中二病でも恋がしたい! デコモリ虫と最期の1週間と修羅場ツヴァイ
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中二病でも恋がしたい! デコモリ虫と最期の1週間と修羅場ツヴァイ

 

 

 前回までのあらすじ

 

 凸守はデコモリ虫の呪いによって余命1週間の身になってしまった(という自己設定)。

 彼女が助かる為にはダークフレイムマスターとして再覚醒したキスしてパワーアップを果たすしかない(という自己設定)。

 そこで凸守は中二病患者だった過去をバラすという脅しと共に勇太にデートを迫る。

 勇太は脅しに屈して凸守とのデートを引き受ける。

 だが、そのことは六花の心を深く傷つけたのだった。

 

 

 

 

 

 富樫勇太は自宅に帰宅してベッドに寝転がり、今日起きたことの整理を脳内で始めていた。

「六花……泣いていたもんな」

 小鳥遊六花とのやり取りは勇太にとって特に不可解で引っ掛かるものだった。

 

『勇太は……凸守と本当にデート……するの?』

 

 デートの集合場所と時間を告げて凸守早苗が去った後勇太が出会ったのは六花だった。

 六花は今にも泣き出してしまいそうな辛そうな表情だった。

 

『そ、それは……』

 

 彼女の辛そうな表情を見て勇太は激しく動揺した。

 六花が何に悲しんでいるのかよく分からなかったから。

 言葉の内容からデートに対して快く思っていないのは予測できる。

 けれど、デートの何が嫌なのか分からない。

 中二病らしく、デートというリア充っぽい行動を嫌っているのか。

 凸守のマスターとして、彼女に男が近づくのを嫌っているのか。

 それとも……。

 色々な可能性が考えられた。

 けれど勇太は元々女心に疎く、しかも六花は邪気眼中二病でなおさら心が読みにくい。

 下手に六花の心に触れようとすれば地雷を踏んでしまう可能性は高いと思った。

 

『ねえ、勇太。答えて……』

 

 泣きそうな表情で再度問い質してくる六花。

 勇太は仕方なく覚悟を決めた。

 

『ああ、凸守に付き合わないわけにはいかない……』

 

 火曜日の昼時のやり取りを思い出しながら六花に答える。

 

[断ったらどうなる?]

[お前の中学生時代の秘密を全てバラすのデ〜ス]

[…………オーケー分かった。1日ぐらいなら付き合ってやろう]

 

 もし誘いを断れば凸守によって勇太の中学生時代がバラされてしまう。即ち死にたくなるような恥ずかしい中二病だった過去を。

 それは勇太にとってハイスクールライフの終焉を意味している。不登校になって引き篭るしかない。だから凸守の願いを聞き入れるしかなかった。

 

『けど、凸守のことが気になっているからデートを引き受けたとかじゃなくてだな……』

 

 必死に言い訳を始めた勇太。

 実際に勇太は凸守に恋愛感情があってデートに乗ったわけではない。脅しに屈した結果。

 決して疚しい気持ちは抱いていない。

 それを六花に伝えたかった。しかし……。

 

『勇太にとって女の子と2人で出掛けることは……デートってそんなに軽いことなの?』

『そ、それは……』

『私は、勇太以外の男の子と2人で出かけるなんてできない。勇太は、誰とでも出かけられるの?』

 

 六花から普通の女の子な質問を受けて勇太は更に激しく動揺した。

 中学時代、中二病一直線だった勇太に女っ気はなかった。男友達さえいなかった。

 当然デート経験もない。

 そんな勇太にとって、凸守とのお出かけ。即ちデートが何を意味するのかはとても漠然としていた。

 付き合ってもいない。好き合ってもいない。そんな少女と打算に塗れてのお出かけ。

 それが意味するものは何なのか。

 幾ら考えても人生経験の乏しい勇太に言えることはなかった。

 

『勇太の……ばか……』

 

 六花は涙を流しながら俯くと勇太の前を走り去っていった。

 

『六花……っ』

 

 勇太は六花を追いかけることが出来なかった。

 追い付けても何と言って声を掛ければ良いのか勇太には分からなかった。

 

 

 

「お兄ちゃ〜ん、夕飯できたよ」

 中学1年生の妹、富樫樟葉(とがし くずは)の声と共に部屋の扉がノックされた。

「ああ。今行くよ」

 思考を中断して台所へと目指す。勇太には六花の涙のわけをまだ受け止め切れなかった。

 

「もしかして、六花ちゃんと喧嘩でもした?」

 食事を始めるや否や、勇太は母親からピンポイントで精巧過ぎる爆撃を受けてしまった。

「何故、そう思う?」

 とりあえず白を切ろうとする。しかし──

「帰ってきた時に六花ちゃんが泣きながら階段を上がっていくのが見えたから」

 母は確実に勇太の退路を絶っていく。

「六花ちゃん、制服姿だったし。時間から見て部活帰りよね。だったら……部活中に何かあったと見るのが普通でしょう?」

 勇太の外堀は完璧に埋められていた。

 仕方なく勇太は情報を部分開示することにした。

 

「確かに六花とは最近ちょっと仲がこじれているのは確かだよ。別に喧嘩している訳じゃないけど」

 目を軽く瞑りながら答える。

 勇太は現状が喧嘩ではないと考えている。

六花を悪く思う要素が存在していない。故に否定的な感情同士がぶつかっている喧嘩とは違う状態だと思った。

「そう? 無意識の内に傷つけている可能性だってあるわよ。六花ちゃんは繊細な女の子なんだし」

「それは、そうかも知れないけど」

 母の言葉が否定できない。

 

「六花ちゃんが悲しむような行動でも取ったんじゃないの? 例えば他の女の子とフラグ立てちゃったとか?」

「いや、俺、フラグなんて六花とも他の女の子とも立ててないからっ!」

 ムキになって反論する。

「明日、凸守と2人で出かけるのも脅迫に屈したからであって、色っぽさは何もな〜〜いっ!」

 大声で自分の正当性を叫ぶ。

 けれど、そんな勇太を母と2人の妹は白い目で見ていた。

「六花ちゃん、堂々と浮気されるのがショックだったのね。可哀想に」

「お兄ちゃん、それを世間では浮気って言うんだよ…………正妻は、わたしだけどね」

「うわき〜〜♪」

「グハッ!?」

 富樫家の女性3人から駄目出しを食らって大きな衝撃を受ける勇太。

 

「3年目の浮気どころか出会ってからまだ2ヶ月も経たない内にもう他の女の子にも唾付けてデートするだなんて。はぁ〜」

 母には思い切り溜め息を吐かれてしまった。

「いや、だから俺と六花は全然付き合ってなんかないんだってば! だから浮気とかそんな関係じゃないっ!」

 首を必死に横に振って疑惑を打ち消す。

 勇太は六花のことが嫌いではない。

 

『勇太……ありがとう』

 

 たまに可愛い言動を見せられるとドキッとすることもある。

 けれど、恋愛対象かと言われると今の所は違うような気がした。

 一般人として生きたい勇太にとっては彼女もまた一般人であって欲しいから。

 心に決めた子がいるわけではない。けれど部活メンバーで言うのなら森夏かくみんがそれに近い存在だった。

 逆に六花と凸守は勇太にとって過去の汚点を思い出させ、複雑な感情を引き起こさせる対象。

 けれども母や妹達の認識は勇太とは異なっていた。

「お母さん的には、勇太がさっさとお嫁さんをもらってくれるなら他の子でも構わないのだけど……六花ちゃん、あんなに尽くしてきたのに、こんなにあっさり捨てられるなんて可哀想に」

「お兄ちゃんの……浮気相手。その凸守って人……場合によっては狩っちゃおうかな?」

「うわきはだめ〜〜♪」

 若干1名違う見解の少女もいる。しかし、勇太が浮気しているということでは全員が一致していた。

 

「俺の味方はいないのかよ……」

 肩を落として落ち込む勇太。

「勇太、よく覚えておきなさい」

 母は息子の肩にそっと手を添えた。

「男1人で女の子達に吊るし上げられている時に援軍を期待するだけ無駄よ♪」

「……1人だけ女の”子”じゃない存在が混じっていると思います……」

 勇太にはそう反論するのが精一杯だった。

「どうしても援軍が欲しくなったら……男の子を産めば味方が増えるからいつでも言ってね、お兄ちゃん♪」

 樟葉は楽しそうに笑った。

「冗談にならない冗談を言うなっ!」

 勇太は大声で反論する。

「浮気どころか近親相姦もだなんて……どこで育て方をこんなに間違えたかしら?」

 頭に手を当てながらため息を吐く母。

「わたしが赤ちゃん産んだら、その子は絶対お兄ちゃん似だと思うから。ごめんね、ママ」

「しんみり謝るなぁっ!」

「ゆめははおんなのこがいい♪」

「そればっかりはお兄ちゃん次第だから。約束はできないかなあ」

「冗談をいつまでも続けるなぁ〜〜っ!!」

「ママは樟葉ちゃんの味方だからね♪」

「俺の味方をしろってのぉ〜〜っ!!」

 その日、勇太の意見が聞き入れられることはなかった。

 夕食は、とてもしょっぱかった。

 

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 翌日午前9時55分。

 勇太は凸守に指定された児童公園の中央で落ち着かなく立っていた。

「今日は凸守の用事に付き合わされるだけ。付き合わされるだけ付き合わされるだけ……」

 勇太は自分の今日の立場を言い訳するかのように何度も何度も呟く。

 しかし、付き合わされるだけと言いながら勇太は手持ちの中で最も見栄えの良いシャツを選んだ。更に鏡の前でヘアスタイルを30分以上弄るなど、付き合わされるだけ以上の行動を取っていた。

 勇太にとって凸守と出かける意味はまだ掴めない。

 

『勇太の……ばか……』

 

 そして六花の泣き顔が幾度となく蘇ってくる。

「やっぱり……中途半端な気持ちで凸守と一緒に過ごすのは……良くないよな」

 待っている内に段々と意気消沈してくる。

 凸守には悪いけれど、やっぱり断ろう。

 勇太がそう判断を下しかけた時だった。

 

「お待たせしたのデスよ、富樫勇太」

 

 待ち人少女の声が背後から聞こえてきた。

 勇太は意を決しながら振り返る。

 そして少女に自分の判断を喋ろうとして

「あのさ、凸守…………えっ?」

 口が動くのが止まった。止まらざるを得なかった。

 凸守の普段とは違う姿に見惚れてしまったのだから。

「な、なんデスか? 凸守のことをジッと見て」

 勇太に見つめられて照れる凸守。

「いや。何ていうか……その……すごく可愛いなあって思ってさ」

 白いワンピースに白いつばの長い帽子。ツインテールを解いて代わりに緑のリボンで緩く束ねている。手にはバスケット籠。

 深窓のお嬢様の高原避暑を連想させる佇まいだった。

 

「でっ、凸守は24時間365日、可愛いに決まっているのデスッ!」

 凸守が顔を真っ赤にしながらムキになって訴える。

「だ、だけど、今日は特別に、腐れ一般人の男が好みそうな格好をわざわざしてきてやったのデス。か、感謝しやがれなのデス……」

 凸守は俯きながら照れた。

「そっか。俺の為にありがとうな」

 その言葉は自然に口から出てきた。

「まったくなのデス……闇の眷属である凸守がこんな白い衣をまとうだなんて。しかもミョルニル・ハンマーを解いて外出するだなんて……」

 照れ照れしながら凸守は勇太を見上げる。

 身長の低い彼女は勇太から見れば頭1つ分以上小さい。

 でも、だからといって子供には映らない。

 すごく魅力的な少女に見えていた。

「うん。今日の凸守は……可愛いよ」

「そんな分かりきったことを何度も言うなデス………………ばか」

 凸守の顔がこれ以上ないぐらい真っ赤になった。

 見つめ合う勇太と凸守。

 良い雰囲気が2人の周囲を包み込む。

 どちらからともなく、2人の距離が近付いていく。

 そして──

 

 ヒュンッという空気を切り裂く鋭い音。

その音と共に、2人の顔の間を何かが高速で飛来。そして一瞬にして通過していった。

 その何かは公園に植えられているイチョウの樹の幹に深く突き刺さってようやく止まった。

 

「何だよ、今のは!?」

「体験したことがないすさまじい闇の波動を感じたのデ〜ス!?」

 突然の事態に心臓がバクバクなって騒がしい。勇太と凸守は引き攣った表情で自分たちの顔の中間を通り過ぎていった物体を確かめる。

 装飾に3つの玉が嵌め込まれたナイフの柄のようなものが樹の幹に深々と突き刺さっていた。

 深く刺さり過ぎていて刀身の部分がほとんど見えない。

 けれど、そのナイフらしきものに勇太は見覚えがあった。

 

「これ……中学時代に俺が買ったダガーのレプリカじゃないか」

 突き刺さった物体は勇太のかつての中二コレクションの1つに違いなかった。

 重度の中二病患者だった勇太は魔力が篭められているとされるグッズに弱かった。

 このダガーレプリカもついつい店主の謳い文句に載せられて買ってしまったアイテムの1つだった。

「でもこれ、プラスチック製のおもちゃだぞ。どうやったら樹にこんなに深く突き刺さるってんだよ!?」

 引き抜こうとしても全くビクともしない。

 かの伝説のアーサー王が岩より引き抜いたという伝説の剣のように、他者を寄せ付けない風格をかもし出していた。

 

「……富樫勇太の私物。つまり犯人は富樫勇太の私物に接近できる方法を有している。そして恐ろしい闇の波動。条件に当て嵌まる人物は1人しかいないのデス」

 一方で凸守は俯きながら何かを真剣に推理していた。

「まさかこのダガーを樹に突き刺したのが俺だなんてことになって、責任を取らされるなんてことはないよな? 冤罪なのにぃ〜〜っ!」

「……でも何故マスターがこんな真似を? 凸守に対する何かの警告なのデスか?」

 勇太も凸守もそれぞれの心配事で忙しい。

「……だけど一体、何の警告だと言うのデスか? マスターは何が気に入らないと?」

 更に考える凸守。

 一方で小心者の勇太はダガーの柄についているに違いない自分の指紋をハンカチで綺麗に拭き取りに掛かる。

「……もしかして、凸守が富樫勇太とデートしているのが気に入らないのですか? でも、今日中にダークフレイムマスターとキスしてパワーアップを果たさないと、凸守はデコモリ虫の呪いで死んでしまうのデス」

「消えろ! 俺の忌まわしき過去と指紋っ!」

「……凸守は死にたくないのデス。それに……」

 凸守は顔を上げた。

 

「ここにいるといつまた闇の勢力に狙われるか分からないのデ〜ス。さっさと移動するのデスよ」

 凸守は右手で勇太の左腕の肘を乱暴に掴むとつかつかと歩き始めた。

「まだ指紋の拭き取りが完璧じゃ……」

「もし、本気で犯人を割り出そうとするなら刃の方の指紋も調べるのデス。そうなったらどっちにしろ終わりだから心配要らないのデス!」

「それは俺の立場がより悪化する解説だぁ〜〜っ」

 嘆く勇太。

 でも、そんなことより、肘を掴んで歩くという行為がやりにくいことに凸守は気付いた。

 仕方なくと心で念じながら自分の肘で勇太の腕をホールドして歩くことにする。

 だいぶ歩きやすくなった。

「えっ? これって……」

 勇太の焦った声が聞こえてくる。

「この方が歩きやすいだけなのデス。だから何も言いやがるなデス」

 凸守は自分の全身が高熱を発した時のように熱くなっているのを感じていた。

 だからそれ以上は何も言わずに俯いたまま歩くことにした。

 

「………………っ」

 

 そんな2人の様子を髪の短い小柄な少女が電柱の陰からジッと見つめていた。

 

 

 

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「それで、凸守の用事ってのは結局何なんだ? 目的地もなく歩いている気がするんだが」

 公園を出発して1時間半。

 勇太は凸守と共にひたすらに街の中を歩き回っていた。

 女の子と腕を組んで歩くことにはさすがに慣れてきた。

 けれど慣れて余裕が出てきたことで疑問が生じる余地も出てきた。

 即ち今日のお出かけの目的が何なのか。

 勇太はまだそれを凸守の口から知らされていなかった。

「富樫勇太がそれを知る必要はないのデス」

 凸守は簡潔にして明瞭に回答を拒否した。

「じゃあせめてどこに向かっているのかぐらい教えてくれ」

「それも知る必要はないのデス」

「目的地も知らないまま歩き続けると気が滅入るんだが」

「まったく、文句ばっかりうるさい奴なのデス」

 凸守は空を見上げた。

「まっ、時間的にはそろそろなのデス」

 凸守は勇太を連れて大きな公園へと入る。

 

「うん? 公園?」

 勇太は首を傾げながら付いてくる。

「シートを敷いてやるから、早く座りやがれなのデス」

 凸守は魔方陣がデザインされている黒いビニールシートを敷く。

「えっと…………ああっ」

 勇太は少し躊躇したがシートの上に靴を脱いで座った。

「それで……えっと」

 座ったはいいが、凸守が何をしたいのか分からない。

「今日は凸守が富樫勇太の為に手作り弁当を準備してやったのデス。ありがたく食いやがれなのデス」

「ああ……手作りね」

 火曜日の教室での出来事を思い出す。

 

『このパック……高カロリー流動食って書いてあるんだけど……りんご味とピーチ味とチョコレート味って』

『この凸守がわざわざお前の為に3クリックも時間を費やしてやったのです。この大変な労力は手作りと同義なのデ〜ス』

 

 凸守が勇太の為に準備したのは、液体タイプの高カロリー流動食だった。

 だから今日もそうなのだろうと思った。

 ところが──

 

「す、スゲェ……」

 勇太は凸守がシートの上に広げた弁当を見ながら驚いた。

 凸守が準備したのは3段の重箱。

 多様な色を成すサンドイッチが詰められた段が1つ。

 から揚げや卵焼き、タコさんウィンナーなど定番とも呼べるおかずが数々並んだ段が1つ。

 そしてりんごやオレンジ、バナナなど綺麗に切られたフルーツがサラダと共に並んでいる段が1つ。

 火曜日の市販パックとはまるで次元が異なる豪華な食事が準備されていた。

 

「凸守って、料理もできたんだな。知らなかったよ」

 勇太は凸守と弁当を交互に見ながら目を丸くしている。

「凸守は学年トップの秀才なのデス。学年トップとは家庭科の授業も含むものなのデ〜ス」

 凸守はとても薄い胸を張って偉そうに答えてみせた。

「えっと、食べて良いか?」

 ウェットティッシュで手を拭きながら勇太は凸守に尋ねる。

「富樫勇太の為に作ったのだから、当然なのデス」

 凸守は頬を赤く染めながら目線を僅かに逸らして答えた。

「じゃあ、いただきます」

 ハムとレタス、ポテトサラダが挟まれたサンドイッチを手に持って口に入れる。

 凸守が関心なさそうな表情で、でも真剣な瞳で勇太を見ている。

 勇太はサンドイッチをよく咀嚼して──

「美味いっ!!」

 素直な感想を述べた。

「当然なのデス。この凸守が作ったお弁当なのデスから」

 凸守は息を撫で下ろしながら答えた。

 誇らしさの中に照れが見て取れた。

 そんな少女を勇太は可愛いと思った。

 

 勇太は安心してから揚げに手を伸ばす。

 そして──

「あっまぁ〜〜〜〜〜〜っ!?!?」

 大空に向かって感想を叫んだ。

「う〜む。授業以外で揚げ物をしたのは初めてでしたが、どうやら外見を再現するのが精一杯だったようなのデ〜ス」

 凸守は腕を組んでウンウンと2回頷いた。

「初めてで失敗するのは分かるけど……何故から揚げがこんなに甘くなるんだ?」

「砂糖を焦がすと、から揚げをあげた時と似た色になると闇ルートで得たのデス。だから色付けが足りない分は焦げ砂糖でコーディングしたのデス。えっへん、なのデス」

 誇らしげに語る凸守。そんな彼女は勇太は微妙な表情で見ていた。

「これ、凸守は食べられるのか?」

 凸守はから揚げをジッと見た。額から大量の汗が流れ出す。

「ま、まあ、他のおかずは見た目も味も悪くないはずなのデス。だから無理して食べる必要はないのデスよ」

 凸守はから揚げを重箱から避けようとする。寂しそうな瞳をしながら。

「なら、から揚げは全部俺が食べる」

 勇太はから揚げを箸で摘むと口に入れてむしゃむしゃと咀嚼し始めた。

「…………無理して食べなくて良いのデス」

 凸守は勇太から重箱を取り上げようとする。だが──

「ダークフレイムマスターが命じる。から揚げは俺が食べる。凸守は他のおかずを食え」

 凸守から再度重箱を取り上げて黙々と甘すぎるから揚げを食べ始めた。

「…………分かったのデス」

 凸守は勇太に従いタコさんウィンナーを箸で掴んで食べ始めた。

 

 それからしばらくの間2人は無言のまま食事を続けた。

 やがて勇太はから揚げを全てたいらげ

「冥界の珍味と思えば思いの外悪くはなかったぞ。誉めてつかわす」

 凸守の頭を優しく撫でた。

「…………ダークフレイムマスターは相当な女たらしなのデス」

 凸守は勇太をジト目で睨む。

 しかし撫でられるままにした。その顔を真っ赤にしながら。

「はっ、早く全部食べやがれなのデスっ! 残りしたりしたら容赦しないのデスよっ!」

 恥ずかしさが限界を超した凸守は箸で掴んだ卵焼きを勇太の口の中へと突っ込んだ。

「お前がわざわざ俺の為に準備してくれた弁当だろう? 当然全てたいらげるに決まっている」

「分かれば良いのデス…………ダークフレイムマスターは本当に女たらしなのデス」

 凸守が顔を赤く染めて俯いている横で勇太は3段の重箱を完食してみせた。

 

 

「あのお弁当は量が凸守と2人にしても多すぎたはず。どうして全部食べたのデスか?」

 食後、空を見上げながら休憩している勇太に凸守は話しかけた。

 凸守にとって勇太の行動は不思議でならなかった。

「それは多分……俺が毎日自分で食事を作る側の人間だからだろうな」

「富樫勇太は自分で食事を作っているのデスか?」

「ああ」

 勇太は頷いてみせた。

「富樫家では俺と妹の樟葉の2人が食事を担当している。両親が共働きでずっと長いことな」

 少年は空になった重箱を見ている。

「だから俺は料理を作る人の気持ちはよく知ってる。残すなんてできないよ」

 勇太は今度は視線を今日の昼食を作ってくれた少女へと移した。

「凸守が俺の為に準備してくれた食事ならなおさらな」

 勇太は凸守を見ながら笑った。とても爽やかな笑みだった。

「…………なるほど、デス」

 凸守は俯いた。

 今の自分の表情を勇太に見られるのはとても恥ずかしかった。きっと真っ赤に染まり上がっているに違いないのだから。

 

「そんなわけで俺と樟葉はどんなに大きな喧嘩をしても食事中だけは邪魔をしないのが不文律になっている。もっとも、樟葉はよくできた妹だから喧嘩することなんてほとんどないけどな」

「富樫勇太が救い難い重度のシスコン野郎であることは今の説明でよく分かったのデス」

 妹とはいえ、他の女の話を楽しそうにする勇太は見たくなかった。だから凸守は何となく文句を言ってみた。

 そして次の瞬間──

 

ビュンッという音がして、凸守の顔のすぐ目の前を何かが高速で突き抜けていった。

 凸守の目には鎖のついたロザリオか何かに見えた、が、その正体は不明。

「ひぃいいいいぃっ!?!?」

 凸守は上半身を仰け反らせながら再び肝を潰した。

「うん? どうした?」

 勇太は飛来物に気付いていないようだった。

「なっ、何でもないのデ〜ス」

 本当のことを言うのがとても怖かった。言えば今度こそ飛来物は凸守の頭に突き刺さるのではないか。そんな悪寒がした。

「食事を終わるのをわざわざ待ってからまた警告を発してくるなんて……マスターは一体何をそんなに怒っていると言うのデスかっ!?」

 とても遠くの大樹の幹の下に小柄な少女の影が見えた。

 けれど凸守にはその影の正体を確かめる勇気はなかった。

 

 

 

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「それで凸守は結局何の為に俺を1日中連れ回しているんだ?」

 食後の休憩が終わり再び歩き出して約1時間。

 勇太は相変わらず目的地も目的も知らないまま色々な場所を歩き続けていた。

「考えてみれば……あのから揚げを食べている時は目的を半分達成していたのデス。惜しいことをしてしまったのデス」

 隣を歩く凸守が眉をしかめて残念がっている。

「何だそりゃ?」

 勇太は首を捻る。

「単刀直入に訊くのデス」

「ああ」

「今すぐダークフレイムマスターになりやがれなのデス」

 勇太は周囲を見回した。

 繁華街に近い場所を歩いており、周囲には多くの通行客の姿が見えた。

「断固拒否する」

 もしこんな所で中二病を発症させたら……もしそれを同じ高校の生徒に見られでもしたら……。

 全身から嫌な汗が流れ始め、勇太は足早に歩いていく。止まったら恥ずかしさで死んでしまいそうな妙な気持ちだった。

 

「……強く拒絶したのデス。やはりまだダークフレイムマスターに完全覚醒したわけではないのデ〜ス」

 後ろからゆっくりと歩いてくる凸守は顎に手を当てながら何やら考え込んでいる。

「……でも、富樫勇太は昨日と今日の2回、確かにダークフレイムマスターとして覚醒したのデス。何か、何か覚醒スイッチがあるはずデス」

 凸守はデコを光らせながら深く深く考え込む。

 これ以上距離が離れるのもまずいので勇太は仕方なく足を止めた。

「……スイッチさえ判明すれば、凸守の手でダークフレイムマスターとして覚醒させて……キス……することも可能なのデス」

 けれど凸守の足も止まってしまった。

 本当に仕方なく勇太は凸守に向かって歩き出す。

「ダークフレイムマスターと……キス……」

 近付いてみると少女はデコを真っ赤に染め上げていた。

 

「凸守?」

 少女の小さな全身がビクッと跳ね上がる。

「ど、どうしたデスかっ?」

「それは俺が聞きたい。何故往来の真ん中で止まって茹で上がってるんだ?」

「そ、それは、アレなのです!」

 凸守は焦りながら顔を上げて周囲の景色を見回した。

「どの店に入ろうか考えて、あの店に入ることに決めたのデス!」

 少女が慌てて指差した1軒の店。

 それは──

 

「今となっては俺のハートを抉る古美術商じゃないかよ……」

 勇太にとっては近寄りたくない場所の一つとなっていたアンティークショップだった。

「富樫勇太はあの店の存在を知っているのデスか?」

「ああ……中学の頃はよく通ったもんだ」

 勇太は顔を逸らしながら挙動不審に答えた。

「やはり。ダークフレイムマスターもあの店で闇魔力アイテムを揃えていたのデスね」

「………………ああ」

「やはりあそこは闇の眷属御用達の店なのデ〜ス」

 まさにその通りの用途で勇太はアンティークショップに通っていた。

 今にして思えば、ていよくカモられていたのだと思う。

 あまり繁盛していなさそうなあの店が潰れないのは、きっとこの一帯の中二病患者を顧客に胡散臭いグッズを売りつけているからだと。

 考えてみると、飛来したダガーもあの店で買ったものだった。

「じゃあ、2人で寄ってみるデス。何か新しい魔グッズが入手されているかも知れないのデス」

 凸守が勇太の手を握った。

「………………………………ああ」

 勇太は行きたくなかった。

 けれど、凸守が嬉しそうな表情を浮かべているので嫌とは言えなかった。

 そして握られた手をどうしても離せなかった。

 

 

 凸守と並んでアンティークショップの中へと入る。 

 中学を卒業してからは1度も足を踏み入れず、近付いたこともない店へと。

「久しぶりだな……ダークフレイムマスター」

「グハァッ!!」

 少女のようにも見える緑がかった髪の長い女主人の挨拶の声に勇太の心は早くも砕けそうになった。

「心が、心が痛い……っ」

 過去の清算はそう簡単にできなかった。

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア…じゃなくてダークフレイムマスターが命じるっ! 俺が中二病患者だった過去を忘れろっ!」

 目を大きく見開いて女主人に向かって命令を発する。

「フッ。私にギアスは通じない。無駄なことだ、ルルーシュ……じゃなくて、ダークフレイムマスターよ」

 女主人は凸守のようには引っ掛かってくれなかった。

 勇太は心の中で泣いた。大泣きした。

 

「うん? よく見ればそっちはミョルニル凸守ではないか。髪型が違うから一瞬分からなかったぞ」

 女主人は凸守へと振り向き直る。

「1週間ぶりなのデス。女帝ピザ女」

 凸守は女主人に向かってニヤッと笑ってみせた。

 そんな凸守と勇太を女主人は交互に見て手をポンと叩いた。

「それにしても手を繋いで店に入って来るとは……なんだ、お前ら。デキていたのか。知らなかったぞ」

「「へっ?」」

 女主人はウンウンと頷いてみせた。

「ダークフレイムマスターとミョルニルのカップリングか。オタップルというヤツだな。いや、この場合中二病ップルと言うべきか」

「「…………っ」」

 2人が硬直して固まっているのにも気付かずに女主人は話を続ける。

「よし。2人の交際を祝して私が特別にお前らにプレゼントを贈ってやろう。感謝するがいい」

 女主人は凸守の手に1枚のスタンプカードを渡した。

「ピザのポイントカードだ。後9回注文するだけでピザが1枚無料になる。3日間ピザを食べ続けるだけで達成できるぞ」

 カードには1箇所だけスタンプが押されていた。

 

「ちっがぁ〜〜〜〜う〜〜〜〜〜〜っ!!」

 スタンプカードが凸守の手に握られてから1分ほどして再起動した勇太の大声が店内に木霊する。

「俺と凸守はカップルじゃない!」

「だが、仲良くお手て繋いで店内に入って来たではないか?」

「これには色々と事情があって……なっ、凸守」

 勇太は凸守の顔を見つめて同意を求める。しかし──

「………………っ」

 凸守は顔を赤くして黙って俯くばかりだった。

「何故否定しないんだ〜〜〜〜っ!?」

 勇太の絶叫。

「ダークフレイムマスター。お前、女が認めているのに男が交際を認めないって……最低の屑野郎だな」

 女主人のジト目。

「…………っ」

 黙ったままの凸守。

「何でこうなるんだぁ〜〜〜〜っ!?」

 再び絶叫する勇太。

 

 結局勇太はそれから女主人に2人の馴れ初めから現状に至るまで根掘り葉掘り聞かれ、2時間以上に渡って拘束された。

 その間凸守はほとんどずっと黙っていた。

 

「こんな店、二度と訪れるもんか〜〜っ!!」

 

 挙句の果てに何だかよく分からない恋愛成就グッズまで買わされて、勇太は今後の人生の目標を大声で叫ぶしかなかった。

 

 

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「すげぇ…疲れた……」

 勇太が店を出た時、既に日は暮れかかっていた。

 茜色の斜光が涙を誘った。

 フラフラな足取りで集合場所であった児童公園へと戻っていく。

 2人でベンチに腰を下ろしてようやく一息つく。

 

「なあ、凸守。何で俺と付き合っていることを否定しなかったんだ?」

 店内にいる時から疑問に思っていたことを改めて尋ねてみる。

「………………否定するほどに火に油を注ぐと思ったから。それだけなのデス」

 しばらくの沈黙の後、凸守は夕日を見上げながら返答した。

「けど、凸守が一言も否定しなかったからあの人が面白がって話が長引いたんだろうが」

 勇太は長く息を吐き出した。あの時間は勇太にとって凄く苦痛なひと時だった。

「別に凸守は気にしていないのデス」

 凸守が勇太の顔を覗き込んできた。

「富樫勇太は凸守と恋人だという噂を立てられるのがそんなに嫌なのデスか?」

 真剣な瞳。

 その真摯な表情に勇太は自分が悪いことをしている気分になっていく。

「いや、嫌ってわけじゃ……」

 歯切れが悪い。

「でも、事実じゃないんだし……」

 凸守に責められている気分。

 胸が苦しい。

「じゃあ、噂が真実になれば問題はないのデスね?」

 凸守は目を瞑り、顔を勇太に向けて近付けてきた。

「へっ?」

 その突然の行動に勇太は反応できない。

 硬直して凸守の顔が近づいてくるのを呆然と見ているだけだった。

 そして──

 

 ブォンッという空気を切り裂く大きな音が勇太と凸守の顔の間を切り裂いた。

 勇太が普段使っている傘よりも大きな物体が2人の顔の間を通過していった。

「なぁああああああああああああああぁっ!?!?」

 恐怖体験再びに悲鳴を上げてしまう。

「やはり……邪魔してきたデスね」

 一方で凸守は慌てていない。その瞳は怒りの炎に燃えている。

「へっ? へっ? へっ?」

 勇太にはまだ事態が理解できない。

「さあ、立つのデス。何が飛んできたのか確かめ、そして犯人を割り出してやるのデス!」

 凸守が両手で勇太の左腕を取って立ち上がる。

「あ、ああ……」

 勇太は凸守に連れられる形で腕を組んだ格好で歩いていく。

 

 勇太と凸守がゆっくりと歩いていった公園の奥。そこにはイチョウの樹の太枝が鋭利な切り口で切断されて地面に転がっていた。それも幾つも。

 そしてその先の砂場には巨大な黒い刀身の剣が斜めに深々と突き刺さっていた。

 更に剣のすぐ横に、小柄で眼帯をつけた少女の姿があった。

 

「なんで、こんな所に勇太のダークフレイムソードが?」

 眼帯少女、小鳥遊六花は勇太の所有物である黒大剣が砂場に刺さっているのを見ながら不思議そうに首を捻っている。

「へっ? 六花?」

 そんな六花を見て勇太は何故彼女がここにいるのかよく分からなかった。

「やはり一連の襲撃は貴方の仕業だったのデスね、マスターッ!!」

 一方で凸守は大声を出しながら六花を険しい表情で睨んでいた。

「で、凸守? 勇……太?」

 勇太達の存在に気付いた六花もまた驚いた表情を見せている。

 その六花は特に凸守の言葉に強く反応を示していた。

「襲撃って何のこと? 私はただ、留守電に勇太が今この公園にいるって変な声で連絡があったからちょっと来てみただけで……」

「幾らマスターの言葉でも、そんなみえみえの嘘は通じないのデ〜ス!」

 凸守は激しい剣幕で六花を睨み続けている。

「私は嘘なんかついてない……」

 そんな凸守の態度に六花ははじめ戸惑い怯えてさえもいた。

 しかし、凸守が勇太と腕を組んで立っている事実に気が付くと、ムッとした怒りの表情に変わった。

 

「何で凸守は勇太と腕を組んで一緒にいるの?」

 勇太は六花を見て驚いた。こんなにも怒りに満ちた彼女を見たのは初めてだった。

「それは凸守がダークフレイムマスター……富樫勇太とデート中だからデ〜ス」

 凸守の口調自体は普段と変わらない。けれど、凸守の顔もまたいつになく険しい。

 それも最も慕っているはずの六花に対して不快感を全面に表している。

 勇太はこの風雲急を告げる事態を全く理解できない。

 

「デート……っ」

 六花は鋭い視線で凸守を見続けている。

「そうなの、勇太?」

 六花の視線が勇太に向けられた。

「えっと……それは……」

 勇太は六花の言葉にどう答えるべきか分からない。

「今日の凸守とのお出かけは……」

 出発時はデートという思いはなかった。

 けれど、凸守が作ってきてくれた弁当を一緒に食べた時は。凸守と腕を組んで歩いていた時は。

 頭がごちゃごちゃする。

 

「富樫勇太……」

 凸守が不安そうな瞳で覗き込んでくる。

 いつもの小生意気さを体現した表情とは違う。歳相応の、いや、年齢よりも幼さを感じさせる不安に満ちた表情。

 ここで自分がデートでないと言ってしまえばこの少女がどうなってしまうのか。想像するだけで心が痛んだ。

「勇太は……凸守が……良いの?」

 そして六花も泣きそうな表情で勇太を見ている。

 デートだと答えればこの少女はどんなに悲しむか。

 勇太には如何なる判断も下せなかった。

「……何でだ? 六花も凸守も別に俺の彼女ってわけじゃないのに。どうしてこんな三角関係の修羅場みたいになっているんだ!?」

 当惑する勇太。

 そして勇太は当惑するだけで2人の対立を止めることができなかった。

 

 険しい表情でにらみ合う六花と凸守。そして2人の緊張感は限界へと達してしまった。

「凸守と勝負なのデス、マスター……ううん、邪王真眼っ!!」

「今日だけは……何があっても、叩き潰すっ!!」

 2人の少女は戦闘の構えを取った。

 

「負けた方が富樫勇太から完全に手を引く。それで良いデスね?」

「ちょっ? 待てっ! 何でそんな決闘を……」

「その条件で構わない。どうせ勝つのは私なのだから」

「六花まで何でそんな条件を飲むんだ!?」

 勇太の制止も聞かずに2人の少女は戦いの道へと突き進んでいく。

 そして──

 

「爆ぜろっ、恋敵(リアル)っ!!」

「弾けろっ、恋の因縁(シナプス)っ!!」

「「三角関係の宿命に今終止符を(ヴァニッシュメント・ディス・ワールド)っ!!!」」

 

 六花と凸守の全面対決が始まってしまった。

 

 

 続く

 

 

説明
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これはゾンビですか?
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2011クリスマス特集
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