魔法先生ネギま 〜疾風物語〜 第十五話
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…とうとう来たか。まさか、世界樹の大発光に合わせて襲撃に来るとはな…。ゆっくり楽しむ暇も無い

警戒のために麻帆良全域に張っていた防御結界と感知結界が破壊された事を感じ、立ち上がる

装備を整え、クラマを召喚する

 

「『((召喚|エウオケム・テー)) ((疾風の従者|ミニストラエ・ハヤテ)) 波風クラマ』!!」

 

呪文詠唱が終わると同時に、俺の目の前に幾何学的な魔方陣が出現する。そして魔方陣が輝くとクラマが中空から現れた

…なぜか、その手に饅頭を持って

 

「…お前、また買い食いしてたな?」

 

ジト眼で睨みつけると、クラマは無言で項垂れた

 

「だって、腹が減ったんじゃもの…」

 

項垂れたまま、言い訳を並べるクラマ。その目には少し涙が溜まっている

 

…まあ、いいや。今はそんな事をしてる場合じゃない

 

「クラマ。魔法使い共が攻めてきた。迎撃するぞ」

「ふむ、とうとうやって来おったか。『((出でよ|アデアット))』」

 

クラマもアーティファクトを装備して、迎撃体制を整える

 

「ここじゃ、迎撃は不可能だ。世界樹前の広場に行くぞ」

 

俺達がいるのは、前話で出てきた自分達の家。此処では狭すぎるし、一斉に魔法を放たれたら逃げ場が無い

そう考えて、世界樹の前にある広場へ向かう

楠根さんと久慈奈を護衛している剣士達に気付かれないように、気配を消して音を立てずに疾走する

 

 

 

―――俺達を見つめる、一対の視線に気付かずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界樹前広場に着地したと同時に、周囲から様々な属性の『((魔法の射手|サギタ・マギカ))』の雨が降って来た

それ以外の魔力の発動も感じたが、今はこれらを耐え切るのが優先だ。そう思い、考えを頭の片隅に押しやる

クラマを抱き寄せて、『((最硬絶対防御|さいこうぜったいぼうぎょ))・((守鶴|しゅかく))の盾』を四方に展開する

 

「…意外と魔力が強いな。だが、この盾を破るほどの力は無いか。『((流砂瀑流|りゅうさばくりゅう))』」

 

守鶴の盾で全ての魔法の射手を受け切った後に、盾を構成していた砂で敵を押し流す

大多数は逃したが、十数人は砂に溺れたようだ

 

「砂に沈んだ奴はお前に任せる。出来れば殺せ」

 

そうクラマに命じ、俺は逃した奴らの殲滅に移る

残りは百人強。消して相手できない数ではないが、些か面倒だ

しかし、数十人が砂に沈んだ奴らを救助しに向かっている為、何割かは減った

 

「臆するな!例えかの『((漆黒の焔神|フラム・オブ・ノワール))』が相手だろうと、この人数に敵う筈が無い!」

 

魔法使いの内の一人が勇敢な叫び声を挙げた

その声に刺激されたのか幾人かが、装備した長剣や双剣に各々の得意な属性魔法を纏わせて斬りかかって来た

残った魔法使い達は後方から遠距離攻撃魔法で援護をしてくる

…厄介だな。個々の近接格闘能力は高くは無いものの、足りない物を連携で補っている

しかも、遠距離魔法もそいつらを縫う様に的確に俺だけに当てに来ている

そろそろ反撃をしないと、このままズルズルと引き込まれていってしまうな

 

「『神鳴流奥義・((雷鳴剣|らいめいけん))』!!」

 

雷を纏った草薙で俺に向かって来る一人に袈裟懸けに斬りかかる

その瞬間、轟音が鳴り響いたかと思うと格闘戦を挑んできた魔法使い達は消し炭と化した

たった一回の剣戟で数人がまとめて消し飛ばされた事に脅威を感じたのか、援護をしていた魔法使い達に動揺が走る

 

「怯むな!後もう少し耐え忍げば、我々は英雄になれるのだぞ!!」

 

またも先ほど声を挙げた魔法使いから、叱咤の声が飛ぶ

 

…どういうことだ?耐え忍べば我々は英雄になる…。何かしらの魔法の発動を待っているのか?先ほど感知した魔力と関係があるのか?

 

思考を巡らす暇無く爆焔と吹雪、雷撃が俺に襲い掛かる

それらをかわして、チャクラと気によって強化した脚で蹴りを放ち、数人をまとめて吹き飛ばす

内臓が破裂した手応え…いや脚応えがあった。数分で死に至るだろう

目標を切り替え、俺の後ろを取っていた集団を狙う

 

 

 

 

それが間違いだった

先ほど吹き飛ばした魔法使い達が、最後の足掻きとばかりに魔法の射手を放った。完全に標的を切り替えた俺はそれに気付かず、直撃する―――

 

 

 

 

―――筈だった

 

「えっ?」

「はや、てさん。ぶじです、か?」

 

ワカラナイ、ワカラナイ、ワカラナイ。なぜこの子がここにいる?なぜこの子が紅く染まっている?なぜ口から紅いモノを吐いている?

なぜ―――久慈奈が死に掛けている?

 

「ッ!!!」

 

そのことに思い立った瞬間、俺の頭は沸騰した。

 

 

 

そして意識を、理性を―――手放した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!!!!!」

「くっ!な、何じゃ!?」

 

砂に沈んだ魔法使いと、それを助けに来た魔法使い共を殺し終えたと同時に、突然筆舌に尽くしがたい絶叫が広場に響いた

絶叫の発信源を見てみると、血塗れの久慈奈とそれを抱きかかえる疾風が目に入った

 

「なっ!?」

 

一瞬我が目を疑ったが、これが間違いない現実であると認識すると共に、疾風の傍らに降り立つ

 

「疾風!今ならまだ間に合うのじゃ!久慈奈は死んではいないぞ!!」

 

しかしその言葉は届かなかったのか、魔法の射手を撃ったと思われる者どもに向かい、身一つで殺し尽くした

拳で頭を砕き、脚で踏み潰し、爪で切り裂き、歯で噛み砕いた

およそ武器無しで行える殺害方法を一通り試した疾風は、まるで獣が次なる獲物に喰らいつくかのように残った魔法使い達に襲い掛かった

 

「く、くらま…さん?はやてさん、は、だいじょうぶでし、たか…?」

「ああ。しかしお前、なんて無茶を!!」

「ふふふ。好きなヒトを助けるのに、無茶も何も、ありませんよ…」

 

自身が死に掛けているのにも拘らず、疾風の身を案じる。その健気な好意にワシは何も言えなかった

なにせ、自分もそうだから

 

「死なせん!死なせんぞ!その言葉は、自分で伝えるんじゃ!ワシは嫌じゃからな!何故、恋敵の告白の言葉を。ワシが伝えねばならぬ!!」

 

涙を流しながら、久慈奈に治癒忍術をかける

しかし、体の傷は治ったものの、血が圧倒的に足りない

このままでは失血死も時間の問題だ

それを回避する方法が一つだけ、ある

 

「…久慈奈。このままではお主は間違いなく、死ぬ」

「そう、でしょうね…。もう、からだが、うごきません」

 

虚ろな目をした久慈奈が答える。この子が死ぬなど、思いたくは無い

 

「死を回避する方法が一つだけある。じゃが、それをやってしまうと、確実にお主は…ヒトの身では、いられない」

「ヒトじゃなく、なる?どういうことですか?」

「久慈奈に、ワシのチャクラ。それに気と妖力を分け与えるのじゃ。しかし、僅かでもわしの妖力が身体に侵入すれば、アヤカシと化してしまうじゃろう」

 

気とチャクラは生命エネルギー。それだけを分けられれば、問題は無い

しかしワシは容量が多過ぎるが故に、細かいコントロールは不得手

よって渡すチャクラと気に妖力が混じらない保障は、何処にも無い

 

「………ずるい、ですね、くらまさんは。そんなこといわれても、あやかしになっても、わたしはまだ、いきたい。疾風さんと、共に歩んでいきたい!」

「そうか。では、少し苦いかもしれないが、我慢してくれ」

 

そう告げて、自身の手首を掻っ切る。そして溢れ出た血を、久慈奈に飲ませる

久慈奈が、ゆっくりと、ワシの血を嚥下する。一回喉が鳴るごとに、血色が良くなっていく

目に生気が宿った時には、久慈奈の頭には獣の耳が。そして着物には収まり切らない尻尾が生えていた

 

「よしもういいぞ。良かったのう、死ななくて」

「はい、ありがとうございます。クラマさん。でも、疾風さんは渡しませんからね?」

 

望むところじゃ。と返しながら疾風に目を向ける

未だ疾風は殺戮を繰り返しており、残っている魔法使いは数人になっていた

久慈奈は気丈にも倒れないようにしているが、生々しい血の海とそこに浮かぶ肉片には怯えた表情を見せていた

 

「疾風、久慈奈は生きているぞ!だから、戻って来い。久慈奈が、怖がっておる」

 

その言葉に反応したのか、疾風はこちらを向く

そして久慈奈を見たかと思うと、その瞳から危険色が薄れていった

 

「ああ、よかっ―――」

 

よかった。そう言おうとしたのだろう疾風の後頭部に又もや魔法の射手が突き刺さった

常時展開している障壁は、疾風が理性を手放していた影響か、ほぼ意味を無さず貫通していた

しかし、多少の威力減衰はしたのだろう。後頭部に当たったものの、血などは流しておらず、希薄だが意識もあった

 

「「ッ!!!」」

「何とか間に合ったか。世界樹の大発光に」

 

そう言葉を紡ぐのは先ほどの光の矢を放った張本人。恐らくは魔法使い達のリーダー格であろう男だった

そして、世界樹の大発光が始まった。広場全体に強大な魔力が満ち満ちる

 

「これで、長距離強制転移魔法が発動できる」

 

言い切った瞬間、ワシが召喚された時とは段違いの大きさの魔方陣が展開した

世界樹そのものを覆ってしまうほどの巨大な魔方陣だ

 

「ぐっ、長距離、強制転移魔法だ、と?」

 

何とか言葉を紡いだ疾風に、魔法使いは侮蔑の視線を向け、嘲笑った

 

「ああそうだ。転移先は『((魔法世界|ムンドゥクス・マギクス))』。メガロメセンブリアだ。転移対象はこの魔方陣内の全員。後十数秒もすれば、転移が始まるのさ」

「そんな大それた魔法を使う魔力が、何処に…ッ!」

「気が付いた様だな。そうさ、私達はこの魔法を使用する魔力を、世界樹の大発光で補っているんだよ」

 

メガロメセンブリア。確か魔法世界の一大都市だったはず。そんな所に送られたら―!

 

「既に転移先には、魔法使いの一個大隊が待ち構えている。伝説は、もう終わる!」

 

魔法使いの狂気じみた笑い声が、そこかしこに木霊する

もう、手は無いのか?

 

「『((天照|アマテラス))』…!」

 

生き残った魔法使い達全員に、二つ名の由来たる黒炎が燃え盛る

しかしそれでも、魔方陣は消えない

 

「クラマ、久慈奈。ちょっと手荒いけど、許してくれな。…ゴメン」

「どういうことじゃ。疾風!」

「疾風さんも一緒に!」

 

最後のゴメンが、なぜか不吉で。なぜか嫌な予感がして

ワシと久慈奈が、懸命に疾風に手を伸ばす

 

しかし疾風はその手を掴もうとはしなかった。眼に輪のような模様が浮かんでいる

あれは、((輪廻眼|りんねがん))!

 

「『((神羅天征|しんらてんせい))』!!!」

 

何か得体の知れない存在に引っ張られたかのように、ワシと久慈奈は世界樹から。疾風から引き離されて行く

 

「「ハヤテ(さん)ーーーーッ!!!!」」

 

そして魔方陣から脱出した直後に、魔方陣は大きく輝いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時を期に伝説と呼ばれた賞金首『漆黒の焔神』は表舞台から姿を消した

故に、公式記録にはこう記される事となる

 

 

 

 

 

『漆黒の焔神』極東の地。日本の麻帆良にて討伐―――と

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今回の!疾風物語三つの出来事は!?

ひとぉつ!麻帆良とうとう襲撃さる!!

ふたぁつ!久慈奈、好意ゆえ身代わりとなり人外へ!!

みぃっつ!疾風、死亡!?

 

疾風はどうなってしまったのか?残された二人の運命や如何に!?

 

それでは、次回の投稿をお楽しみに

説明
第十五話です。お楽しみいただければ幸いです
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コメント
akgkaさん誤字報告ありがとうございます。なんでこんなに間違ってるのに気付かなかったんだろうか俺。…あまり期待しないでもらえると嬉しいです(ハードル上がるから)。(ディアーリーズ)
誤字報告 〜世界中の大発光に合わせて〜 所々世界中の大発光になってますよw これは死亡フラグ!?次回に期待(akgka)
言い訳になるかもしれませんが、現時点で主人公は広域殲滅魔法は覚えていません。精々が『紅き焔』か『白き雷』くらいなんですよ。影分身に関しては、今回ここで主人公が転移しないと物語が続かないため、あえて出しませんでした。(ディアーリーズ)
NARUTOって言うから、忍術とか使うと思ったんですが、主人公もクラマもこの戦いで、魔法も忍術も使わないんですねぇ。影分身も広範囲魔法も使わないんですねぇ。キャラを使い切れていない感じです。この戦いの勝敗に疑問です。(ユウジ)
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