武装神姫「tw×in」 第二十二話 |
Pluto杯。この大会はそんな名前だった。
Plutoとは、ローマ神話における黄泉の国の神、または、今では太陽系から外れてしまった冥王星という意味である。
「コレ……分かる人には分かるんじゃないですか?」
「うん、多分ね」
きっと名前付けが面倒だったんだと思うな、冥王ミルート。
参加人数は32人。1ブロック4人のトーナメント形式で、もしも引き分けの場合は両者負けとなるらしい。
会場に行くと、すでにブロック分けがされていたので、確認すると、
Bブロックに天野
Dブロックに真南
Eブロックに木部
Gブロックに東太
そしてHブロックにオレと、見事にバラけていた。
「俺達が当たるのは、早くてもブロックを抜けた後だな」
「でもそうなったら誰かが優勝出来る確率が上がるね!」
場合により、残った8人の内5人がオレ達で埋まることがあるのか。
「それじゃ、行ってくるわ」
「頑張ってね?かなちゃん」
「カナユメさん、頑張ってくださいなのです」
「フンッ、言われなくてもそのつもりだ。キサマも勝ち残れよ」
Aブロックが終わり、Bブロックが始まるため天野が会場へ向かった。
オレ達の番はまだまだ先だ。
「それにしても、色々な神姫が揃ってるよね?」
「? オレの話?」
「それもだけど、わたし達もだし、この大会でもだよ」
あぁ、確かに。
オレ達5人で十一人という神姫を持ちながらも誰も被らず、更に会場内を見ればまた異なる神姫の姿がある。
「それだけ、神姫が沢山いるってことだよ」
ぱっと見た感じだが、ここにはライドバトルに適した神姫の姿しかなく、適していない昔からの神姫を合わせれば、その種類は凄い数になる。
「凄いよね?いったいどれくらいの数がいるんだろう」
「それは……分からないかな」
正式な数は、エンルのアーンヴァルMk.2型やスレイニのアーク型、ミズナのゼルノグラード型にもあるリペイント等の組み合わせもあって多種に渡り、さすがに知らない。
「みるちゃんなら知ってるかな……? あ、そういえばこの大会の名前って…」
真南、ミルートの主催って気付いたのかな?
「ぷると、ってどういう意味? 宗哉知ってる?」
……うん、真南は気づかないな。
天野、真南、木部、東太と順当にブロック突破を決め、ようやくオレの順番となった。
「頑張ってね下さいねマスター、コナユキ」
「応援してますよ!」
「気を張らずいつも通りに頑張って下さい」
「ありがとうございますなのです、必ず勝ってくるのです!」
エンル、ルミア、スレイニの三人と、真南達4人に見送られて、オレとコナユキは会場に向かった。
筐体の前に付くと既に他の3人は集まっていて、オレを見て大会の司会らしき人が名前と使用神姫を確認。その後くじを引いて最初のバトル相手を決めた。
「それでは、準備が出来た筐体から始めて下さい」
オレは筐体の前に立つと、前にいるバトル相手を確認した。
「ハッハッハ! 若者よ、悪いが手加減は出来ないぞ!」
三十代位の男性。その肩に彼の神姫が座っている。
「シェフ、今回の相手はこの方ですか?」
エンルと同じアーンヴァルMk.2型で、赤紫色の髪に緑色の瞳をした種類だ。
「あの男の人、シェフという名前なのです?」
「違うよコナユキ、そう呼ばせてるんだ」
神姫を起動した時、名前の登録と共に自分をどう呼ばせるか決める。基本はマスターだが、中には他の呼び名を付ける人もいて、あの人もそんな1人なんだろう。
しかし、シェフとは、少し変わっているような。
「若者とその神姫、残念だか勝ちは頂くぞ」
「むぅー、わたしたちだって負けはしないのです!」
「ハッハッハ! 威勢がいいな、だが、こちらにも負けられない理由というのがあるのだよ!」
それって……
「優勝商品ですか?」
「む!? な、何故分かった!?」
いや、他に思い当たらないし。
「だが、分かったところで私とムースのコンビには勝てないぞ!」
「勝てませんよ!」
あのアーンヴァル、ムースって名前なんだ。
「我が調理戦術、とくとその身に刻むがいい!」
Ride on!
フィールドはコロシアム。この大会ではブロック戦は全てこのフィールドらしい。
『コナユキ、武装の具合はどう?』
「ばっちりなのです、何だか皆さんに守られているみたいで、とっても安心出来るのです」
まぁ三人の武装を合わせた物だからね。
へッドとボディはスレイニ、アームとリアはエンル、レッグはルミアから借り、前とは少し違う組み合わせになっている。
武器はまず大剣:ジークリンデ
小剣:カットラス
そしてライフル:LC5レーザーライフルと、こちらはあまり変わりがない、けれどバランスの取れた組み合わせだと思う。
対戦相手であるアーンヴァルmk.2型のムースは、右斜め前に見つけた。その身は色んな神姫の武装で固められていて、固有レールアクションは使えないみたいだ。
「はっはっは! 残念ですけど、勝利はわたし達が頂きますよ!」
腰に手を当てて先ほどのマスターのように高笑いをする。かなり信頼しているんだな、マスターのこと。
「わたしたちだって負けないのです! ね、マスター?」
『うん、皆に合わせる顔もあるしね』
ここでオレだけ負けた、とかはさすがに避けたい。
『よし、勝ちにいくよ』
「はいなのです!」
Ready…………Go!
開始早々、コナユキとムースは互いに突撃した。
「たぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ガキィン!!
互いの武器が交錯した。
コナユキはジークリンデ、一方ムースは、銀のナイフ。名前の通り銀色で、普通のナイフの形状をしている、ぱっと見では武器には見えないが、コレは一応大剣に分類されている。
ガキィン!!
再度交錯、スーパーアーマーのある武器なので他の武器に入れ換えたら押し負けてしまう。
ガキィン!!
三度目の交錯の後、二人は同時に後ろへ下がり間合いを開けた。
「まだまだ行きますよ!」
ムースは止まらずに新たな武器を取り出した。
それは、銀のフォーク。銀のナイフ同様見た目は食器そのものだが、分類は槍。なので空いた間合いを詰めながら一突を放つ。
『大剣で受け止めるんだ!』
コナユキは再び大剣を構え、槍を防ぐ。そのまま攻撃を加えるが、
「甘いですよ!」
ムースはアタックチェインで武器を変えて対抗してきた。
銀のナイフ、ではなく、銀のスプーン。分類はハンマーだ。
ムースの武器は……大剣:銀のナイフ、槍:銀のフォーク、ハンマー:銀のスプーンか……
え? さっき言ってた調理戦術って、まさかそういう意味?
何か独特な戦闘方法か、そういう名前のついた技を使うものだと思っていたけど……まさか、武器が全部食器シリーズなだけとは……いや、まだそうとは言い切れないか。
きっと何か、秘密が……
「てぇぃやぁぁ!」
「きゃぁぁ!?」
コナユキの大剣がムースを吹き飛ばした。
秘密が……ある……
「決めるのです!」
ズバァ!
「うわぁぁぁ!」
小剣からアタックチェインのレールアクション『ATK:大剣』が炸裂、
「うぅ……悔しい、です……」
そのまま勝負がついてしまった。
「やりましたよマスター! 完全勝利なのです!」
『……』
「マスター? どうかしたのです?」
『え? あぁ、ごめん、何でもないよ。勝てて良かったね、コナユキ』
「はいなのです!」
……多分、何かあったと思うんだ調理戦術……きっと、多分、うん。
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初戦×調理戦術= | ||
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