IS《インフィニット・ストラトス》駆け抜ける光 コラボ小説第二弾 第九話 通じる想い |
千冬「坂本、絶対に無理だけはするな。他の二人もだぞ?」
翌日、ピットに集合した僕達は作戦を開始しようとしていた。紗英先輩と紗耶先輩との対話をするという重大な作戦を――。
アムロ[もう一度説明するが、光輝、一夏、紗英の三人はISを纏ってアリーナ内に出てくれ。そして光輝と一夏はそれぞれサイコバースト、クアンタムバーストを発動させてくれ。後は、弾かれないようにするだけだが……]
紗英「成功するかは私自身の問題です。でも安心して下さい! なんだか吹っ切れた感じですから」
前に僕一人で対話を行った際にはなぜか弾かれてしまった。先輩は自分に問題があるって言ってたけど、正確な原因は分からない……でも先輩も大丈夫なら今回は成功するよ!
アムロ[正直、対話中は何が起こるか分からない。各自、いつでもアリーナ内に出撃できるようにしていて欲しい。以上だが、質問はあるか?]
ロックオン「もし紗耶先輩が話を聞かずにいきなり襲ってきたら実力行使ですか?」
アムロ[もしそうなったら――そうだろうな。でも出来るだけ戦闘は避けてほしい。難しいかもしれないが……]
確かにいきなり襲ってくるだろうか? 始めてΞガンダムを動かした時はそうだったけど、今は――。
紗耶「……話は紗英を通じて聞いてたよ。今度は異世界の一夏ちゃんも加わるのか」
光輝「先輩、大丈夫ですか?」
紗耶「あたしはいつでも大丈夫さ。さぁ、早く始めようか」
アリーナ内に出た僕達三人は全員ISを纏っている。一夏くんのIS――ダブルオークアンタはこの中でも異質だった。
右手には緑の刃をした剣、左肩にはシールド? らしきものを装備しており、このISも騎士みたいな感じだね。武装は少なそうだけど、どうなのかな?
光輝「一夏くんのISって武装少ないの?」
一夏(異)「そうかもな。でもクアンタは他のガンダムタイプと違って動力源を2基装備しているからな。緑の光が背中とこのシールドから出てるだろ?」
確かに出てる……2基装備しているなら出力はどのガンダムよりも高いのか?
一夏(異)「こいつ――ツインドライヴのおかげで出力は二倍じゃなく二乗の出力が生まれるし、二次移行したおかげでクアンタムバーストも発動できる。こうやって対話もできるようになったってわけさ」
二乗の出力!? 凄いな……僕は一夏くんの説明に感銘を受けていると、紗耶先輩が笑っていた。
紗耶「へぇ! 一夏ちゃんのISも凄いな♪ 早く戦ってみたいぜ……」
光輝「そ、その前に――」
紗耶「分かってるよ。じゃあよろしくお願いしますっ!」
そう言って先輩は静かに目を閉じる。僕達もそれぞれ対話を始める。
光輝「サイコバースト……!」
一夏(異)「クアンタムバースト!」
ダブルオークアンタはシールドから何かを射出し、よく見るとソード系のビットで六基全てをクアンタの周りに配置させると、シールドが背中の動力源と直列に接続され緑の光が溢れ出す。
僕のISからも緑の光が溢れ出し、クアンタの光と混ざり合う。そしてそれらはアリーナ全体を囲み、それを感じて僕は意識が別の場所に行くのを感じた……。
周り全体が緑の光の空間にいるのは光輝、一夏(異)、腰まであるロングストレートの髪をポニーテールにしている紗耶がいる。もう一人の紗英と言う事だけあって、紗耶のポニーテールをほどけば完全に紗英である。雰囲気がボーイッシュ感を漂わせている。
一夏(異)「成功、したのか」
光輝「そうみたいだね。で紗耶先輩? ですか?」
紗耶「あぁそうだよ。オレはストレートよりポ二テの方が好きだからな」
光輝「確かにポニテな先輩もいいですね♪ って話反れてますって!」
紗耶「悪い悪い! じゃあ話すとするか……なんでオレ――紗耶という人格が生まれたのかを」
とうとう、分かる。紗英が紗耶になる原因を――そこにある紗耶の想いが。
紗耶「小学生頃の紗英は普通に友達もいたし明るい子で人気者だった。でもISが世に出回り始めてから変わってしまった。中学に上がってから、男子達からの苛めが始まったんだ……紗英自身は何もしてない。成績優秀、クラスでも女子からは人気で男子とも普通に話していた。でもそれが見下しているみたるように見えたらしくて癇に障ったみたいなんだ」
随分と勝手な考えに二人は憤りを隠せない。確かにISが開発されてからは女尊男卑の世界になり、男性を見下す女性はかなり多い。しかし、紗英自身はそんなこと全く思っていなかったのである。
一夏(異)「勝手過ぎる奴らだ! 世の中が悪いのもある……でもなんで話そうとしなかったんだよ!」
紗耶「あいつらにはそんなこと考えちゃいないさ。日々のストレスのはけ口に紗英はなっちまった。紗英の友達も助けてくれていたが、両親にも言えず、苛めに耐える紗英も日に日に精神的にも肉体的にも壊れていった。そして紗英の心が壊れる寸前にオレは生まれた――」
紗英はどこまで壊れてしまったのだろうか……壊れた心は回復するのに時間がかかってしまう。
紗耶「オレはすぐに紗英は苛めていた男子にすぐに復讐しに行ったさ。いつものように呼ばれて殴られそうになったところを返り討ちにしてやったよ。もうこれ以上、紗英が苦しむのを見たくないから――」
光輝「でもそれじゃあ更に酷くなるだけじゃないの……?」
紗耶「男子からはそれ以来なくなったさ。でもその風景をたまたま見ていた友達が紗英を突き放したんだ。紗英もいつの間にかやってて吃驚してた……返り討ちにしたことがすぐに広まって、女子からは怖がられて結局、紗英は一人ぼっちになっちまったんだ」
紗英を護る為に紗耶は復讐したけどそれは間違いで逆にもっと酷くなってしまった。一人と言うのは辛く、暗い闇をただ歩いて誰も助けてはくれないのだから――
光輝「そんな……そんなことって!」
紗耶「オレが悪かったんだ、今では何であんなことしたのかって反省してる……一人になった紗英は実家を離れてこのIS学園に入学することにしたんだ。紗英の成績もトップクラスだったし、何よりIS学園を受けるのは紗英だけだったしな。自分の事を誰も知らない県外の高校に行きたかったらしい。両親も適当に理由を言ったら許してくれたし、無事に入学できたんだ」
一人と言う言葉を言う度に紗耶は泣きそうな顔になる。友達の裏切りに紗英も紗耶も苦しんでいたんだろう。誰も助けることもなくただただ一人で進み続き続ける姿は虚し過ぎる……。
一夏(異)「まさかここに来ても同じことが起きたんですか?」
紗耶「一時期はそうだった。入学して始めてISを使った時、紗英からいきなりオレに変わったんだ。そしたら、声が聞こえたんだ……」
光輝「声? 何の声ですか?」
紗耶「紗英を侮辱するような声。その時のオレはそれが周りの奴らの声だと思ってクラスメイトの奴に襲いかかったりしたんだ……」
一夏(異)「待ってくれ! 実際に周りの人は何か言っていたのか?」
一夏の質問に紗耶は首を横に振った。
紗耶「いや、言ってなかった……。暴れていたオレを当時、担任だった織斑先生に止めてもらってすぐに一対一で話し合いさ。紗英も分からなかっただろうな……いきなり先生の部屋に連れていかれて何であんなことをしたかって聞かれても。先生は何でなったのか分からないと言う紗英をすぐに信じた。紗英の瞳は嘘をついているように見えないからだと言ってたよ……ホント、先生は凄いよ」
――君の瞳は本当に純粋だ。瞳を見ればどんな気持ちなのか大体分かる。
光輝はいつか千冬に言われたことを思い出す。千冬は紗英の瞳を見て確信を得たんだろう。信頼できる確信を。
紗耶「その事件を機に紗英はまたクラスで一人になった。でも今度は織斑先生が居る。それだけでもう心強かった。そんな中、紗英を全く恐れず話しかけようとしてくれるクラスメイトが居たんだ。名前は更識盾無――現生徒会長で紗英を救ってくれた恩人だ」
光輝「あの先輩が? でも確かに苦しんでる人を見過ごさなさそうですね」
紗耶「始めは紗英も吃驚してた。いつの間にか自分が知らないうちに暴れてほとんどの人が怖がっているのになんでこの人はあたしに近づいてくるんだろう? ってね。すぐに聞いたんだ、そしたら『なんでって……同じクラスメイトじゃない! この前あんなことがあったからって私はどうとも思わないわ。私は貴女と仲良くなりたいの!』って。嬉しかったなぁ。紗英ってばその場で泣き崩れてたもん」
その涙はきっと嬉し涙。二人はすぐに分かった。一人だった少女に真向から自分を受け入れようとしてくれる人を見てだから――
一夏(異)「会長は優しいんですね……みんながそうであれば良かったのに」
紗耶「盾無ちゃんが友達になってくれて紗英はまた笑顔を取り戻していったんだ。それに盾無ちゃんを通じてクラスメイトとも少しずつだけど、打ち解けることが出来たんだ。ISを使う授業じゃオレが出てくる。でもみんな受け入れてくれたんだ! オレは嬉しかった……!」
盾無を通じて紗英と紗耶は受け入れてもらうことが出来た。中学時代とは違い、もう一人じゃなくなっていたのだ。
紗耶「織斑先生や盾無ちゃんにはホントに感謝してる。これで紗英はもう一人じゃなくなったから良かった。でもオレはこれからもISを使う度に変わろうと思う」
一夏(異)「なんでです?」
紗耶「あいつは優し過ぎるんだ。こんなに優しい人間にオレはISと言う兵器を使わせたくない。ISがスポーツとはオレは思わない。ISはあくまでも兵器なんだ。少しでも間違えを起こしたら人を傷つけちまう! だから代わりにオレがISを使う。紗英を守る為に……」
ISは確かに兵器だ。それをスポーツじみた形で取り扱っているのはおかしいと思うのは当然だろう。紗英がISを使う度に紗耶になるのは紗英を守るそれが紗耶の想い。
紗英「大丈夫だよ。あたしはもう……怖くないから」
聞き覚えのある声がし、三人はその方向に振り向く。そこには見慣れた先輩――紗英がいたのである。
紗英はゆっくりと紗耶に近付き、包みこむように抱きしめる。
その行動に紗耶は吃驚したが次第に身体を弛緩させ、涙を流した。
紗英「紗耶ちゃんはずっとあたしを、守ってくれてたんだね……。でもあたしはそれに気付くことが出来なかった。ごめんね……」
紗耶「いいんだ……。オレは紗英が無事でいてくれたらそれでいいんだ。でも紗英にはISを使わせない。君は戦っちゃいけないよ……」
紗英「いいの。あたしは強くなりたい……紗耶ちゃんがあたしを守ってくれたように、あたしも紗耶ちゃんを守りたいの!」
紗英が自分の想いを真向に伝えた。今まで守られていた少女と守られている大切さを知らなかった少女の心が一つになる。
しかし、紗耶は迷っていた。こんな自分が本当にそんな大切な存在か、不審に思っていたその時――
アムロ[人を守りたいという気持ちは本人、周りの人も強くする。それに君は大切だと思われているからこそ、想いを伝えられているのではないのかい?]
光の中から現れたのは地球連邦の制服を着たアムロであった。光輝以外は姿を見たことなかったが、柔らかな声で全員が理解した。
紗耶「オレみたいな奴でも、頼ってもいいんですか?」
アムロ[当たり前だ。君を想ってくれている人はたくさんいる。もう一人じゃないんだ、もっと人を頼ってもいいんだよ]
アムロの言葉を聞き、紗耶は紗英に向き直る。今度は紗耶が想いをぶつける番だ。
紗耶「あのさ紗英。オレは迷惑もかけたし、ましてや紗英の周りから友達を奪った原因だ。それでもこれからも紗英を守っていきたい……ずっと君の中に居てもい、いか……?」
紗耶がりったけの勇気をぶつけた瞬間である。顔を真っ赤にさせて初々しいその姿は純粋な女の子そのものである。紗英の答えは――
紗英「はい♪ これからもずっと一緒に居て、二人でもっと幸せになろうよ♪」
紗英の言葉に紗耶は顔を胸に埋めて思いっきり泣きだした。自分の過去の過ちを受け入れてくれたことに、これからも一緒にいてくれると誓ってくれた。こんなに嬉しいことはないのだ。
光輝「二人が分かりあえてホントによかった……ぐすっ」
一夏(異)「おいおい、お前が泣いてどうすんだよ」
光輝「だって、だってぇ……」
アムロ[まぁまぁいいじゃないか。でも本当に良かったな]
二人を見ていた三人は無事に対話が終わりホッとしていた。光輝がけっこう大きな声で泣き出し、それに気付いた二人が近付いてきた。
紗英「三人ともありがとうございました! これから私たちは二人で一つで頑張っていくことにしたよ♪ ね、紗耶ちゃん!」
紗耶「う、うん……そ、そういうことだからこれからもよろしく頼むぜ……」
若干、紗耶の顔が赤いのはさておき、空間が光を増してきた。
アムロ[この空間もそろそろ解けるか。二人が分かりあえてよかったよ。じゃあまた後でね]
アムロは増していく光と共に消え、残された四人も別の場所に意識が飛んで行くような感覚のなか、意識を無くしていった。
瞼を開ければアリーナ内で僕と一夏くん、紗耶先輩がいた。あれだけ話していたのに実際過ぎた時間はほんのちょっとでしかない。これで作戦は成功だね!
紗耶「二人ともありがとな! 一夏ちゃん、オレちょっと行かないといけない場所があるんだけど、そこに行ってから模擬戦で良いか?」
一夏(異)「いいですよ。俺はいつでも待ってますから。だから早く行ってあげてください」
ごめんな! そう言って先輩はピットの中に戻っていった。しかし、一体どうしたんだろうか?
一夏(異)「ただ話に行くだけだろ。ちゃんと説明したいんだと思う」
光輝「話……? ……あぁ、そういうことか。ならそっちの方が優先だね。僕達もみんなの所に戻ろうよ」
一夏(異)「それもそうだな。先輩が戻ってくるまで報告でもしておこうか」
先輩が向かった場所――いや、会いに行った人は――
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遂に対話です! 今更、ですがこの作品を見て嫌悪感を抱く人がほとんどだと思うので、感じたらすぐに読むのを止めた方がいいですよ。 |
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