IS x アギト 目覚める魂 20: 交錯する心 |
場所は変わってGトレーラーの中では、アンノウンの話を拝聴していた五人はその余りに現実離れした話に舌を巻いていた。
「成る程。」
「そう言う事でしたの・・・・」
「何か、凄い事聞いちゃったわね。」
「現実離れしてるけど、あれ見ちゃったら、ねえ・・・・」
「納得せざるを得ないな。」
「この事は、極力秘密にして欲しいの。私達には、狙われるのが特定の人物とその血縁関係者と言う風にしか分からないし、血縁関係者全員を殺されてしまったら次に誰が狙われるか分からない。要するに、アンノウンとの勝負でもあるけど時間との勝負でもあるって訳。」
「でも・・・・もしまたこんなのが現れたら、どうすれば・・・・?」
「逃げるのよ。」
あっさりとそう言われてしまい、面食らう五人。
「に、逃げるって・・・・!」
「言ったでしょ?アンノウンを相手に戦おうとしても無駄なの。ISを含めた既存の兵器はアンノウンの障害にはなりえない。ゴミ同然よ。絶対防御だか何だか知らないけど、そんな物奴らを相手にしたら無いも同じだから。間違っても戦おうとしないで。死ぬわよ。」
「しかし!」
「あーもう!でもも糞も無いの!貴方達のうちの誰が狙われてもおかしくないんだから、戦えないなら逃げるしか無いでしょ!?逃げる事を恥と思う事こそ恥じよ!逃げて次の戦いに備えるか、死んでそのまま終わるか、どっちが良いか位貴方達なら分かるでしょ!?」
尚も食い下がろうとする箒を相手に遂にキレる小沢澄子。その迫力は、今やG-5の教官になった尾室隆弘を今も畏縮させると言う。代表候補生達も例外ではない。
「兎に角、アンノウンと交戦する事は無謀だって事を覚えておきなさい。良いわね?!」
千冬とはまた別のオーラを感じ取って有無を言えず頷いた。
「では、何故あのパワードスーツは戦えるんですか?ISが相手じゃ倒せないって言うけど・・・・」
「あれには確かにISの技術を転用しているけど、ISとは全く違うのよ。シールドエネルギーなんて生温い物は無い。詳しい事は特秘事項だから教えられないけど、あれは警察組織が総力を挙げて作る事が出来た物だと言う事は言っておくわ。向こうもそろそろ話が終わった頃だと思うし。」
トレーラーから降りると、確かに一夏、簪、千冬、そしていつの間に来たのか、秋斗の計四人が待っていた。
「そう言う事だ。小沢さんの説明で納得が行った事を祈っている。これ以上余計な詮索をされると結構・・・・いや、物凄く迷惑だから。」
「この事は、他言無用だ。漏らせばどうなるかは分かっているな?」
千冬もまた彼女達を睨む。
「よろしい。帰るぞ、小娘共。」
一夏はタンデムシートに簪を乗せた。
「一夏、続きは寮に戻ってからだ。」
フルフェイスのヘルメットを被っている為表情は見えないが、頷き、バイクのアクセルを捻った。秋斗も愛車を駆り、モノレールの駅へと向かった。
「教官・・・・・」
「何も言うな。帰るぞ。」
千冬の声は震えていた。僅かだが、千冬を良く知る箒、鈴音、そしてラウラはそれを感じ取り、口を噤む。
モノレールの中で三人は何も言わずに座っていた。
「一夏・・・・・」
「すまない。今は暫く一人にしてくれ。また後で話そう。今は、ちょっと・・・・」
一夏は低い声でそう言うと、別の車両に移動した。
「あの・・・・・門牙、さん・・・?」
「ん?」
「門牙さんは、知ってたんですよね?アギトの事。」
「まあな。あのフェリー、あかつき号には俺も乗り合わせていた。親はもう死んだ。あの船の上で。海に投げ出されて、もうどうなったかは分からないがな。兎も角、結果的に俺はアギトの力を手に入れて、今までアンノウンを見つけた側からぶち殺して来た。でも、アギトの力を持つのは俺やあいつだけじゃない。他にも何人かいる。彼らも、過去に偶然同じ名前のフェリーに乗っていたんだ。そこで、アギトの『光』を手に入れた。」
「そう、ですか・・・・一夏も、戦ってるんですよね・・・・?」
「ああ。そうだ。俺達の仲間として戦っている。俺は何も無理強いはしていない。あいつが、自ら望んだ事だ。俺はそれを尊重したに過ぎない。」
「でも、何でですか?!何でそんな物があるんですか?!アギトの『光』は、何でよりにもよって一夏を選んだんですか!?彼じゃなきゃ駄目なんですか?!」
彼を責めるのは筋違いだと分かっていながらも、そう言わずにはいられなかった。十年近く会わなかった初恋の相手の口から突如あの様な現実離れした話を聞かされてしまったのだ。無事でいて欲しいと思うのは当然の事である。
「アギトの力は、誰にでも宿る可能性がある。あれは、人類の可能性だ。俺を責めるのはお門違いだぞ。」
「一夏から、アギトの力を取り除いて下さい。」
「無理だ。」
秋斗は首を横に振る。
「アギトの『光』は本人の意思で、または極度の衰弱状態に陥っていなければ引き離す事は出来ない。一夏は早々その力を手放そうとはしないだろう。これは、あいつの意地みたいなもんだ。あいつと過ごした時間は短いが、あいつの意志の強さは分かる。同じアギトとして。だから、あいつの気持ちを無駄にしないでくれ。守る為に必死なんだ。だから頼む。あいつの事を、見限らないでやってくれ。」
「分かりました。でも、もし一夏が自分から力を手放すって言ったら、その時は」
「ああ。その時は、俺が責任を取って、あいつの力を取り込む。誓う。あいつの事、見てやってくれ。」
簪は何も言わずに一夏が移動した車両に入って行く。そこで見たのは、泣いている一夏だった。
「一夏。」
そして頭を両手にやっている一夏の背中に腕を回す。
「大丈夫だから。ね?」
過去にいつも一夏がやっていた様に簪は彼の頭を撫でてやり、自分の膝に乗せてやる。
「よしよし。」
まるで赤子をあやす様に優しい声で頭を撫で続ける。
「ありがとう。私達を守ってくれて。」
一夏は何も言わず、学園にモノレールが学園に到着するまでの間片時も彼女の手を離さなかった。
(絶対に守り切らなきゃならない。絶対に・・・!!)
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二十話です。どうぞ | ||
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大いなる力は、大いなる責任が伴うbyスパイダーマンのセリフより抜粋(yosiaki) | ||
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