いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した
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 第九十四話 『傷だらけの獅子』がくれたもの

 

 

 

 高志視点。

 

 「…んんっ。脱線し始めたな。話をもどすぞ。我々の目的はシステムU―D及びマテリアル達の捕獲。そしてアサキム対策。…なんだが」

 

 落ち込んでいた俺を気遣ってか、ある程度落ち着いたころになってクロノが場の雰囲気を読んでか一時中断されていた話し合いを進める。

 

 「あの…。アサキム対策って言っていましたけど、((あの|・・))アサキムさんをどうやって対処するんですか?」

 

 なのはの質問にリンディさんが答える。

 

 「作戦はそのままで高志君とリインフォースさんで対処してもらいたいのですが…。その…」

 

 マグナモードのパワーダウンが引っ掛かっているのか、リンディさんだけでなくリインフォースもお茶を濁すかのような顔をしている。

 その様子にフェイトも気が付いたのか不思議がって手を上げる。

 

 「あ、あの…。何かあったんですか?」

 

 「テスタロッサ。実は…」

 

 シグナムさんがその場にいなかったなのは達に事情を説明している間に俺はガンレオンを再展開して『揺れる天秤』の封印について調べてみる。

 

 

 

 『揺れる天秤』封印中。

 

 

 

 と、モニターの前にポンと浮かび上がったアイコンが一つ。

 周りの人達には俺がガンレオンを着込んで立っているように見えているだろうが、兜の中ではアイコン操作している俺がいる。

 さて、封印解除を…。

 

 「待ちなさい!タカ!」

 

 しようとしたらプレシアに止められた。何?

 少し焦っているような、それでいて怒っているような顔で俺の方に歩いて来た。

 

 「…貴方。スフィアの封印を解こうとしているでしょ」

 

 「そうだけ「やめなさい!これ以上スフィアを使うのは!」。…プレシア」

 

 「…お母さん?」

 

 プレシアの声で会議室の中にいた全員の視線が俺とプレシアに集まる。

 

 「『傷だらけの獅子』だけじゃない。『揺れる天秤』まで貴方が背負う必要なんてないのよ!…逃げたっていいの。…なのに貴方だけが。…何で」

 

 俺の両肩にあたる部分をガンレオンの上から掴みながらプレシアは封印解除を止めに入る。

 

 「…気にするな。俺は誰よりも贅沢した((今の|・・))人生を送っているんだから」

 

 俺は転生者だ。

 つまり、一回は人生を謳歌している。

 少なくても二十年は謳歌した。

 たった二十年と思う人もいるかもしれない。だけど、それだけの人生を過ごせなかった人もいる。

 それなのに((二度目|・・・))の生を受けて新たな人生を過ごしている。

 これ以上に贅沢な奴がいるであろうか。

 だから…。

 今を。初めての人生を謳歌している子どもの為に頑張るのは当然だ。

 その為の力も持っている。

 

 「それにスフィア関係となると俺が黙っているわけにはいかないよ。俺が原因かもしれないんだから…」

 

 「っ!」

 

 プレシアはその言葉で俺の意図を察したのか、顔を悲しそうに歪めながら俺から目を逸らす。

 プレシアは俺、沢高志の事を知っている唯一の人物だから…。

 

 ところで封印解除って簡単にできるんでしょうか?

 封印したのも極限状態だったからなぁ。

 

 

 

 『揺れる天秤』封印中。

 

 

 

 「…あれ?」

 

 「どうした?タカ?ガンレオンを起動させて?」

 

 「…いや、選択肢が出ない」

 

 「…は?」

 

 クロノは俺の言葉を不思議がっていたが、俺はそれ以上に疑問に思っていた。

 あっれぇ?マグナモードを起動させた時は選択肢が出たのに今は無い。

 封印時と違うのは…。

 

 「アリシアー。((ユニゾン|合体))頼む」

 

 「お兄ちゃんのエッチ!皆が見ている前でだなんて…。既成事実の為に受け入れるよ!」

 

 お前のその思考の方がエッチじゃないのか。

 というか、顔を赤らめながら大胆発言をするな!受け入れるのかよ!

 

 「…タカ?」

 

 「アリシア様!今すぐユニゾンをお願いします!」

 

 先程まであったシリアスな雰囲気が吹き飛んだ!

 いや、続行中だ!今は俺の命の危機を感じる!

 今のプレシアからはガンレオンの装甲すらもひしゃげてしまいそうなプレッシャーを感じてしまう!

 それからアリシアとユニゾンして再度アイコンを開くが、選択肢無し。変化無し。

 残るは…。

 

 「フェイトー、ブラs」

 

 (フェイトまで御所望!?姉妹丼なの!)

 

 違うわ!

 

 「…タカ」

 

 ひいっ!疑問符が取れた!

 

 「ブラスタを今すぐ俺に返却してもらえないでしょうか!」

 

 「…え、えと。それは難しいかな?」

 

 「なんで?!」

 

 「今はデバイスルームでマテリアル達やリニ…。闇の書の欠片のデータをマリー達が調べるために預かっているから。か、勝手にもっていってごめんね?」

 

 そ、そうですか…。

 ブラスタって、しっかり仕事をしているな。いや、この場合はフェイトか。

 

 「ま、まあ、それなら構わない。けど…」

 

 今度は俺の行動を不思議に思った八神ファミリーが質問してきた。

 

 「高志君?何をそんなに慌てているんや?」

 

 「ああ、アサキムが言っていただろう勝ちたかったら『揺れる天秤』の封印を解け。って。封印したのはアリシアとユニゾンしていて、ブラスタがガンレオンの中にあった状態だったからな。今のままだったら封印が解けないから、ブラスタをガンレオンに戻そうかと思って…」

 

 「…大丈夫なのか『傷だらけの獅子』?スフィアの封印をしたのも驚いたがそう簡単に封印を解いて?」

 

 「え、分からない。封印も解放もするのは初めてだし…」

 

 「大丈夫なんだろうな?さっき話していたD・エクストレーラーみたいに暴走とかしないだろうな?」

 

 「ヴィータ。エクストラクターだ」

 

 「惜しかったですね、ヴィータちゃん」

 

 「…次があるさ。頑張れ」

 

 「ちょっと間違えただけだ!」

 

 ヴィータの発言を、シグナムさんが訂正し、シャマルとザフィーラが慰める。

 少し脱線し始めたので今度はアミタさんとリンディさんが話しかけてくる。

 

 「それで…。暴走はしないんですか?」

 

 「ん?んー、たぶん大丈夫」

 

 「根拠は?」

 

 「なんとなくとしか言えない。例えば、自分の心臓が今すぐ爆発するかしないか、と聞かれたら爆発しないという感じかな?」

 

 「…そう、ですか」

 

 俺の発言に皆表情を硬くしたがこればかりはどう説明したらいいか分からない。

 

 「で、でも無茶は駄目だよ、高志君」

 

 「なのはが言っても説得力が無いよ」

 

 「同感だね」

 

 「ユーノ君!アルフさん!」

 

 俺に忠告するつもりが、逆にユーノとアルフに茶化されて怒り出したなのはだったが、ここは俺も釘を刺しておこう。

 

 「俺とガンレオンは頑丈さが売りだけどなのはは女の子なんだから無茶すんなよ。士郎さん達が泣くよ」

 

 「だ、大丈夫だもん」

 

 「恭弥さんやお姉さんの美由希さんも悲しむぞ?」

 

 「へ、平気だもん」

 

 「俺は平気じゃない」

 

 「…え?」

 

 「お前だけじゃない。ここにいる誰かが傷つくのは嫌だ。そして、お前が無茶をして大変なことになればここにいる誰もが悲しむ。お前はそれでも平気か?」

 

 「…う。で、でも高志君はアサキムさんの時はいつも無茶しているし」

 

 「マグナモードはそういうモノなんだよ。それにマグナモード以外の方法で何とかなるなら俺だってそれを使うよ」

 

 そうは言うけど、無茶をしないと俺はアサキムに勝てないんだよ。

 もともとマグナモードも無茶苦茶な手段とも言ってもいいし…。

 

 と、気がつけばプレシアがいない。

 …まさか!

 

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 プレシア視点。

 

 ドンドンドンッ!

 

 「プレシア!」

 

 デバイスルームの扉を外側から叩く音と同時にタカの声が聞こえた。

 やっぱり気が付いた、か…。

 でも!

 

 「うひゃあっ。高志君ですか?」

 

 驚いた拍子にずれたメガネを整えようとしたマリーは不思議がりながらも叩かれたドアの方へ行こうとしていた。

 

 「マリー駄目よ!誰もここに入れては駄目!特にその子は入れては駄目!」

 

 「え?でも…」

 

 高志が他の皆と話している間に私はデバイスルームに急いで移動した。

 目的は一つ。

 ブラスタの破壊。

 

 「今すぐここを開けろ!出ないと破壊してでも通るぞ!五!四!」

 

 「ちょ、ちょっと、待ってくださいぃいいいっ」

 

 私はコンソールパネルを操作してブラスタを検査している機械に破壊を命じる。

 

 「三!チェインデカッタアアアアアッ!」

 

 「まだ二秒残っているのにぃいいいい!」

 

 タカの声とマリーの悲鳴が聞こえてから、数瞬。

 

 ガァアアアンッ!

 

 と、鋼鉄の扉を破壊してデバイスルームに突入してくるガンレオン。

 彼は私の姿と今まさに破壊されようとしていた待機状態のブラスタの姿を確認すると迷わずブラスタに飛びつこうとした。

 

 「行かせないわ!」

 

 私は彼の行く手を阻むように両腕を広げて彼を止める。

 あの重量を受け止めきれるなんては思ってはいない。だけど、タカは私を気遣って躊躇うだろう。

 そう思っていた。だけど…。

 

 「アリシア!プレシアを確保!」

 

 [ユニゾンアウト]

 

 「了解!てえいやあああ!」

 

 ガンレオンからアリシアが飛び出してきて、私の体を押さえつける。その拍子に私は座り込むようにその場に崩れ落ちた。

 その隙に高志は待機状態のブラスタに手の中に収めると同時にガンレオンの中に収納した。

 

 「…ど、うして」

 

 「それはこっちの台詞だ!どうしてブラスタを破壊しようなんてしてたんだ!」

 

 「決まっているでしょう!もうあなた達にスフィアを使って欲しくないからよ!」

 

 アサキムとU―D。

 スフィアリアクター同士の全力の戦い。

 スフィアの全力とD・エクストラクターの話を知った私にはタカやフェイト達がかなうはずがないと思った。だから、スフィアに関する物を破壊しようと思ってデバイスルームに来たのに…。

 

「…お母さん」

 

「…プレシアさん」

 

 アリシアとマリーは私の様子に驚いているのか私の事を見守るように、それでいてなんといえばいいか分からないような顔をしていた。

 

 「土台無理な話だったのよ!貴方がアサキムに勝つなんて!」

 

 その上、アサキムは不死身だ。

 戦う才能のない高志が敵うはずがない。

 

 「だから、だから私はっ」

 

 「だから、マグナモードを元に戻すために」

 

 「勝てなかったじゃない!元の状態でも貴方は…」

 

 「プレシア!」

 

 タカはガンレオンの武装を解きながら私に詰め寄ってくる。

 そして、半ば崩れ落ちている私の両肩を掴んで言い放った

 

 「俺はもっと強くなる!今は凄く弱いけどいつか誰にも負けない『傷だらけの獅子』になる!」

 

 「そ、そんなの無理よ!だって…」

 

 「無理を通して道理を蹴っ飛ばす!今は使えない『揺れる天秤』も使いこなして見せる!」

 

 「そんなの…」

 

 「出来る。いや、やって見せる!」

 

 タカがそう言うとブラスタを展開する。と、ブラスタの目の部分。いや、胸の辺りにも強い光が灯る。

 

 「…『揺れる天秤』のスフィア!俺に応えろ!」

 

 ブゥンッ。

 

 と、機械的な音が鳴り響くと同時に高志の周りには直径一メートルぐらいの銀色のチャクラム。SPIGOTが四つ浮かんでいた。

 SPIGOTの展開は訓練の時は一度も出てこなかったのに…。

 それなのに展開できたという事は…。

 

 「…ははっ。空を飛ぶ前にSPIGOTが使えるようになっちまった。…さすがはグレンな兄貴のセリフだ」

 

 それは、タカがスフィアの封印を解いたことを証明していた。

 

 「…うん。確認したらちゃんと封印も解けている」

 

 「なんで…」

 

 私の質問にタカは頭を掻きながら答える。

 

 「俺の『選択』の意志にスフィアが答えたからじゃないかな。でも、いやいや選択したわけじゃねえぞ。このままU―Dの『偽りの黒羊』をアサキムに奪われたら俺達は本当に抗う術を無くしちまう。そうならないために封印を解いた」

 

 「嫌々じゃない。勝てないから封印を解く。勝てなくなるから封印を解除。それを選択したじゃ…」

 

 「違うよ。お母さん。お兄ちゃんは勝てるかてないじゃないよ。…そうだよね」

 

 アリシアはそう言いながら私の頬を撫でる。

 その手には小さな雫が幾つもついていた。

 

 「…まいったな。その通りだよ、アリシア。俺はただ、家族に泣いてほしくないんだ」

 

 そう言うとアリシアの手に重ねるようにタカもブラスタを解きながら私に手を当てる。

 

 「俺が『選択』したのは家族の笑顔なんだ。アサキムの影におびえるよりも追っ払って笑っていて欲しい。…ただ、それだけのことなんだ」

 

 タカの言葉を聞いて二人の手には更に幾つもの水滴がついていく。

 そして…。

 

 「それでも…。それでも俺達の事を心配してくれてありがとう。………かあ、さん」

 

 私はその言葉で何も見えなくなっていた。

 タカに今の顔を見られたくないから、アリシアとタカを強く抱きしめた。

 私の涙が止まるまで。

 『傷だらけの獅子』がくれた、娘と息子を抱きしめ続けた。

 

 

説明
第九十四話 『傷だらけの獅子』がくれたもの
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コメント
タカは何時の間にか大グレン団に入団していたwwww(孝(たか))
イイハナシダナー(453145)
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