恋姫†無双 関羽千里行 第2章 14話
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第2章 14話 ―連合集結其の2―

 

??「雪蓮〜、冥琳〜!うわぁぁぁんっ!」

 

目に大粒の涙を溜めた少女が駆けこんできて、雪蓮の胸へとダイブした。

 

雪蓮「あら、どうしたの、美羽?また袁紹にかわいがられたの?」

 

 クスクスと笑いながら雪蓮はその少女に尋ねる。突然の侵入者に警戒をしていた思春も雪蓮の知り合いだとわかるとすぐにその緊張を解いた。

 

袁術「ぐすっ...かわいがられてなどおらん!いじめられたのじゃ!」

 

雪蓮「そうなの。ほらほら、泣かないの。可愛い顔が台無しよ?」 

 

雪蓮に抱きついたのは先程の軍議でも見かけた袁術であった。最後に見たあの感じからすると袁紹と何かあったのだろう。雪蓮と真名で呼び合っているところやこの雪蓮の手慣れたような対応からすると結構付き合いは長いのかもしれない。そんなことを考えていると俺に気付いた袁術が疑問を口にした。

 

袁術「おぬしは...確か北郷といったかの?ここで何をしておるんじゃ?」

 

 すると俺に代わって冥琳が答えた。

 

冥琳「北郷殿とはちょっとした世間話を。以前祭様が呉を出奔されて、今いるのが北郷殿の陣営というわけでして。祭様もいらっしゃってますよ。」

 

 聞くがいなや、袁術は祭を見つけると今度は満面の笑みで祭に向かって飛びついた。

 

袁術「祭〜!久しぶりじゃの!元気にしておったか?」

 

祭「ああ、元気じゃよ。全く、甘えん坊じゃのう。冥琳、七乃はちょっと美羽殿を甘やかしすぎてはいないかの?」

 

??「そんなことないですよぅ。黄蓋様がいないからっていつもより多く蜂蜜水あげたりなんかしてないんですからね!」

 

 袁術を追ってきた様子の参謀らしき女性が陣幕の中に飛び込んできた。

 

冥琳「ほう?蜂蜜水を。張勲殿?さっき陣営に運び込んでいた甕はそのためでしたか。」

 

張勲「ぎくっ!あはは〜、なんのことでしょうね〜。」

 

 白々しい言葉を吐きつつ、どこか楽しそうにしている。こうしてみるとなんだか人数が大所帯になり陣幕の中は一層賑やかになってしまった。すると祭は抱きついていた袁術を静かに床に下ろすと言った。

 

祭「丁度よく袁術殿もきたことじゃし、そろそろ本題に入った方がいいようじゃの。北郷も儂がただ昔話を聴かせるためにここに連れてきたとは思っておらんじゃろ?」

 

一刀「まあね。でも俺の知らない祭の昔話が聴けて嬉しかったよ。」

 

祭「相変わらずこっぱずかしいことを堂々と言うやつじゃのう。まあよい。冥琳、そろそろ本題に入るぞ。」

 

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場を一度仕切り直し、改めて会議のテーブルにつくこととした。袁術とも軽い自己紹介をし直すと、雪蓮たちが真名を預けているならばとあっさり真名を預けられ、主君である袁術に促されるようにして、その参謀の張勲にも真名を預けられた。真名ってこんなに簡単に預けられるものだったっけ?と疑問に思ったのもつかの間、俺たちはさっそく議題に入ることとなった。

 

雪蓮「まずはじめに確認しておきたいんだけど。今回の戦は諸侯による戦功欲しさの茶番だってことはみんなわかってるのよね?」

 

一刀「ああ。」

 

美羽「茶番?どういうことじゃ?」

 

雪蓮「冥琳、説明してあげて。」

 

冥琳「面倒なことを全部私に押しつけるのは止めて欲しいものね。前回の黄巾党の反乱で目立った成果を上げた陣営はありません。そこにいる北郷殿が黄巾党の首謀者を討ち取ったということにはなっていますが証拠はない。そうですね?」

 

一刀「そうなってるね。」

 

 俺の返答に何かを読みとったのだろうか、流石の稀代の軍師は含みを持った笑みを浮かべた後言葉を続けた。

 

冥琳「とりあえず本当のところはどうなのかということは別にして、つまり、前回の戦で諸侯が得たものは何もないと言ってもいい。しかし、諸侯は漢王朝が腐敗している今、来たるべき乱世に備えて兵力、資金、人材などを求めているわけです。それを手にするには名声がかなり重要になってきます。」

 

美羽「おお。それで今回の戦というわけじゃな。」

 

冥琳「その通りです。今回の戦で大きな戦功をあげれば、今後有利になります。董卓はいわばそのための贄というわけです。」

 

 贄という言葉に若干の憤りを感じたが、それも仕方ないとすぐにそれを鎮めた。実際、前回のような事情が今回もあるかはわからないからだ。

 

雪蓮「そういうこと。だから今後も考えて私達はなるべく被害が出ないようにして今回の戦で戦功をあげなきゃいけないわけ。」

 

美羽「ふむ。でもそれはすごく難しくはないかの?」

 

雪蓮「だから連合を組んでるんじゃない。他人を利用してうまく自分が美味しいところを持っていくためにね。」

 

美羽「なんじゃ、ずるっこい話じゃのう。」

 

雪蓮「まあ皆そう考えてるんだからおあいこよ。」

 

一刀「そしてここにいるのはそんな腹の探り合いばっかしてられないから、はじめから同盟組んどこうってことでいいのかな?」

 

雪蓮「そうそう。美羽、わかった?」

 

美羽「うむ、わかったのじゃ。妾もそんな疲れることはしとうないからのう。」

 

雪蓮「いい子ね。だけど同盟を組むにしたって1つ問題がある。それは互いが本当に同盟を組むに値するかってことよ。悪いけど、一刀の軍が私達の足を引っ張るようなら、私は容赦なく切り捨てるわよ。」

 

一刀「わかったよ。でもそっちが足を引っ張ってると思った時はこっちも置いて行くよ?」

 

 一瞬、お互いの思惑を探るように視線を交わした二人だったが、それもすぐに笑みと共に書き消えた。

 

雪蓮「でもまあ、どこの馬の骨ともわからない人ならともかく、祭が連れてきたんだから私は信用してるわよ。」

 

一刀「俺も祭が大丈夫って言うんなら全面的に信用するよ。それに味方は多い方が心強いしね。」

 

 二人で同時に祭に視線を送る。祭は自信満々に、

 

祭「まあ、お互いうまくやれるじゃろう。何か問題があったら、儂を切り捨ててくれてもかまわん。」

 

 そんなことは俺も雪蓮もできるわけがないだろうが、そんなことは関係なく祭が本気で言っているということは祭と付き合いのある二人にとっては一目瞭然だった。

 

美羽「うう...妾もおることを忘れるでないぞ!」

 

雪蓮「わかってるわよ。まずはお互い小手調べって所かしらね。私達のところと美羽のところは連携し慣れてるから最初から一緒に動くってことでいいかしら。それととりあえず情報の交換は絶えず行いましょう。」

 

 テキパキと進めていく雪蓮に関心してしまう。適当そうにも見るかもしれないが、その実彼女のとる行動は適切なことと言えるのだから大したものだ。

 

美羽「うむ。」

 

一刀「そうだな。あとは他の諸候の動きに目を光らせておかないとな。」

 

雪蓮「そうね。それにまずは目の前の水関を抜くことを考えないとね。それじゃ一旦解散にしましょう。」

 

 そうしてその場は一旦解散し、お互いそれぞれの準備を進めることで合意した。

 

雪蓮「また会いましょうね、一刀♪」

 

 楽しそうに手を振る雪蓮に見送られて、俺たちは自分たちの陣営へと戻って行った。

 

 

 

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 雪蓮たちと別れて陣営に戻る道すがら、祭が不意に尋ねてきた。

 

祭「北郷。どうじゃった、策殿は。」

 

一刀「そうだなぁ。サバサバしてるけど王としての風格って言うのかな。そういうのを凄く感じたよ。」

 

祭「違う違う。そういうことではなく、女として策殿はどうじゃったかと尋ねておるんじゃ。」

 

 意外な質問に動揺が走る。

 

一刀「ええっ!?そりゃ綺麗な人だなぁって思ったけど...なんでいきなりそんなことを?」

 

祭「そうかそうか。ならいいんじゃ。」

 

 一体、祭は何を考えているんだろうか...そんなことを考えて歩いていると、ふと疑問が浮かんだ。

 

一刀「そういえば、孫策さんの妹の孫権さんと孫尚香さんはいなかったけどここには来てないのかい?」

 

祭「よく知っておるのう。権殿ならおそらく軍の編成の方に回っておったのじゃろう。あの方は真面目で姉思いの良い御方じゃよ。尚香殿はここには来ておらんようじゃったが、あの御方は元気で活発な御方じゃ。」

 

一刀「そっか。次に行ったときは今度会えるといいな。」

 

 そう答えると祭は悪戯な笑みを浮かべて、

 

祭「お主も好き者じゃのう。」

 

一刀「そ、そんなんじゃないってば!」

 

思春「もう陣幕に着きますよ。そのように鼻の下を伸ばしておられては兵に示しがつきません。」

 

一刀「おっと、ごめんごめん。」

 

 何やらさっきから少しご機嫌斜めな様子で無口になっていた思春に釘を刺される。そこへ、陣幕の方からこちらに向かって走ってくる人影が見えた。

 

華雄「北郷ーっ!」

 

一刀「どうしたんだ?何かあったのかい?」

 

華雄「それが...」

 

 華雄から事情を聴いた俺は急いで駆けだした。

 

一刀「そうだ、すっかり忘れてた!」

 

 

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??「まだ、首を縦には振ってくれないの?」

 

愛紗「何度言われても、私にその気はありません。」

 

霞「せやせや!愛紗が行かんてゆうてるんやから、さっさと諦めや。」

 

??「あなたにもぜひ私のところに来てほしいんだけど?」

 

霞「おあいにく様。ウチにもその気はないねん。だいたい、愛紗が行かんゆうてる以上、ウチもテコでも動かんで。」

 

??「そう。ならやっぱり関羽をくどかないとダメみたいね。ねぇ、関羽。私のものになれば欲しいものは思いのままよ?」

 

愛紗「だからさっきから言っているではありませんか、曹操殿。私にそちらにつく気はないと。」

 

 この遣り取りを既にどれだけ続けているだろうか。一刀たちが出ていってしばらくすると、曹操が護衛を連れて北郷の陣地を尋ねてきた。主不在を門を預かる者たちが告げても中で待たせてもらうと言って聞かなかった曹操は、陣内に作られた仮の客間に居座ると、一刀が帰ってくるまでの間様子を見ようと思ってきた愛紗を捕まえて自分の陣営に来ないかと誘い続けているのであった。

 

前回にもあったことなので、今連合内でもめ事が起きれば連合全体に影響が出るかもしれないと考えた愛紗は憤慨しつつもそれを押しとどめて対応していたが、それもそろそろ我慢の限界が来ていた。しかもその愛紗を追ってやってきた霞もその勧誘に会い、断れば断るほどその忠誠心を気に入った曹操に勧誘を受けるといった具合であった。

 

曹操「こんなブ男の陣営にいたっていつか戦に敗れて惨めな目に会うだけよ。そんなことなら...」

 

一刀「誰がブ男だって?」

 

 肩で息をしながら戻ってきた俺にその場の視線が一斉に集まった。

 

愛紗「一刀様!」

 

霞「やっと来たぁ!もう遅いっちゅうねん!」

 

曹操「...客人を待たせるブ男なんて貴方くらいのものじゃない?」

 

 俺が来て笑顔を浮かべた愛紗を見て腹が立ったのか、曹操が少し投げ槍気味に応えてきた。

 

一刀「待たせてしまったことは申し訳なく思ってるよ。すまない。」

 

曹操「そう、その謝罪の気持ちを示してみなさいな。」

 

一刀「どうやってだい?」

 

曹操「関羽を私によこしなさい。」

 

 おおよそ予測できた回答だったため、俺は居住まいを正すと曹操の目を正面に見据えてから頭を下げた。

 

一刀「それはできない。この通り、頭を下げるくらいいくらでもするけど、それはできない。」

 

曹操「へぇ。私にそんな口を聞くの?」

 

一刀「なんて言われようと愛紗は渡せない。これは絶対だ。」

 

愛紗「一刀様...」

 

 愛紗と視線を交わす。何と言われようと、二度と愛紗と離れるなんてことは考えられなかった。俺は言ったすぐあとに恥ずかしさがこみ上げてきて顔が赤くなり、同じ気持ちの愛紗もはっきりと口に出されたことに気付いて恥ずかしさがこみ上げてきているようだった。しかし、そんな俺たちの甘酸っぱい雰囲気を曹操はお気に召さなかったようだ。

 

曹操「...まあいいわ。北郷一刀。今日は貴方に提案があってきたの。」

 

一刀「提案?」

 

曹操「心苦しいけど、貴方を含めて貴方の陣営を私のところに組み込んであげるわ。貴方、天下統一を目指しているんですって?悪いけど、今のあなたの陣営を見ているとそこまでの力をつけられるとは思えないわ。でも私の陣営には、人材、兵、軍資金、天下統一に必要な全てが揃っている。貴方達がおとなしく此方についた方が天下は近くなるわよ?」

 

一刀「悪いが断らせてもらう。」

 

 俺はその提案を一刀両断した。

 

一刀「俺は俺についてきてくれた仲間たちと天下をとると誓ったんだ。その誓いを、仲間たちを裏切るようなことはできない。俺たちの理想は俺たちで実現してみせるよ。だからその提案は飲めない。」

 

 確かに曹操に協力すれば乱世を早く終わらせることはできるかもしれない。しかし、それでは俺と愛紗がこの世界に来た意味がないし、何より、目の前の彼女が作ろうとしている世界は俺と愛紗、そして仲間たちと描いた世界とは異なるものになるだろう。だからこそ、そんな提案を飲むことなどできなかった。

 

曹操「...そう。」

 

 申し出を断られ、憤りを浮かべるかとも思ったその表情は、予測に反して微笑を浮かべたものだった。しかし、その表情は愛紗が俺に向ける表情や、はたまた仲間達と過ごす日常の中で皆が浮かべる笑みとは明らかに異なっていた。

 

曹操「なら覚悟しておくことね。私は欲しいと思ったモノは必ず手に入れるわ。貴方達が私の前に膝を折る日を楽しみにしていなさい。たっぷりと可愛がってあげるから。」

 

 艶やかな声で獰猛なセリフを口にすると、

 

曹操「春蘭、秋蘭。行くわよ。」

 

夏侯惇・夏侯淵「はっ!」

 

 二人を伴って立ち去っていった。その足取りからは、自らを覇者と信じて疑わないことからくる余裕しか感じ取ることができなかった。

 

曹操「北郷一刀、王を目指す者が頭くらいいくらでも下げるですって?面白いじゃない。この曹孟徳が叩きのめしてあげるわ。そして貴方の大事な関羽を私が奪ってあげる。ふふ...」

 

夏侯惇「華琳様、何かおっしゃいましたか?」

 

曹操「いいえ。なんでもないわ。」

 

陣地から離れた場所で、少女はこれからずっと先にあるであろう戦場に思いを馳せるのであった。

 

 

 

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短編 ―思春さんのくりすますいぶ―

 

 寒々しい夜の街を思春が大きな袋を背負って歩いていた。今日は現代の日付でクリスマスイブ。一刀の提案で今日は街に作られた戦災孤児を引き取る施設の子どもたちにプレゼントを届けようということになったのだった。そこで思春他数名の隠密行動のできる者がそれぞれに施設に贈り物を届けているところだった。しかし...

 

思春「いったいなんだと言うのだ...『さんだぁくろす』とかいうのは。」

 

 一刀から聞かされたサンタクロースという男の話は思春にとっては奇怪な単語ばかりで半分もわからなかったのだ。わかったのはせいぜい赤い服を着て、子どもの喜びそうな贈り物を届けると言うことくらいだった。しかも名前まで間違ってしまっている。

 

思春「しかも見つからないようにとおっしゃって置きながら...なんだこの間抜けな姿は。」

 

 思春は普段から腰で揺れている鈴に今日だけは少々苛立たしげな視線を送った。隠密行動ということで置いて行こうとしたところ、一刀に雰囲気が大事だからとよくわからない理由で止められたのであった。そのためいくら気配を消そうとしても音を立ててしまうという、傍から見れば少々滑稽な状態になってしまっているのであった。

 

 

孤児院についた思春は早速子どもたちの寝室へと忍び込む。

 

思春「確か...この長い靴下に持ってきたものを入れればよかったのだな。」

 

 孤児院の院長さんには話がついていたので、子どもたちの寝ている傍には全て靴下が置かれていた。

 

思春「お前たちの国を収めている御方に感謝するのだぞ。」

 

 小さな声で口に出されたその台詞は本物のサンタクロースなら絶対言わない言葉だった。ただ、多くの戦災孤児を見てきた思春には、こんな日があってもいいかもしれない、そう思えて仕方がなかった。そう思うと、普段は気を張っている表情からも自然と笑みがあふれてくる。

 

男の子「あれぇ?お姉ちゃん誰?」

 

思春「!?」

 

 起きてきた子どもの一人が寝ぼけ眼で思春を見つめていた。その視線が腰の鈴に向けられると、やはりかと少々自分に呆れつつも目の前の男の子に向き直った。

男の子「もしかして院長先生が言ってた贈り物をくれる人?あれぇ、でも院長先生は男だって言ってたよぉ...あれぇ...ふぁぁ...」

 

 起き立てでまだ眠いのかその子どもは意識がはっきりしていないようだった。思春は一刀が雰囲気が大事だと言っていたことを思い出し、心を落ち着けると優しい言葉でこう言った。

 

思春「ああ、私がさんだぁくろすだ。」

 

男の子「わあ、本物だぁ。」

 

思春「でもいいか。私が女だと言うことはお前と私の秘密だぞ。他の子には私は男だったと言え。」

 

男の子「う、うん...わかった...」

 

思春「いい子だ。じゃあおとなしく寝ているんだぞ。いい子にしていないと贈り物はあげられんからな。」

 

男の子「うん、寝る...さんだぁのお姉ちゃんおやすみぃ...むにゃむにゃ。」

 

思春「ああ、おやすみ。」

 

 

 

 

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孤児院を離れて戻る途中、

 

思春「はあ、全く。ああなると思ったのだ。」

 

 いくら鈴の音が鳴ると言っても、隠密行動にはそこそこ自信のあった思春は少しへこんでいた。

 

思春「まあ、見つかったところで大した問題ではないと言うところで落ちつけるか...」

 

 そこへ、

 

町人「ど、泥棒ーっ!」

 静かな夜に1つ木霊した声と共に思春のしばらく先の通りを駆けていく一人の男が見えた。

 

思春「こんな夜中に仕事とは。お互い精が出るな。」

 

思春はダッと駆けだすと男に一気に迫った。

 

泥棒「!?」

 

思春「遅い!」

 

気付いた盗人がナイフのような短剣を振りかざしてくるが、北郷軍でも有数の武芸者である思春にとってその動きはあまりに稚拙だった。一瞬にして男の武器をはたき落とし、手刀を使い意識を失わせる。そこへ、同じく泥棒を追ってきたのか町人らしき人が息を切らせて追いかけてきた。町人は目の前の光景を見るとホッと胸をなでおろした。

 

思春「しばらくは起きてこられまい。今のうちに警備隊を呼んできてくれないか。」

 

町人「ありがとうございます!警備隊の方ならすぐそこまで来てますよ!」

 

思春「そうか。なら後はもうそいつらに任せておけばよいか。」

 

町人「あの、ところで貴方は一体...?是非お礼をさせて下さい!」

 

この街で思春はもちろん有名であったが、この夜の暗がりで町人には目の前の人物がその人だとはわからなかったようだった。もちろん、この街の警備は仕事にも含まれているのでお礼などもらうわけにはいかないと考えた思春は、

 

思春「そうだな...通りすがりのさんだぁくろすだ。礼ならいらん。ではな。」

 

 そう答え、持ち前の瞬発力をいかんなく発揮してその場を去るのであった。

 

 

 

 

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一刀「お疲れ様、思春。」

 

思春「一刀様。こんな時間まで起きていらしたのですか。」

 

 城門のところには一刀が蝋燭を灯して待っていた。

 

一刀「俺が頼んだことだからね。せめて帰ってくる皆を労うくらいはしないと。」

 

 自分が使える人間はやっぱり素晴らしい人だと思春は実感する。

 

思春「有難うございます。しかし、こんな夜遅くに外に出ておられては風邪をひいてしまいますよ。」

 

一刀「うん、そうだね。気遣ってくれてありがとう。思春が最後だったから俺ももう寝ることにするよ。そうだ、」

 

 一緒に城内に戻りながら、一刀は尋ねた。

 

一刀「どうだった?サンタクロースになってみた感想は。」

 

思春は一刀を見つめ返すと、穏やかな笑顔でこう言った。

 

思春「案外、いいものでしたよ。来年が楽しみです。」

 

 翌日、子どもたちの間で語られるようになったさんだぁくろすと、泥棒を一瞬で倒したさんだぁくろすの話が膨れ上がり、1年に一度現われ、子どもたちに幸せを運ぶ正義の味方、斬打玄守(さんだぁくろす)の伝説が語り継がれるようになるとは、この時の二人には全く予想できなかった。

 

 

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―あとがき―

 

 読んで下さった方は有難うございます!気付いたら一カ月更新してなかった!お久しぶりかな?れっどです。

 

 リアルのごたごたも片付き、さあ書くぞ!と思ったらこんな時期に。どうせならと更新日を合わせて短編つけてみたのですがいかがでしたでしょうか。タイトルがタイトルなので愛紗さんと一刀君のイチャイチャした話を書こうとも思ったんですが...やっぱクリスマスって子どもたちのためだよ!うん!(泣 というわけで赤い服と鈴という思い付きだけでこんな短編書いてみました。既出ネタだったらごめんなさいorz 

 

 そいで本編ですが...もうちょっと書きたかったかなぁ。今回は、どうやら雪蓮さんと美羽さん、仲がいいみたいですね。れっどの中では二人が仲良かったら、美羽さんが面倒見のいい雪蓮さんに甘えて、甘やかそうとする七乃さんが祭さんや冥琳さんにいさめられるんじゃないかなぁ、なんて思ってます。そして、華琳さん。無印の華琳さんと真からの華琳さんを折衷したらあんな感じになってしまいました。うーん、やっぱり作品またぐとイメージが難しいですね。

 

 とにかく、次回からはもっと早く更新するぞ!と自分にプレッシャーをかけつつ、まだお付き合いいただける方はよろしくお願いします。

 

 それでは...メリークリスマス!

 

説明
恋姫†無双の2次創作、関羽千里行の第14話になります。
久々の更新です。
そしてこの更新日時は...?
クリスマス?何それ美味しいの?美味しいよ!
それではよろしくお願いします。
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コメント
メリークリスマス!今回も面白かったです。華琳は平常運転、袁家は異常運転、この外史の明日はどっちだ!?www(メガネオオカミ)
メリークルシミマス!華琳は平常運転だね。孫家と袁家が仲好いとか大陸で一・二を争う勢力やん。(レイブン)
メリークリスマス! 更新ありがとうございます(^_^ゞ次回も楽しみにしています。(東文若)
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