大徳が舞う4
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大徳が舞う4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?出会い?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ 第3話以前にてご注意下さった方、ご指摘ありがとうございました。

 

修正可能な点は、作品向上のため随時直していきたいと思います。

 

 

 

 

また、玄徳君は所謂チートであり、そういった事が嫌いな方は左上にある左矢印のボタンを押してください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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奔れ 奔れ 奔れ

 

その手に握るは堰月刀

 

光を返せし美黒髪

 

風のごとく現れて

 

悪漢滅ぼし去って行く

 

瞳に宿すは強き意志

 

決して折れぬ仁愛心

 

駆けろ 駆けろ 駆けろ

 

真似などできぬ英雄譚

 

子どもは憧れ大人は敬う

 

賊は恐れて官は欲す

 

しかして彼女は捕まらぬ

 

噂は立てども姿は見せぬ

 

向かえば見れたは砂塵のみ

 

向かえば見れたは死体のみ

 

名など知らぬが人は知る

 

天武を持ちしその者は

 

今日も今日とて山賊狩り

 

彼女に光あらん事を

 

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孫霊視点

 

屋敷を出た後、私はまず今後の計画を細かなものにし、今後の行動を考え始めた。

 

黄巾の乱が始まるのは184年。

 

そして、今は181年。

 

黄巾党が決起するまでにまだ三年の時間がある。

 

それまでに、まずは二人に合流し軍師を加える。

軍師とはもちろん、我が友である諸葛亮孔明である。

この時期に、彼の知謀があれば、事をかなり優位に運べる。

 

乱世はまだ始まってはいないが、彼の事だ、きっとこの頃からすでに世界がどのように動くか分かっているのだろう。

今行っても理解してくれるはずだ。

 

そして、雲長と翼徳の武を一緒に準備できれば、負けることなどない。

三人を戦乱が始まるまでに集める事が肝要となるのである。

 

しかし、少し不安な事があった。

この世界、私がいた世界とは若干歴史が違っている。

孫権や尚香殿がすでに生まれていた事からも分かっていたが、元の世界と微妙なズレが生じているのである。

というか、よくよく考えてみたら私の名は孫霊だが、孫霊なんて人間見た事も聞いた事もなかった。

 

ただ、居を構えていた土地は建業だった事や私以外の後家の家系図など、全く同じ部分もあった。

つまり何が違っていて何がそのままなのか、よく分からない状態であった。

 

果たして彼は・・・、いや、多分彼女か。

彼女は私の知識通り、新野にいるのだろうか・・・

私が孔明と初めて会ったのは、荊州の北部にある新野という地方にある城であった。

彼に会うために何度も出向き、かなりの時間待たされたものだ。

 

あの時は本当に寒かった・・・

だが今は夏、どれだけ待たされても待てる自信がある。

 

いや、そんな事はどうでも良い。

問題なのは三人のうち、孔明の居場所しかよく分からないという点である。

 

確かに雲長や翼徳がどの村に住んでいたかは聞いていたのだが、その村は私が屋敷に居た頃に、すでに賊に滅ぼされてしまっていた。

孫家の情報網を使って隅々まで得た知識だ。まず間違いは無いだろう。

 

この事を聞いた時には頭の中が真っ白になったが、どちらの村も賊に襲われる前に全員逃げ仰せていた事を聞いて、とりあえず二人とも無事である事が分かり安心した。

 

ただ、私が分かったのはここまでで、後に二人がどこに行ってしまったのかは分からなかった。

 

つまり、雲長と翼徳の居場所は分からなくなってしまい、まだ可能性があったのが孔明であったのである。

 

だから、二人には申し訳ないが、今は孔明のもとへ行く「ついでに」、二人を捜すようにした。

 

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そうして方針が決まり、北西へ進み出して数日、ある日私は新野までの中間地点に位置する、とある小さな村で宿をとり休んでいた。

 

人が少なくこれといった名産品も無い小さな村であるが、住民は皆温かくよそ者である私に対しても優しく接してくれた。

それに、ここらの地理についても教えてもらい、鍛冶屋で武器の整備も破格の値段で行っていただけたのである。

 

ここまでしてもらって、ただ宿賃を払うだけでは申し訳なく、薪割りなどの手伝いをしていたら「数日でいいから滞在してほしい」などと言われてしまった。

どうやらこの村では若い働き手が少ないらしい。

こういう頼みに対して弱い私は、ついつい了承してしまいもう二週間村に残ってしまっていた。

 

子ども「にいちゃーん、あそぼー!」

 

すでに私の顔は村中に知れ渡っており、よく子どもの遊び相手になっていた。

完全に住人になりつつあった。

この前など「宿代など支払わなくてよい」と言われ、かわりに「ずっとここに居てはくれないか?」などと言われ、結婚話まで出てしまっていた。

いやはや、拒否するのにかなり苦労してしまった。

 

そんな事が続いたある日、いつものように薪割りをしに宿の裏側に行こうとした時、外が騒がしい事に気付き、何があったのか皆に聞いてみた。

 

聞けば、あと数刻もしないうちに、この村に賊がやってくるらしい。

数は100ほどで、数はさほど多くは無いのだが、村人はほとんどが老人か子どもであるために戦えるものが少なく、討伐はおろか抵抗すらできない状態であった。

 

もはや詰みの状態である。

村人の幾人かはすでに荷物をまとめ、別の村に移動を始めているようだ。

 

 

・・・全く、賊も少しは変わっていてくれれば良かったのだがな。

 

 

孫霊「私がなんとかしよう、安心してくれ」

 

私は声高らかにそう言い、皆の注目を浴びた。

 

長老「・・・劉備殿、あなたのお気持ちは嬉しいが、貴方がいかに勇猛でも私達の中で貴方に着いて行けるものは少ない。どうか私達と逃げてくだされ」

 

長老は首を横に振りながら、私にそう言ってきた。

ちなみに、私は旅を始めてから劉備と名乗るようにしている。

とりあえず、孫の姓を名乗る事が嫌だったので、前世の名前を使っているのだ。

 

孫霊「大丈夫です、長老。私一人だけでも100程度の賊ならば、簡単に倒せます。どうか逃げず、ここで見ていただきたい」

 

長老「・・・しかし・・・、私はこの村の長、軽はずみな行動は・・・「そんなに弱気になっちゃダメだよ、長老」波才・・・」

 

波才「今私達に一番必要なのは勇気だよ。劉備のように賊に立ち向かって行く様な気構えを持つべきなの」

 

皆の弱気を振り払うかのように、ハキハキとした口調で波才という少女が私に賛同してくれた。

 

この波才という者。

腰まで伸びている茶色の髪をまとめた、簡単な髪型をしている少女で、背は私より頭一つ分程小さい。

そして、村の中では私に次いで二番目に強い者であった。

確か齢は私と同じ15であったと思う。

また、胸が悲しい程に無く、最初にあった時は男と間違えて蹴られた。

 

孫霊「そうです長老、波才の言う通りです。波才も、偶には良い事を言うではないか」

 

波才「偶にって何よ、ホント一言多いんだからこの馬鹿は」

 

あと、かなり口が悪い。

 

孫霊「・・・、とにかく、私がなんとかします。何も貴方達に一緒に戦えとは言ってはいないのです。簡単に賊から逃げず、この村に残り私を見ていて欲しいのです。それだけで、私も勇気を振り絞る事ができます」

 

長老は私の思いを聞き、目を閉じ少しの間何かを考え、そして

 

長老「あい分かった。皆の者、無理に残れとは言わん。ただ、逃げずに劉備殿を待つ事を望む者は残ってくれ。儂は・・・残ろう」

 

そう言うと長老は自分の家に「念のために剣を持ってきますわい、まだ持てたかのぉ・・・」と言って戻って行った。

 

 

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長老や波才、そして私の会話から少し経ち、賊はもう肉眼で見える程に迫って来ていた。

 

村人のうち、何人かは村に残ってくれた。

もちろん、丸腰ではなく農具やら何か武器を装備している。

 

ただ、出陣するのは私と波才のみ。

他の者はさすがに戦場に出るまでの勇気は無く、私達が狩り漏らした賊の後始末のために村で備えてもらう。

 

まぁ、逃す気はない。

彼等は絶対に私が守り通す。

彼等が人の殺める必要など無いのだからな。

 

波才「なーに辛気臭い顔してんのよ、キモいわよ?」

 

孫霊「・・・、波才、少しは緊張感を持て。もう敵は眼前だぞ」

 

考え事をしていると、波才が話しかけて来た。

遠慮無しなのは相変わらずだな、この子は。

 

思えばこの子は、初めてあった時からこの調子だった。

あの村に来て三日過ぎた頃、重そうな荷物を運んでいたのを見つけ、手伝ったのが全ての始まりだった。

その時は、名前も言わずに走り去ってしまったので、誰なのか分からなかったが、後で飯店で再会し、渋々名前を教えてくれたのだ。

あの時も暴言が酷かった。

 

それにしても、波才か・・・

確か、黄巾党の将の中に一人いたと思うが・・・

まあ、気にする事は無いだろう。

 

彼女は孫権のように前の世界の者達を思わせる様な何かを持ってはいないし、少し武が立つだけの、本当に平凡な少女である。

全てが前と同じと言う訳でもないのだから、おそらく彼女は黄巾の乱には関係しないだろう。

近いうちに、どこかに仕官するとも言っていたしな・・・

 

波才「劉備?りゅーびー?・・・、ダメだこりゃ、全く反応しないや。おーい、この能無しグズ野郎!緊張感持てって言ったのはアンタじゃないの!?」

 

劉備「む!?何だいきなり、騒々しい。少しはその悪い口を直せ、波才。それに、お前に言われなくても分かっているさ」

 

敵が来た。

聞いた通り、数は100。

兵法も何も無く、ただがむしゃらに突っ込んでくる蛮勇ども。

 

波才「五月蝿いわね、アンタに言われなくても分かるわよ。安心しなさい、私がここまで悪口を言うのはアンタだけなんだから」

 

そう言いながら、彼女は愛用の戟を構える。

私も双剣を構えた。

 

劉備「まったく、何だそれは。意味が分からん奴だなお前も。大体お前はいつもいつも・・・」

 

波才「あーはいはい、分かったわよ。ホント、話し始めたらキリがないんだから」

 

そう言うと、前方を睨みつける。

空気が変わる。

獲物を狩る獅子のように、冷静に、そして獰猛に相手を見据える。

 

波才「行くわよ!!」

 

劉備「応!!」

 

賊へと駆け出す。

命を奪いに参る。

 

これが、この世界での劉備玄徳の初陣となった。

 

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??視点

 

私は、私達は走っている。

目指しているのは、先ほどいた町から少し距離のある小さな村である。

 

今朝、そこに住んでいた人が数人町にやって来た。

村が賊に襲われそうになったために、逃げて来たらしい。

 

また賊か。

奴らは一切の容赦をしない、人である事を捨てたクズどもだ。

私が住んでいた村も、奴らに寄って潰され、母も父も、その犠牲となった。

 

私は奴らを決して許さない。

弱い者達を群れをなして襲い、全てを奪っていく者など、許す道理など無い。

 

今までも、そしてこれからも、私はクズどもを殺し続ける。

 

私が賊を狙うようになってから、私の存在を知った諸候から逆に狙われるようになった。

自慢ではないが、確かに私の武は常人よりは上であるとは自負している。

どこかに仕官すれば、今までよりも要領よく賊を倒す事ができるかもしれない。

 

だが、嫌だ。

今の国は腐っている。

奴らのやっている事は賊と同じだ。

弱い民から税を搾り取り、私腹を肥やす。

私から見れば、彼奴らも賊と等しくクズだ。

そんなクズどもに仕えるなど、たとえ拷問されても受け付けないだろう。

 

しかし、私も子どもではない。

分かってはいる。

いつまでも、このような事だけ行うようではキリがない。

目先のクズを消すだけでは、意味なんて無いのだ。

だからこそ、早く見つけねばならない。

自分が心から忠誠を誓える、全てを導いてくれる最高の主を。

決して弱い者を虐げず、見捨てない優しい王を。

そんな王を早く見つける為に、私は自らの名を、今は隠している。

無駄な知名度などいらない。

そんなもので王への道を邪魔されたら、たまったものではないからだ。

だから、今は己を隠す。

誰にも邪魔されないために。

 

??「○○?!さっさと行くのだ?!早くしないと間に合わないのだ?!」

 

相棒に大声で呼ばれ、ハッとなる。

いかんいかん、考え事をするとついついボーっとしてしまう。

とりあえず、注意してくれた相棒に感謝した。

この相棒とは、旅の途中に出会った。

最初は賊だと勘違いして斬りつけてしまったが、話を聞くと私と似た様な境遇である事を知り、共に旅をするようになった。

今では、私にとって世界で唯一の家族の様なものである。

 

??「分かっている、急いで村まで行くぞ!○○!!」

 

そう返事を送ると、再び相棒と賊のいる村へと進んだ。

 

我、未だ王を見つけず。

 

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孫霊視点

 

剣を振るう。

 

まずは先頭にいた禿げている男の胸を両断する。

 

続けて後ろから来る二人に下から払うように斬りつける。

 

飛びかかって来る五人の剣を同時に防ぎ、体を回転させ同時に切り伏せる。

 

そして宙を舞い、敵が惚けているうちに力を込め、敵陣の真ん中を一気に叩き付ける。

 

人が飛び、地面に叩き付けられる。

 

血が舞う。

 

怒声が響く。

 

何度も斬り付け、何度も斬られる。

 

波才は後ろで敵を殺している。

 

どんな気持ちだろうか。

 

おそらく人を殺した事などないのだろう。

 

よく見ると戟を持つ手が震えていた。

 

血が付着している顔が、必要以上に強ばっている。

 

手を握ってやった。

 

大丈夫、私がいる。

 

しっかりしろ、お前は正しいんだ。

 

そう言った。

 

脛を蹴られた。

 

なぜだ。

 

 

 

○○視点

 

不思議な光景だった。

 

人が、何十人という単位で飛んでいた。

 

その真ん中で、二人の男と女が賊相手に戦っていた。

 

先ほどの賊の大跳躍は、男の方がやった事だろうな。

 

女の方も確かに強いが、男の方は別格だった。

 

なんだ、あれは。

 

人は、あのように飛ぶものなのか。

 

男の前では大人であるはずの賊達が、まるで赤子のようだった。

 

おそらく、いや、まず勝つ事はできぬか。

 

すぐに悟った。

 

そして初めての感覚だった。

 

他人に、しかも男に対して、自分が負けを認めたなんて。

 

戦ってすらいないと言うのにな・・・

 

○○(会いたい。会って、是非話がしたい)

 

素直にそう思った。

 

これも初めての感覚であった。

 

誰かに自分から率先して会いたいなどと。

 

○○(・・・もしかして、彼が我が王なのか?)

 

ふと、そう頭によぎった。

 

いや、さすがに早計過ぎるな。

 

自分のらしくない考えに思わず苦笑しする。

 

○○(まずは会わねば、そのためにも、あのクズどもを消す!)

 

うちに感じる高鳴りを感じながら、私は相棒とともに戦場へと向かった。

 

 

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波才視点

 

劉備とともに武器を振るい、敵を殺していく。

 

って言っても、ほとんど劉備がやっちゃうから、私はほとんど何もしなくていいんだけどね。

 

それにしても、こいつは不思議な奴だ。

 

フラッと村に現れて、すぐに住人達と仲良くなった。

 

そして、私ともよく話すようになっていった。

 

言っとくけど、私は人付き合いは良い方じゃない。

 

ていうか、最悪だ。

 

子どもの頃はまだマシだったけど、今は友達と言える人なんて全くいなかった。

 

話す相手も、死んだ親や長老くらいで、同年代の友達なんていなかった。

 

ま、理由も分かっているんだけどね。

 

私は、どうやら常人より少し、武や智に対して才があったようだ。

 

何をしても大抵の事はそつなくこなせたし、失敗する事はほとんどなかった。

 

だから、他の人達からはけっこう疎まれたりしていた。

 

加えて、私は口下手で、出てくるとしたら悪口ばかり。

 

そんなんだから、友達なんてできないのよ、まったく。

 

と、こんな感じで、私は友達がいなかった。

 

だから、劉備が話しかけて来てくれた時は、正直うれしかった。

 

認めてやるわよ、私にとってアイツとの会話はすっごく楽しかったわ。

 

今まで村の外に出た事が無かった私にとって、アイツの話は新鮮で、どんな内容も刺激的で、興味がわいた。

 

ただ、それで私も普通に受け答えしてれば良いんだけど、やっぱり口から出てくるのは悪口で。

 

ホント、嫌気がさす。

 

何回か来た時に「邪魔だから消えて」なんて言ってしまった時なんか、死にたくなった。

 

これで嫌われちゃったかな、嫌だな、なんて思って、同時に私は一生孤独なんだろうな、って思った。

 

でも、アイツは次も来た。

 

その次も来て、

 

その次の次も来て、

 

そして今も、私の後ろにいる。

 

綺麗な桃色の髪をなびかせて、賊を殺していく。

 

私も敵を、初めて、殺す。

 

吐き気がする、苦しい。

 

まさか誰かを殺す事があるなんて、思ってもいなかった。

 

手が震えていた。

 

きっと目も血走っているだろう。

 

不安で怖くて、気持ち悪かった。

 

・・・、何か、温かいのが頬に触れた。

 

血だ、敵の。

 

頭の中が、真っ白になって、真っ黒になって、訳が分からない。

 

いっそ、意識を無くしてしまいたい。

 

倒れそうになったとき、今度は手に温かいものを感じた。

 

血じゃない、それはアイツの手。

 

同時に聞いた。

 

「大丈夫」だって。

 

「お前は正しい」だって。

 

・・・、顔が熱くなる。

 

気持ち悪くはないけど、異常だ。

 

ホント、コイツは不思議な奴で、よく分からない奴だ。

 

とりあえず、私を異常にしたコイツを蹴っておいた。

 

蹴った時のアイツの解せないような顔は、ちょっとかわいかった。

 

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孫霊視点

 

孫霊「ふう・・・、終わったな」

 

少し時が経ち、気付けば賊は全滅していた。

 

当然、誰も逃していない。

 

波才「当然でしょ、このアタシがいたのだからね」

 

孫霊「ハイハイ、そう言う事にしておくか」

 

波才「そう言う事って何よ、ホント腹立つわー」

 

そう言って波才は、私の足をゲシゲシと蹴って来た。

それに対して適当に相手していると、何者かがやって来た。

数は二人。

一人は黒髪が綺麗な、背の高い美しい少女である。

もう一人は・・・、子ども?

赤毛の可愛らしい子どもがいた。

 

○○「失礼、これはあなた方が?」

 

孫霊「そうで「そうよ、なにか文句ある?」」

 

返事をしようとした瞬間に、何故か波才に言葉を遮られた。

 

ホント、何故だ。

 

○○「いえ、ものすごい武をお持ちであると、感心いたしまして、是非お目通り願いたいと思った所存です」

 

波才「ふーん、お目通り、ね・・・。じゃあ、もう済んだわね?行くわよ劉備、さっさと帰って皆を安心させないと」

 

○○「劉備殿・・・、というお名前なのですか。劉備殿、一つ貴方に聞きたい事がある。よろしいでしょうか?」

 

そう言うと、その女は私に向かいいきなり問いかけて来た。

あと、また波才に蹴られた。

まあ、それはどうでもいい。

 

この女は何だ?

いきなり現れて、問いかけだと?

何か焦っているような感じがするが、単に興奮しているだけか?

よく分からないが、答えれば良いか、正直に。

 

孫霊「なんでしょうか?」

 

○○「それでは失礼して、劉備殿。貴方は今の世をどう思う。そして、何をしたいと思っている?」

 

・・・、なるほど、私を試しているのか?

何でも良いが、ちょっと失礼ではないのか?

とりあえず名前くらい名乗っても良いだろうに・・・

まあ、答えた後に聞けば良いか。

 

そう思いながら、私は

 

孫霊「私は、今の世は腐っている、素直にそう感じている。民を守るはずの国が民から奪い、そして貧困に耐えられなくなり賊が生まれ、略奪を行う。

奪われるのは、どちらも民だ。善良が、虐げられているのだ。だからこそ、この世は腐っていると感じているのだ。これが一つ目の答え。

そしてこれから何をするのか、か・・・私は今、仲間を捜している。共に夢を見る事のできる、最高の仲間だ」

 

○○「部下、ではなく、仲間ですか?」

 

孫霊「そうだ、私は元来誰かを使う事が好きではない。だからこそ、私は共に歩むもの達を部下と見ない。甘いと思ってくれても良いぞ?だが、私はなんと言われようと、それは曲げないさ。そして、その仲間を捜し、準備をする。胃連れ起きる大きな戦乱に備えてな」

 

そう私が言うと、女はいきなり目を見開いて私に近づき、

 

○○「戦乱とは!?貴方は・・・いったい何をお考えなのですか!?」

 

そう言ってきた。

まあ、驚くのも無理はないか。

今でもちょっとした賊の騒ぎはあるが、戦乱と言える程の大規模なものはまだ起きていない。

だからこそ、不思議に思ったのだろうな。

 

孫霊「なに、簡単な事だ。国や賊に奪われ続け、この世に救いが無い事を知ったとき、人々は何を求めるか。きっとそれは神になるだろう。そして、自らを救ってくれるだろう空想の神を掲げ、民は国に牙を剥く。それが戦乱の正体だ」

 

黄巾の乱

 

その党首張角は、帝以外の頂点を示した事で、民を大規模に動かした。

何も無く、絶望しきっていた民から見れば、きっと甘露のように甘い誘惑だったのだろうな。

 

孫霊「おそらくそれを阻止する事はできぬだろう。国はもう、腐敗を止められない。だから、わたしはせめてそれにより生じる被害を少しでも減らすようにしたい。

もちろん、その戦乱のみではない。その後にも起きるであろう多くの戦争での被害を無くし、いつか、私が民を導く。皆が笑って暮らせる世のために。そのために私は武を掲げる。矛盾しているかもしれぬが、これが唯一の道なのだ。民を救えるのなら、私は悪にもなるつもりだ」

 

そう言い切った後、彼女を見た。

彼女は、何か澄み切った笑みを浮かべており、いきなり私に跪いた。

 

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○○視点

 

天啓を得た。

ついに見つけた。

 

彼が、彼様が、私の、仕えるべき主だ。

 

やっと見つけた。

感極まって、涙が出そうになる。

 

旅に出て何年も探し続けた。

理想の主。

今の腐敗世を変えてくれる、最高の王。

 

見れば相棒も、この方がいい、と目配せしてくる。

凄くうれしそうな顔だ。

お前もうれしいのだな、将来の主を見つけたのだからな。

 

そして私は跪き、主に言葉を紡ぐ。

 

○○「今までのご無礼、お許し下さい。私は、今まで探し続けておりました。私の仕えるべき、最高の主を。どうかお願いします。私と、この者を貴方のはいかにして頂きたい。貴方の夢を、共に見させていただきたい。」

 

そう言って、私は劉備様をまっすぐに見据えた。

彼様は驚いた顔をしており、ひどく困惑しておられた。

そして、何かおっしゃろうとしていた時に、横やりが入った。

 

波才「はぁ?アンタ、何なの?いきなり出て来て、名乗りもせずに劉備を質問攻めにして、あげくの果てには配下にしろですって?巫山戯るのも大概にしなさいよ」

 

そう言われて、気がついた。

しまった、私とした事が。

王に向かって名すら名乗っていなかったとは、馬鹿な事をしてしまった。

私は自分の行いを心底恥じ、そして名乗る。

高らかに。

もう、隠す必要もない。

一生の主は、見つかったのだ。

 

 

 

 

 

○ ○「ご主人様、大変失礼しました。申し訳ございません。

我が姓は関羽、字は雲長、真名は愛紗と申します」

 

 

 

 

 

??「鈴々は、姓が張飛、字が翼徳、真名は鈴々なのだ。よろしくなのだ、お兄ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

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なかがき

 

 

何というか、異性のセリフを考えるときに違和感を感じます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
史実の劉備玄徳が恋姫の世界に行った場合のお話です。
今回はあの人達のお話です。
感想とかいただけると嬉しいです(0w0)
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コメント
劉備(孫霊)を巡っての嫉妬神vsヤンデレの『仁義なき戦い』が勃発するわけですねわかります^^(M.N.F.)
波才も加わるのかな。いっその事黄巾党の有名所を片端から説得して仲間にすれば・・・。って居場所が分からないんだけどね。(陸奥守)
フム。外史にて桃園の誓い再びですか。でも、この外史の劉玄徳こと桃香の存在が知れた時は如何するのだろう?(西湘カモメ)
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