SAO〜黒を冠する戦士たち〜番外編 新年の始まり
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前書き兼注意です。

この話しはネタバレを含んでおります。

ですので、ネタバレが嫌な方々はブラウザの戻るを押すか別のページにとんでください。

読んでみたいという方々は、是非お楽しみください。

正月ネタですが・・・後半正月関係無いです、勢いに任せてやっちゃった♪

取り敢えず書いてみたかったんですよ!

時間軸はGGO編終了後最初の大晦日と正月ですね。

前回のクリスマスとは時間軸が異なりますので注意してください。

それでは、どうぞ・・・・・・。

 

 

 

 

 

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SAO〜黒を冠する戦士たち〜番外編 新年の始まり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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和人Side

 

「寒い…」

 

「寒いっす…」

 

「……寒いな」

 

俺、刻、景一の三人は今、自宅近くにある神社の入り口前に来ている。今日は12月31日、大晦日ということだ。

だが何故、男三人でここにいるのかというと、

それは俺の家で着物に着替えている明日奈と直葉と詩乃の三人を待っているからである。

俺達としては、家から一緒に来れば良いと思ったのだが、

女性三人に神社で待ち合わせと強くお願いされた為に、承諾したのだ。

ちなみに志郎は里香とその家族と、烈弥は珪子とその家族と共に別の神社に行っており、

公輝は雫さんと家族ぐるみで、遼太郎は奏さんと二人で奏さん宅の近くにある神社に行っている。

黒猫団のメンバーもいつも通りに自宅付近のところに行っているらしい。

アンドリューも大晦日の日は祖国に里帰りしていると聞いた。

そういうわけで、俺達三人は今回一緒に行動することになった。それにしても……、

 

「ゲームだとあんまり寒いと感じないのに、何故現実だとこんなにも寒いんだ?」

 

「そこはあれっすよ、実体の本能とかそんな感じの…」

 

「……Zzzz」

 

俺の言葉に刻が返してくれたが景一の奴は立ちながら寝たぞ…。頭を軽く叩いて起こしておく。するとそこに、

 

「刻く〜ん、お兄ちゃ〜ん、景一さ〜ん」

 

「ごめんね、遅くなっちゃった」

 

「寒かったんじゃない?」

 

直葉、明日奈、詩乃がやってきた……彼女達の姿を見て、俺達は固まった。なんともまぁ、綺麗だ…。

 

「明日奈、凄く綺麗だ…」

 

「うん、ありがとう///」

 

明日奈の着物は白を基調として、紅の模様が入ったものである。

 

「スグも可愛いっすよ」

 

「ぁ、ありがとう、刻くん///♪」

 

直葉は薄めの緑を基調とし、黄色の模様が入っている着物。

 

「……似合っている、詩乃」

 

「ありがと、ケイ///」

 

詩乃は水色を基調にして白の模様が入っている着物だ。三人とも本当に似合っている。

 

「よし、それじゃあ周ろうか」

 

俺達は彼女と手を繋ぎ、神社へと足を踏み入れた。

 

 

 

「相変わらず人が多い」

 

「……この地域では、ここくらいしか大きい場所はないからな」

 

「そうっすね。でも結構大変っす」

 

俺と景一と刻はそうぼやいた。

俺達三人はともかく、隣を歩く女性陣は着物であるので大変そうだ。

直葉も去年までは普通の服で来ていたのだが、今年は刻と付き合い始めたということで着物を選んだという。

ゆっくりとだが進んでいく、しかし人が多いので離されそうになる。と、離される?

 

「しまった、皆は!?」

 

「あ、はぐれちゃったみたい…」

 

俺がそれに気付くと、明日奈も気付いたようだ。

お、遅かったか……携帯を取り出して景一と刻にメールを送る。どうやら近くにはいるようだ。

無理に合流せずに、参拝が終わったらすぐ傍にある販売所の前で集合となった。

 

「俺達も参拝を済ませよう」

 

「うん」

 

人の流れに乗るように俺と明日奈は前へと進んだ。

 

 

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そして幣殿に辿り着いた俺と明日奈。

俺は財布の小銭入れの中から五円玉を二枚取り出し、一枚を明日奈に渡し、二人で賽銭箱に投げ入れる。

二回礼をし、二回手を叩き、少しの間祈りを込めて、最後に一礼を捧げた。

そして列から離れて販売所の前へと歩く。どうやら俺達が最初らしい。

 

「そういえば、和人くんはなんてお祈りをしたの?」

 

「ま、言ってもありがたみくらいは減らないよな。

 俺は『新年こそ、みんな仲良く平和に過ごせますように』って。

 今年は色々あり過ぎたから…」

 

SAOをクリアしたと思えば、ALOの須郷による暗躍、GGOでは『死銃事件』と来たものだ。

何故俺には安寧が訪れない!ちなみにもう少しで新年を迎えるところだ。

 

「そ、そうなんだ…」

 

「明日奈は? なんて祈ったんだ?」

 

「わ、わたしはね……『和人くんとユイちゃんとみんなと、楽しく過ごせますように』って、お祈りしたんだ///」

 

「そっか。なら、同じだな」

 

「そうだね♪」

 

明日奈と願いが同じならば、新年は平和で楽しくなるだろうな。

 

和人Side Out

 

 

 

刻Side

 

「見事にはぐれたっすね〜」

 

「あはは、まぁみんなしっかりしてるし」

 

しっかりと手を繋いでゆっくりとだけど進むボクとスグ。

和人さん達とはぐれてしまったけど、二人きりというのは嬉しいっす。

人の流れに乗っていると、賽銭箱の前に着いた。

予め五円玉を用意しておいたので、スグと揃って賽銭箱に投げ入れる。二礼、二拍、祈りを込めてから一礼。

 

「スグはなんて祈ったんすか?」

 

「え……刻君も一緒に言ってくれるなら言うけど…///」

 

「それなら問題無しっす!」

 

ボクがOKを言うと、スグも少しだけ照れた様子で頷いた。

 

「えっと、せ〜のっ!」

 

「「『スグ(刻君)ともっと仲良くなれますように』っす(だよ)……ぷ、あははは!」」

 

二人一緒のお願いというのは縁起が良いっすね。

幣殿から離れて販売所の前に向かうと、和人さんと明日奈さんが待っていたっす。

新年はいい年になるといいっす!

 

刻Side Out

 

 

 

景一Side

 

「人、多いね」

 

「……ああ、詩乃は大丈夫か?」

 

「うん、平気よ」

 

着物を着ているため歩き辛そうな詩乃に出来るだけ気を配っておく。

笑みを浮かべて答える彼女を見て、自分にも笑みが浮かぶのが分かる。

この娘と付き合い始めたことで自分の感情表現が多くなった。

前までは幼馴染である和人達の前でもあまり感情が表に出る事は多くは無かったのだけどな。

 

「きゃっ!?」

 

「っ、大丈夫か?」

 

何かに躓いて倒れそうになった詩乃を支える。

そのまま彼女をちゃんと立たせて、腰に腕を回して抱き寄せながらゆっくりと前に進む。

 

「ケ、ケイ、大丈夫だよ//////?」

 

「……私がこうしたいと思ったからだ」

 

「ぁ……ありがとう…///」

 

クールビューティーなどと思われがちな彼女だが、それは私がいない時くらいのものだ。

まぁ、あくまで明日奈達が一緒に居る時に聞いた話だが…。少しして幣殿にある賽銭箱の前に着いた。

五円玉を取り出して詩乃に渡し、それから投げ入れる。二礼、二拍を忘れずに行い、祈りを込める。

最後に一礼をしてから、私達は販売所の方へと向かうことにした。

 

「なんてお祈りした?」

 

「……『詩乃と笑って過ごせるように』と、祈ってみた…」

 

「そうなんだ/// 私はね、『景一と楽しく過ごせますように』って祈ったわ///」

 

「(くすっ)……そうか、そうなるといいな」

 

お互いに笑みを浮かべて頷く。販売所の前では既に和人達が待っていた、私と詩乃が最後か。

とにかく、新年はいい年になりそうだ。

 

景一Side Out

 

 

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和人Side

 

全員集まったな。お、そろそろ零時か…カウントダウンが始まるな。

 

『お集まりの皆様。あと一分で、新年を迎えることになります。

 え〜、はい、あと二十秒…それでは皆さんもどうぞ! 10!」

 

神社に取材に来ていたTV局の女性アナウンサーが恒例のカウントダウンを始めた。

それにならって、俺達も声を上げて数える。

 

「9!」

 

「8!」

 

「7!」

 

「6!」

 

「……5!」

 

「4!」

 

俺、明日奈、刻、直葉、景一、詩乃の順で叫び、

 

「「「3!」」」

 

「「「2!」」」

 

男三人、女三人で叫び、

 

「「「「「「1!」」」」」」

 

六人全員で叫び、

 

「「「「「0! 新年、あけましておめでとう!」」」」」

 

観衆全員で叫んだ。そして、新年を迎えた。

 

「今年もよろしくな」

 

「よろしくね♪」

 

「よろしくお願いしまっす!」

 

「お願いします」

 

「……よろしく頼むぞ」

 

「よろしく」

 

みんなで挨拶を交わしていく。

 

「それじゃあ、次へ行くか」

 

明日奈と詩乃は頭上に疑問符を浮かべ、この神社に馴染みのある俺達は笑みを浮かべる。

 

「どこに行くの?」

 

「除夜の鐘を鳴らしにだよ」

 

俺はそう答えた。

 

 

 

俺達は除夜の鐘を鳴らす為に、現在列に並んでいる。

順番は俺と明日奈が97番、刻と直葉が98番、景一と詩乃が99番と、最大が108番までなのでギリギリだった。

 

「でも、珍しいわよね? 除夜の鐘をつけるのって」

 

「……そうだな。まぁ、ここは昔からみたいだが」

 

珍しがる詩乃に景一が答えた、確かに珍しいだろうな。

俺達はSAOに閉じ込められるまでは毎年恒例の行事で、毎回並んでいる猛者だったし(笑)。

 

「でも、今年は皆で来れて良かった…」

 

「スグ、もう大丈夫っすよ…」

 

そういえば、スグは俺や刻達がSAOに囚われている間は、ここにも来ていないと言っていたな…。

父さんと母さんと一緒でも、行き辛かっただろうしな。

 

「今年からはみんなで来れるから、楽しめるよ♪」

 

「そうだぞ。だから、な?」

 

「明日奈さん、お兄ちゃん……うん♪」

 

そうこうしていると、俺と明日奈の前まで順番が来た。

俺達二人の前にいる女の子を連れている夫婦が鐘を鳴らしている。それを見た俺はある事を思った。

 

「いつか、ユイと一緒に来れるといいな…」

 

「和人くん…。うん、わたしも三人で一緒に行きたいよ!」

 

俺達はいつか出来るかもしれない夢へと想いを馳せながら、自分達の番になったので、

鐘を鳴らすための縄を二人で握り締める。

顔を見合わせてから頷き合い、力を込めて鐘を鳴らした。

大きな音が響き渡り、98番目の音が鳴り響いた。

俺と明日奈は縄を刻と直葉に手渡し、列を離れた。

二人も一緒に鐘を鳴らし、景一と詩乃も二人で一緒に鳴らしていた。

 

 

 

除夜の鐘を鳴らし終えた俺達は、お守りや厄除けの道具を売っている販売所の方に来た。

 

「ねぇねぇ、御神籤しようよ」

 

「いいですね〜」

 

「それじゃ、早速…」

 

明日奈の提案に直葉が賛成して、詩乃もノリノリだ。

女性陣は待ちきれない様子で二百円を払って御神籤を引いていく。俺達も続いて御神籤を引いた。

開いて中身を読んでみると、俺は吉だった。

 

「わたし中吉だ〜。えっと、勉学に励むと良い傾向あり、だって」

 

「私は吉です。苦手な事に挑戦すると良い、って書いてます」

 

「大吉ね、幸先がいいわ。健康そのもので過ごせる、ね」

 

「うっ、凶っすか……無駄遣いは控えるように、っす…」

 

「……中吉。友を大切に、か…当たり前だ。和人は?」

 

「吉だよ、恋愛運が良い。積極的にだと」

 

明日奈、直葉、詩乃、刻、景一、俺の順番で結果を発表した。

俺の結果を聞いてか明日奈は顔を紅くさせた。間違いなく大変なことになると思っているのだろうな。

 

「明日奈を悶死させないようにね」

 

「多分無理」

 

「ぁぅ//////」

 

詩乃の言葉に俺が答えたことで、明日奈は赤くなった。

それに皆が笑みを浮かべた。今年は絶対に楽しくなるな。

このあと、俺達は一度俺の自宅に戻り、女性陣は着替えを済ませた。

俺は明日奈を、景一は詩乃をバイクで家まで送り、刻は近くなのでそのまま徒歩で帰っていった。

余談だが、出張から帰宅していた親父が明日奈に対して、

「息子をよろしくお願いします」と言ったことで彼女が顔を真っ赤にして嬉しそうにしていたのは言うまでもない。

 

 

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そのあとの元旦、俺と直葉は家族で過ごした。

他のみんなも元旦は家族で過ごすことになっており、明日奈は京都にある結城家の本家に帰郷しているそうだ。

しかし、俺も三箇日の二日目である明日1月2日に京都に行かねばならない。

実は俺、桐ヶ谷和人は結城本家に招待を受けているのだ…。さて、一体何が起こるのやら…。

 

 

 

翌日の2日。俺は早朝の4時からバイクに跨り、高速道路を走っている。

途中にあるPAで休憩を取りながら、京都に向かっている。

ちなみに昨日の晩に一度ALOにログインし、ユイに会い、新年の挨拶をしておいた。

勿論、結城の本家に行く事はユイも承知しているので、ただ一言「パパ、頑張ってください!」と笑顔で言われた。

それでやる気が出たのは言わずとも分かるだろう。

高速道路が空いているとはいえ、休憩を取りながらだったので、

約五時間を掛けることでようやく京都に辿り着くことが出来た。

さらにそこから、一時間掛けて携帯の地図アプリを確認しながら本家のある街へと移動した。

予め明日奈に指示されていた場所に向かったところ、そこは駅だった。そして彼女を見つけた。

 

「あ、和人くん!」

 

「明日奈」

 

バイクを止めて彼女に歩み寄ると、思い切り飛び付かれた。上手く抱きとめてからキスを交わす。

唇を離し、お互いに笑みを浮かべる。

 

「ごめんね、大変だったんじゃない? ここまで来るのに…」

 

「確かに大変だったけど……明日奈に会えると思ったら、苦にならないよ…」

 

「ありがとう、嬉しいよ///♪」

 

そう言って明日奈は自分の唇をもう一度俺の唇に重ねてきた。駅とはいえ、幸いにも人がいないのは良かった。

 

「それじゃあ、案内してもらえるかな?」

 

「了解です! 地図送るね?」

 

予め明日奈が本家へのルートを地図アプリで作っていてくれたので、それを受け取りカーナビ替わりにする。

俺はもう一つのヘルメットを取り出して彼女に渡し、被った。

明日奈はバイクの後部座席に座り、前に座る俺の腹部に手を回した。

 

「それじゃあ行くぞ!」

 

「うん!」

 

明日奈が力を込めて俺に抱きつくのを確認すると、アクセルを回して結城の本家へと直行した。

 

 

 

「………自宅以上に圧巻だな…」

 

「あ、あははは…」

 

結城家本家のあまりのデカさに呆然と呟いた俺に対し、明日奈は苦笑を浮かべる。

彼女の自宅以上だ、うん……デカい。

 

「と、とりあえず入ってよ」

 

「そうだな、お邪魔します」

 

明日奈が門扉を開き入ったので、俺もその後に続く。敷地内に入ると、庭は手入れが行き届いた綺麗なところだった。

彼女に服の裾を引っ張られたのに気付き、玄関の扉へと歩いた。扉を開き中に入った明日奈に続いて俺も入る。

 

「ただいま戻りました」

 

「お邪魔します」

 

俺は((いつも|・・・))の明日奈ではなく、『閃光モード』のアスナへの変化に気付いた。

なるほど、彼女にとってこの家はあくまでそういう場所なんだな。その時、足音が聞こえてきた。

現れたのは一人の女性だった。

 

「お帰りなさいませ、明日奈お嬢様………そちらの方は?」

 

おそらく結城家に仕えている女性なのだろう、俺のことを訝しげな視線で見ている。

明日奈がそれに対して一瞬不快そうな表情を浮かべたが、すぐに毅然とした様子に戻って答えた。

 

「彼は私のお客様であり……同時に、お祖父様が招待なさった方です」

 

「なっ、当主様が!? こ、これは大変失礼いたしました!」

 

「いえ。こちらこそ、こんな身振りで…」

 

やはり明日奈の祖父である結城家当主の力は大きいらしい。女性はすぐに謝罪をしてきた。

まぁ、俺の身なりは全身黒ずくめだからな…。

 

「私は彼とお祖父様に挨拶に行きます……和人くん、こっち…」

 

「ああ、失礼します…」

 

俺と明日奈は靴を脱ぐと自分で並べ、用意されていたスリッパを履き、俺は案内の為に先導する彼女のあとを追った。

 

 

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大きな屋敷の中を歩き、少しすると一室の前で明日奈が止まった。

 

「ここだよ……お祖父様、明日奈です。桐ヶ谷和人君をお連れしました」

 

「入りなさい」

 

「「失礼します」」

 

部屋から壮年の男性の声が聞こえてきた。中に入るように促され、俺達は部屋へと入る。

厳格な面を持つ男性が椅子に座っていた。明日奈が先に彼の前のソファに座り、俺はその隣に座った。

彼が結城家の当主・結城((千里|せんり))氏だ。

 

「明日奈、席を外してくれないか? 彼と二人で話がしたい」

 

「ぇ、ぁ、はい…」

 

不安そうに俺を見てくる明日奈に俺は優しく微笑みかけた。

それをみて安心したようで、彼女は立ち上がると部屋から退出した。

足音が響き、おそらく自室に戻っていったと思う。

 

「まずはあけましておめでとう……そして、久しいな、和人君」

 

「あけましておめでとうございます。お久しぶりです、千里さん」

 

「前に会ったのはお盆の時だったね」

 

「ええ」

 

そう、俺と千里氏は既に会ったことがあるのだ。しかもゴールデンウィークとお盆の二回。

というのも、師匠の実家は奈良にあり、師匠と知人であった千里氏が訪ねてきたのだ。

その時に俺が明日奈の恋人であること、『神霆流』の師範代であること、

全国模試で一位を取っていることなどを師匠が洗いざらい喋ったのだ。

俺の過去は承知済みだったようだが、現在の俺の様子を知り大満足された。

つまり、結城家の人間に明日奈との仲を反対されようとも、

当主である千里氏が味方についているので何の問題もないということである。

ちなみに明日奈は俺が千里氏と知り合いであることも、安泰なのもしらない。

千里氏に黙っているように頼まれたからな。

 

「明日奈は相変わらず、儂のことが苦手らしい。自業自得ではあるがな」

 

「これからですよ。前の彼女ならともかく、今の彼女ならきっと大丈夫です」

 

明日奈は祖父である千里氏に対して、苦手意識がある。厳格で真面目な人だし、

結城家という家の当主だから、俺の境遇に対して反対されるのではと、彼女は思っているだろう。

 

「今回はキミを家の者達に紹介しようと思って呼んだのだ。どうかな?」

 

「いえ、その、非常にありがたいのですが……大丈夫でしょうか?」

 

「なに、何かあれば儂が黙らせる。儂がしなくとも、キミならうちの者達を十分に黙らせることができるだろうがな」

 

笑みを浮かべながらそう言った千里氏に俺は苦笑する。

自身が気に入った相手であれば、この人はフランクな一面を見せるようだ。

その時、扉が開いて一人の壮年な女性が入ってきた。

 

「お茶をお持ちしました……あら、そちらの方がもしかして…」

 

「ああ、明日奈の恋人である桐ヶ谷和人君だ。和人君、妻の((恋|れん))だ」

 

「初めまして、桐ヶ谷和人です」

 

「ご丁寧にありがとうございます。結城恋と申します、いつも明日奈がお世話になって」

 

「いえ、こちらの方が彼女にはお世話になっています」

 

恋さんの雰囲気は、どこか明日奈が時折見せる母性を持った一面に似ていると思った。

そのまま少しの間お二人と話し込み、区切りがついたところで俺は恋さんに明日奈の部屋へと案内された。

 

 

 

―――コンコンッ

 

「はい」

 

扉をノックすると明日奈の声が聞こえてきた。

 

「和人だ、話しが終わったんだけど…」

 

「和人くん!? すぐに開けるね!」

 

扉が開いて明日奈が迎えてくれた。中へと通されると、そこには彰三氏と京子さんがいた。

 

「彰三さん、京子さん。あけましておめでとうございます」

 

「おめでとう、和人君。今年も家族共々よろしく頼むよ」

 

「和人君、あけましておめでとう」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

新年の挨拶を交わすと、俺は明日奈に促されてソファに座った。

 

「和人くん……お祖父様になにか言われた…?」

 

「まぁ色々と…。あとで分かるよ、お昼は俺も出るように言われたし」

 

「まさか、父さんがそう言ったのかい?」

 

俺が頷いて応えると、結城親子は眼を見開いている。

 

「お義父さんからお誘いが出るなんて…」

 

「和人くん、やはりキミは大物になるぞ…」

 

「うんうん」

 

京子さんに彰三さん、明日奈の反応が面白い。

なんのこっちゃと思ったが、結城家ではかなり珍しいことなのだろうと考えた。

俺、どんどん凄い事になってきてないか?

 

 

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昼時になって集まるよう伝えられたので、俺は明日奈達と一緒に広間に向かっている。

なお、俺の服は現在カジュアルスーツを着ている。

さすがに自前の黒一色の服では問題があり、

千里氏が用意していてくれたらしい……用意周到だと思ったのは俺だけではないはずだ。

 

「そういえば、和人くんってテーブルマナーとかちゃんと出来てたよね? どこかで教えてもらったの?」

 

「……中学一年の時だった。師匠に強制的にパーティ行きを決定づけられて、

 死ぬ思いで完全習得したんだ……あの時の師匠と奥さんは、修行の時よりも怖かった…」

 

一瞬トラウマに陥りそうになった。明日奈は俺の肩を優しく抱き締めて慰めてくれる。結城夫妻も苦笑いだ…。

 

 

 

広間に着いた俺達は給仕の人にテーブルへと案内された。既に結城の親族が集まっており、

俺に対して訝しげな視線の集中砲火が浴びせられる。その時、恋さんが俺に歩み寄ってきた。

 

「和人君、よろしければ主人の傍に座ってもらえないかしら? 主人が出来れば和人君と話しでもしながら、と…」

 

そして恋さんが指した場所は……テーブルの主が座る席の右斜め側、つまり主の次に位が高い人が座る場所だ。

 

「あ、あの。そこは恋さんか、彰三さんが座るべき場所では…」

 

「そうなのだけれど、主人がどうしてもと…」

 

「和人君、是非座ってくれ。大丈夫だ、隣に明日奈を座らせるよ」

 

「え?」

 

あ、彰三さんによって退路を断たれた。しかも明日奈までという人身御供状態だと。

これはもう、腹を括るしかないな。俺は明日奈が逃げないように、その手をしっかりと握った。

 

「か、和人くん……」

 

「明日奈、すまない」

 

「退路は無し、なんだね…」

 

俺と明日奈は諦めて恋さんによって指示された席へと座った。

それを見てか、親族の人達の表情が驚愕に変わった。まぁ、当然だろうな……するとそこに、

 

「全員集まっているな……お、和人君、そこに座ってくれたか」

 

千里氏がやってきた。

 

「退路を断たれましたもので」

 

「いや、すまんすまん」

 

「「「「「……………(ぽかーん)」」」」」

 

俺と恋さんを除いた明日奈達や給仕の人を含む全員が呆然としている。

あの千里氏が笑みを浮かべながら、俺のような人間と話していればこうなるだろうけど。

彼が席に着いたことで、食事が始まった。静かな食事が始まる……かと思いきや。

 

「そういえば和人君、良いワインがあるのだが((飲め|いけ))るかね? 酒に強いと聞いたのだが…」

 

「俺は未成年です、酒を勧めないでください。

 というか、何故俺が酒に強いことを知っているのか教えてください……って、師匠ですね…」

 

「うむ、彼がそう言っていたよ。大分飲まされたことがあるみたいだね」

 

師匠は無類の酒好きであるが、非常に強いために酔うよいうことはほとんどない。

厄介なことに、弟子である俺、志郎、景一、烈弥、刻、公輝に酒を飲ませるという暴挙にまで踏みでている。

お陰で酒にはそれなりに強い方だ……良い子の皆は絶対に真似するなよ?

まぁ、SAOで異常な酔いに陥ったことがあるが…。

 

「千里さん、そろそろ…」

 

「む、そうだな。みな、彼の事が気になっていると思うので、紹介しよう。

 彼は桐ヶ谷和人君、明日奈が選んだ男性であり、儂が認めた明日奈の婚約者だ」

 

「はい?」

 

「「「「「(ぶぅーーーーー!!!)」」」」」

 

恋さんによって促された千里氏がそう言った。

俺は疑問符を浮かべ、恋さんは「あらあら」と言って笑みを浮かべ、他の皆さんは飲み物を噴き出した。

もしかして、千里氏は狙ってやったのか?

 

「あの千里さん、いつの間にそこまで認めてくれたんですか? ていうか明日奈、しっかりしろ!?」

 

「ぁ、ぁぅぁぅっ/////////!?」

 

親族の前でしかも苦手だと思っていた祖父に公表された挙句に、

認められていることを知った彼女は、一瞬で茹蛸のように真っ赤に顔を染めた。

他の親族は居住まいを正すとすぐに千里氏に質問を始めた。

 

「彼には、確かな実績があるのですか?」

 

「儂が認めた、では不満か? まぁ良い……彼は先日の全国模試で一位を取っておる。

 また、あの『神霆流』の師範代でもある。どうだ?」

 

「……いえ。今後の実績を作るには、十分でしょう…」

 

うん、迫力あるな〜。

 

「し、しかし彼はあのゲームの……ひっ!?」

 

一人の女性がそう言った瞬間、明日奈が怒りに染めた表情で彼女を睨みつけた。

いつの間に正常に戻ったんだ? てか、手を握っておかないと今にも攻撃を始めそうだ。

 

「そんなことは些細なもの。それを言えば、明日奈自身もそうだ」

 

「は、はい…」

 

千里氏に言われた女性は委縮したまま俯いてしまった。明日奈もなんとか落ち着いたようだ。

 

「他にはないな?……では、食事を続けよう。すまないな、和人君」

 

「いえ、自分も当事者ですのでお気になさらないでください」

 

食事を続けることになり、取り終えると各自部屋へと戻った。

 

 

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そして現在、俺は明日奈と二人きりで部屋にいる。ベッドの上で寝転がりながら、

明日奈は俺に抱きつき、思い切り甘えてくれている。

 

「ん…ちゅ、ふぁ…//////」

 

「んん、ふぅ…」

 

さらにキスを交わしておく。本当に可愛いな、明日奈…。その時、

 

―――コンコンッ

 

扉がノックされた。一体誰だろうか?

 

「はい」

 

「あたしよ、明日奈」

 

「俺もいるぞ」

 

明日奈が応じると聞こえてきたのは女性と男性の声だった。

 

「あ、どうぞ」

 

「って、おい! 今の状況は…!」

 

「あ…」

 

明日奈は入ることを促したが、俺が今の状況を言うと思い出したがもう遅い。

扉が開いたことで、二人の男女が入ってきた。二人とも、先程の食事で見かけた人達だ。

 

「あらら、お邪魔だったかしら?」

 

「そ、そんなことないよ……です…///」

 

「取り繕わなくていいぞ。さっきもお前の素を見たからな」

 

「えっと、それじゃあ…うん」

 

女性にからかわれ、男性に素のことを言われると元の喋り方に戻した。

どうやら明日奈が心を許せる人達みたいだな。

 

「初めましてだな。俺は野川当季ってんだ、よろしく」

 

「あたしは未山苑華よ、よろしく」

 

「なるほど。和人です、よろしく」

 

俺がフランクに答えたことで、二人は笑みを浮かべて、明日奈は少々驚いている。

名前からして、分家や従兄姉に当たる人達のみたいだな。

 

「ほらね、あたしが言った通り。彼、こっちが素だったわ」

 

「まったくだな。それに俺達に対しても普通に接するとは…。ま、俺達は落ちこぼれだからな」

 

「落ちこぼれではなく、自分のやりたいように自由にやっている、じゃないですか?」

 

俺がそう言うと二人は驚いたようだ。

 

「こりゃあジジイ並の怪物じゃねぇのか?」

 

「明日奈すんごいの捕まえたみたいね…」

 

「えへへ〜/// それほどでも///」

 

明日奈がデレデレとした様子を見せたので、当季さんも苑華さんも笑いを堪えている。

 

「そっか、明日奈が変われたのはキミのお陰みたいね。安心したわ」

 

「だな。それじゃあ俺達は退散するよ」

 

「もうちょっと話してもいいのに…」

 

惜しみを込めて言ったが、二人はニヤニヤとしてからこう言った。

 

「二人でイチャついてなっと!」

 

「人払いは済ませてあげるわ(笑)」

 

「にゃっ//////!?」

 

「ははは…」

 

二人はそう言って部屋から出ていった。明日奈はモジモジとしながら俺の顔を見上げてくる。まったく…。

 

「なら、お二人の言葉に甘えますか…」

 

「は、はぃ……//////」

 

俺達はベッドに倒れ込み、そのままお互いを求めていった。

 

 

 

1月3日。俺は結局、昨日今日と結城家でお世話になった。両親に電話をしたところ、「良くやった」と言われた。

なにが?とは聞かないでおいた…。

そして4日になり帰宅することになったが、明日奈と共にバイクで帰ることになった。

帰り際、千里氏にまた来てくれと言われた。まぁ、これで将来は安泰だな(笑)。

今年はホントに良い年になりそうだ。

 

和人Side Out

 

 

 

END

 

 

 

 

-10ページ-

 

 

 

 

 

後書きです。

再び、あけましておめでとうございます!

いや〜、後半は本当にやっちゃいました。まぁどのみち本編では書くつもりのない部分でしたからね。

それとGWとお盆に和人が千里氏に会っているとありますが、GWの方だけ今後書くつもりです。

というのも、ALO編が終わってからですが…。

あと、刻と景一が直葉と詩乃と登場したのは、この四人のイチャイチャがまだまだ遠いので、

見てみたいという方がいたので、こうした次第です。

それでは本編にて会いましょう・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
番外編になります。
改めまして、明けましておめでとうございます!
大晦日と正月ネタです。

どぞ・・・。
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コメント
遼東半島様へ あけましておめでとうございます! こちらこそ、今年もよろしくお願いしますね♪(本郷 刃)
遅くなりましたがあけましておめでとうございます。いやー今回のストーリーは読んでいて非常に嬉しくなりました(*^▽^*)ゞ。今年も宜しくお願いします。(遼東半島)
train様へ あけましておめでとうございます! いえいえ、気にしないでください♪ キリトはいつでもハイスペックですw(本郷 刃)
不知火 観珪様へ ウチの和人くんはリアルでも化け物クラスですw まぁ、明日奈の為なんですけどねw(本郷 刃)
サイト様へ 神父役お願いしますw サイドカーですか、買わせてみるのもいいですねw(本郷 刃)
あけましておめでとうございます!!しばらくコメできなくて申し訳ありません…;てかキリト君相変わらずのハイスペックですね…今年も頑張ってください!!(train)
全国模試で首席の強者だったのか、和人くんは……本当に化け物じみているなww(神余 雛)
ふむ、事実上の婚約おめでとう式には呼んでくれ。ぜひ神父として祝福しよう・・・それとバイクで高速を走るのはいいがサイドカーを買う気は無いのかね?(サイト)
RevolutionT1115様へ その部分を訂正いたしました、報告ありがとうございます! 当主さん狙いすぎですねw(本郷 刃)
千里「うむ、千里君がそう言っていたよ。彼に大分飲まされたみたいだね」…っておかしくないかな;;なにはともあれ、狙い過ぎだ当主ww(RevolutionT1115)
魅沙祈さんへ 良い年にならない方がおかしいですよねw 剣客で酒好きという設定は最初から考えていたんです。 キリト・アスナ「明けましておめでとうございます!」(本郷 刃)
初詣と婚約者紹介ですか…。キリトお疲れw絶対良い年になるよ!!!!それにしても、キリトの師匠がるろ〇に剣〇の主人公の師匠みたいですね…。酒好きなところとか。まあ、何はともあれキリト、アスナ、明けましておめでとう!!良いお年を!!!!(魅沙祈)
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