魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第三十五話 更に騒がしくなった日常
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 「…とまあそんな事が一週間程前にあってな」

 

 「ふむ。君の周りにはなかなか面白い友人達が居るみたいだね」

 

 「銀髪トリオは友人でも何でもないけどな」

 

 今、俺はスカリエッティの新しいアジトにお邪魔しています。

 昨日、ダイダロスにスカリエッティから『引越しが完了したよ。ぜひ、一度遊びにきてくれたまえ』とのお誘いのメールを受けたのでこうして遊びに来ているのである。そして椿姫が海小に来た後、翠屋で起こった事を話していた。

 

 「結局、連中があまりにも五月蠅過ぎたので俺が認識阻害、アリシアが転移魔法使ってアースラの訓練室に飛ばしたんだけどな」

 

 クロノには『あまりポンポンと転移魔法で送らないでくれ』と言われた。

 済まんねクロノ、迷惑掛けて。でも他に転移させる場所が思いつかないんだ。

 ちなみにその認識阻害と転移魔法を見た椿姫は『((完成|ジ エンド))』の能力で早速自分の魔法として習得してしまった。本人曰く『レアスキル以外の魔法や技は直接だろうが記録された映像越しだろうが一目見れば確実に習得できる』だとか。レアスキルは習得出来ないのか…。

 

 「それにしても地球という星には随分と高ランクの魔導師が居るんだね。管理局に努めている君の友人も君と同じ地球出身なのだろう?本当に管理外世界なのか疑いたくなるね」

 

 その意見には否定出来ない。魔法文化が無いのにあそこまで高ランクの魔導師が同年代で存在するんだからな。俺達転生者は例外として。

 

 「まあ友達の内、フェイトとアリシアは地球生まれじゃないけど」

 

 「フェイト…私が基礎理論を構築した『プロジェクトF.A.T.E』によってプレシア・テスタロッサが生み出した少女だったね」

 

 スカリエッティの表情がやや曇る。何か思う所があるのだろう。

 

 「後悔してるのか?」

 

 「評議会に逆らえなかったとはいえ、人造生命体を生み出す事になった原因を作ってしまったのだ。とても許される様な事ではないさ」

 

 「でもそのおかげで俺はフェイトと出会い、友達になる事が出来た。そういう意味で『プロジェクトF.A.T.E』を生み出したアンタに感謝してる面もある」

 

 「…ありがとう。嘘でもそういって貰えると嬉しいものだ」

 

 別に嘘やお世辞のつもりで言った訳じゃなくて本心なんだがな。

 ズズ…と小さく音を立ててお茶を啜る。

 

 「それにしてもこの翠屋という店で売っているシュークリームというのは非常に美味しいね。ミッドでもこれ程の食べ物にはなかなかお目にかかれないよ」

 

 「俺達の住む街で、結構有名な喫茶店で販売されている洋菓子だからな。(パクッ…モグモグ…ゴクンッ…)…やっぱ美味いわ」

 

 ちなみに俺の味覚は完全に戻っている。だからこうやってシュークリームの味を堪能できるのだ。

 

 「娘達もきっと気に入るだろう。わざわざこんなお土産を持ってきてくれてすまないね」

 

 「そういやその娘達は?」

 

 「ウーノはデータの整理を、トーレとチンクは訓練スペースで訓練中だよ。クアットロは新しい娘達を作るために調整室に籠もっているよ」

 

 「待て待て。娘達を作るってアンタ…」

 

 「チンクが『自分より下の妹がほしい』と言ってきたのでね。親としては子の願いを叶えてやりたくてね」

 

 「だからと言って戦闘機人作ろうとするかね?普通に良い人見つけて子供産めばいいだろ?」

 

 「私は犯罪者だよ?好きになってくれる人がいるとも思えないし、元々チンクの妹達は勇紀君、君と出会う前からもう作り始めていたのでね」

 

 『中途半端な状態では終わらせたくない』というのがスカリエッティの言い分だった。

 …まあこれで原作通りナンバーズが全員生み出されるのは確定か。

 

 「まったく…俺が管理局員だったら逮捕してるぞ」

 

 「大丈夫、今の子達を作り終えたらもう戦闘機人も人造魔導師も作りはしない。約束するよ」

 

 そう言う事なら目を瞑るか。

 …………あれ?もしそうなったらヴィヴィオ生まれないんじゃないか?

 Sts原作開始の10年前、つまり今から2年前にドゥーエが聖王の聖遺物を盗んで、後にヴィヴィオを生み出した筈だったよな?確か…。

 もしそうなったらViVidの影響が大きすぎる気が…。

 そこの所聞いてみたいけど『盗んだ聖遺物はどうしてるんだ?』とか『聖王のクローンもう作ってんの?』とか聞く訳にもいかんし…。

 

 「それはそれで仕方ないのか」

 

 「???何がだい?」

 

 「いや、こっちの話だから気にしないでくれ」

 

 そう言って一区切りすると突然空間にディスプレイが表示され、画面の向こうに一人の女性がいた。

 

 「ド、ドクター大変です!!」

 

 画面の向こうの女性は慌てた様子で話し掛けて来る。

 …あれドゥーエだよな?

 

 「どうしたんだいドゥーエ?」

 

 やっぱりドゥーエだ。しかも地上本部の局員の制服を着ている。もうスカリエッティの自由は保障されてるのに一体何やってんだ?帰って来る気無いのか?

 

 「は、はい。実は先程最高評議会のメンテナンスを行うために評議会の連中がいる部屋に行ったのですが評議会の連中が何者かの手によって殺害されていたんです」

 

 「「へー、評議会の連中がねえ…」」

 

 俺とスカリエッティのセリフがハモり、『ハッハッハ』と笑いながらお互いコップの中にあるお茶を口に含み、そして…

 

 「「ブーーーーーッ!!」」

 

 盛大に吹き出してしまった。お互いの顔に噴き出したお茶がかかる。だが、そんな事を気にするよりもドゥーエは今、何て言った!?

 

 「ドゥ、ドゥーエ!!それは本当かい!?」

 

 「間違いありません!評議会の連中は何者かによって殺害されました!」

 

 ここで評議会の連中が殺されるとか予想の斜め上を行く展開だぞ!?。

 

 「……勇紀君、君はどう思う?」

 

 スカリエッティが問い掛けてきた。

 

 「多分、新しいアンタのクローンかそれとも別の人物かは分からないが評議会の連中が新たに『駒』として用意した人物じゃないのか?」

 

 「やはりそう思うかい。しかし評議会なら私の様に『枷』を付けてその人物を縛ると思うのだが」

 

 そうだ。評議会の連中なら当然自分達の命令に忠実に従わせる様に『枷』を付ける筈。だからその人物に評議会の連中を殺せるとは思えないのだが……。

 

 「スカリエッティ。評議会の連中が『枷』を付けるのに失敗したという可能性は無いか?」

 

 「あの連中に限ってそんな事は有り得ないだろう」

 

 俺が思い付いた可能性をスカリエッティが首を左右に振り否定する。評議会と面識があり、『枷』を付けられていた事のある本人が言うならその通りなのだろう。

 

 「……その人物についての情報が無いから何とも言えないな。ただ、『評議会の連中が殺された』というのは事実みたいだし」

 

 何となくだがこのままStsの原作が始まる事になればその人物が敵対勢力として立ちはだかる事になりそうな予感がする。というかなるだろうな確実に。

 

 「その人物についての情報が欲しいところだね」

 

 「そうだな」

 

 「ドゥーエ、悪いがその人物について調べてみてくれるかい?情報が無い以上、手がかりを見つけるだけでも大変だとは思うが」

 

 「分かりました、調べてみます。…それとドクター」

 

 「何だい?」

 

 「ドクターの正面にいる少年は誰なのでしょうか?」

 

 あ、ドゥーエの視線がこっちにきた。

 

 「ああ、紹介が遅れたね。彼が私の『枷』を外してくれた例の少年、長谷川勇紀君だよ」

 

 『どうも』と軽く会釈しておく。

 

 「貴方がドクターの言ってた…。私はドゥーエよ。ドクターを救ってくれた事には本当に感謝しているわ。ありがとう」

 

 「いえいえ、お気になさらずに」

 

 ドゥーエとしばらく話した後、俺はハンカチで顔に吹き掛けられたお茶を拭いながらスカリエッティの研究所を後にした。

 とりあえずレジアス中将にも評議会の件は伝えておくか。あの人も個人的に調べてるみたいだしな………。

 

 

 

 翌日…。

 

 「あー、今日の1時間目の授業は中止だ。代わりに10月に行われる運動会の出場種目決めをする」

 

 ((担任|ロリコン))の宣言で授業は中止となった。

 

 「今回の種目は100メートル走、二人三脚、障害物競争、借り物競争、騎馬戦、綱引き、玉入れ、学年毎のクラス対抗リレーの8つで綱引き、玉入れはクラス全員参加だ。競技には一人3つまで参加出来るがクラス全員参加の出場もカウントされるから実質自分で選べるのは1つだけだな。という事で100メートル走、二人三脚、障害物競争、借り物競争、騎馬戦、クラス対抗リレーの出場選手を決めるぞ」

 

 海小の運動会は毎年10月の第一日曜日に行われる。チーム分けは各学年の1組が赤組、2組が白組、3組が青組と3つの組に分けられる。

 

 「まずは100メートル走だが…これに出場したい奴はいるか?男女関係無く三人出場だ」

 

 100メートル走か…興味無いな。俺としては障害物競争に出場したいし毎年ジャンケンで負けたりクジ引きで外れを引いたりで一回も出場した事無いんだよなあ。。

 

 「はいはいはーい!!」

 

 元気良く手を上げて返事するのはレヴィ。

 

 「ふむ。((愛しい天使|リトル・レディ))なら足が速いから充分1位は狙えるな。他には?」

 

 「じゃあ僕が」

 

 亮太も挙手する。

 

 「坊主か。まあテメエも速いし構わんだろ」

 

 …ホント、男子と女子で態度違うねえ。

 あと一人は野球部に所属してる子で決定した。

 

 「次は二人三脚だ。これも男女関係無くペアを2組だ」

 

 「はい」

 

 隣の席の椿姫が手を上げた。

 

 「((愛しい天使|リトル・レディ))。君が出場するのかい?」

 

 「はい。私と((勇紀がペアで|・・・・・・))出ます」

 

 「は?」

 

 俺も勝手に巻き込んで…。

 

 「小僧とペアで出場するだと!?」

 

 「いや!俺出るなんて言ってませんから!!」

 

 だからそんなに殺気を込めて睨むな((担任|ロリコン))と男子共。

 

 「でも私以外に勇紀と出場する人が居ませんから」

 

 「だから俺は出るなんて言ってないっつーの!?」

 

 「えー、どうして?二人三脚なのよ?『運動会の競技だから仕方ない』という名目で身体を密着し合えるのよ?合法なのよ?」

 

 「「「「っ!!!!」」」」

 

 「んな事知るか!俺は障害物競争に出ようかと思ってたんだよ!」

 

 「なら私が出ます!」

 

 シュテルも手を上げて立候補する。おお、シュテルが椿姫と組んでくれるのか?

 

 「私ならユウキと一緒のペアでも構いません!!(密着…ユウキと密着)////」

 

 「いやシュテル!!俺出ませんからね!?」

 

 「僕が出る!!僕運動神経良いから絶対に僕と組んだら勝てるよ!!(ユウと密着かあ…えへへ)////」

 

 「レヴィ、俺が今言った事聞いてた!?それにお前100メートル走にも出るなら二人三脚出れないからな!?」

 

 「我ならばユウキの足を引っ張るような事はせん!我とユウキで組む!(合法でユウキと密着…こんなチャンス見逃せる訳なかろうが)////」

 

 「ディアーチェも!?俺は否定してるんだよ!?」

 

 「私です!走るだけなら運動音痴な私でも問題無いです!!何も無い所で転ぶ時も有りますけど頑張って克服します!!(ユウキと密着出来る事なんて滅多に無いんですからこの権利だけは誰にも渡せません)////」

 

 「ユーリもか!?俺の意見は聞いてもらえないんですかねえ!?」

 

 四人共、俺の言葉が全く耳に届いていないようだった。それぞれ威嚇するように睨み合う。

 

 「小僧!!毎回毎回貴様ばかりが何故良い思いをする!!」

 

 「「「「「「「「「「断罪だ!!断罪だ!!」」」」」」」」」」

 

 「俺は障害物競争に出たいってさっきから言ってるでしょうが!」

 

 今年こそ障害物競争に出場したいんだ。

 

 「あら?勇紀と組みたいって言う人が居るのね?じゃあ、私は身を引こうかしら」

 

 ニヤニヤしながら椿姫は辞退を申し出た。コ、コイツは…。自分がこんな状況作りやがった張本人の癖に…。

 

 「「「「ユウキ(ユウ)と組むのは私です!!(僕だよ!!)(我だ!!)」」」」

 

 「今日こそ貴様に地獄を見せてやるーーーー!!!」

 

 「「「「「「「「「「断罪だーーーーーーー!!!!」」」」」」」」」」

 

 「人の話を聞けーーーーー!!!」

 

 その後、『授業中ですから静かにしなさい!!』と隣のクラスの担任にこってり絞られ、結局今日は運動会の出場選手をキチンと決める事が出来なかった………。

 

 

 

 「「最高評議会の連中が殺害された!?」」

 

 少し時間は進んでただ今昼休み。俺は給食を食べ終えた後、亮太と椿姫を屋上に連れてきて人払いの結界を張った後、昨日スカリエッティの新アジトで聞いた情報を二人に話した。もっとも屋上に来るまでが苦労したけど。椿姫が余計な事(背後から抱き着いてきたり腕を絡めて来たり)するせいで((担任|ロリコン))と男子共には追い掛けられ無駄に体力を使わされ、シュテル達にはO☆HA☆NA☆SHIされかけた。

 コイツが転校してきてから俺は今まで以上に苦労している。『何か俺に恨みでもあるのか?』と聞きたくなる程に。

 どうして俺はこんな目に遭わなければならんのだ?

 …話が少し逸れてきてるな。俺の言葉を聞き終えた二人は驚いた表情を浮かべている。

 

 「評議会ってあの脳味噌連中だよね?」

 

 「ああ。メンテナンスを行おうとしてたドゥーエが部屋に入ったらポッドごと真っ二つに斬り捨てられていたらしい」

 

 「犯人は分かってるのかい?」

 

 「それがわかりゃあk「ちょ、ちょっと待ってくれる!?」…んあ?」

 

 「私には何が何だかサッパリなんだけど?評議会ってStsでドゥーエに殺されたのでしょう?それがどうしてこの時期に?そもそも勇紀、貴方スカリエッティと通じてるの?」

 

 そういや椿姫にはまだ話してなかったか。

 俺はスカリエッティと出会った時の事や原作と違う現状の事も含めて椿姫に話した。

 

 「…つまり勇紀の家には今、メガーヌとルーテシアの二人が住んでいてゼスト、クイントも生きて勇紀のお父さんと一緒に居るって事?」

 

 「ああ」

 

 「何だか原作ブレイクしまくってるわね」

 

 「これから先の未来、俺達の知ってる原作知識は何処まで役に立つか分からないから椿姫もあまり原作知識に頼り過ぎるなよ?」

 

 「ええ、肝に銘じておくわ」

 

 椿姫はしっかりと頷く。

 

 「それで?これからどうするんだい?」

 

 「うん?特に何かするつもりはないぞ」

 

 「何も?」

 

 「そもそも評議会を殺した奴の情報が全く無いからな。調べようにも調べられん。だから何らかの情報を得られるまでは普通に日常を過ごすさ」

 

 「…スカリエッティが敵に回らないのならその謎の人物がStsの敵として現れそうね」

 

 椿姫も俺と同じ結論に至ったか。

 

 「僕も椿姫の言う通りだと思う。後はナンバーズに代わる敵も出て来るかもしれないね」

 

 「その可能性もあるな」

 

 評議会の連中を殺した奴がスカリエッティ並に頭のキレる奴なら戦闘機人を作ってくるかもしれない。ついでにガジェットの様なモノも。

 

 「ま、何にせよ今の俺達が出来る事なんて何も無いから大人しくしとこう」

 

 「「わかったよ(わかったわ)」」

 

 言いたい事を言い終え、話す事が無くなった。時計を見るともう昼休みが終りそうだったので結界を解き俺達は教室に戻る。しかし教室に戻るまでに再び鬼ごっこをする羽目に。亮太は見て見ぬフリ…椿姫はこの状況を楽しそうに見てるだけ…。おまけに教室に戻ると午後の授業が始まるまでシュテル達に『椿姫と二人で何をしていたのか?』と問い詰められる始末。亮太も一緒だったから三人なのに。

 精神が完全に疲弊したおかげで午後の授業中は顔を机に付け突っ伏したまま授業を受け、内容は全く耳に入ってこなかった………。

 

 

 

 「あはは、それで勇紀君はそんなに疲れてるんだね?」

 

 また椿姫のせいで((担任|ロリコン))と男子達を相手にするのは面倒臭いのでHRが終わると同時に俺は教室を飛び出して神社へとやってきた。そして那美さんに今日の出来事を話しながら子狐形態の久遠をモフモフしています。つぶらな瞳の久遠はマジ癒しだわ。

 

 「ただでさえ、よく((担任|ロリコン))と男子達に追いかけられる事が多いけど椿姫が来る前は毎日って程じゃなかったんですよ。しかしこの一週間はほぼ毎日が鬼ごっこですね」

 

 帰った時にはヘトヘトだよ。しかもシュテル達がやたら不機嫌な事が多い。

 

 「その椿姫ちゃんっていう子は勇紀君の事好きなんじゃないの?」

 

 「有り得ない…有り得ないよ那美さん。((椿姫|アイツ))は周りの連中を煽って俺が苦しむ姿を見て笑うとんでもない奴なんですよ」

 

 むしろアイツに好かれるなんて考えるだけでも恐ろしい。

 

 「アレは羊の皮を被った悪魔です。そんな奴に好きになられても俺は困ります」

 

 「そんな事言うなんて私は悲しいわ」

 

 「「「わっ!?(きゃっ!?)(くうっ!?)」」」

 

 背後から聞こえてきた突然の声に俺達は驚く。声の主は椿姫だった。コイツ、((腑罪証明|アリバイブロック))使ってここに現れやがったな。

 

 「…那美さん、コイツです。コイツが今話してた悪魔です」

 

 「それ以前にいつの間にここにいたの!?」

 

 「たった今来ました。勇紀が『アレは羊の…』と言ってた辺りから」

 

 ホントにたった今だな。椿姫は那美さんの方をジッと見て

 

 「初めまして。滝島椿姫と言います」

 

 「あっ、はい。私は神咲那美って言います」

 

 お互いに頭を下げて自己紹介し合う。

 

 「えっと…椿姫ちゃん、でいいのかな?さっきまで後ろには人が居る様な感じは無かったのにいつの間に私達の背後に回り込んだの?」

 

 「那美さん、コイツも俺と同じ『魔導師』なんですよ」

 

 「あっ、そうなんだ。じゃあいきなり後ろにいたのも魔法なのかな?」

 

 「ま、そんなところです」

 

 『なら納得だよ〜』と頷く那美さん。

 

 「…で、何でここに来たんだよ椿姫?」

 

 「勇紀を放課後デートに誘おうと思ったのだけど真っ先に走って教室を出て行くんだもの。今からでも遅くはないわ。デートしましょ」

 

 「絶対に断る!!」

 

 「即答で『絶対』は酷いんじゃない?」

 

 そんな事知るか。誰が地獄への片道切符を好き好んで取るというのだ。

 

 「それに亮太や他の男子がいるだろ?そいつ等に頼め」

 

 「亮太は用事があるって言って帰っちゃったし、他の男子達は一緒に居ても楽しめそうな感じしないし…」

 

 「じゃあお前も素直に帰れ」

 

 「だって、すぐ家に帰ってもつまらないじゃない?だから勇紀で遊ぼうと思って」

 

 「今、俺で遊ぼうって言ったよな!?『俺と』じゃなくて『俺で』遊ぼうって言ったよな!?」

 

 やはりコイツは俺に心労を与えてくる存在だ。

 

 「あはは…」

 

 そんな俺達のやり取りを見て那美さんは苦笑い。

 

 「二人共、仲が良いんだね」

 

 「はい。私達ラブラブですから」

 

 「那美さん。さっきの会話でそんな風に思えるなら迷わず耳鼻科に行く事をお勧めするよ」

 

 「勇紀はツンデレですので気にしないで下さい」

 

 「誰がツンデレじゃコラ!!」

 

 コイツ、女だけど殴っていいよな?身体強化した拳で思いきりブン殴ってもいいよな?

 

 「あっ!そうだ勇紀君。今度暇な時でいいからさざなみ寮に来てくれないかな?」

 

 「???さざなみ寮にですか?」

 

 「うん、寮の皆が会いたいって言ってたから」

 

 「あー…」

 

 そういえば那美さんと久遠が以前、海鳴に居た時は何度かお邪魔させて貰った事もあったなあ。那美さんが海鳴を離れてからは自然と遊びに行く回数も減ってシュテル達と一緒に住む様になってからは行く余裕が無かった。

 

 「そうですね。『今度お邪魔させて貰う』って寮の皆に言っといて貰えますか?」

 

 「うん、伝えとくね」

 

 「寮って?」

 

 一人、会話に交じれない椿姫が聞いてきた。

 

 「私が海鳴を離れる前と、帰ってきた今もお世話になってる『さざなみ寮』っていう女子寮の事だよ。勇紀君は昔さざなみ寮によく遊びに来てたから」

 

 「女子寮…ですか?」

 

 何か考える様な仕草を取り、少ししてからニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。

 ……何か凄く嫌な予感。まさか椿姫の奴…。

 

 「那美さん、私も行っていいですか?」

 

 やっぱりかーーーーーー!!!

 

 「うん、いいよ」

 

 しかも許可された!!

 

 「ふふ、じゃあ今度勇紀と一緒にお邪魔させて貰いますね」

 

 「俺は絶対にお前とは行かんからな」

 

 行くなら一人で行きやがれ。

 俺は久遠を那美さんに渡し、椿姫から逃げる様に神社を後にする………。

 

 

 

 次の日…。

 

 「昨日は((少々|・・))トラブルがあったため、決める事が出来なかったが今日はちゃんと運動会の種目に出場する選手を決めるぞ」

 

 またも1時間目の授業を止めて昨日の続きを行う((担任|ロリコン))。昨日のアレを『少々』で済ませていいものか?

 

 「とりあえず二人三脚だが…」

 

 その言葉に反応し、一斉に手を上げるシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、そして俺と亮太を除くクラスの男子達。どうやらシュテル達と組みたいみたいだな。

 

 「???ユウキ、何故手を上げんのだ?」

 

 「昨日から言ってるだろディアーチェ。俺は障害物競争に出たいんだよ」

 

 「むっ、それは我と組みたくないという事か?」

 

 「何でそうなる…」

 

 不機嫌そうな表情になるディアーチェ。俺は溜め息を吐く事しか出来ない。

 

 「お前は我が他の者とペアになっても良いというのか?」

 

 「逆に聞くがお前は嫌なのか?」

 

 「あ、当たり前だろう!我はその…ユ、ユウキと組みたいのだ///」

 

 何でそこまで俺にこだわるのかね?

 

 「それに二人三脚は昔、出場した事あるからなあ。俺としてはまだ参加した事無い競技に出てみたいんだ」

 

 二人三脚だけでなく100メートル走、借り物競争、騎馬戦にも出場した経験があるから唯一、出場した事の無い障害物競争に出たいと思うのも当然だろう

 

 「…その時のペアは女子だったのか?」

 

 「ん?ああ、女子だったよ」

 

 「他の女子とは組んだ事有るのに我とは組めんと言うのか!?」

 

 いきなり大声で怒り出すディアーチェ。何故怒られる?

 

 「「「他の女子と組んだ事が有るですって!?(組んだ事が有るだって!?)」」」

 

 シュテル、レヴィ、ユーリもディアーチェの言葉を聞いた瞬間、俺の席の側までやってきた。一応授業中なんだから席立ってこっちきちゃ駄目だろ。そこん所注意しろよ((担任|ロリコン))。 

 

 「私とは組めないのに他の女子とは組めるとでも言うのですか!?」

 

 「いや、シュテル。組める組めない以前に俺は障害物競争に出たいって何度も言ってるよね!?」

 

 「不公平だ!不公平だよユウ!!」

 

 「そうです!他の女の子と組めるなら私とだって組める筈じゃないですか!!」

 

 「「「「「「「「「「長谷川テメエッ!!過去にそんな美味しい思いをしておきながら尚、二人三脚に参加しようと言うのか!!?」」」」」」」」」」

 

 …もう嫌だ。人の話を聞かない連中が多数。どう説得したらいいんだよ。

 

 「もうクジ引きで決めたらどうですか?」

 

 不意に隣の席の椿姫が提案する。

 

 「これ以上、選手を決めるのに時間を掛けるのもアレですからクジ引きで公平に決めたら誰も文句は言えないと思いますから」

 

 「流石は((愛しい天使|リトル・レディ))。素晴らしい判断だ。早速クジを作るとしよう」

 

 「という訳よ。二人三脚に参加したくないなら外れのクジを引きなさい勇紀」

 

 「待て!!俺は参加したくないんだからクジ引く必要無いだろ!?」

 

 「でも貴方がクジを引かないとそっちの四人は納得しなさそうだし」

 

 椿姫の言う通り四人共むすっとした表情をしている。

 

 「それにこのままだと『貴方が参加しない→シュテル達も参加しない→男子達も辞退→結局決まらない』って事になるのよ。だからクジを引いてほしい訳」

 

 「…でもなあ」

 

 「さっきも言ったけど嫌なら外れを引けばいいだけよ」

 

 「……分かったよ。引けば良いんだろ引けば」

 

 クジに参加するのは俺を含めて二十四人。その内、当たりクジは4枚。つまり6分の1の確率で当たる訳だ。

 待つ事数分……。

 

 「クジが出来たぞー」

 

 ((担任|ロリコン))の教卓の上には小さく折り畳まれた紙のクジが用意される。紙にはそれぞれアルファベットの『A』と『B』が2枚ずつ書かれているらしく、『同じアルファベットを引いた者同士が組む事』と言われた。外れの場合は白紙らしい。俺は最初にクジを引かせてもらう。外れの紙が多い状態で当たりを一発で引くなんて事はまず無いだろう。

 

 「……これだな」

 

 引いた後は自分の席に戻る。全員が引き終えるまで見てはいけないらしいので素直に待つ。

 全員が引き終えたので俺は折り畳まれたクジを開いていく。そして………。

 

 

 

 放課後…。

 

 「〜〜♪〜〜♪」

 

 現在帰宅中の俺の横には超ご機嫌なシュテルがいた。今回の二人三脚で俺と組む事になったのだ。

 俺とシュテルが引いたクジはお互いに『A』だった。…何で外れが20枚も有る状況で当たりを一発で引いてしまうんだ?

 おかげで今年も障害物競争には参加出来なかった。逆にディアーチェが障害物競争に参加する事になった。…羨ましい。

 レヴィは100メートル走だし、ユーリは借り物競争。借り物競争は何を借りるか運の要素も若干含まれるから走っている時によく転ぶユーリでも借り物次第ではトップを取れる可能性は十分にある。

 この結果に((担任|ロリコン))と男子共は殺意の籠もった視線をひたすら俺に向けてくるし、亮太は同情的な視線、椿姫はニヤニヤしていた。

 そしてレヴィ、ディアーチェ、ユーリの三人は…

 

 「むう〜(シュテるんいいなあ)」

 

 「ぐぬぬ(シュテル、我を差し置いて)」

 

 「うう〜(ユウキと密着したかったです)」

 

 何やら俺とシュテルの後ろから唸っている。

 

 「ユウキ、二人三脚は二人の息をピッタリと合わせて走らないとすぐに転んでしまいますよね?」

 

 横に居たシュテルが唐突に口を開く。

 

 「ん?そうだな」

 

 「今の私とユウキでは上手く息を合わせられるか分かりません。ですから…」

 

 シュテルが『コホン』と咳払いをして

 

 「ユウキと息を合わせられる様、今日から運動会の本番までユウキと二人三脚の練習を希望します」

 

 「練習ねえ…。別に構わんが」

 

 二人三脚の練習するなら家の庭でも十分か。家に紐あったかな?

 

 「本当ですか!?なら今すぐ帰って練習しましょう!!」

 

 俺の手を引いてシュテルが走り出す。

 

 「ちょ!?いきなり走るなって」

 

 抗議の声を上げるが聞いちゃいねえ。

 

 「シュテるん!何してるのさ!!」

 

 「ドサクサに紛れてユウキの手を握りおって!!」

 

 「流石に見過ごせません!!」

 

 何やら怒り出した三人が追いかけてくる。…あ、ユーリ転んだ。

 

 「ふふふ…ユウキと密着ユウキと密着ユウキと密着ユウキと密着……////」

 

 怖っ!?シュテルさんが呪詛を呟いてるよ!!?

 

 「「「待てーーーー!!!!」」」

 

 レヴィ、ディアーチェ、そして起き上がって二人に追いついたユーリが叫びながら追ってくる。しかしユーリはやはり転ぶ。

 …後で治療魔法使って治療してあげよう。

 そんな追い掛けっこが家に着くまでの間、ずっと続くのだった………。

 

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
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コメント
椿姫の態度見てるとどうもからかい以上の何かを感じるんだよね・・・かといってまだ『好き』までは行ってない気もするし・・・(海平?)
椿姫は勇紀の前世での知り合いとかなのだろうか。でもそれなら勇紀の方も気付くか。ヴィヴィオはStS原作ブレイクの悩みどころですが、GODのときに未来から来ていたのなら何処かで生まれるはず。(chocolate)
↓↓「完成」で割とどうとでもなりそうだ。 ↓やはり呪詛をつぶやくかと…(黒咲白亜)
勇紀はある意味強運の持ち主だね。それと長谷川家以外のラバーズの反応は・・・・・・・・(tenryu)
椿姫は絶対勇紀のこと好きなんだろうな。でもいつ好きになったのかが謎。実は好きではなく、からかっているだけなのか?だとしたらすごい演技力。(ohatiyo)
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