バカとテストと召喚獣 五つの鎧を持つもの 第八話
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 Bクラス戦から二日後。雄二が壇上で礼を言っていた。

「まず皆には礼が言いたい。誰もが無理だといっていたことをここまで成し遂げられたのは皆のおかげだ。感謝している。今日は俺達が勉強だけが全てじゃないと証明するひだ。」

『そうだ!』

『その通りだぜ!』

『勉強が全てじゃないぜ!』

 ここまで来ると皆の思いは一つになっている。

「だから今日は一騎打ちで決めようと思う。」

「どうしてなのじゃ?」

「なるほど。今のクラスの状況だと雑魚ですら負けてしまう。なら勝率の高い方法で勝負し勝つ・・・・といったところだな。」

「ヤリカタガ古典的ダガワルクナイナ。」

「ああ。それに俺には勝てる保障もある。」

「なんだすか、それは?」

 姫路が雄二に尋ねた。

「Aクラス代表は知ってるな。」

「確か・・・・霧島翔子さんでしたっけ?」

「そうだ。Aクラス代表は翔子だ。アイツは覚えたことは忘れない。そこを突くんだ。」

「雄二、まったくもって何が言いたいか見えない。」

「悪い、言葉が足りなかったな。大将戦で俺は翔子にテストで勝負を申し込む。百点満点の上限付き小学生レベルのテストだ。」

「普通に考えれば百点満天が当たり前だな。だがお前がそこまで言うなら何か裂くでもあるのか?」

「いや。あいつに勝てるのはあいつが間違って覚えているところがあるからだ。」

「それはなんだ?」

「『大化の改新』だ。」

「何故『虫殺しの改心』なんだ?」

「アイツは『無事故の改心』と覚えているんだ。というか俺がそう教えた。」

「・・・・・・・・・・最低の男だな。」

「・・・・お前からそんな言葉が出るなんて思わなかった。」

「じゃが坂本よ。それが出るとは限らんじゃろ。」

「まあな。これはいわば賭けだ。これはあくまで最後の手段だ。出来ればこんな手を使わず普通に勝ってほしいところだが・・・」

「そうもいかないな。」

「あ、あの・・・」

「んっ!どうした姫路?」

「さっきから気になったんですが桐嶋さんとはその・・・・・・仲がいいんですか?」

「まあアイツとは幼馴染だからな。」

「総員構え!」

 須川に指示の元皆が上履きを構えた。

「なっ!お、おまえらどうしたんだよ!」

「黙れ男の敵め!Aクラスの前に貴様を抹殺する!」

「落ち着け!」

 鋼牙が魔導火のライターを取り出し息を吹きかけると緑色の火がガスバーナーの如く火を吹いた。

「「「ぎゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」」」

 流石に皆驚いたようだ。

「あ、危ないだろ!」

「集団リンチのほうが危ないと思うが。」

 鋼牙の言うことは正論だった。

「ところで雄二。」

「(流した!)な、なんだ?」

「Aクラスとの交渉の際は俺も行く。向こうにもいい条件でな。」

「まあなんだか知らんが頼む。」

 

「一騎打ちっ!」

「ああ、そうだ。」

 いつもどおりの宣戦布告。話しているのは工藤愛子。たしか一年の終わりごろに転校してきたと聞いたことがあるな。

「う〜ん。こっちとしてはありがたいけど何か裏がありそうだね。」

「そう言うと思った。」

「!鋼牙それを見越してここに来たのか!」

「なんだ気付かなかったのか?普通はそう思うの自然だろ。で提案なんだが・・・」

「なにかな?」

「一騎打ちではなく五対五のしょうぶはどうだろうか?これならフェアでいいだろう。」

「でも代表が少子悪くて姫路さんが調子よくて負けたらな〜。」

「そこについては心配はない。相手は代表の雄二だ。」

「その言葉を鵜呑みにしてもいいのかな?」

「その心配はない。」

 皆は驚きその声の方を振り返るとそこには仁王立ちしている西村先生の姿があった。

「どうして鉄人がここに!」

「西村先生と呼べ、坂本。鋼牙が事前にここに呼んだ。証人としてな。」

「う〜ん・・・」

「・・・・受けてもいい。」

 悩む木下の後ろから突然声をかけてきたのはAクラス代表の霧島であった。

「・・・冴島君の提案を受けていい。」

「交渉整理として受け取っていいな。」

「・・・うん。その代わり負けた方は買ったほうの言うことを何でも訊くってことが事情権。」

「わかった。皆もそれでいいか?」

 鋼牙がそう言うと皆は頷いた。

「なんか俺とお前の対場逆になってないか?」

「気にするな。祖より時間はいつがいい?」

「じゃあ・・・十時からで。」

「わかった。俺達は一旦教室に戻り報告する。」

 そういって俺達はAクラスを後にした。

 

「では両名共準備はいいですか?」

 今日はここ数日の戦争で何度もお世話になっているAクラス担任かつ学年主任の高橋先生と西村先生が立会人である。

「ああ。」

「・・・問題ない。」

「それでは一人目の方どうぞ。」

「じゃ、僕が行こうかな。」

 そう言って工藤が出てきた。もちろん相手は土屋だ。

「教科はなんにしますか?」

「・・・・・・・・・・保健体育。」

 土屋が唯一得意とする科目だな。

「君が噂のムッツリーニ君だね。僕も得意なんだよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・実技が。」

 ブシャーーーーーーー!!

「土屋!」

 突然鼻血を吹いた土屋に鋼牙が駆け寄った。

「大丈夫か!死ぬな!」

「君は冴島君だっけ?保健体育教えてあげようか?実技で。」

「何を「鋼牙に永遠そんな機械内から、保健体育の勉強なんていらないのよ!」「そうです!永遠に必要ありません!」・・・・・・・・・お前らは日本の学問を邪魔するのか?」

「「「はっ?」」」

「実技ってことは体育だろ。普通にスポーツはしないと流石に不健康だろう。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・何故黙る。」

「いや・・・・・なんでもない。」

「そろそろ召還を開始してください。」

「は〜い。試獣召喚っと。」

「・・・・・・・・・・試獣召喚。」

 二人の試験召還獣が召還される。工藤のほうは大きな斧に腕輪。それに対して土屋は小太刀が二本に腕輪。一見すれば工藤の方が有利だが・・・・・

「・・・・・加速。」

 土屋の急加速して工藤の召還獣に切り込んだ。だが工藤は斧を楯にして攻撃を凌ぐ。

「甘い!」

 工藤の召還獣は腕輪を光らせ斧を横に振る。土屋の召還獣は消滅した。

『Aクラス 工藤愛子 VS Fクラス 土屋康太

 保健体育 446点   572点      』

「惜しかったな土屋。十三撃叩き込んだのに。」

「・・・・・っ!何故わかった!」

「ムッツリーニ、今のはホントか!」

「・・・・・・本当だ。」

 雄二は鋼牙驚いた目で見ていた。

「次は僕が行くよ。」

 そう言って出てきたのは久保だ。二年生では学年三位の成績と聞く。

「よし。久保が相手ならこっちは姫路だ。頼むぞ!」

「は、はい!」

「科目は何にしますか?」

「総合科目で。」

「構いません。」

 総合科目と来たか。どちらとも成績がいいから厄介だな。

『Aクラス 久保利光 VS Fクラス 姫路瑞希

 総合科目 3997点   4409点    』

『よ、4000点オーバー!!』

『この点数、霧島さんに匹敵するぞ!』

「いつの間にこんな実力を!」

「私、このクラスが好きです。クラスの皆が好きです!」

「クラスが好き?」

「はい!だから頑張れるんです。」

 姫路と窪の召還獣は激しくぶつかった。

「・・・・・・・」

「どうした鋼牙。」

「西村先生。姫路が少し羨ましくて。」

「どういうことだ?」

「あいつはもう『守りし者』を見つけました。それが少し・・・」

「お前も早く見つけろ・・・といいたいところだが大河も同じだった。気付いたのはこれよりずっと後の時期だ。」

『Aクラス 久保利光 VS Fクラス 姫路瑞希

 総合科目  12点    0点       』

「すみません。負けてしまいました。」

「気にするな。今回は負けたが次に機会があるなら勝て。」

「鋼牙君・・・・・」

「それに守りたいもののために戦えるお前が羨ましい。」

「えっ・・・・・・」

 鋼牙の言葉に姫路は少し驚いた。

「次の方は準備をお願いします。」

「鋼牙、負けんじゃねえぞ!」

「わかっている。後がないのは承知している。」

「Aクラス佐藤美穂が物理で相手します。」

『試獣召喚!』

 鋼牙の召還獣は黒い鞘に入った双剣に対し佐藤は両手に鎖で繋がれた小さな鎌が両手に持たされていた。

 佐藤の召還獣が片方の鎌を鋼牙の召還獣に投げてくるが鋼牙の召還獣はそれを回避する。

「もらいました!」

 佐藤の召還獣は持っている片方の釜を鋼牙の召還獣に向け振り下ろす。鋼牙の召還獣は鞘から剣を抜いてそれを受け止めた。

「掛かった!」

 佐藤の召還獣は鎖を引き鋼牙の召還獣の後ろから攻撃してくる。だが鋼牙の召還獣は鞘で凌ぐ。

「はあっ!」

 鋼牙の召還獣は鎌を弾き後ろへ飛翔する。

「少し本気になるか。」

「なっ!」

 鋼牙の召還獣は刃を地に向け自身の周りに陣を描く。描かれた人は召還獣の真上に上がり召還獣に光が降り注がれる。

「またあの光り!」

「でも召還方法が違うぞ!」

 光が晴れ、そこにいたのは群青色の鎧を身にまとい、柳葉刀のような湾曲した片刃の剣・雷鳴剣を持った騎士。その騎士の名は

 

 

『雷鳴騎士・破狼(バロン)』 

 

 

「な、なんですか!それは!」

「鎧だ!」

 破狼は佐藤の召還獣に向け急接近し真っ二つに切り裂いた。

「そ・・・・・・・そんな・・・・・ッ!!何その点数!」

A、Fクラスの皆が点数を見た。

『Aクラス 佐藤美穂 VS Fクラス 冴島鋼牙

 物理   389点   1937点     』

『な、なんじゃそら〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!』

『どうしてそんな点数取れんだ!』

『てかこいつ観察性分だろ!』

「何を言っているお前ら。」

『へ?』

 西村先生の言葉に皆驚いた。

「こいつは出席日数が足りないだけで勉強は出来るぞ。」

『じゃ、じゃああの鎧は・・・・・・』

「!もしかして!」

 久保が何かを察した。

「どうしたの、久保君?」

「冴島君ってもしかして噂の『魔戒騎士』?」

『『魔戒騎士?』?』

「驚イタ。マサカ『魔戒騎士』ヲ知ッテイルヤユガイルトハナ。」

 ザルバが喋ったことで皆は静まり返る。

「・・・・・・・・・ザルバ。」

「スマン、鋼牙。」

『指輪が喋った!!!!!!!』

 Aクラス全員と高橋先生が驚きの声を上げた。

「皆が驚くのも無理ないが落ち着いてくれ。こいつはザルバ。冴島家に代々ある指輪だ。そういうわけか喋れる。」

「ヨロシクナ。」

 皆はなんか納得した表情を見せた。

『ところで『魔戒騎士』って何ですか?』

 Aクラスの生徒が尋ねてきた。

「それについてはあたしが説明するよ。」

 突然大型モニターに学園長の顔がアップされた。

「学園長。」

「冴島。もう隠しておくことないだろ。」

「・・・・・・・・好きにしてください。」

「こいつは文月学園で唯一の騎士、『魔戒騎士』をしているやつなんだよ。そもそもここ文月学園は昔から伝統がある学校ってのは知っているね。それだけ古いと姉妹校とかも多くてね。昔は交流のために学校代表生徒を出して戦わせてたんだがいまやそれが教育委員会から禁止されるようになってね。」

「そこで学園長は試験召還システムを活用してその伝統を守ってきた。だが時代がたつにつれて段々と実力を持った生徒が出始めて最終的には五人の最強の生徒が過去に現れた。」

「それに加えて試召システムの開発段階中にバグが出たりして困ったこともあったんだよ。それに対抗するために作られたのが鎧。」

「そして昔の学園長がコンピューターの中を『魔戒』と名付け、それに対抗する騎士を『魔戒騎士』と名付けた。鎧の数は全部で六つ。その称号をとるにはどうしても授業を欠席しないといけないからね。観察性分になってもおかしくないんだよ。」

「まあ、観察性分になろうがなるまいが関係ないがな。」

 鋼牙の発言に一同頭に?を浮かべた。

「こいつら『魔戒騎士』は鎧と称号を受け取ったときには既にフィードバックが入っているんだよ。」

「だから関係ないと言ったんだ。」

 納得した表情で頷く皆。そんな時姫路がふと疑問に思ったことがあった。

「あ、あの鋼牙君。」

「なんだ姫路?」

「さっき鎧の数は六つと言いましたよね。」

「ああ。」

「鋼牙君はいくつ持っているんですか?」

「五つだ。だが本来騎士が持っているのは一つだがな。」

「それだと矛盾します。」

 確かにそうだ。

「これは仲間が俺に授けたんだ。」

「どういうことですか?」

「俺が観察性分を言い渡される数日前に四人ほど転校した話しは知っているか?」

「は、はい・・・・」

「そいつらも騎士だった。あいつらは転校する際に学園長からの特権で誰かに鎧を授ける権限を出した。そのときにあいつらは俺に授けた。最初は戸惑ったが俺はそれをもらい、今こうして使っている。」

「そうだったんですか・・・・」

「あ、あの・・・・・」

「「はい?」」

「そろそろ始めていいですか?」

 すっかり忘れていた。そういえばまだ一騎打ちの途中だった。

「すいません。どうぞ。」

「はい。では次の方準備をお願いします。」

「アタシが行くわ。」

 出てきたのは木下優子、秀吉の双子の姉だ。

「ではワシが行こう。」

「ところでさ、秀吉。」

「何じゃ姉上?」

「Cクラスの小山さんって知ってる?」

「はて、何のことじゃ?」

 ・・・・・・・・・・確かあの時秀吉は木下優子の服装していたな。

「じゃ〜いいや。その代わりこっちに来てくれる?」

「うん?わしを廊下に連れ出してどうするきじゃ?」

 そのまま秀吉と優子は廊下に出て行った。

『姉上、勝負は・・・・・どうしてワシの腕を掴むのじゃ!』

『アンタ、Cクラスで何してくれたのかしら?どうしてアタシがCクラスの人たちを豚呼ばわりしていることになってんの?』

『それはわしが姉上の性格をぶんせ・・・・・・・・あ、姉上!そっちの方向に腕ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』

 ガラガラガラ

「ごめんなさい。秀吉は休養が出来たみたいだから誰か代わりに出てもらえない?」

「俺が出る。」

「あら、冴島君が?」

「ああ。」

「それでは両者準備してください。」

 二人は定位置に着く。

「科目は何にしますか?」

「では数学で。」

「わかりました。それでは召還してください。」

『試獣召喚!』

 木下優子の召還獣は大きな槍を持った騎士に対し鋼牙は両手に小型の双剣を逆手で持っている。

「一ついいかしら?」

「なんだ。」

「どうしてそんなに武器が多いのかしら?」

「鎧を召還するときはその鎧専用のソウルメタルを使う。」

「ソウルメタル?」

「ああ。鎧開発中に偶然出てきたものだ。男性にしか使えないのが欠点だ。」

「ふ〜ん。ありがと。」

「それでは両者、はじめてください。」

 高橋先生の合図尾同時に優子の召還獣は特攻してきた。鋼牙の召還獣は二本の双剣を重ね合わせ攻撃を受け止めた。

「なかなかいい突きだ。」

「それはどう・・・・も!」

 優子の召還獣は槍を一旦離し下から救い上げる形で鋼牙の召還獣の双剣二本を中に向かい弾く。優子の召還獣は鋼牙の召還獣に一突き入れようとするが鋼牙の召還獣は槍の上に乗る。

「なっ!」

 鋼牙の召還獣は槍を足場とし上へ飛翔する。鋼牙の召還獣は中に舞った双剣をキャッチする。鋼牙の召還獣は双剣をクロスさせ空中に陣を描く。描かれた二つの陣は一つとなり光が降り注がれる。光が晴れ、地上に着いたときには既に鎧を身にまとっていた。

 白銀の鎧を身に纏い、二本の銀狼剣を持つ騎士。その騎士の名は・・・・・

 

 

『銀牙騎士・絶狼(ゼロ)』

 

 

「はああ!」

 絶狼は優子の召還獣に向け銀狼剣を振り下ろす。だが優子の召還獣は回避する。絶狼は回し蹴りを喰らわす。優子の召還獣は吹っ飛ぶ。

「こうなったらこれを使うわ。」

 優子はポケットからカプセル状の物を出す。中には馬の模型のようなものが入っていた。優子はそれを投げる。するとカプセルの中から馬が出てきた。

「なんか試召アイテムみたいだったからね。今が使い時と思ってね。」

 優子の召還獣は召還された馬に乗る。

「行くわよ!」

 馬に乗った優子の召還獣は絶狼に向け突進してくる。絶狼は回避するがややかすった。その痛みは鋼牙にフィードバックされた。

「ぐうっ!」

「降参するなら今のうちよ。」

「・・・・・・・いかない・・」

「はい?」

「ここで負けるわけにはいかない!クラスのために!あの人に追いつくために!」

「なんだか知らないけどこれで終わりよ!」

 優子の召還獣は馬と共に突進してくる。

「鋼牙!」

「鋼牙君!」

 Aクラスの生徒が勝利を確信したときであった。鋼牙が叫ぶ。

「銀牙!」

「ヒィィィィィィン!!」

 突如銀色の鎧を身に纏い、頭部に鋭い刃を持つ魔導馬・銀牙を召還する。

「なっ!馬っ!?」

 絶狼は銀狼に乗る。

「手綱を持ってないぞ!」

「どうやって操るんだよ!」

「はっ!」

 銀牙は優子の召還獣に向け攻撃を仕掛ける。

「くっ!」

 優子の召還獣も前に出る。銀狼剣と槍がすれ違う度に高い金属音を立てる。

「なかなかやるな。」

「そうなんですか、西村先生?」

「あそこまで魔導馬を使いこなすのは正直困難を極める。木下通子が使っているあれは一般性と向きに作られた馬で扱いやすいが魔導馬はその逆でな。使用する本人を選ぶ。そこが厄介だ。」

「つまり鋼牙君はあの魔導馬を自在に操ることができるんですね。」

「いや、それ以上にアイツはすごいぞ。」

「どういうことですか?」

「いずれアイツから言う時がある。その日を待ってやれ。」

 絶狼は二本の銀狼剣をブーメランの如く投げる。

「なっ!無茶苦茶よ!」 

優子の召還獣は馬を止めたと同時に絶狼の元へ銀牙剣が戻る。優子の召還獣が再度攻撃しようとした瞬間であった。絶狼は二つの銀狼剣を一つにした・剣銀牙銀狼剣を持ち銀牙の上に乗る。銀牙は後ろ足で絶狼を蹴り飛ばす。絶狼は宙を舞い裕子の召還獣に切りかかった。優子の召還獣は消滅した。

「そ、そんな・・・・・」

「いい勝負だった。また機会があれば戦いたいものだ。」

「・・・ねえいいかしら?」

「何だ?」

「アタシのこと優子と呼んでいいわ。」

「なら俺のことも鋼牙と呼んで構わん。」

「そうするわ、鋼牙。」

 鋼牙はFクラスの方へ戻った。

「よくやった鋼牙。」

「すごかったです!」

「ほんと。」

「・・・・・・・・・見事だった。」

「雄二、ここまでやったんだ。負けるな。」

「ああ。」

 

「最後の一人どうぞ。」

「・・・・・はい。」

 Aクラスからは霧島がでた。こちらは言うまでも無く・・・・

「俺の出番だな。」

 坂本雄二。こいつ意外考え付かない。

「強化は何にしますか?」

「教科は日本史、内容は小学生レベルで方式は上限ありだ。」

 雄二の言葉に皆がざわつき始めた。

「わかりました。そうなると問題を用意しないといけませんね。このまま少し待っていて下さい。」

 高橋先生は職員室の方へ向かった。

「雄二、勝て!」

「ああ。」

 数分後

「では最後の勝負、日本史のテストを行いします。霧島さんと坂本君は視聴覚室に来てください。」

 戻ってきた高橋先生が代表二人に声をかける。

「・・・はい。」

 霧島は短く返事をして教室を出て行った。

「じゃ、行ってくる。」

 雄二も続いて出て行った。このときは皆「大化の改新」が出たことで勝ったと思った。

 だが結果は残酷。

 霧島翔子 97点

    VS

 坂本雄二 53点

 この結果に頭を抱えたのは俺と西村先生の二人だけであった。

 

Fクラスの卓袱台がみかん箱になった。

 

「三対二でAクラスの勝利です。」

 高橋先生の言葉で皆は膝を突く。

「・・・・雄二、私の勝ち。」

 膝を突く雄二に霧島が歩み寄る。

「・・・・・殺せ。」

「そんなことはしない。死んで喜ぶものなどいない。」

「!」

「いたとしても俺は認めない!」

「・・・・・・・鋼牙。」

「攻めようにも自分がその場にいなかったんだ。どうこう言える立場じゃない。」

「・・・・いい?」

「なんだ霧島?」

「・・・約束。」

 そういえばそうだな。霧島の頼みごととは何だろう?噂では霧島は幾人の男に告白されたが全て断った話だ。一部では『百合』というなんか変な言葉で片付けている奴らがいるがそれは花の名前だろ。何でそんな言葉を言うんだ?

「・・・それじゃあ。」

 皆がつばを飲む音が響き渡った。というかすごいなこんなに響かせて。

「・・・・・雄二、私と付き合って」

 霧島の言葉に皆唖然していた。

「やっぱりお前諦めていなかったのか。」

「・・・・・私は諦めない。ずっと雄二のことが好き。」

「拒否権は?」

「・・・・・ない。約束だから今からデートに行く。」

「ぐぁ!放せ!やっぱこの約束はなかったことに・・・・」

 雄二はそのまま霧島に首根っこを引っ張られて教室から出て行った。

「さて、Fクラスの諸君。お遊びの時間は終わりだ。」

「もしかしてFクラスが試召戦争しすぎているせいで授業が遅れているため担任かつ補習担当が福原先生から西村先生に変わったって話ですか?」

「そのとおりだ冴島。」

『なにいっ!』

 Fクラス男子の悲鳴を上げる。

「いいか。お前らはよくやった。Fクラスがここまでやる正直思わなかった。でもな、いくら『学力が全てじゃない』と言っても人生を渡っていく上では強力な武器なんだ。全てではないといえ、なにがしろにしていいものではない。」

 正しい。

「とりあえず明日からは授業と別に補習に時間を設けてやろう。」

 まあそうなるとは大方予想していた。さて、屋上に行くか。

 鋼牙は気付かれずに屋上へ向かった。

「あれ?鋼牙?」

「どうかしましたか、美波ちゃん?」

「鋼牙がいないのよ。クレープ頼もうと思ったのに。」

「じゃあ私も一緒にいいですか?」

「んっ!いいけどその前に・・・」

「冴島君ならさっき億条のほうに向かって行ったよ。」

 愛子が二人に教える。二人が屋上に向かおうとしたときであった。突然笛の音が鳴り響いた。

「なに?この音?」

「笛?」

「というか曲みたいだね。」

 皆は笛の音に心奪われしばらく聞き入れていた。

「なんか心が静まっていく曲じゃのう。」

「・・・・・・・同じく。」

「そういや葉月が心が落ち着く曲聞いたって言ってたっけ。」

 皆はその笛の音を誰が吹いているか知らない。

 

 

説明
ウンメイノAクラスセン。テゴワイテキニタチムカウノハラクジャナイゼ。
『魔戒騎士』
オマエノチカラヲミセツケテヤレ、鋼牙!
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