武装神姫「tw×in」 第二十一話 |
ミルートの話を思い返してみる。
宗哉達に手伝ってもらったおかげで、こうしてツインワンが出来たりと、データも集まってボクの研究がはかどっているんだけど……さすがに皆のバトルのクセとかが尽きてきて、最近は収集が滞ってたりするんだよね。
そこで、新たな協力者を募ろうと思ったんだ。
で、出来れば強者か、宗哉達の持ってない神姫を連れた人が良いわけで、こうした大会を開催させたって訳。
本当なら優勝商品の武装か防具が必要なんだけど、武器は使わない人はいらないし、防具も神姫正式の物はそれ以外の神姫にはあまり不要じゃん? だから老若男女神姫マスター問わずに欲しがる、神姫ポイントを高額にしたんだ。
それで、宗哉達も正体して色んな神姫とバトルしてもらえば、練習にもなるし、また新たなデータが収集出来るだろう、と思っていたんだけどね。まさかもう知っていたなんて、話が早いよ。
容赦せず優勝しちゃっても構わないし、まぁ楽しんでやってね。当日は会えないかもだけど、何処かでは見てるからさ。
それを聞いた主月は、
上木と戦えるというなら、参加したい……だが、明日は用事があってダメだ。
オイ上木、絶対に負けるんじゃないぞ。お前を倒すのは、このオレなんだからな。
と言っていて、ミルートは笑いを堪えていたな。
主月が帰った後、
ぷっ……あっはっはっ! スゴイね! あんな典型的ライバル性格が現実にいるなんて!
……とまぁ、そういう会話があった翌日。つまり、ミルート主催の大会の開催日となった。
オレ、真南、東太の3人で神姫センターへと向かい、入り口で天野、木部と合流。
大会へエントリーを済ませ、開始までの時間を潰すため。大会の開かれる一階から一つ上がった二階にある神姫と神姫マスター達の憩いの場所へと移動した。
大会があるからか、人が多く賑わっていたが、運良く一つのテーブルを取ることが出来た。
「ここに居る人達も大会に出るのかな?」
「さぁね、でも、同じ考えの人はいると思うわ」
「多分、何人かはいる」
「じゃあその人達が俺達のライバルになるのか」
真南、天野、木部、東太と周りを見ながら口々に言う。
テーブルの上には、皆の神姫が計、九人。
「あれ? 木部のもう一人はどうしたの?」
木部の前には氷李しかいない。一昨日はチューンアップの終わった氷李の姉上という神姫が帰って来たと言っていたけど。
「そうよ、昨日見られると思ったら、明日までのお楽しみってアタシ達にも見せてくれなかったじゃない」
「ん、ではそろそろ、お披露目」
言うなり木部は、肩掛け鞄をテーブルの上に置き、ジッパーを開く。氷李はジッパーの開いた鞄の横に出迎えるように立った。
その中から、一人の神姫が姿を表した。
真っ直ぐに切り揃えられた白い髪に青い瞳をした、飛鳥型の神姫だ。
「((空影|くえい))、皆はワタシの友達。挨拶して」
「はい、マスター」
空影と呼ばれた飛鳥型は、オレ達を見回した後、その場で正座し、
「お初お目にかかります。わたし、飛鳥型の空影といいます。先日チューンアップを終えてマスターの下へ帰って来ました。皆様、どうぞよろしくお願い致します」
手を揃えて一礼をした。礼儀正しいな。
「うわぁ?、かわいい?」
「へぇ、結って神姫には必ず漢字で名前付けるのね」
「というか、どちらも和風な神姫なんだな」
真南、天野、東太と感想を述べている間に、空影は氷李を除く八人と挨拶し、オレ達に挨拶した。
「四人の神姫のマスターですか、凄いお方ですね」
やっぱり、オレはそういう感想だね。
「それにしても、ずいぶん賑やかだよね。ここだけ」
一つのテーブルに5人の神姫マスターと、十人の神姫。単純に1人で二人の神姫を持っている計算になる。内四人はオレの神姫だけど。
「フッフッフッ……」
不意に、東太が含みのある笑い声を出した。
「どうしたの東太?」
「ついにおかしくなったんじゃない?」
「いやついにってなんだよ!?」
天野の言葉にツッコミが入る。
「マスター、バカなことを言ってる暇がありましたら早く出して差し上げなさい。彼女だって待ちぼうけは良く思いませんわ」
「うぅ……まさかカレンに言われるとは……」
彼女と言っていたけど、もしかして。
「まぁいいか。実はな、皆に会わせたい神姫がいるんだ」
東太は鞄の中に手を入れ、一人の神姫を取り出した。
サイドの長いショートカットの桃色の髪に、赤い瞳。その神姫はまるで軍隊の整列のように、腰の後ろで腕を組み、足を肩幅に拡げて立った状態で東太に運ばれていた。
「えぇー!? 東太も複数持ちだったの!?」
幼なじみであるオレと真南も初めて知った。
「ふっ」
東太の手から飛び降り、ムルメルティア型の神姫は先ほどと同じ立ち状態でオレ達を見た。
「初めまして、私はムルメルティア型のヒリン。火渡東太の神姫です。以後よろしく」
こちらもこちらで礼儀正しく挨拶した。
「ちょっと東太! いつの間にムルメルティア型なんて見つけたの!?」
「実はな、一昨日なんだ。ヒリンはカレンが…」
「マスター?」
カレンの声が妙に聞こえた。東太を下から見上げている。
「な、何でしょう……?」
「フフフッ……?」
疑問符の中に、言うな、という感情を込めたように妖しげな笑みを浮かべた。
「は、はい……」
理解した東太は、こくりと頷いた。
「と、とりあえず、ヒリンとは一昨日会ったんだ。な? ヒリン」
「? 確かにそうだが、なぜそこを誤魔化すんだマスター? ちゃんと話せば…」
「ヒリン?」
カレンは続いてヒリンにあの笑みを送った。
「うっ……」
「私の言いたいこと、お分かりになりますよね?」
「サ、サーイェッサー!」
ビシッ! と敬礼で答えた。
『何があったんだろう……』
多分、東太達を除いたオレ達全員そう思っただろう。
「それにしても凄い偶然ね。この二人が揃うって」
ムルメルティア型と飛鳥型。二人は同時期、同じ会社フロントラインで創られ、ムルメルティア型は戦車型、飛鳥型は戦闘機型と似たタイプ等、共通項の多い神姫達だ。
「お初お目にかかります。飛鳥型の空影といいます」
「初めまして、ムルメルティア型のヒリンです」
二人互いの自己紹介が終わった時、
「お喋りもしたいけど、少し作戦会議をしてもいい?」
木部がそう言って首を傾げた。
「そうね、東太もヒリンで出るんでしょ? だったら皆少し作戦立てといた方がいいわね」
天野が賛同し、オレ達も賛成。お喋りしていた神姫達は各々のマスターの周りに集まっての作戦会議が開始された。
普通の声量だが、周りの騒がしさとお互いに集中して話しているので他4人の声は聞こえてこない。
「さて、前にも話したけど今回の大会は練習も兼ねてコナユキで出るつもりだけど、皆いいかな?」
「もちろんです。コナユキ、頑張って下さいね」
「コナユキさん、頑張って下さい!」
「負けても悔しがらないようにね」
「任せて下さいなのです! 必ずや、勝利してみせますのです!」
三人の承諾も得て、今回の大会はコナユキで出ることになった。
「オレが出番の時は、三人は真南か誰かと一緒にいてね、どうあっても、誰か1人はバトルしてない人が出る筈だから」
大会で使う筐体は計2つ、仮にオレ達が全員立ったとしても4人。誰かは残る計算だ。
「あの、マスター」
「何? エンル」
「コナユキの武装はどうするんですか?」
「うん、そこなんだよね」
コナユキは唯一、正式武装が揃っていない。今までも三人のや共通武装を着けている。
もちろん今回もそうだけど、大会が始まれば変更は許されない。結構重要だ。
コナユキの長所を伸ばしつつ、短所を補えるように……
「皆も、考えてくれないかな?」
「はい、お手伝いします」
「もっちろんです!」
四人と考えることにした。
「時にマスター」
不意にスレイニが呼ぶ。
「何かな?」
「皆さんに言わなくていいんですか? この大会の主催者のこと」
「うん、敢えて言わないでおこうと思ってね」
「何故です?」
「ミルートはオレ達のデータは集めたって言ってたけど、コナユキとカナユメ、空影とヒリンは初見だから、新しいデータが取れるだろうからね」
「あー、確かに」
まぁ遅かれ速かれ知るだろうけど。
四人と話し合いながら、コナユキの武装を決めていき、完璧に決まった時、開始時間が迫ってきたので、オレ達は一階に降りて行った。
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