河城にとりと☆遠方契約通信
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 山の上の上流からは、絶えず何かが流れてくるんだ。

 それ見てみろよ。葉っぱだろ……あれは写真かな、それにほら、服の切れ端だって流れてきてる。これはさ、上の方で誰かがドンパチしているんだってことだよ。ねえ、椛よ。

 それで今日は特に『色々なもの』が流れてきている。それをちょっと紹介しようと思ってさ。

 どうだろう?……ん?ああ、興味がないのか。分かっているよ。椛が好きなのは剣と仕事だけだからさ。

 ま、それは知ってはいるけど、将棋のサカナだと思ってさ、聞いてくんろ!ってね。

 

 

 まずはコレ。なんだと思う?どうせ、何かの機会だろうって?そうだね。間違いではないよ。でも、何の機械か分かるかい?

 ……やっぱ興味がないんだね。尻尾が垂れている。椛の機嫌は尻尾で分かるとは河童仲間でもよく言ったものさぁ。それは酒の席、飯の席なんかで椛の話が出るたびに話に出る。私達の中や一部の天狗さまの中でも特に有名な話なんだけどねぇ。はは、自覚はなかった?みんな知ってる話なんだけどさ。

 そんなに焦らなくても大丈夫だよ。みんな見て楽しむくらいしかしてないし、今でもたまーに話に出るくらいのものさ、ははは。

 っと、ちょっとは落ち着きなよ。ほら、コマがずれてるよ。そうそうそこの銀の字……ま、椛は愛されているのさ。それが話のネタになっても、大して変わりはないだろう?

 む、文ちゃんがって?文ちゃんかァ……あれだけ有名な話を文ちゃんが知らない訳がない。何より口よりも先にものを言っている椛の尻尾だよ。それを見て機嫌をうかがって、大いに楽しんでいることだろうなぁ。あるだろ?思ったことを先に言われたり、わざわざシャクに障ることを文ちゃんが突いてくることさ。

 ……でしょでしょ。文ちゃんの目と口は他の天狗よりも『もの』がよく見えているから、他の天狗や妖怪が見えていないものが見えている……ってさ。ははは。

 

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 ああ、話を戻すよ。この機械は外の世界の落しものだそうだ。

 物が分かる店主に聞いたら、なんでも、

 「遠くに居る人と話すもので、写真も撮れるし、手紙も出せる……」

 というものらしいんだ。

 ……だろ?信じられない話だよ。でも、外の世界の機械(もの)なんだから、それが出来てもおかしくないんだ。

 この機械はさ、信じられないことに防水対策がなされていない。うん?防水対策なんて普通はしないものだって?……はは、そりゃ、天狗達の常識だよ。私達の使うものは防水対策がなされているのが普通。逆に言うと水中で使えないものに何の価値があるのかって思うよ。陸上で使えるものなんてのは何だってそう。それが普通にして常識。果たして常識に価値があるのかどうか……私達はね、それを面白く思っているんだよ。

 それでこの機械なんだけど、見つけた当初は防水対策のないまま水に浸かったせいで動かなかったんだけど……私が思うままにいじっていたら、ある程度の機能は回復したんだ。

 例えばね……

 「写真が取れる!のと時間が分かる!」

 っていうのさ。

 決まった時間にアラームを鳴らすこともできるね。外の世界じゃ『目覚まし』というそうだ。人間の里でも、鶏が朝になると鳴いているだろう。あれをコレがやっているのさ。……そりゃ、鶏と違って肉にはならないよ。でもさ、これだけ小さなものが時間を計れる、報せることが出来るってのに、私は大いに感動するねえ。時間を知るっていうこと事態、私達にとってはあまり必要のないことだけども、そういう小さなことを機能化するって、そりゃ大したことなんだよ。小さなことを積み重ねていけば、いつか大きなことが出来るってね。そういうものなのさ、椛よ。

 

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 それともう一つが写真を撮れる機能なんだけど、これは文ちゃんが持ってるようなカメラとは違ってねえ。あくまで通信をしたりするものらしいんだ。そう言われて見ると、こう……ココのところにスピーカーが見えるだろ。……うん?見えない、ただの穴だって?……まぁ、椛にはそう見えるだろうけど、こう、こうやって構えてみると、丁度、先が耳元にくるし、もう一方は口元にくるって訳!

 ……だろぉ、それがこの機械『遠方契約通信機』の素晴らしいところさ!

 そうそう、遠方契約通信機っていうらしいんだ、この機械。言い伝えによると、ある白い犬と契約をすると、契約をした者同士でいくらでも通信ができるとか……。

 白い犬、白い犬……おっ、そうだ。ここで椛と契約すれば、遠方通信が出来るようになるんじゃないか!?だって椛はさぁ……ははっ、それは冗談だよ。もの字よ。椛は狼じゃん?それに第一、契約なんて分からないし、そういう柄じゃないってさ。ま、契約については魔理沙の方が詳しいだろうね。今度、聞いてみることにするよ。

 んー、ほらほら、なんか腑に落ちない気分でしょ?あ、顔じゃないよ、尻尾だよ。尻尾がゆっくりと揺れている。これはさ、腑に落ちなかったり煙に撒かれているんじゃないかって、そういう気分を表しているんだよ。これも有名な話だね。

 分かるかなぁ。分からないか!

 

 ともかく、これはさ、この機械におあつらえ向きなあの子に渡してみるよ。その子の話を聞いて、色々と機能をプラスしてみたいんだ……そうそう、私のはこれとは別に、前にもっとすごいのを拾ってあるんだよ。だから、これは渡しても問題ないの。椛にしては私のことを気遣うんだね。ありがとうよ。はは、尻尾が大きく揺れてるよ。

 それで私が持ってるこの機械、形状はちょっと似ているんだけどね……こっちは映像を受信できるんだよ。映像を受信……つまり、椛の千里眼で見たものをこの機械を通して私も見ることが出来るって言うと分かりやすいかな。

 でも、この機能、今の幻想郷じゃ使えないんだよね。映像を発信するものがないから使えない……って前までは思ってたんだけど……

 そう、電波塔!なんだ、椛も文ちゃんの新聞を見ているのか。てっきりそのまま捨てて居るものと思っていたよ。とにかく、その電波塔を改造して使えるようにすれば、映像を発信できるんだ。例えば、こうして私と椛が将棋を打っているサマを幻想郷のみんなに見てもらったりとか、他の妖怪の弾幕勝負を安全なところからお茶やお酒を飲みながら……笑いながら見ることもできるね。

 でしょでしょ。だから電波塔の占拠を狙ってたんだけど、みんながみんな、独り占めをしようとしてさ。もう少しで武力衝突しようとしていたところで、妖怪の親玉が現れてさ、

 

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 「一時、私が預かりましょう」

 って言って、どこかに持って行っちゃったんだよ。

 妖怪の親玉……本人はそう言ってたね。なんとも胡散臭い話だけど、あのままじゃ周囲でどんぱち始めて、電波塔もろとも焼け野原だったろうし、ありがたいといえばありがたかったかなぁ……いや、悔しいけどさ。

 それでみんな、もう自分達で電波塔を作るために躍起になってる。今頃も棲み家に篭っているのが多いんじゃないかなぁ……ん、私?私もこうして椛と将棋をしている間に、作戦を立てているよ。私には既に遠方契約通信機もあるし……まぁ、じっくりやるよ!だから楽しみにしていなって。

 ある日、ばーん!と立派なのを立ててやるからさ。そこに家だって付けてやるし、巨大ロボットに変形する機構だって付けてやるんだ!……って王手?あれ、いつの間に!?

 ああ、そうだね。悔しいけど、目標がある以上は、それに向かって突っ走らなきゃだね!

 じゃ、これから電波塔の開発を進めるよ。しばらくは無言になるけど、お茶やきゅうりはそこにある。見物も自由!だから、ゆっくりしていってよ!!!

説明
河城にとり主体の東方SSです。にとりの語りをメインに機械に興味のない犬走椛との掛け合いをお楽しみ下さい!特に東方風神録は得意な私なので、強いイメージとキャラクターの私の河城にとりをどうぞご堪能下さい!
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河城にとり 東方Project 犬走椛 東方SS 

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