真恋姫無双 〜蜂蜜姫の未来〜 第16話
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この作品は恋姫無双の二次小説で袁術ルートです。

オリ主やオリキャラ、原作キャラの性格改変やオリジナルの展開などもあります。

 

そういうのが許せない、特定のキャラが好きな方はスルーしてください。

※一刀アンチ作品ではありません。

 

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第16話

 

「……頭痛い」

モゾモゾと寝台で寝がえりをうった背中からはいつものような快活さが感じられない。体は鉛のように重く頭はズキズキと痛む。

 

原因は分かっている。四日前の“暴走”によるものだ。

 

久しくあじわうことのなかった感覚に彼女が辟易していると、控えめに扉を叩く音が聞こえた。

 

「文醜殿、呂範ですが起きていらっしゃいますか?」

「またか……」

続いて聞こえてきた男の声に文醜は思わず身を固める。彼女が意識を取り戻してから二日ほどたったのだが、その前から呂範は欠かすことなく昼時に部屋を尋ねに来ていたらしい。らしいというのはいつも昼食を持ってきてくれる使用人から聞いた話だからだ。おそらく謝罪か何かの用向きなのだろうが、いかんせん今の文醜には男と一対一で対話できる精神力は備わっていないらしく、呂範と言葉を交わすには至っていない。

 

「……お休み中のようですね、失礼しました。美羽様、行きましょうか」

ふと、よく知っている人物の真名が耳に入り、文醜は意外な反応を示す。外にいるのは呂範一人だけではなく、この城の主である袁術も一緒のようだ。何やら扉の外で話しているようだが生憎扉一枚隔てたこの場所からはその会話の内容までうかがい知ることはできない。

 

一方、扉の外では

「兄上、妾はぶんしゅーの顔が見たいのじゃが会えぬのかのう?」

「文醜殿は休んでるみたいだし、勝手に部屋に入るのはまずいだろ」

「むぅ、じゃがのう……」

「……う〜ん。じゃあ、俺は外で待ってるから美羽は行って来いよ」

「なぜじゃ?一緒に入ればよいではないか」

「いや、けど……」

「むぅ、いいから来るのじゃ。それにここは妾の城じゃから、誰にも文句など言わせん。安心するがよい」

多少強引ではあるが結論が出てしまった以上、従わないといけないんだろうか?などと呂範が考えている間にも袁術は勝手に扉を開け部屋へと押し入っていく。袁術一人で行かせるわけにもいかない呂範はおとなしく、主である袁術に従うことにした。

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大地視点

 

「どうじゃ?ぶんしゅー、頭は悪いか?」

「いやぁ、悪いっていうか、痛いっすねー」

「美羽様、悪いのはあなたの頭ですよ。相手の調子について聞くのはいいですけど、頭が悪いかどうかというのは論外です。それと文醜殿も馬鹿にされてるんですから、少しは否定したらどうですか?」

「「なん(だ)と!?そうじゃった(だった)のか」」

(あー、なるほど。バカ同士の会話って結構面倒なんだな)

話し始めて早々、俺はこの二人の残念な頭の出来を再認識することになった。

 

文醜はあまり体調が万全ではないため寝台に腰かけ、それに対するような形で美羽が(俺に部屋にあった椅子を文醜の前に用意させ)座る。俺は美羽の左側に椅子を置き腰かけた。

二人はその後、体の調子や最近見つけたおいしい酒家の話、七乃と斗詩(顔良)の自慢話に花が咲いた。そして俺はというとそれぞれの話に相槌を打ったり、ツッコミを入れたりしながらも終始聞き役に徹していた。

 

ふと文醜はいつも美羽にべったりのはずの側近の姿が見えないことを不思議に感じ、そのことを尋ねてみる。

「ところでお嬢、今日は七乃は一緒じゃないんですか?」

「うむ。今日はまだ姿を見ておらんのじゃ。どうせどっかで迷子にでもなってピーピー泣いてるに違いないのじゃ。じゃから、ぶんしゅーにあった後で探しに行ってやろうと思っておったのじゃが……」

そんな見当違いの予想を立てる美羽に苦笑を返す文醜。美羽が七乃の予定を忘れていると感じとった大地は、簡潔に七乃の今日の予定を説明する。

「美羽様、七乃殿は本日大事な用向きのため城を出ております。おそらくお帰りは明日の昼頃になるかと思いますが」

今回の件は七乃が出向く必要があったため、彼女に涙を呑んでもらうこととなった。

 

馬上で本当に泣いていたことはこの際置いておくが……。

 

「なんじゃとっ!?そのような事、妾は聞いておらんぞ」

「昨日の会議にて報告したはずですが」

「なぜ今日のことを昨日報告するのじゃ!!おかしいではないか!!」

「前から決まっていたことでしたので、昨日は確認の意味も兼ねて報告したんですがお聞きになってませんでしたか?」

少しずつ部屋の空気が険悪なものに変化し始めたのを感じ取ったのか、文醜は座っていた位置から多少後ずさりした。しかし当の美羽は文醜乃そんな様子など気にも留めず、大地に食って掛かる。

 

「兄上は七乃の事が嫌いなのかや?」

「そうは言っていません。ですが今回の件に関しては七乃殿じゃないと処理できないと申し上げているだけで」

いささか話の方向がずれている美羽に対して、大地が冷静に対応する。するとそんな大地の態度にさっきまで熱くなっていたはずの美羽は急に声のトーンを落とす。

「そんなに大変なことなのかや?」

美羽は大地の真剣な様子を察したのか、瞳に不安の色が混じる。

 

「のう、兄上?それはいったいどのようなものなのじゃ?」

「だから昨日説明したでしょう。新種の蜂蜜が安く手に入るかもしれないから七乃殿が直接、その採取現場や味を確かめに行くと」

「「……へ(は)?」」

 

これには傍観に徹していたはずの文醜も思わず声を上げる。まさか新しい蜂蜜の調査のために“あの”お嬢命である七乃が一日以上そばを離れるとは思わなかったのだ。先ほどまでの重い空気が嘘のように軽くなり、大地は一つ息を吐いた。

「今日、七乃殿は果樹園を営んでいる農家に出向いています。なんでも梅の香りがする蜂蜜だそうで、甘さの中に爽やかな香りが広がりとてもおいしいと評判。しかも蜂の巣自体があまり労せず取れる場所にあるらしく、通常の値段の三分の二で売っていただけるそうなのです。美羽様にはあの一件以来蜂蜜を五日に一回と我慢していただいておりましたが、この交渉が成立すれば二日に一回は蜂蜜を口にできるということもあり、七乃殿に出向いていただいたんです。美羽さまの蜂蜜の好みを理解しているのは七乃殿だけですし」

「そうじゃったのか……」

「美羽さまも昨日は大変喜んでおられたので、問題はないと思っていたのですが」

「う……、昨日の事などいちいち覚えてないのじゃ!終わったことにいつまでもこだわるなどバカのすることであろ?」

「一見正論のように聞こえてしまうあたり性質が悪いですね。まぁ今はそれは置いておきますが。さて……」

俺は軽く咳払いをすると居住まいを正し、文醜に対し真面目な顔で話し始める。

「改めまして文醜殿、あの時は本当に申し訳ありませんでした」

そして俺は静かに頭を下げた。

 

視点アウト

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「なっ、なんだよいきなり!?」

呂範の突然の謝罪に面食らう文醜。

「いえ。もしあの時のことで文醜殿のお身体に一生消えない傷を残してしまったりしていたらと思うと本当に申し訳なく思っていたのです。顔良殿からは手当ての際にそのような傷の類は見当たらなかったとお聞きしてはいたのですが、それでも謝らなければいけないと考えていました」

深々と頭を下げる呂範に対して文醜は心に言い表せない感情がふつふつとわきあがるのを感じた。

 

そして……

「おい」

呂範の襟首を乱暴に掴むと、そのままぎりぎりと首のあたりを締めあげていく。

「あんまふざけたこと言ってんじゃねーぞ!あたいは袁紹軍の文醜だ!それをか弱い女を見るような眼で見やがって!あたいら武人がそんな傷の一つや二つで文句つけるわけねーだろうがっ!」

一気にまくし立てる文醜の言葉を無言で受け止める呂範。そんな文醜に怯えて何もできないでいる袁術。しかし文醜の気はまだおさまらない。この場に袁術がいることを思い出したのか、掴んでいた手は離したものの、視線を呂範から外すことはしない。

 

「だいたいなぁ、あの時のあたいは全然冷静じゃなかった。我を忘れてお前を殺そうとしたんだぞ!そんな相手に頭下げるなんてどうかしてんじゃねーの!?」

「それでも、です。どうかお聞き入れいただきたい」

「何でそこまですんだよ!?」

「……けじめとでも言うのでしょうか。この一件にきちんとした終止符を打ちたいと思いまして」

「……はぁ?」

「まぁ簡単に言ってしまえば、これからもよろしくお願いしますということです。仲直りの印とでも思っていただきたい」

「なっ……」

呂範の突然の仲直り宣言にすっかり毒気を抜かれた文醜とまったく事態を把握できていない袁術を置き去りにして、大地はつらつらと今後の袁家の展望を述べていく。この二人がそういう類の話についてこれるかは甚だ疑問が残るところだが。

 

「文醜殿、袁紹様と袁術様は従姉妹という間柄です。河北と南陽という離れた地ではありますが、できることならば私は二人に協力していってほしいと思っているのですよ。これから起こるであろう困難に立ち向かっていくためにも」

呂範はこれから起きる出来事について知っているかのような口ぶりだったが、二人は大地の話についていけず、大きな瞳を点にして聞き流すことに専念していた。だがさすがに耐えられなくなった文醜が呂範の話を遮る。

 

「あー、悪い。ちょっと待ってくれ、呂範。あたいはそういう難しい話はわかんねぇし、あんまし興味もないんだよ。ただ姫や斗詩たちと一緒に入れたらいいなって思ってるだけだし……。それに、いま以上の事は別に望んでねぇからさ」

呂範が語る構想には特に興味もなく、ただ今のような時が永遠に続くことを願う文醜。

最後のつぶやきは自分に言い聞かせるようなものであった。

 

部屋が柔らかな空気に包まれ、穏やかな時が流れる。

 

「そうですか、ではこの話はまた今度といたしましょう」

話が済んだことで呂範たちが帰ろうと支度をしはじめたちょうどその時、勢いよく部屋の扉が開け放たれた。

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美羽視点

 

「猪々子さんっ!起きたのでしたらなぜ私に一言もありませんのっ!?今日は買い物に付き合ってもらうつもりでしたのに。って、あら美羽さん。珍しいところで会いましたわね?」

「すみません、すみません。止めようとはしたんですけど……」

扉を壊さんばかりの勢いで現れたのは麗羽姉さまとがんりょーであった。というか麗羽姉さま、苦しいからさっさと離してほしいのじゃ。妾は胸にぶら下げた使い道の無い大きいぜい肉で気を失いたくなどないのじゃが?

 

「袁紹様、そろそろ美羽様を離していただかないと命にかかわると思うのですが」

「はい?何を言ってるんですの?こんなにも喜んでるじゃあありませんの」

嬉しさで震えているわけではないと思うのですが、と大地が麗羽を説得しようとしてくれておるのは何となくわかるが、美羽を抱きしめる腕に力が入ったような気がするのは気のせいではないはずだ。

 

「そうですよ、麗羽様。顔色が悪くなってきてるように見えるんですけど……」

「むぅ、仕方ありませんわね。美羽さん、大丈夫でして?」

心配してくれるのなら、最初からそういうことはしないでほしいのじゃ。

 

抱きしめるのはあきらめた麗羽だったが美羽を離すつもりはないらしく、今は膝の上に乗せられている。まぁ、抱きしめられるよりは数倍マシだろう。気絶するような危険もないだろうし。

 

「麗羽姉さま、そう言えば買い物がどうとか言ってませんでしたか?」

美羽としてはこの状況を回避できないなら、会話を振るべきだと考えたのだがこれが拙かった。

「そうでしたわ!私、買い物に行こうと思っていたんですわ。それで猪々子も連れて行ってあげようかと、こうして足を運んだんですの」

ここへ来た目的を思い出した麗羽。善は急げとばかりに猪々子と斗詩を連れていこうとしたのだが、生憎今の猪々子にはそれに付き合えるだけの気力はなかった。

 

「すんません、姫。さすがに外はまだムリっす」

バツが悪そうな文醜。本来であれば自分の事を気遣ってくれている麗羽の誘いを断るのは本意ではないのだが、まだ人ごみの中を歩ける気はしない。それに、今日は正直なところこのまま寝てしまいたいという欲求もあったため、麗羽の誘いを断ることにした。

 

「……そうだ!姫、あたいの代わりにお嬢と呂範を連れてけばいいじゃないっすか」

そう言いきった後の文醜の得意げな表情からは『自分、いいこと言ったぜ』といった、やりきったようなものが感じ取れるが、実際そんな事を思っているのは文醜ただ一人。部屋にいる二人が『あぁ、言っちゃったよ、この子』と言いたげな眼差しで見つめていたことなど気にもしなかった。

 

そして美羽はこの瞬間、考え得る中で最悪の結末が待っていることを本能で察していた、が……。

 

この後、予期せぬ者たちとの再会が待っていることを美羽は知る由もなかったのである。

 

視点アウト

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あとがき

 

何とか年内にあげれました。

PCがダメになった時は、どうなる事かと思ったけどがんばれば何とかなるもんなんですね。

 

今回は特に山場も何もなく終わった感じですね。まぁ、前回が重い内容だったこともあり、今回は比較的軽い内容にしようと考えていたので、バランス的にはちょうどいいのかなとも思ってます。

 

ちなみに、次回もほのぼのとした内容が中心にはなってきます。ちょっとまじめな話もありますが、重い内容ではありません。

 

でもって麗羽たちが帰ったら、拠点回を入れます。おそらく自分の能力を考えると、あまり期待はしないでくださいと言うしかないですね。(苦笑)

 

でわでわしつれいします

 

説明
皆様、お久しぶりです。

何とか年内に間に合いました。個人的に色々とあった年でしたが、今年ももう終わりですね。
拙い文章なのは自覚してますが、そんな作品でも読んでくださる方がいる限り書き続けていきたいと思います。

それでは皆様、よいお年を。

そして来年もよろしくお願いします。
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コメント
ちょうど良いところの直前で切るとは。今年一年の更新お疲れ様でした。来年も楽しみにしています。(陸奥守)
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