた物は、必ずしも影ができる。
その常識を作った太陽。
その太陽の名を持つ二人の精霊が、殺し合いをしている。
『あの時間と変わらぬな。レムよ』
『暗闇に閉じ込められる前から変わらんな。シャドウよ』
その戦いの中、もう一人
光を壊す戦士の姿があった。
『変わんない同士、仲良くなりな!!』
そう言って、闇の精霊と共に光を壊す、ひとりの主婦
錬金術師、イズミは
神殿の物質を理解し、分解し、再構築し
別の形へと変え、光の精霊の姿を削る
『・・・ぐっ』
錬金術に乏しいレムは、その攻撃が読めずに高確率で受けてしまう
『貴様ら錬金術師・・・我は苦手だ!』
そう言って、魔術をイズミに向けて唱える。
『レイ!』
光の魔術が、イズミに襲いかかり、
その光に苦戦しながらも、錬金術を唱え
そのイズミを無視してシャドウは容赦せずにレムに斬りかかる。
『!』
レムの左翼が、シャドウの剣によって切り裂かれる
『何万年も、俺がただあの陰気な洞窟で座っていただけだと思ったか?』
『・・・・・・・・・・・・』
だが、レムも返しと
光の宝石をシャドウに向けて発射した。
『!』
だが、シャドウは剣で全て防ぎ
前へ前へと近づいた。
『愚かが』
レムは、剣で防いだ宝石を手元に戻し、
まとめてシャドウの胴へとぶつける
『・・・・・・・・・』
大きな反動を受け、シャドウは後ろに下がる。
『はっ!!』
更にイズミは、錬金術を発動して、レムの床下を変形させ
レムを拘束した。
『ふん』
数秒で解除された。
『感謝する。夫人よ』
だが、シャドウはそれで十分だった。
『!』
シャドウは、レムの腕を握り、へし折った
『がっ!』
レムは小さな悲鳴を上げたが、シャドウは握るのをやめなかった。
『・・・レム、諦めろ。貴様は俺を殺せない』
『・・・・・・自惚れているのか?私の力がそこまで及ばないとでも?』
シャドウは、そのレムの言葉を聞いて
大きく息を吐いた。
『いや、』
『・・・・・・?』
『お前は、俺を殺す気など更々無い筈だ。』
そう、シャドウが言った瞬間
『!』
シャドウは自分の腹に剣を突き刺した。
〜世界樹の核〜
目の前の光景は何だ
もう一度問う、目の前の光景は何だ
エドワード・エルリックは
私の目の前で
みんなの目の前で
もうひとりのエドワードに
『兄さん・・・・・・?』
エドガーに、
刺殺されて
殺されて
死んだ
『兄さぁぁぁぁあああああん!!!!!!』
アルの鎧の内からなる声が、辺りに広がる。
その声と同時に
イアハートは、震えながら涙を流し
エドガーに向かって、訴える
『どうして・・・・・・?』
エドガーは、声が鳴る方に走り
剣を振り回した。
『あ』
イアハートの胴体は切り裂かれ
腹から臓物や中身が露出された
『あああ あ』
中身が
中身が出ちゃったよ
どうしよう、どうしよう
まともな思考が出来ない。
中身の中に、人になりかけた胎児があった。
汚れた私の体から生まれた、一つの生命があった。
『あああ・・・あああ・・・』
守らなきゃ
守らなきゃいけない
そう思って、胎児を拾おうと
近づくと
エドガーが、胎児を踏みつぶした
柔らかい風船を踏み潰す音がした。
変な液体が飛び散った。
『二人・・・三人・・・・・・』
そうつぶやいたエドガーを、私は睨みつけた。
もうすぐ死ぬであろう私は、彼を睨みつけた。
睨みつけた
『マル・・・・・・ス・・・・・・・・・!!!』
そこで私は
もう一度彼に切られて
プツン
っと、私の中が切れて
そこからイアハートは意識を失った。
その光景を見た、アドリビドム隊員は
その光景を見たことで
プツン
と、彼らの中の何かがキレた。
『ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!』
エドガーに第一に攻撃をしかけたのは、エミルだった。
更に続いてリタも呪文を唱えた。
『うわぁぁあああああああああああああああああああ!!!!!』
巨大な雷が、エドガーに襲いかかる。
カノンノ・スノウに襲いかかる。
だが
『あがっ!!!』
エミルは虚しく、剣に串刺しにされ
引き抜くように、剣を振り回され、投げられた。
『うわぁあああああああああ!!あああああああああああああああ!!!!!』
続いてパスカが、仇のように剣を振り回した。
さすがにこれには対処しきれないのか、エドガーはその剣の太刀を受け止めるのに苦労をしていた。
『よくもっ!よくもエドを!イアハートを!エミルを!!』
メルディは、しっちゃかめっちゃかに魔術を使い、
滅茶苦茶な方向に魔術が飛び、無差別に発射される噴水のようになっていた。
『・・・・・・フゥー!・・・・・・フゥー!!!』
この状況に混乱し、カタカタ震えながら彼らを見て自分を見て考え
白いカノンノを相手しているリッドは、怒りで表情が戻らなくなっていた。
『あっははは。面白い顔ー!』
だが、白いカノンノはそんな事はどうでも良い。
ただ、命令を楽しめればそれで良い。
誰が死のうが、母さえ巻き込まなければどうでも良いそうだ。
『・・・・・・うるせぇよ』
リッドは、ティトレイは、二人がかりで白いカノンノと向き合い
本気な殺気を纏い、確実に白いカノンノを殺しにかかっていた。
この状況、この切ない、悲しい状況を
カノンノは、何もできず
ただ、死体となったエドの手を
虚ろな目で握る事しか出来なかった。
『・・・・・・・・・・・・』
虚ろな目で、エドの手を握りながら
ブツブツと何かを呟いていた。
『・・・・・・・・・・・・っ!』
この状況を見て、自軍の不利を感じたのはアルただ一人だった。
全員が、感情に任せて攻撃をし続けている。
一番騒ぎたい、一番暴れたいのはアルの筈だが、
この状況が、自己防衛を働かせて
皮肉にも、彼が一番冷静だった
『・・・・・・・・・また・・・死なせて・・・・・・しまっ・・・』
エステルは、ブツブツと呟いている
ハロルドは、アルの傍で
『・・・・・・私たちがやるしか無いわね』
と、つぶやいた。
『・・・・・・はい。ハロルドさんが・・・冷静で良かった。』
『生憎、こんな性格なのよ。私は』
そう言って、アルとハロルドはまず
彼女、この中では一番幼い容姿をしている
大ボスである
カノンノ
『・・・・・・・・・』
『あなた、名前は?』
ハロルドがそう告げると、大ボスのカノンノは首をかしげた
『名乗る必要があるのか』
『万が一気分が良かったら墓標に名前を入れてあげるわ。だからとっとと言いなさい』
そう、ハロルドは告げると
大ボスのカノンノは、素直に告げた
『私の名前は・・・カノンノ。カノンノ・ゼロって読んだ方が、良いかもしれない』
『そう・・・じゃぁさよなら』
そう言って、ハロルドは魔術を唱えた
『ゴッドブレス!!!』
大きな重力が、ゼロを襲うはず
はずだった
『!』
ゼロは何も起こっていなかった。
せいぜい、長い髪の毛が揺れてるくらいしか、全く効果が無い
『ああ。さようなら』
ゼロがそう言った瞬間、木の幹が猛スピードが動き出し
ハロルドの手の平を貫いた
『・・・・・・・・・ぁっ!』
声にならない悲鳴が、ハロルドから発せられた。
『ハロルドさん!!』
これには、アルも予想外だった。
アルは、ゴッドブレスが発射される前に、壁を錬成していたのだ。
アルとハロルドを守るための壁。
だが、
予想以上に脆い作りとなった。
なった為、幹は壁を貫き、ハロルドの手の平を貫いたのだ。
『・・・・・・そんな・・・』
ここは、彼女の体の中
弱くすることも、強くすることも
彼女の、思い通りなんだ。
『次は脳みそ?結構簡単に事切れるよ』
『・・・・・・!!』
その軽い発言に、アルは憤怒しかけた。
筋肉の無いその体でも、腕を動かし
拳を握り締めた程だった。
『ほほう・・・私をまだ舐めたものね』
そう言って、もうひとつの手で魔術を発動させた瞬間、
木の幹が、瞬時にハロルドの首を貫き
『かっ』
ハロルドは、意識を失った。
『あ・・・・・・・・・』
その光景に、今度こそ
アルは、自我を失いそうになった。
『あああ・・・・・・!』
だが、
動く前に、木の幹に襲われ
鎧をいくつも貫通されては、幹は地面に戻り、
中が空洞だからこそ、抜けられない縛られ方をされ、
空洞の中は幹だらけとなった。
アルはもう、5センチも前に進めない状態へと束縛された
『アルフォンス・エルリック。お前は私たちにとっては厄介な存在だ。だからここでは大人しくしてもらおうか』
『ぐぅ・・・・・・ぐぅうううう!!!』
もし、ここでアルの体が自由に動かせるのならば、
目の前の少女を容赦なく殴れるだろう。
容赦なく攻撃できるだろう。
それほどの怒りが、アルの中で湧き出ていた。
兄を殺された恨み。
仲間を殺された恨みを受け、冷静という二文字は今、彼の中には存在しない。
だが、その恨みを受けてる少女は、
『・・・・・・・・・・・・』
最早、アルフォンスに興味を失くしていた。
何一つ、どうでも良さそうに
木の幹の隙間から、外の風景を眺めているだけだった。
〜ヴェラトローパ〜
自分で自分の腹を剣で貫いたシャドウを見て、レムは
顔を険しくさせ、シャドウを睨みつけた
『・・・・・・どういうつもりだ』
『どういうも何も、そのままの意味だ』
シャドウは、自分で貫いたその剣を、そのまま引き抜いた。
『お前は、俺を殺せない』
『・・・・・・・・・・・・』
レムは、再びシャドウに魔術を向けるために、手の平をシャドウの顔の前に向けた
『だが、殺そうが殺さまいが、今はどうでも良い。』
『・・・・・・・・・・・・』
この、謎の状況
理解不能なこの状況を見て、イズミは
未だ、その場から離れることができず、
ただ、その光景を眺めてる事しかできなかった。
自害
闇の精霊のその行動に、呆然となり頭の中が真っ白へと染まり、
動くことができなかったからだ。
動くことができたのは、シャドウの次の行動からだ。
『っ!』
シャドウは地面を蹴り、ヴェラトローパから去ろうと
後ろ向きに飛んでいったのだ。
『我から逃げる気か、闇の精霊』
『いや、もう戦う意味を失くしただけだ』
レムも、シャドウを追いかけるように飛んだ。
『・・・!』
イズミは、ヴェラトローパの中へと走り
『借りるよっ!』
小型飛行船を手にし、また外へと走った。
『イズミさん!?』
『アンタ達!誰ひとり死なせるんじゃないぞ!』
イズミは、小型飛行船を担ぎ、
滑空するように、空を飛んだ。
イズミから遠く離れたレムとシャドウは、
冷静なシャドウを前にして、冷静を装っているレムが討論をしていた。
『戦う意味とは何だ』
『最後に、お前と話がしたかっただけだ。』
『お話だと?くだらん。我との戦いの価値はそんなものだったのか』
『そうだ』
そう言って、シャドウの傷口は更に開いていく。
それを見たレムは、シャドウは傷を癒す気が無い事を理解した。
『それだけの価値は、俺にとっては尊大だ。』
『その尊大の為に、貴様は命を落とすというのか?』
『いや』
シャドウは、更に滑空速度を上げた。
『俺は、』
『ただで死ぬつもりは無い。』
シャドウの言葉に、レムは歯噛みした
『・・・・・・・・・っ!』
『俺が憎いか。』
『・・・・・・・・・』
『そうか。』
『だがな、』
『異界の地から来たものから俺は、約束したんだ。』
『今度こそ、この世界を守るとな』
レムは、その言葉を聞いて
目を見開かせ
滑空速度を上げた。
シャドウとレムとの距離が縮まっていく
『貴様っ・・・・・・!』
『レム』
シャドウの仮面が、パキリと音を鳴らし
割れた仮面の小さな欠片が一つ一つ剥がれ落ち
だんだん、顔の肌が露出しようとしている
『俺の知ってるお前が、まだこの世界にいて・・・良かったよ』
『自爆するつもりか・・・!シャドウッ!!!!!』
〜世界樹の核〜
リタとエミルは、魔術と剣術をうまく組み合わせ、
連結技を発動させながら、エドガーを殺しにかかっていた。
『ぐぉら!!とっとと受けやがれ!!』
剣を振り回しているだけのように見えるその太刀は、ただエドガーを落胆させるだけのものとなった。
全て、小枝のような剣で受け止められ
ダメージはほとんど受けられない。
それよりも、リタ・モルディオの魔術
あれが厄介だとエドガーは認識した。
『イラプション!!』
リタは、とにかくこの樹を焼き尽くす事と、エドガーをいかに効率的に殺すかを考えていた。
エミルが感情的に剣を振り回しているため、それが邪魔だが
激情する気持ちは、リタも同じだった。
イラつくしムカつくし、良い事なんてほとんど無かったチビだけど
それでも仲間だ。
仲間だったのだ。
殺された事で、何かが分からない寂しさと
膨大な憎悪と殺意が湧き出たのだ。
エドの為では無いかもしれない。
仲間の為ではないかもしれない。ただ、
自分のこの感情を失くしたいが為に、私は頭を働かせているだけかもしれない。
そうだとしても、
仲間が殺されたという証拠の死体を見るだけで、私は感じた。
”絶対にこいつらは許せない”という感情と
”憎むべき敵を殺したい”という感情。
『ああああああああああああああああああああ!!!』
魔術を唱え、エドガーにぶつける。
だが、エドガーはそれでさえも防いでしまう。
運良くあたっても、そいつは人間じゃない。
人間じゃないから、すぐに回復を行ってしまうのだ。
ディセンダーという生物は、益々腹を煮えくり返す化物だと実感させた。
『がぁあ!』
気がつけば、アキレス腱を切られていた。
エドガーの顔を伺うと、冷静で何も感じていないであろう顔をしていた。
剣の血の色を見ると、間違いなくリタのアキレス腱を切ったのはこいつだ
こいつのおかげで、私はもう、立つことさえ出来ないのだ。
『リタ!』
エミルが叫ぶと、エドガーは振り返り
その拍子に、エミルの腹を突き刺した
『ぁぎゃ・・・・・・!』
内蔵を貫かれた感触を味わったエミルは、この上ない気持ちの悪い痛みを味わった。
腹の中の内蔵が、燃えるように熱い
引き抜かれると、その衝撃でエミルは仰け反り、そのまま倒れてしまった。
そして、再びエドガーは剣を振り上げる
『やめてぇっ!!』
リタの叫びも虚しく、エドガーはトドメを刺した
その太刀は、エミルの胸を深く突き刺した
『うっ』という声と共に、エミルは動かなくなった。
引き抜かれて、また再び血が吹き出た。
もし、これで生きていたとしても、いずれ死ぬだろう。
エドガーは、もうこの二人に興味を失くしていた
『・・・・・・・・・』
それともう一人、パスカ・カノンノは
右手を切り落とされ、意識を失っている。
この状況を、何といっただろうか。
絶体絶命
そうだ、絶体絶命だと、リタは思った。
エドガーは、その言葉を知らないが
それを気に止める精神も、持ち合わせていなかった。
カノンノ・スノウは笑顔で剣を振り回す。
エドガーと比べると、攻撃が雑ではあるが、
力は、他の者と比べると段違いだ。
『この・・・野郎・・・!』
リッドの剣は、先ほど大きな音を立てて割れてしまった。
なぜ、こんな事になったのかは分からない
二度、攻撃を受けた瞬間
剣は、二度と使い物にならなくなってしまっていた。
なっていたのだ。
『リッド!』
ティトレイは、弓矢を放ち
スノウの関節を貫いた。
『およ?』
すると、一瞬だけだがスノウの膝は崩れた。
『こっからは俺に任せろ!早く代わりを探せ!』
そう言って、ティトレイは矢を乱発したのだ。
スノウの目、頭、腕、胸、脚など全てに当たった。
当たったはずだが、すぐに引き抜かれ
矢のような小さな傷口はすぐに癒されてしまった。
『ちょっとした足止めにはなるはずだ!』
ティトレイが時間を稼いでいるあいだに、リッドは武器を探した。
だが、死屍累々なこの空間で武器を探すのは容易いものの、
拾いに行く時間が無かった。
エドガーが、全員を蹴散らしてこちらを見つめているのだ。
『・・・・・・・・・っ!』
絶体絶命。
そんな言葉が、リッドの頭に流れた
『畜生・・・・・・』
絶望
この状況は、絶体絶命なんて言葉で片付けられるものではない。
いくつもの種類の絶望が、リッドの前にふさがった。
死
いくつもの多くの言葉が、リッドの頭に流れる。
『あああああああああああああああ!!』
せめて、最後に攻撃を与えようと
そこらじゅうに落ちている死んだ木の幹を広い
エドガーの頭に振り下ろした
『!』
多少の目くらましにはなっただろう。
手で目を覆うように顔を隠したエドガーを尻目に、リッドは駆け寄り
エミルの剣を引き抜いた
『うらぁ!!』
そして振り回す。
エドガーの防御は、ギリギリ間に合ったものの、
太刀筋の軌道は、エドガーの予想外の場所に位置し
『っ!』
エドガーの脚を切り落とす所まで行った。
『・・・っし!』
更に、一太刀
エドガーの真上に振り下ろしたが
今度は、受け止められてしまった。
『・・・っ!』
ダメージを与えることが不可能だと直感したリッドは、
次に白いカノンノの方に目を向けた。
エドガーの方は、脚の回復に時間がかかるようだ。
同時進行で、殺していくしか無い。
そう、頭を回転させた。
『ティトレイ!』
リッドは、ティトレイの名前を叫びながら剣を振り上げた。
『あ』
白いカノンノの関節にはまだ、矢が突き刺さっている。
その隙に、リッドは剣を振り回す。
脚を一刀両断し、歩けるどころか立てない体にした。
『あーあ』
白いカノンノは、そうつぶやいたあと
次に振り下ろされる太刀を手で受け止めた
『!?』
リッドは剣を引き抜こうとするが、抜けない
ピクリとも動かない。
そのあいだに、凄い速さで白いカノンノの脚は回復していった。
『ぐぅ!』
そして、リッドは後ろに退くと、何かにつまずいて転んだ。
『ぐはぁ!』
よく見ると、それは
血まみれのティトレイだった。
『・・・・・・っ!』
体温から感じるあたり、ほとんど死んでいるように見える。
時間が経てば、確実に死亡するだろう。
見上げると、そこには
剣を持ち上げてるエドガーの姿があった
『うっ』
リッドの腹には、剣が突き刺さり
下のティトレイと共に串刺しの状態となった。
『後一人』
そう言って、後ろに居るメルディに目を向けた。
彼女は、腹に風穴を開けて眠っている。
死んでいるかどうかは、興味がなかった。
リザとイリアは、衝撃を受けて
壁に打ち付けられて血を吐いて気絶している。
生きていようが死んでいようが、どうせ世界樹の養分となるのだ。
戦闘不能にできれば、どうでも良い。
後一人、もうひとりは
精神的に戦闘不能だが、できるだけ徹底的にすべきだとエドガーは理解し
エドの死体の手を握っているカノンノに目を向け、太刀を向けた。
カノンノは、その太刀さえも気づいていない。
最後の一人、こいつを殺したら
また、この世界樹に侵入してくる奴らを殺す
今日は、その繰り返しだと聞かされた。
『ネガティブゲイト!』
その魔術が唱えられると、重力の塊に腕と剣を持っていかれる。
バキバキに潰され、どこかおかしな所へと飛ばされる。
その魔術を唱えたのは、今やボロボロになっているゲーデだった。
空っぽのゲーデだった
『もう俺は、お前に興味はない。』
そう言った瞬間、精一杯の憎悪の表情を表し
そして、膝から崩れた。
無駄なことを。そうエドガーは思い、
腕を再生させて、再びカノンノを殺しかけようとした。
『レイ!』
瞬間、声が響いた。
その声と共に、光の波動に押され、エドガーは飛ばされ壁にぶつかった。
内から骨が折れ、内蔵が三つほど潰される。
回復にはしばし時間がかかりそうだ。
と思ったとき、視力を集中させ、エドガーを飛ばした奴を見つめた。
金髪の青年。以前、盗賊のリーダーをしていた
ダオス
『人殺しは、もうこれ以上させないよ』
そう言って、また再び術を唱えた
『潰れろ』
エドガーの重力が、益々増えていく。
骨が折れる音と、内蔵が潰れる音が部屋に響いた。
『ヤメロー!』
白いカノンノは、ダオスに近づいた。
そして、斬りにかかろうと剣を振り上げた瞬間、
ダオスは、白いカノンノに向かっても術を唱えた。
『!』
白いカノンノの時間の流れが遅くなったように、
地につくまでの時間が、とてつもなく遅くなった。
『疾風!』
そして、後ろで声が響いた。
女の子の声だ。
疾風の風に乗った矢が、白いカノンノを貫いた
『・・・・・・・・・っ!』
『龍炎閃!』
『星覇!』
『ワイルドギース!』
そして、無数の矢が白いカノンノに突き刺さる
『がっ・・・・・・は!』
人の形が分からないほど突き刺さった瞬間、白いカノンノは苦痛の顔をした。
『連牙飛翔鮫!』
更に、短剣での細かい攻撃に恐ろしい程の太刀数を受け、
白いカノンノは大きなダメージを負った。
『ナース』
次に唱えたダオスの術は、この場に居る者全員に回復を施した。
『・・・・・・っ』
その回復により、息を吹き返したもの、
傷が癒えていくが、目を覚まさないもの、
咳き込むものが現れた。
『面倒臭い・・・・・・』
カノンノ・ゼロは、苦い顔でそうつぶやいた。
『・・・さて?』
ダオスは、対照的に笑顔になっている
『この状況、どちらが有利だとか、でないとか、そういうことは分からないのかい?』
『そんな事に、何の意味がある?』
ゼロは、ダオスを睨みつけるようにそう言った。
『君がどんな潜在能力を持っているかは理解することはできないが、決して殺しても死なない相手では無いのだろう?』
『世界樹だって生き物だ。そういうことだろうな』
そう言って、ゼロは手をダオスに向けた。
瞬間
『!?』
前方と後方の両方から太い樹が現れ、ダオスを挟み撃ちにした。
『ダオス!』
『大丈夫です』
だが、ダオスは何事もなかったかのように、その樹から離れ
ゼロの方へと目を向けた。
『なぜ、そこまでして”永遠に生きよう”と思うのですか?』
『探し物をしているからだ』
『一体、何を探しているのですか?』
『それを探しているのだ』
そう言って、再びゼロは手を向けた。
次は、鋭利な幹がダオスを貫いた
『っ!』
そして、ダオスは感じた
その幹から、自分の力を吸われていると
『ダオス!』
『インディグネイション!!』
巨大な雷が、世界樹に落ちようとした。
だが、樹を燃やすことまではいかなく
運が良かったのか、ゼロに直撃したが
ゼロは、少し軽傷を負っただけだった。
それも、すぐ回復してしまった。
『・・・・・・・・・』
その光景は、見るものをただ絶望に叩き落とすだけにしか過ぎなかった。
『こんなのと・・・相手にするってのかよ・・・!』
カイウスが、弱音を吐いた。
誰だって、弱音は吐きたいだろう、誰もカイウスに反論しなかった。
こんなのに勝てるのか?
俺たちはただ、殺されていくしかできないのか?
そう思っているあいだに、ダオスは開放されていた。
『んぐっ・・・!』
ダオスでさえ、このざまだ
俺たちに・・・できるのか?
そう思った瞬間、ダオスの額が幹に貫かれた。
『・・・・・・・・・・・・』
ダオスは、苦痛で顔を歪ませながら呟いた
『世界の創造主は、物語の著者の如く絶対か・・・・・・!』
全く簡単に、貫かれた。
死んでいるのだろうか、目が虚ろとなり
肌の赤みが消え、
倒れた。
『っ・・・・・・!』
俺たちの勝機はあるのか
いや、
無い
『面倒な事は嫌いだ。本当に嫌いだ』
そう、ゼロはつぶやいた
ダオスのナースの力により、死にかけていたエステルは息を吹き返した。
視界に色が戻り、あたりを見渡した。
そこは、死んでいるのはエドだけでなく、
ほとんどの者の死屍累々があった。
『・・・・・・・・・っ!』
思わず、嘔吐したくなったが、あえて我慢した。
気づかれたらまた殺されるだろう。
そう危機感を持っていたからだ。
自分が情けなくて、泣きたくなった。
だが、我慢した。
目の前でボロボロになっているエドガーとカノンノ・スノウも
徐々に体が回復しつつある。
殺されるのも時間の問題だ。
どうすることも出来ない。
私だけでは、どうすることも出来ない。
『・・・・・・・・・・・・』
そう、泣き言を心の中でつぶやいている時に、
エミルの息遣いが聞こえた。
『・・・・・・エス・・・テル・・・・・・』
目は、いつもの赤い目
ラタトスクの目だった。
『・・・・・・・・・・・・』
『起きてるだろ・・・・・・聞いてくれ・・・・・・』
そうラタトスクが言ったとき、私はラタトスクの目を見た。
『仮面でごまかしも効かないだろう・・・。だからよ・・・俺のわがまま、ちょっと聞いてくれないか・・・?』
そのエミルの言葉を聞いたとき
何か、どこか
心の胸騒ぎ、大きな決断を迫られた気がした。
いや、させられる。
最も、自分の中で大きな決断を
『俺の体で・・・・・・賢者の石を作ってくれないか・・・・・・』
『・・・・・・!』
何を・・・・・・考えているの?
『何を・・・・・・考えているのです?』
『きっと・・・俺はこの時の為に生まれてきた。』
ラタトスクは、笑顔で答えた。
『俺がここまで生きてきたのも・・・きっと・・・この世界を壊すためだったんだ・・・。』
『魔物の王が・・・精霊が・・・ここまで来るためだったんだ。』
『だから・・・』
ラタトスクが語っている途中、エステルは叫んだ
『それ以上言わないでください!』
『このまま犬死するより・・・俺は・・・一矢報いたい・・・』
『死にません・・・死にませんから・・・』
エステルは、頭を抱えて泣き出した。
殺せ
俺を殺せと言っているような決断
そんな大きな決断、私が下していいものじゃない。
『マルタさんは・・・どうするんですか』
『・・・・・・』
『おいてけぼりですか』
ラタトスクは、笑顔で答えた。
『きっと、俺が居なくても・・・あいつは心から笑える事が出来るさ。』
『・・・・・・・・・っ!私には・・・・・・できません・・・・・・』
『やれ』
急に、ラタトスクは乱暴な口調になった
『やるんだ、お前に選択の余地は無い』
その眼力は、力強くて
眼力だけで、人を殺せそうな勢いをしていた
そして、ナイフを取り出して
エステルの前につきだした
〜空〜
仮面が剥がれていく
シャドウの顔が剥がれていく。
それを阻止しようと、レムはシャドウを追いかける。
刻一刻も、シャドウの自爆の時限の残り時間は減り続けている。
『させん・・・そんな事はさせんぞシャドウ!』
レムは焦っていた。
シャドウの魂胆に気づき
世界樹が壊れるのを恐れているからか。
いや、レムは世界樹が壊れてもどうでも良かった。
消えてしまったら、せいせいする
ならば、何故シャドウの自爆を恐れているのか
自分でも、分からない。分からないが
『お前は、それで良い』
シャドウがつぶやく。
『お前は、優しい心を持ったままでいい。』
『汚れた振りをしなくても良い。』
『何度も繰り返された世界を永遠に長らえるより、いつか終わる世界の中で前へ前へと進めば良い』
シャドウが、何を言っているのか
レムには理解ができなかった。
『レイ!』
レムが術を唱えると、光がシャドウを包む
だが、シャドウはそれを軽く打ち払った
その軽く払われた姿を見て、レムは顔を歪めた
『・・・・・・あの洞窟の中で、それほどの力を・・・!』
『ああ。無意味な百万年だったよ』
そして、仮面が剥がれ
顔が露になった
『・・・・・・っ!』
その顔は、いつぶりだろうか。
何万年前に見ただろうか。
どれほど久しいだろうか。
あの時の顔と、ほとんど変わっていなかった
『俺も、何も変わっていない』
シャドウの体は
光に包まれた
〜世界樹の核〜
絶望を前にした人間は、悲しいくらいに無力である。
エドガーとスノウは、もう既に回復を終え
万全な体調で目の前に立っている。
対して、人間であるカイウス、チェルシー、ルーティ
この三人は、ほとんど満身創痍だった。
深い傷を二桁に及ぶであろう、傷を負って
今や、動くことも出来ない。
『ふん』
ゼロは鼻を鳴らして呆れ返った。
くだらない
ただ、立ち向かって襲ってくる馬鹿に過ぎない。
そう言って、深い溜息を吐いた
『・・・・・・・・・・・・・・・』
アルは、ただそれを
じっと、動かずに
見ることしかできなかった。
守ることができなかった。
『あぁ・・・・・・』
動けなかった。
守ることができなかった。
だから
だからだ
皆、死んでしまった
『あぁぁ・・・・・・!あぁ・・・!』
アルは、行き場の無い怒りを抑えながら、ただゼロを睨みつけた
ゼロは、こちらに気付いてすらない。
アルは、手を動かそうとして
幹を力で少しずつ千切り、手を合わせようとした。
『くくっ・・・くっ・・・!』
手が触れた瞬間、パチッと音がなった。
『!』
錬金術が発動し、ゼロへと発射された。
発射されたのは、自分の体の破片だった。
『ぐっ』
ゼロは、苦虫を噛んだ表情をし、その破片を幹で防いだ。
破片が、幹にめり込み刺さる
『・・・その技だけは、どうしても慣れることが出来ない。』
そう言って、アルの身体を更に締め付けた。
『くくっ・・・!』
ミシミシと、アルの身体が次第に音を立てて軋む
『邪魔だ、面倒だ。』
そう言って、アルの身体を締め付けながら、睨みつけた。
瞬間、巨大な光に包まれた
それは、世界樹の外からだった
『!?』
その巨大な光と共に
巨大な轟音が全員に襲いかかった。
巨大な熱気と爆風は、脚をついて立っていたエドガーとスノウはモロに喰らい
ゼロも、巨大なダメージを負うほどの攻撃を受けた
『・・・・・・っ!!』
手脚が焼ける
魔力が焼ける
世界樹が焼ける
轟音、爆風、閃光
その攻撃は、地に倒れていた者達には
ほとんど喰らわなかった。
風にさらわれ、壁に打ち付けられることくらいだった
『がぁ・・・・・・!はぁ・・・・・・!!はぁ・・・・・・!!』
エドガーとスノウ、ほとんどの大ダメージ
そのダメージと共に、また光を受けた。
太陽の光だ。
世界樹は、およそ半分の体積を爆発によって失った。
この爆発はなんだ?
一体、誰の所為によるものだ?
世界樹が爆破される事によって生じた外を見て、ゼロは確認した
空には、レムが飛んでいた
〜空〜
シャドウが爆発した
シャドウは、跡形もなく消え去った。
死んだ
死んだのだ。
『・・・・・・・・・・・・』
私は、何のためにここまで生きてきたのだろうか。
最初は、シャドウをかばうためだった。
シャドウの居場所を感づかれない為に、洞窟に結界を貼り
誰の目にも映らないようにして
私は、いつか生きて生き続けて、
またいつか、シャドウと一緒に花火が見れるように
最初は、そんな願いだった。
そして今は
『・・・・・・・・・・・・』
今は
いや、今も
変わらない
ずっと、そんな願いだった筈だ。
いつからだ、そんな願いを忘れて
ただ、生きようとしようとしたのは
『あ・・・・・・ああ・・・・・・・・・』
涙が流れた。
私の生きる意味が無くなった。
ずっと、泣いたことなんて無かったのに
あの時から、シャドウと別れた時から泣いたことなんて無かったのに
『ああ・・・・・・ああああああああ』
―――また来年、この花火が見れると良いな。―――
『あああああああ・・・ああああああ!』
―――また、綺麗なお花見ようね―――
『あああああああああ!あああああああああ!!』
―――……優しい………声だね……―――
『ああああ・・・・・・ああ・・・・・・』
思い出した。
どうして、私がこんなに恐れていたのかが。
この時が怖かったのだ。
こうして、後悔と絶望に堕ちていくのが怖かったんだ。
大切なものが殺されるのが怖かったんだ。
怖かったんだ。
私は、結局怖かっただけなんだ。
怖いなんて当然だ。だって彼は
私と彼で、一つの精霊だった。
太陽の精霊だった。
だけど、片方が消えたら、もうそれは太陽じゃない。
私じゃない。
自分の身体の半分を失うのと同じなのだ。
半分、死ぬことと同じなのだ。
だから、私は怖かった
怖かったんだ。
『この世界に殺された人間は、何度もそう思って死んでいったんだよ』
後ろで、錬金術師の声がした。
イズミ・カーティスト
彼女も以前、子供を失い
二度殺したことがある。
『それも、半身をもぎ取られるような思いを、何度も行ってきたんだ。』
『アンタは、それを怖がって逃げてきた。』
小型の飛行船を停滞させたまま、ただの人間のように
ただの人間の母のように、レムに声をかけていた。
『アンタは、ただの人間以下だった。』
『人間はね、何度も苦しい思いをして、怖い思いから立ち向かって、成長していくんだ。』
レムは、聞いているのかいないのか、分からない程反応をしていない。
ただ、虚ろな目で泣きながら俯いてるだけだった。
『アンタは、今日初めて”人間”になれたんだよ』
イズミは、錬金術を発動し
飛行船の床を拡張して
レムを攻撃した。
〜世界樹の核〜
これほどのダメージを追うのは、予想外だった。
まさか、大精霊の自爆をモロに喰らうことになるとは
こうなれば、回復に膨大な時間がかかる。
三時間か、五時間か
はたまた、それ以上だろうか。
だが、これはマズイ。
世界樹がこれほど攻撃されれば、自動回復も疎かになってしまう。
世界樹は大分弱ってしまっているようだ。ならば
『ここに居る全員、”本当に殺すしかない”か・・・』
面倒くさそうに、ゼロは舌打ちをした
『エドガー、スノウ、動けますか?』
『・・・・・・・・・・・・』
『・・・・・・・・・・・・』
予想以上にボロボロのふたりは、
自動回復も疎かのせいか、血と肉が通常の人間よりも少ない。
少ないまま、立っていた。
『だけどね、ここからは簡単だ。奴らは壁に集まっているからね』
そう言って、ゼロは壁に指を向けた
『さぁ、いけ、行かなければ殺されるから・・・割と本当に』
エドガーとスノウは歩き始める。
飛ばされた奴らの元へと、歩き始める。
『・・・・・・!』
エステルとエミルは、その光景を見て顔を歪めた。
殺される。今度こそ本当に殺される
だけど、体は動かなかった。
『・・・・・・エステル・・・最後通告だ』
エミルは、殺意の篭った目でエステルを睨みつける
『・・・・・・・・・っ!』
だが、エステルの手は震えていた。
動けない、動けないのだ
このままでは殺されるのに。
エミルの望んでいることをしなければ、エミルを殺さなければ
生き残れないのに。
どうしても、動けなかった。
『!』
その時、スノウの頭にナイフが刺さった。
『・・・・・・!』
エドガーが振り向くと、そこには
『よぉ、無様野郎共』
スパーダが居た。
そして、すぐさまスノウに近寄り
スノウの首を狩った
『ああああああああああああああああああああ!!!』
スノウの悲鳴が、喉を切り裂いたにも関わらず鮮明に響いた。
『首を掻っ切っても死なねえとはな・・・!!』
そう言って、次に首を地に落とし
踏み潰した
何度も何度も何度も踏み潰した
後ろで、エドガーがスパーダを切りかかろうとした
スパーダは、間髪入れずにエドガーの胴体を切り落とした。
『しばらく眠ってろエロガキ』
そう言って、徐々に再生していくスノウの首を踏み潰し続けながら
次に、スノウの身体を切り裂き始めた。
『おい!どうだ!!ああ!?友達を殺した報復の味はよぉ!!おい!!』
ぶちゅっ、ぶちゃっ、グチュ
首から、口を動かしたであろう行為で
息が漏れて血が吹き出る音が不気味に響いた。
『・・・・・・・・・・・・』
その時、偶然目覚めたイリアは
その時のスパーダを見て
恐怖と悲しみを感じて、その場から動けなかった
脳みそと骨を砕き続ける音
まったくもって不愉快な音だが
その音がするたびに、スパーダは笑顔になっていた。
ようやく、ようやく大切な友人を殺した女を殺しにかかれたからだ。
この時の為に、何度も人を殺すことの躊躇を無くして来た。
森の中で、魔物を狩り続け、
人型の魔物を主に狩り続けて
冷徹な心を、人を殺しても何も思わない心を
手に入れたのだ、自由に行き来できるようになったのだ。
『ははは!っは!ははははははは!!!!』
スパーダは笑う
笑いながら、スノウを殺す
『はは!・・・・・・は』
そして、そこで腹に衝撃を喰らう。
幹が、スパーダの腹を貫いているのだ。
『・・・・・・・・・あ』
そして、地から足が離れたスパーダの下
ぐちゃぐちゃになったスノウの頭は、徐々に形を取り戻し
回復をしていた。
『随分、卑怯なことをするな君は』
ゼロが、スパーダに手を掲げてそう言った。
『この時の為に俺は待ち伏せをしていた。タイミングを待ってた。それの何が悪い』
スパーダはそう言って、幹を切り落とした。
そして再び、剣をスノウに向けた
『俺は、お前らを絶対に許すつもりは無えよ、殺す。膨大に殺し続けてやる』
『ははは。無理だ』
そう返事された瞬間、再びスパーダはスノウの首を踏んだ。
『そうか。じゃぁ俺が死ぬまでお前らを確実に苦しめるまではしてやるよぉおおお!!!』
スパーダは、剣をゼロに向けて
斬る。斬る。切り続ける。
だが、ゼロには当たるものの
傷がつかない、傷がつかない、傷がつかない
『鬱陶しい』
ゼロは、衝撃波を出してスパーダを吹き飛ばした。
『がっ!』
大きく飛んだスパーダは、壁に打ち付けられ、血を吐いた
『この世界を作ったのは私だ。剣の素材も世界樹の中から。星晶の素材が含まれているものが主だろう』
ゼロは腕を組んで、スパーダを睨みつけた
『星晶は私の養分だ。それを食らってもダメージは愚か、身体の回復まで行うだろう』
『・・・・・・・・・』
スパーダは、何も言わなかった。
『もう良いだろう。私もここまで攻撃を喰らう事になるとは思わなかった。もう十分じゃないか』
『・・・・・・・・・・・・』
『今回は賞賛に値する。暇はしなかったものの、面倒を感じさせるほどだったが、以前よりは確実に進化をしていたよ。』
『・・・・・・・・・・・・』
『だから・・・これからはゆっくり休め』
そう言って、ゼロは再びスパーダに手を向ける。
だが、空の向こうからもう一つ、何かが向けられた。
『・・・・・・・・・何だ』
それは、大きな船だった
〜バンエルティア号〜
『見えましたよ!!世界樹!今からあれに突撃します!!』
大きな揺れと共に、チャットはヤケクソ気味にそう叫んだ。
『ええ!やってしまいなさい!!あなたのおじいさんの遺産は無駄にはならなかった!!』
アンジュは、少しばかり興奮して叫んだ。
『この遺産は、この世界を終わらせる為の武器となります!!さぁ、もっとスピードを上げなさいチャット!』
『ぐぅぅ・・・おおおおおおおおおおおお!!こんにゃろぉおおおおおおおおお!!!』
チャットの悲痛な叫びと共に、バンエルティア号は速度を上げた。
世界樹へと、一直線に向けて
〜世界樹の核〜
『!!』
こちらに向かってくる
確実に、こちらに向かってくる
『行けぇぇええええええええええええええ!!!』
チャットとアンジュは叫び、猛烈に突進をした。
『・・・・・・っ』
バンエルティア号
この船は、船にも関わらず飛行が可能だ。
『ぐぅっ!』
そして、巨大な物体は
大きな轟音と共に世界樹に突っ込んだ
『・・・・・・・・・』
スパーダは、その久しいバンエルティア号を見て
少しだけ、微笑んだ。
『かっけぇなぁ・・・アドリビドム』
その巨大な物体の突進により、ゼロはかなりの衝撃を受け
轟音はまた大きく響き
世界樹の上半分は、完全に消滅しつつあった。
『・・・・・・・・・くそが!』
ゼロは、巨大な衝撃を受け
苛立ちを隠せないまま、バンエルティア号に衝撃波を送った。
衝撃はバンエルティア号を貫通し
そのまま、崩壊を始めた。
〜バンエルティア号〜
『うわぁあああ!!バンエルティア号が崩壊するぅうううう!!』
チャットは、本気で泣き始め、叫びながら走り回った
『わぁぁぁあああん!!だから嫌だったんだ!!こうなることが確実なんだから!あああああん!アイフリード爺さんの遺産がぁぁあああ!!』
『そうね、確実ね』
アンジュは、そこでニヤリと笑った。
『だから、こうなることも予想できた』
そう言って、次に赤いボタンに手を伸ばした
『あっアンジュさん!?それは・・・それはわかってますよね!?ねぇ!?』
赤いボタンに手を伸ばすアンジュを見て、チャットは慌てふためいた
『ええ。自爆ボタンね』
『そんなもの押したら・・・あっ!!分かってたなぁ!こうなる事を計画して突進させたんだなぁ!!』
『元々無茶な計画なんだから、当然よ。それに自爆してもこの部屋は被害を受けないじゃない』
『そうですけどぉ・・・・・・』
チャットは下唇を噛みながら抗議しようとしたが
アンジュの鋭い視線と
今、この状況を考えて
大きい雫の涙をポロポロと流しながら
震える声で、ヤケクソを解放させて返答した。
『ええぃ・・・もう良いや!!アイフリード爺さん!ごめんなさい!!世界の再生の為に・・・散ってください!!!!』
アンジュは、微笑んで大きく頷いた
そして、赤いボタンを力強く、指を乗せた
『・・・・・・さようなら、バンエルティア号。さようなら・・・・・・アドリビドム』
そして、赤いボタンを力強く、押した
巨大な轟音
巨大な閃光
巨大な爆風
また、この世界樹に爆発が起こった。
立ち上がっていたエドガーは、その爆風をモロに受け
スパーダは、もう既に地について壁に背を乗せて居る状態で
アルは、まだ幹にしがみつけられて動けない状態だった。
『・・・・・・!!・・・・・・・・・!!!!!』
声にならない悲鳴が、聞こえた気がした。
爆風が止むと、世界樹は所々丸焦げになっていた。
『・・・・・・・・・』
乗っていたアンジュとチャットとすずの事は不安にならなかった。
自爆ならば、ちゃんと運転室は核シェルターになっていると分かっていたからだ。
爆風を受けていたエドガーは、バラバラになっていた。
上半身が黒焦げになっていた。
回復をしていない。
いや、微力になっただけだろうか。
どちらにせよ、しばらく動きそうにないだろう。
エドとカノンノは、壁にもたれながらも
カノンノはエドの手をちゃんと握りしめていた。
『・・・・・・ぐが・・・がはっ』
ゼロが血を吐いた。
相当なダメージを負っている。
『・・・あ』
その時、アルを縛り付けていた幹が消えていた。
爆風と共に、炭となったからか
立ち上がった瞬間、炭が身体の中から大量に流れ出たが
そんな事を気にせず、アルは錬金術を発動させた
『うらぁあああああああ!!』
ほとんど炭となった世界樹の床は、
最も硬質な物体を作るのに難しくない。
硬い物質がゼロに襲いかかり、ゼロは飛ばされた。
『がっ・・・・・・!』
『やった・・・!!』
攻撃ができる。
ゼロに攻撃が効くとわかった瞬間、再びアルは錬金術を使った。
『うらららららあああ!!!』
また、炭を使って物体を作り出し
ゼロに攻撃を移す、移す
『・・・・・・・・・っ!!!!!』
錬金術は、ゼロにとっては異端な術だ
予想外であろう魔術だ。
普通は、魔術は星晶の力で、星晶の力を含んだ水や木の実、主にオレンジを食する事で発動する事が可能だ。
だが、これは星晶など要らない。異端な魔術
ゼロにとっては、予想も回避も出来ない厄介な術だ。
『あああああああああ!!』
ゼロは、アルに近づき
アルの両腕をつかみ、
そして引きちぎった
『・・・・・・!』
『これで術は使えまい』
そう言って、ゼロは引きちぎった腕を放り投げ
アルを蹴っ飛ばした
『ああっ・・・・・・!』
あまりに無力になったアルは、何も言えずに
床に伏すしかできなかった。
『お前は本当に厄介な奴・・・消さねばならぬ奴だ。』
『・・・・・・・・・っ!』
アルは、本当は好きでこの世界に来たわけではない。
本当は、あの子
スノウという子に会ってから、この世界に連れてこられた。
『じゃぁ・・・どうして僕たちはここに居るんですか?』
『・・・・・・・・・・・・知るか』
ゼロは、そう言って
再び、アルに手を向けた
『ああああ!!ああ!ああああああああああああああああ!!!』
その時、悲鳴が響いた。
悲痛の叫び、後悔の叫び
その叫びの主は、エステルだった。
悲鳴の元を見れば、エステルは泣いていた。
泣きながら、黒い石を握りしめていた。
『エステル・・・・・・さん・・・・・・?』
そしてエステルは手を合わせ、錬金術を発動させた。
『・・・・・・!』
傷だらけだった仲間の身体は、代償無しに回復され
瀕死だったものは、命に別状は無くなった
『賢者の・・・・・・石・・・・・・』
アルは、そうつぶやいて
このやるせ無さに、落胆した
『・・・・・・』
エステルは、潰された胎児を見た。
これはもう、再生できないが
生き返らせることは、不可能に近いが
だけど、イアハートだけでも
彼女だけでも、生きながらえさせようと
くっつけて錬金術を発動したが
彼女が生き返ることは、無かった
『・・・・・・・・・っうっ・・・』
自分の無力さに、腹が立った。
巨大な力を手に入れても、仲間を守れない。
助けることもできない。
私は
私は
何を望んで、この選択を選んだのだろう。
『力・・・・・・魂の力・・・』
ゼロは、エステルの方へと歩き進んだ。
エステルの石を採るつもりだろう。
それを察していない、まだ気づいていないエステルは
ただ呆然と、イアハートの死体を見ていた。
そしてゼロが、エステルの持っている石を腕ごと切り落とそうと
『石を・・・渡せ』
手を掲げて音を発した瞬間、
『っ!!!!』
エステルは、思い切りゼロを殴りつけた
『がっ・・・!!』
これまでにない思い攻撃
錬金術の万物である賢者の石は、ゼロにとっての弱点でもあった。
『野郎!!』
だが、ゼロの波動により、
エステルは壁に叩きつけられた。
『あ・・・・・・』
力の差を知った。
直感的に、この石を持っても、私は勝てないと知った。
それを直感的に感じたのは、目の前の衝撃波を見た瞬間だった。
巨大な衝撃波はエステルに突進し、
エステルは意識を失った。
失った手の力から、石が転げ落ちた。
転げ回った先は、エドの死体の近くだった。
カノンノは、エドの手を握り続けており
その賢者の石に微塵も気づいていない。
『はぁー・・・はぁー・・・』
ゼロは、その石を求めて歩き続ける。
歩き、歩き
エドと、エドの死体へと段々と近づいてく
そこで、ゼロは気づく
『・・・・・・・・・・・・?』
カノンノが、何かブツブツと唱え
そのつぶやきの意味が、何かわかった。
それは、呪文を唱えているのだった。
終えると、カノンノの手が光る、
エドのドクメントが、カノンノの脳に全て知識として蓄えられる。
『・・・・・・・・・エド』
カノンノは、初めて言葉らしい言葉を吐いた。
『きっと、エドはこの世界を壊すためにここに来たんだね。』
『私たちを守るために、ここに来たんだね』
そして、手を合わせ
カノンノはドクメントを理解し
分解し
『錬金術は、犠牲が必要で』
『魔術は万能じゃなくて』
『どちらか一つだけじゃダメでも』
再構築を行った。
カノンノの手は発光し、
『二つの組み合わされば、きっと不可能も可能にできるんだよ。』
カノンノの身体は、薄く消え始めていた
『だって、錬金術と魔術も人の為にあるから・・・・・・』
カノンノは錬金術を発動し
エドの中の”真理”へと向かった
〜真理の扉〜
エドは、最悪の場所へと居た。
地獄といえば、そこは伝わるかもしれない。
多くの絶望の魂
黒い何か
そして多数感じる視線
『止めろ・・・・・・止めろ・・・・・・』
エドは、もう既に精神が崩壊していた。
その魂のありかは、どこかは来てすぐにわかった。
”世界樹の中”に、俺はいるんだ。
俺は、世界樹に食われたんだと
このまま消えていく魂に、絶望し落胆した。
もう、エドは動かない。
このまま、動こうとしない。
流されるまま、消えるのを待つだけだ。
罪悪感は無かった。
それが、エドの諦めなのか、世界樹の意思かは分からなかったが
一緒に居たアルに対しての謝罪さえ、もう今は薄れ始めている。
『もう・・・・・・どうでも良い・・・・・・』
冷たい、いや何も感じない
そんな物体が、体の隅々まで這い回っている。
もう何も感じない。
不愉快も何も無い。
さっさと消えろ。消えてしまえ
エドはそう感じるようになり、ただ漂っている。
漂っている時に、暖かい手の感触を感じた。
『・・・・・・・・・・・・・・』
温かかった。
その手を、握った事があった。
誰だ?
そう思って、エドは目を向ける。
目の前には、ここで出会うはずのない
ここに居るはずのない。彼女が居た。
『カノンノ・・・・・・』
『エド。』
どうして、ここに居るんだ?
そんな事を思っても、口に出せなかった。
カノンノは、微笑みはにかんで
『やっと、二人きりになれたね』
と、呟いた。
『エド、これから私は告白するから聞いてね。』
『私、エドに初めて出会った時・・・ちょっとだけ興味があったの。』
『そして、エドが不思議な力を使えると知ったとき、それは期待の興味かと思ったけど、』
『ちょっとだけ、違うと思ったのかな。』
『ずっと一緒に、一緒な部屋に過ごしていくうちに』
『エドの事、思っていたよりずっと大切になっていた。』
『ずっと、これから一緒に居ると思っていた。』
『でも、ダメだよね。エドはいつか帰らなきゃいけない。』
『だから、ずっと一緒に居たかったの。』
『ギルドを出て行くと聞いた時、どうしても止めなきゃと思ったの。』
『だけど、また出会えた。』
『また、エドと触れることができた。』
カノンノは、はにかんだまま涙を流し
エドと距離を近づいた。
『でもねエド。また、これからサヨナラしなくちゃいけないから』
『ずっと言えなかったこと、今ここで言うね』
カノンノの涙は雫となり、この無重力空間の中では球体となり
この空間を飾り付ける空間となっていた。
そしてカノンノは、エドにもっと近づいて
最初で最後の、口づけをした。
『・・・・・・・・・・・・』
エドは、その口づけは
優しくて、温かいものだと感じた。
『・・・・・・・・・・・・!!』
自我を取り戻して、気恥かしさが現れたのは、そこから時間がかからなかった。
エドの顔は真っ赤になりながらも、平静を全力で装っていた。
口づけが終わり、離れると
カノンノは、そんなエドの様子を見てクスリと笑った。
『私はね、そんなエドが好きです。ずっと、ずっと好きでした。』
カノンノがそう告げた瞬間、エドは
いつの間にか扉の外に居た。
白い空間の中、一人で立っていた。
『カノンノっ!?』
後ろを振り向くと、
扉は閉まりかけていた
『カノンノっ・・・・・・!』
『エド』
扉の隙間で、カノンノは精一杯の笑顔を見せた
『バイバイ』
それが、最後に見たカノンノだった。
瞬間、扉は大きな音を立てて閉まった。
〜世界樹の核〜
エドが目覚めた時、そこは
太陽の光と空だった。
辺りを見渡すと、世界樹はボロボロになっていた。
かろうじて生きている仲間たち、ボロボロのゼロ
エドが目を覚ましたことで、意識を取り戻した仲間たちは驚きを隠せない顔色をしていた。
『エド・・・・・・!?』
『・・・・・・・・・・・・』
アルは、生き返った兄を見て、複雑な気持ちになった。
『カノンノ・・・・・・』
アルは知っているのだ。カノンノは
エドが死んだ瞬間に、自身を犠牲にして魂を引き戻そうと選択したことを。
そして、カノンノは身体ごと世界樹に取り込まれた事を。
『・・・・・・・・・馬鹿野郎・・・』
エドは、歯ぎしりをたて
拳を思い切り握り締め
〈私はね、そんなエドが好きです。ずっと、ずっと好きでした〉
カノンノの言葉を、思い出した。
『馬鹿野郎ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!』
エドは、両手を合わせ
錬金術を発動させ、突起物を発射した。
『・・・・・・・・・・・・っ!!』
ゼロは、今まで以上に飛ばされた。
『うらぁぁあああああああああああああ!!!!』
エドは、落ちていた賢者の石、エミルの賢者の石を拾い
ゼロを思い切り殴りつけた。
『がっ・・・・・・がぁっ・・・・・・!!!』
錬金術の万物であるそれは
ゼロを殺すことに最適な凶器となっていた。
『あああああああああああああ!!!!』
賢者の石で錬金術を発動し、巨大なトゲがゼロに襲いかかる。
『ぶばぁッ・・・!』
トゲは、ゼロの右半分の頭を直撃し、頭の半分は消滅した。
その攻撃の一つ一つ、エドは
カノンノの力である魔術の力を無意識に使い
錬金術と魔術との合わせ技を食らわせていた。
『兄さんの手が・・・・・・光っている・・・・・・』
その反応からか、エドの手はピンク色の光を発光させていた。
『押してる・・・・・・押してるぞ・・・・・・』
エドがゼロを殴るたび、世界樹が鳴いている。
樹の絶叫なのか、黒い光と共に、叫びのような轟音が鳴り響いた。
〜ウリズン帝国〜
『世界樹が・・・・・鳴いている・・・・・・』
ヴェイグは、異音のする世界樹の方へと目を向けた。
『!!・・・・・・ディセンダーの動きが・・・・・・』
ディセンダーは、身体に妙な音を発せながら血を吹き出していた。
その光景からして、奴らが”瀕死”であることを理解した。
『エドワード・エルリック・・・・・・お前は・・・・・・』
ヴェイグは、世界樹に目を向けて
鳴いている世界樹を、見つめて、
『お前は・・・・・・戦っているのだな。』
そう、呟いた。
そして、となりに居たカロルが叫んだ。
『エドォ―――!!行けぇ!!やれ!!やってしまえ―――――!!!』
〜ガルバンゾ国入口〜
ディセンダーの動きがおかしくなり始める。
『・・・・・・・・・ディセンダーが・・・』
アスベルとソフィは、国を守りながら
その光景を見て、理解した。
『エド・・・。戦っている』
世界樹が鳴いているその姿を見て、アスベルも理解した。
『ああ。エドは今、戦っているんだ。』
そう、世界樹の発する光を見ながら答えた。
〜ライマ国 城下〜
『エド・・・・・・!』
このディセンダーの状態を見て、ルークは察した
『・・・ふん。あのチビ・・・やってくれたようだな』
アッシュも、痙攣しているディセンダーを切り倒しながらそう言った。
『まさか、本当に世界を壊すとは、な』
『ええ。我がライマ国軍として鼻が高い事例ですね。』
そう、アッシュとジェイドが微笑みながら世界樹を見つめ
ルークは、世界樹に向かって叫んでいた。
『エド!やっちまえ!!こんなちっぽけな世界、ぶっ壊してやれぇえええええええええ!!!』
〜霊峰アブソール〜
『鋼の・・・やってくれたな』
マスタングが見つめた先には、鳴いた世界樹の姿があった。
『ああ・・・。まさかあのチビが・・・な』
その姿を見て、セルシウスは
『やってやれ。エドワード』
と、呟いた。
その口元を見たマスタングは、微笑み
世界樹の方へと目を向ける
『行け・・・!鋼の・・・!!』
〜オーリス村〜
『世界樹が鳴いている・・・・・・』
ロイドが、世界樹を見つめてそう言っていた。
その光景を見ていたジーニアスは、その光を見て質問をした。
『これから、何が起こるの?』
そう質問を聞いたリフィルは、笑顔で答えた。
『これから、新しい世界が生まれるのよ。』
そして、プレセアも
ジーニアスと顔を合わせて、笑顔で答えた。
『私たちの・・・・・・望んだ世界へ・・・・・・』
〜空〜
世界樹が鳴いている。
こんな事は、今までなかった。
『やってくれてるね・・・エド・・・・・・』
イズミは、その光景を見て不敵に微笑んだ。
『光の精霊とやら、ちゃんと見ておきな』
イズミに言われたままに、レムは世界樹の中を見た。
そこは、ただの人間
確実にただの人間が、
世界そのものであるカノンノ・ゼロを殴り続け、押していた。
『あれが、私たち人間の姿だよ』
人間は、これほどまでに強い
そんな事、考えてもなかった。
ここまで強いなんて、想像さえしてなかった。
『・・・・・・私なんかが、本当に人間になっても良いのだろうか・・・・・・』
『卑屈になるな』
イズミはそう言って、レムの頭をこづいた
『・・・・・・・・・っ』
イズミは、まっすぐエドを見て、真っ直ぐな心で語った。
『人間がそいつを仲間って認めたら、もうそれで同等だよ』
〜世界樹の核〜
『行けぇぇええええ!!エド!!』
リッドが叫ぶ
『そいつに俺たちの思いを、思い知らせてやれ!!』
スパーダが叫ぶ
『行けぇ!エド!!そんな奴とっとと潰しちゃいなさい!!』
イリアが叫ぶ
『エドワード君・・・・・・!』
リザが願う
『エド!!行けぇえええ!!』
ティトレイが叫ぶ
『エドワードさん!!お願いします・・・・・・!』
パスカが叫ぶ
『エドー!!私たちの世界、皆で作るんな――!』
メルディが叫ぶ
『師匠・・・・・・!』
エステルが、呻き声と共に言葉を発する
『エド!!やっちまえー!!』
カイウスが叫ぶ
『エドさん!!』
チェルシーが叫ぶ
『チビ助ぇ――――!!』
ルーシィが叫ぶ。
『・・・・・・私たちの力、思い知らせてやりなさい。エドワード!!!!』
リタが叫ぶ。
その奥で、ダオスやエステルの力により回復されたゲーデとラザリスは
その声、応援
エドの戦を見て、殴りを見て
そして、この世界を見て
理解した、そして満足した。
『・・・・・・・・・エド』
理解した。理解したのだ。
『俺は・・・・・・』
俺が、本当に欲しかったもの
『本当は、仲間を・・・・・・』
満たしたかった、本当のものを
『心から信じ合える、通じある・・・仲間が欲しかったんだ。』
今、俺は
俺たちの心は
たった一つの心として、繋がっていた。
”エドワード・エルリック。勝って世界を壊してくれ”
『エドワード・エルリック・・・・・・』
ゲーデは、胸の奥から温かいものを感じて
涙を流した。
『ありがとう・・・・・・』
たった今、ゲーデの心は満たされた。
ラザリスは、涙を流したゲーデを見て
何も言わずに、手を握った。
きっと、自分も同じ気持ちだったから。
私も、きっと・・・・・・
『勝てっ・・・・・・エドワード!』
満身創痍
にも関わらず、身体は自己回復を行っているが。
それよりも、エドが発動している殴りと錬金魔術の攻撃の方が速く
回復は間に合っていない。
徐々に、確実にゼロは”負け”へと向かっている。
『・・・・・・・・・っ!』
顔は修復されたが、身体の方に膨大な攻撃のダメージを蓄積されていた。
『・・・・・・ぐぅっ!』
今は最早、立つことさえままならなくなり、
膝を地につかせてしまった。
『立てよド三流!!!』
エドは、手の甲をゼロに見せ
激昂の声で、エドの思い、怒り、悲しみ
それらを全て含めた怒涛を込めて、
この世界の人間の代表として、思い切り叫んだ。
『てめぇの世界と俺たち人類との、格の違いって奴を見せてやる!!!!!!』
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