デート・ア・ライブ 漆黒と邪霊のファンタジア |
この世界には精霊に対して設立された部隊がある。
AST。((対精霊部隊|アンチ・スピリット・チーム))と呼ばれる精霊を殺すために開発された鎧を纏い空を駆ける人間以上怪物未満の((魔術師|ウィザード))達。
なぜ、魔術師と呼ばれているか……、それは彼らが纏うユニットに組み込まれた((顕現装置|リアライザ))という偶然と言う奇跡により人類が手に入れた技術。
コンピューター上での演算結果を、物理法則を歪めて現実世界に再現することが出来る。
それは制限があるもの思い描いた想像を実現させる破格の能力を持ち、唯一精霊に対抗できる手段でもある。
ーーーそう、精霊には、
「バカな……」
天宮市の上空で上司の指示により急速で場に到達したAST部隊の一人が呟いた。
彼らが見たのは黒き閃光と紅き閃光が生み出す光華、精霊に対して有効手段である((顕現装置|リアライザ))だが明らかに精霊と比べスペックが場違いな邪霊達には、全く手出しが出来ない。
だからこそ、驚愕する。
ーーー史上最悪の邪霊と同等に戦っている奴は誰だと、
体を覆い隠す様に漆黒のコートを被りその容姿は分からないが背的には青年と呼べる程で、その手に持つ身の丈を超す漆黒の大剣で、邪霊の撃ちだす零弾を全て空に向けて弾いている。
彼らの戦いは、まるで嵐のようだ。
互いの獲物が唸りを上げ、高速で動き回りその波動で周囲の物は抉るように消し飛んでいく。
「はははははははっ!!!」
「うおおおおおっ!!!」
町全体に響くほどの大音量な喜劇の哄笑と稲妻のような高い咆哮がぶつかる。
その衝撃波で、周囲の建物が軽々しく吹き飛んだ。
人知を超えた闘争ーーー彼らの頭にはそれが思い浮かんだ。
「あの、隊長……」
「ぐっ…!」
ASTの隊長ーー日下部燎子一尉の頬に冷や汗が流れる。
本来であるなら邪霊に対する措置は出来るだけ町から遠ざけ、なんとしても破壊行動を止めることだ。
撃退等、生温いことは言ってられない。自分たちに出来ることは、なんとしてもあの最悪の災害をこの町から遠ざけなければならないこのままだと地下に避難した一般人に被害が及ぶ可能性があるからだ。
「とにかく、あの邪霊を天宮市から引き離すわよ!」
「「「り、了解!」」」
ASTの部隊は顔に恐怖で震えながら自分たちが纏う装置に命令をした。
背に装着されたスラスターパーツは、主人の命令に従い推進剤を噴出しながら一気に二つの存在が生み出した人工的な嵐を目掛けて飛翔する。
「とにかく、意識をこっちに向けるわよ!!接近戦は避けることっ!」
隊長の声に各自装備したレーザーガンやミサイル等が一斉に放たれた。
「ーーーはぁ!?」
邪霊より先に反応したのは、黒コートの誰かだ。
微かに誰が近づいてきている意識は感じていたが、眼前の敵の処理に相手をしている暇がなかった。
黒コートは驚愕の声を漏らして、邪霊から離れ向けられたレーザーを躱してミサイルを斬り落す。
「なにすんだよ!!」
「ーーーー」
声からして恐らく青年ぐらいだと推測できる。が、ASTは驚愕した。
精霊でも、邪霊でもなく。まるで自分たちと変わらない様に人間の様に口を開いたからだ。
「ーーーあなた、誰?」
白髪をした人形のような容姿をした少女が、あまりに現実離れしたことに驚きながら口を開いた。
黒コートは、それに頭を何回か掻いた。
「人間ーーと言っても信じないだろうから、罪遺物だ。」
「罪遺物……」
「−−−危ない!」
聞いたことのない名前に微かに眉を細めた瞬間、黒コートは少女の目の前に電光石火の如く移動して大剣を振り下ろす。
同時に、爆発でも起きたかと思うほどの衝撃が走る。
「退いて、おにーさん、そいつ殺せない」
「落ち着けよ!」
邪霊は見る者を生命本能が恐怖する鎌と黒コートの大剣が火花を散らす。
だが、最も恐ろしいのは一見すれば、可愛らしい少女の烈火を形容させる怒り狂った表情だ。
「邪魔、邪魔、邪魔だよ。お兄ちゃんと私は遊んでいたのにーーー死んでしまえ」
周囲に禍々しき霊弾が再度展開される。
目標は間違いなく、空に浮かんでいるAST達だ。
「ーーーこのバカ野郎!」
霊弾の操作に一瞬だけ邪霊の意識が黒コートから外れる。
その刹那の間に、黒コートは渾身の力を込め、邪霊の獲物を弾き飛ばした。
完全に意識は別の方向へと飛んでいき、展開されていた霊弾も消滅する。
「あっ………」
彼方に飛んでいく自分のお気に入りの玩具を邪霊は届かぬ距離を分かっていても手を伸ばした。
ーーーパンっ!!
同時に乾いた音が空に響いた。
「感情のまま、人を殺すな」
後ろで守られた少女は、呆然と黒コートの背中を見詰めた。
全くと、紅夜は心の中で呟く。
いきなり襲ってきた軍隊?のような奴らに遊びを邪魔された十禍は一気に激昂して、容赦ない攻撃を加えようとしたのだ。
「痛い………痛いよ。」
頬を抑えながら、十禍は数歩の距離を下がった。
微かに心が痛むが、紅夜はそれを逃がすまいと彼女の手を握った。ーーーが、
「−−−−−」
空けた。
握ろうとした手は、まるで水でも握ったように握った感官はあるが、形状を掴めていない。
邪霊は涙目になりながら、空を忌々しく見上げた。
「もう、時間切れなんだ……」
「十禍!!」
「………?」
粒子となって消えていく十禍を紅夜は見詰めた。
「……今度、合ったら、この遊びのほかにも楽しいことを教えてやる」
孤独な少女は、殺し合うことしか分からない。
彼女は彼を知った。彼女は彼を知った。
互いを認識できたときに紅夜が望むことは、殺し合いのほかにも楽しいことがいっぱいあることを教えることだ。
「本当……?」
「あぁ、約束だ」
紅夜は小指を十禍に差し出した。
「…?」
「指切りだよ。この世界にあるお約束するときにするものだ」
先ほどの平手打ちの影響で少しだけ紅夜に怖い感情を抱いた十禍だったが、紅夜の微笑に同じように小指を差し出して繋げた。
「約束だ。また会おう」
「うん、……またね。おにーさん」
霊的な存在にまでなった十禍には紅夜の指は触れることも出来なかったが、確かに繋がっていた。
十禍は年頃らしい笑みを浮かべて、粒子となり消滅する。
「………っで」
大剣を弄ぶかのように数回回し、肩に担いで紅夜は後ろの少女含めた謎のスーツ達に糸目で見る。
「お前ら誰?この世界の軍みたいなものか?」
「…………」
その問いにAST部隊は、顔を合わせる。
邪霊を退かしたこの青年は、何者が全く分からない。
喜怒哀楽をはっきりと表現させ、こちらに対し友好的だ。
「あなた、何者?」
だが、彼は明らかに異常だ。
彼が呟いた『罪遺物』や、なぜ邪霊と戦う力を持っているのか、そもそも紅夜という存在はこの世界にいたのか、精霊や邪霊と同じように全く別の所から来たのか、謎だらけだ。
「………ヌギル=コーラス」
紅夜はあまり組織を良く思っていない。
ぶっきら棒に大剣を消した。紅夜からすれば、戦闘意識はないと告げているつもりだったし、紅夜の戦闘能力では素手でも彼らを圧倒できる自信が合ったからだ。
紅夜は早く帰りたい……と思いながら、『彼ら』が勝手に名付けた名前を口にする。
「ヌギル=コーラス、あなたを連行する」
「…………」
面倒だ。紅夜は心に中で呟いた。
どうせ、拒否権などありそうにないし、逃げようとすれば敵と見なされ攻撃される可能性大だ。
振り切れる自信はあるが、紅夜としてこの世界に来て一日目、情報がほしいのだ。
そうして、零崎紅夜兼ヌギル=コーラスは未来を不安に思いながら、ASTに付いていくことにした。
場所変わって、陸上自衛隊・天宮駐屯地。
AST部隊は、誰もが隠せれないほどの歓喜に満ちていた。
邪霊相手にーーー自分たちは無傷なのだ。
過去の事象を見れば、邪霊の現る所は必ず殺戮の惨状が広がり、極大な空間震により地図からその場所が消える。
確かにイレギュラー的存在が有り、町には多大な被害が生じたが、そんなものはまだ修復可能レベルだ。
ただ、生きれた。そんな絶対不変の現在に喜びを隠しきれないのだ。
「折紙」
そんな中でも、彼女ーーー鳶一折紙は不愉快な顔をしていた。
呼ばれる声の方向に向くと、そこにはこの部隊の隊長である日下部燎子一尉の姿があった。
「浮かない顔をしているわね」
「…………」
「あの子が気になる?」
肯定するように折紙は頷いた。
「邪霊を退かすほどの『何か』……本人は自分のことを罪遺物と呼んでいたわね。」
「彼は可笑しい」
「……確かにね」
ヌギル=コーラスの戦いと話した彼女らしい言い方だ。
優しい、と言うべきか邪霊と共に攻撃した時に彼は少し憤慨したが仕返しをしようとしなかった。むしろ邪霊が怒り狂った時に近くにいた鳶一を殺そうとしたのを防ぎ、無造作な霊弾から全員を守ったのだ。
「人間味がありすぎる……いや、私も見ただけでは私たちと変わらない人間だと思ったわよ」
指切り等を知っていた様子から、この世界の文化を少なからず知っているようだ。
それに邪霊が消失する直前に見せたヌギル=コーラスの優しき瞳は、大切な妹を思う兄を思わせた。
「彼は……?」
「尋問室に連れていかれたわよ。それにしても………彼、慣れていたわね」
「……?」
慣れていた。日下部燎子一尉の言葉に折紙は首を傾げた。
「連れて行かれている状況でも顔色一つも変えなかったし反抗もしなかった。まるでこういう所に来るのは初めてではないと言うようにね」
「…………」
確かに、この基地に向かう途中でも彼は背後に隊員が拘束しながら来たが反抗などしなかったし、この基地に到着した時は、寧ろ興味深そうに周囲を見渡していた。
もし、これが自分たちの知る精霊や邪霊だった場合は、暴れ狂い自分たちは確実に死んでいた可能性がある。
「まるで訓練された軍人のようーーーそう思わない?」
「…………」
だが、あれは明らかに人などという人括りで言えるような存在ではない。
精霊より圧倒的に強いとされる邪霊を退かす実力者の時点で、並の精霊では歯が立たないことは想像できる。
鳶一からすれば、精霊は両親を奪った災厄で憎き敵、それ以上の災禍である邪霊を等しいが、確かな理性を持ち人間らしき感情を持つ彼が、恐ろしい。
何故なら、人間という概念を知っているからこそ、物理的ではない攻撃が可能だと言うことだからだ。
「はぁ、厄介なことになったわね。精霊だけで手一杯なのにその上にじゃ、れい……」
「…隊長?」
突如として異変が起きた。
空気が重い。まるで濃度の高い酒を一気に蒸発させたような陶酔感が遅い意識が奪われていく。
燎子は既に意識が消えかかり、鳶一は口を強く噛んでこの酔いから、強制的に意識を覚醒させた。
忙しく周囲を確認すると、一人一人とこの不可解な現象に耐えることが出来ず倒れていく。
「ん…?。へぇ、まだ耐える奴がいたんだ」
「!」
薄れていく意識の中で見たのは、この世の人物とは思えない絶世の美少年だった。
服装からしてヌギル=コーラスだということは、分かる。
ただ違う点と言えば、フードを取って素顔が露出している所だ。
青空を連想させる蒼穹の右目と、薔薇を連想させる真紅の左目、首にかかるほど伸びた白と黒が混ざり合った銀髪を揺らしながら、凡そ人間とは思えない存在感と威圧感を覚えさせられる。
「言っておくけど、これはただ対象を眠らすだけの魔法で、俺が去ってから5分くらいで全員目を覚ます。後遺症も心配ない」
「……っ……」
強く噛み過ぎた所為か口から鉄の味が充満するが、鳶一は関わりなく眼前の存在を睨みつけた。
「邪道……だろうな。でも、これだけは分かってほしい俺は人間の敵になるつもりは一切ないーーー今はな」
顔を複雑に歪め頬を掻くヌギル=コーラス。
彼の目的は、情報の摂取だ。それゆえに嫌々捕まって尋問室に連れていかれところで魔法を発動ーーあとは、そこらの人物から知識を頂いた。
「あんたらAST部隊ーーーだっけ、精霊をぶち殺す為のが目的、俺も協力しよう」
「!」
ヌギル=コーラスの発言に鳶一は驚愕に瞳を開いた。
「とはいっても、俺は好き勝手にするだけだけどな。精霊の意思がただの殺戮だった場合が条件だ。世界の不受理により絶望に呑まれている精霊又は邪霊なら俺は間違いなく助ける。」
蒼と紅の対極の瞳には揺るぎなく意思が宿っている。
呼吸が止まりそうな威圧感を出しながら、ヌギル=コーラスは鳶一の頬を触った。
「ーーーー」
人語ではない、少なくても鳶一はこの星に存在しない言語だと言うことを理解した。
先ほど、強く噛んで血が流れた場所が温かくなり、傷が癒えていく。
「よし、じゃあな、また空で会おう。」
完全に傷が癒え所でヌギル=コーラスは立ち上がり、鳶一を通り過ぎる。
真っ黒いコートを靡かせながら、夕焼けに染まっている空を見ながら遠ざかっていく。
「……可笑しい、奴」
彼が言った魔法の影響なのか、意識が遠くなっていくことを感じながら鳶一折紙は静かに瞳を閉じた。
説明 | ||
久しぶりにこっちも更新! 因みにこれをハーメルンにも投稿することにしました! |
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コメント | ||
シンHZハデスサン>紅夜「基本の中の基本、回復魔法だぞ?そんなにすごいのか?」普通の人は出来ないからね。紅夜「そうなのか……」因みに君は魔法もだけど魔術も使えるよね。紅夜「−−−に押してもらってな。あいつは殲滅魔法しか押してくれないから苦労したよ…」因みにその威力は?。紅夜「都市を一撃で消し炭にできる」わぉー。(燐) byZ お疲れ様でーす。傷を癒す力は便利なもんですな、どうでもいいけどとある魔術も科学も好きです。( Z ハデス) |
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