超次元ゲイムネプテューヌ 3dis Creators_019 |
第2章 ニュー・フレンズ
C019:注文の多いくるみ割り人形
○ゲイムギョウ界中央部・アイデン村・村長邸・大廊
子供が走りまわってしまいそうなほど広い空間に木製の座席が並べられ、両端には各部屋に通じるドアがある。
大廊の部分だけを見れば女神の教会に似たような作りになっている。
ノワール、一番奥にある書斎へのドアをノックする。
???「入れ」
扉の奥からぶしつけな30代らしき渋い男の声が聞こえてくる。
ノワール、一瞬ムッとしながらもドアノブをひねり、押してドアを開く。
○同・書斎
白熱の光源のみで明るくなっている部屋が見えてくる。
ノワール「失礼するわ」
???「あぁ失礼だな」
ノワール、男が投げつけた言葉に一瞬だけ硬直する。
ノワールに続いてモコ、ネプギア、ブラン、ベールと書斎に入ってくる。
モコ「遊びにきたよー!」
ネプギア「お邪魔します……」
???「遊びに来る所じゃないし、邪魔だと思うなら来ないことだな」
ネプギア「えぇぇ……」
男から投げつけられる言葉に一同、戸惑いや苛立ちを思わず表情に出してしまう。
ベール「……あら?」
ベール、その声の主らしき者の姿がこの部屋にはないことに気付く。
あるのは本の高さや配色まで綺麗に整頓された本棚に中央にある大きな机。
社長室のようにも思えるそこはこれと言って変わった書斎ではない。
唯一変だとすれば、その机の上にぽつんと残された兵隊のくるみ割り人形か。
ブランも辺りをざっと見回してみる。
ブラン「誰もいないわ……じゃあ今の失礼な声は」
???「お前の真正面だ」
ブラン「!?」
思わず真正面を向いてしまう。
しかしやはりあるのはピクリとも動かない兵隊のくるみ割り人形。
???「全く……ここにつれてくる奴ぁもうちょっと選べよ、モコ」
モコ、いつもの調子で首をかしげる。
視線は兵隊のくるみ割り人形の方に向いている。
モコ「どおしてー?」
???「俺はお前と違って誰もかれもとつるみたがる奴じゃないんだ」
ネプギア、もう一度左右を確認した後、恐る恐る兵隊のくるみ割り人形に尋ねる。
ネプギア「もしかして……喋ってるのはお人形さん……?」
???「そうだ」
人形は、口すら全く動いていない。
ネプギア、ノワール、ブラン、ベール「……」
ネプギア、ノワール、ブラン、ベール、とてつもなく何か言いたげな、突っ込みたげな表情と間。
ノワール、何とかそれを飲み込んで一回咳払いした後。
ノワール「……あなたがアイデン村の村長?」
???「そうだ。俺が村長のデン・セーカツ・ハンだ」
ネプギア、ブラン、ベール、各々吸い込まれるように別の角度から村長を見つめだす。
村長、気にせずにぶしつけで疲れているかのような声で話を続ける。
村長「ゲイムギョウ界の女神様方が、俺に何の用だ?」
ノワール、その場で挑発するかのように。
ノワール「あら。てっきりそういうのに疎いのかと思ったわ。知ってて安心した」
村長「できれば知っていたくなかったがな」
ネプギア、思わず村長を手にとって眺めてしまう。
持ち上げられた村長、いろんな角度で宙を舞う。
モコ「お外で遊んでていーい?」
村長「いいからもうお前は出てけ」
モコ「はーい」
そう言ってぱたぱたと書斎を出ていくモコ。
それを目だけで追うノワール。
村長に目が釘付けな3人。
○同・村長邸前・ブロック広場
モコ、自分の腰くらいの背丈でアンテナのようにしっかりした形のアホ毛をはやした子供達と遊んでいる。
一生懸命積み上げていたブロックが少年に崩されて、少女が泣き出す。少年が少女の頭をアホ毛を避けて撫でて、一緒に直そうとブロックに手をかける。
モコも一緒にブロックの積みなおしを手伝う。
ノワールの声「用件は一つよ」
○同・村長邸・書斎
ノワール「私達の国民がこの村に移り住んだ理由を、出来得る限り教えてちょうだい。村民にアンケートを取って私達に送ってもいいわ。なぜ村の住民を名乗るようになったか。なぜ自分達の故郷の国を離れたのか。私達はそれを知りたいの」
村長「断る」
ノワール「……え?」
村長はベールの手に渡る。
今度はベールがその感触や材質を味わうかのように眺め始める。
村長「村の内情を外に晒す気は毛頭ない。俺と村人との契約だ」
ノワール「もうそんなこと言ってる場合じゃないの! 国から人が減れば、それだけシェアが減って女神も弱る! そして国も弱るのよ!?」
村長「俺達には関係のないことだ」
ブランが物欲しそうにベールの手の中の村長を見つめている。
ノワール「なんですって!? 関係ないわけないでしょ!? これはゲイムギョウ界全体の危機なのよ!? 犯罪組織もよみがえって、マジェコンがまた出回り始めたの! 今シェアを集めないと、私がまともに戦えなくなって、マジェコンでラステイションが崩壊するのよ!?」
ベール、ノワールの言葉にまゆをひそめて反論する。
ベール「ノワール、最後のはおかしくなくて? 今はあなた個人とラステイションの話をしているわけではなくてよ?」
ノワール「事実を言ったまでよ」
ベール「結局は自分のことしか考えていないということですの?」
ブランがベールの手の中の村長に手を伸ばそうとすると、ベールがふいっと振り向いて渡そうとしない。
ノワール「そうじゃないわよ! ラステイションは物流の要なんだから一番潰れたらまずいのは明らかじゃない!」
ブランの手が空を握ったままひっこめられた。
ベール「それなら情報を扱っているリーンボックスが優先されるべきでなくて?」
ブラン、村長を取りに行こうとベールに近づく。
ノワール「情報なんて((人|プログラム))が流れれば自然と流れるわ!」
そしてベールから村長を取り上げようとするが、ベールが意地悪してブランの手が届かない所にまで村長を高くあげる。
ベール「((今日|こんにち))のビジネスではっ……」
ブランが軽くジャンプしても、ベールが村長を遠ざけて取れない。
ベール「通用いたしませんわ!」
ノワール「所詮その程度ってことじゃない! リーンボックスも、ルウィーだって!」
ベールから村長を取ろうにも、背と手が届かずに四苦八苦する。
いじめっ子がおもちゃを取って返してくれない図。
ネプギア、わけも分からずとりあえずおろおろする。
ブラン「どうしてそこでっ……ルウィーが出てくるっ……」
しまいにはがむしゃらに腕をバタバタさせるブラン。
ノワール「生ぬるいのよ! ルウィーは! 全体的に! 特にゲーム! 家族向けーとか言ってゲームのクオリティとか難易度やたら下げるじゃない! スリルが落ちるわ!」
ブラン「それの何が悪いんだよ! 下手糞にこっちのコントローラーまねた所為で、やたら難しくしてるお前んとこのよりましだろ! コントローラー投げられてんぞ!?」
ベール「その点わたくしの国は両方の点で最高の水準を満たしていますわ!」
ノワール「じゃあ売上高が一番低いのは何でよ?」
ブラン「ギャルゲ―とかコアゲーしかよりつかねぇから引かれてるんじゃないのか?」
ベール「そっちがサードパーティー占有するからですわ! こっちだって、こっちだってぇ!」
ネプギア、またしても3人が喧嘩を始め、おろおろとひたすらに首を左右に振り続ける。
村長「お前らがそんなんだから、国から((人間|プログラム))が離れていくんじゃないのか」
ベールに高々と掲げられてしまっている村長の言葉で、ぴたっと静止する3人。
村長「つーかいつまでも手で持つな机の上に戻せ」
少しの沈黙の後、しぶしぶ机の上に村長を転がすベール。
村長「転がすな。ちゃんと立てろ」
そう言われた直後、ブランがムキになったように机に音を立てるほど思い切り村長を叩いて立てる。
ネプギアが何かを見つけ入って右側の本棚の端に向かう。
村長「痛ってぇな……お前らは俺の前で喧嘩するためにここに来たのか?」
そこは小物置き場になっており、ネプギアはくるみを見つける。
村長「だったら余所でやれ塗装がはげるくらい迷惑だ。俺達はお前らの罵り合いにつきあうために生きてるんじゃ──」
さっそく村長の口の中にくるみを挟み込む。
村長「はもっ!?」
するとくるみが割れる。
村長「くるみ割って遊ぶな。顎とか歯とか痛ぇんだぞ?」
ネプギア「くるみ割り人形なのにですか……?」
村長「さっきまではフォーミュラカーだった」
ネプギア「そうなんですか……?」
ブラン「ウソね……絶対ウソ」
村長「用が済んだなら帰れ。村人のシステム対応で忙しい。おい紫のお前」
ネプギア、「わたし?」と自分を指さす。
村長「そうだお前だ。俺を机の後ろにある荷車に乗せろ」
村長の机の後ろには言うとおり、乗せた段ボールの上にわざわざ戦車のような形をしたミリタリーカラーのコクピットが用意されている。
村長「くぼみがあるだろ。その中に俺を入れればいい」
確かに村長が乗り込めるような形で上にくぼみがある。
ネプギア、村長をくぼみに入れようとする。
但し、戦車の真正面に位置する砲身のくぼみに、今にも村長を撃ちだしそうな形にして。
村長「そっちじゃねぇよ普通に上のくぼみだバカ」
注意されて、砲身に入れかけた所をきちんと上のくぼみに入れる。
ネプギア「っ!? 動いた!?」
誰も押していないのに荷車が勝手に動き出した。
勝手に開く扉。
ノワール「いたっ……」
背中をそのドアに叩かれて押し出されるノワール。
扉の奥に吸い込まれるように入っていく村長を乗せた荷車。
○同・村長邸前・ブロック広場
『エンゼルプレイの時間だよー。エンゼルプレイの時間だよー。エンゼルプレイの時間だよー』
モコ「??」
少年「あ……」
少女「そろそろ行かなきゃ!」
アンテナのようなアホ毛の子供達が放送と共に立ち上がる。
モコ「どこ行くのー?」
少年「そろそろエンゼルプレイの時間だから」
少女「ばいばーい」
子供達はモコに向けて手を振ったあと、ちょこちょこと小刻みすぎる歩き方をする。
モコ、首を傾げたまま手を振り返す。
モコ「ば、ばいばーい?」
手を下ろし、首を元の位置に戻す。
少しして、扉が勝手に開き、荷車と共に村長が出てくる。
モコ、村長に対しても手を振る。
モコ「そんちょーもばいばーい」
村長は何も返事せずに行ってしまう。
それからすぐに、ネプギア達が村長邸から出てくる。
モコ「あ、ぎあちゃーん♪ ……ほ?」
モコがネプギアに両手を振ると、ノワールの姿が目に留まる。
そのノワール、その目にうっすらと涙を浮かべ、声を洩らさないように口をきゅっと結んだまま、顔を見せないように俯いている。
ネプギア、ノワールに気を遣うように。
ネプギア「とりあえず、ラステイションに戻りましょう? ノワールさん」
ノワール「……」
ノワール、口を結びなおすのみ。
モコ「ほぇ……」
モコ、そんなノワールの姿を見つめ、黙って過ぎ去る一同の後に再びついていく。
説明 | ||
今更ながらバーチャレーシング(メガドラ版)にハマる。 16bit機のくせにROMカセットの方に無茶仕込んで無理やりポリゴン描画させた意欲作です。 やっぱりなんか画面がべたーっとしている感じですが、それでもすごいもんです。(そんなウチはセガ信者 2013/1/7 「用件は一つよ」の後のセリフ、見ず知らずの村長に話す導入として不自然だと感じたので修正。 |
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コメント | ||
ToZさん方:くるみ割り人形はバレエ演目としてのほうが有名ですが、そこらへんはほとんど意識しておりません。ただのギャグのつもりです。お姉ちゃん方がケンカばかりで妹たちが割と協調的である詳しい理由はウチにもわかりません。(柏中ロージュ&ミヤウエ) Toヒノさん:現代日本社会って全体的にがんばってからぶって離れていくっていうのがすごく多い気がするんです。かといってそういう風な失敗をした人に対して「がんばる方向性とかがんばるべきところを間違えている」なんていうのが事実でもひどく残酷に思えてきてしまうという。(柏中ロージュ&ミヤウエ) byZ くるみ割り人形か、懐かしいなー小さい頃3人と一緒に見てたのが良い思い出。そして相変わらずの女神喧嘩、候補生のみんなはあまり喧嘩しないから比較的です。( Z ハデス) 更新乙です!チータ「結局喧嘩かよ・・・・」ユウザ「うーん・・・・女神って、総じて子供っぽいような・・・・」デバッカ「そうじゃない。自分の国が滅ぶ=女神としての死だから、仕方が無いんだよ。」ユ「そして空ぶって市民は離れていく・・・かな・・・?」 (ヒノ) |
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