一年の締め括り〜双子編 |
高校を卒業して、大学を選ぶ時。姉の彩菜の提案により、同じ場所に通うことにした。
中学までの姉の勉強のしなさっぷりに、私の通おうとしているとこに行けるのかと
危惧をしたものだけど。
どうやら高校時代に幼馴染で恋人の春花の指導によって随分と成績が上昇したとのこと。
「あはは、春花には頭が下がらないよ」
「・・・」
所々バカッぽいのは残っていたけれど。
春花は思うところがあって両親の勧めていた、滑り止めの大学に入るという。
最優先の場所だと外国になってしまうから、それだと彩菜に会える割合が激減するから
さすがに了承しなかったみたいだ。
その後、近くにちょうどいい物件をお爺ちゃんが提供してくれて私達二人はそれを
見て喜んで受けた。
そんな新しい環境に二人でコタツにぬくぬくしながら過去を思い返していた。
テーブルに顎を載せながら猫のような顔をしてる彩菜がしみじみと呟いていた。
「こうなるとは思わなかったなぁ」
「何が?」
「んー、中学のアレなことしちゃった時には一生雪乃とは顔を合わせられないって
死にそうな気分だったし」
「大袈裟だなぁ」
「や、当時の私にはそれくらいしんどかったんだよ!」
私の軽い返事にバッと起き上がって反論をする。でも、それは過去形になっていて
今は大丈夫そうに見えるから私も安心した。
「まぁ、私もそうだったかもしれないね」
みかんを口に運びながら明後日の方向を見つめながら言った。高校の愉快な人たちに
会わなければ淡々とした何も発見できない学生生活だったろうけど。
友達ができて、親友ができて、彼女ができて。体調を時々崩したり。
本当に色々思い出せる。
「私達は幸せ者だよ」
周りの人たちが良い人すぎた。一生分の運を使ってるんじゃないかっていうくらい、
快適な時間を過ごせた。そりゃ、色々トラブルはあったかもしれないけれど、
全ては些細なことのように感じる。
「ほんと、そう思うわ」
向かい合ってる彩菜も両腕を枕代わりに頭を預けて、目蓋を閉じながら言う。
寒い日だし、コタツに入ってるから睡魔が襲ってきているようだ。
「ほら、そんなとこで寝ると風邪引くよ」
強めに言っても一度睡魔に襲われたら、この呪縛は解けないだろう。
「もう、彩菜が寝ても私運べないんだからさぁ」
困ったように言う私。まだ越してきたばかりで中は段ボール箱の背景だった。
その中でゴーンという、小さく響く音が聞こえた。
「あ、もうそんな時間?」
「ねぇねぇ、雪乃」
「何よ」
「ほっぺにちゅーしてくれたら王子様は目覚めるよ」
「だったら年越しは私一人で味わうわ」
「しどい・・・」
それは除夜の鐘の音なのだろう。一定のリズムで耳に響く音が繰り返される。
子供の時には何も感じなかった音だけれど、今は何か別の気持ちにさせられる。
テレビをつけると、神社を背景にカウントダウンが始まっていた。
3・・・2・・・1・・・
テレビの音を含めると一際大きい音が聞こえたような気がして。
まるでスイッチが切り替わるように画面から賑やかな声が聞こえてきた。
そして、向かい合っていた私達は顔を合わせて挨拶をした。
『あけましておめでとう』
「今年からよろしくね、相棒」
「うん、よろしく。雪乃」
ニカッと笑う彩菜の表情はどこか太陽のようで、暖かい気持ちになれる。
だけど、性格が残念なのは玉に瑕。
私の恋や周りの話はまた別の機会に、今は穏やかなこの時間をゆっくり
味わいたい気分だった。
そして、これからまた一新した気持ちで新たな道を歩んでいくのである。
目標に向かって私達は目指していく。
お終い
説明 | ||
双子がこれまでのことを振り返りながら和む話です。 | ||
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