魔法少女と魔術使い
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第四話

 

 

 

 

 

「はぁっ!」

 

「っ!!」

 

剣を一度ぶつけただけでアルカナは気づいた。

この相手は理性を振り払って勝てる相手ではない、ということに。

 

それに気づいた瞬間アルカナの開いていたはずの左手に黒い剣が生み出されていた。

魔術刻印による砂鉄の剣だ。

砂鉄の剣では決して相手に傷をつけることはできないとアルカナは直感で悟り防御に専念させた。

 

本来ならこの場は一回離れて立て直すことが定石だ。

しかしアルカナにその選択はできない、いやしない

 

後ろに守ると誓った少女がいる限り。

 

アルカナはそこで一歩たりとも下がることを拒否し一歩ずつ英雄の剣技の嵐の中にただ進む。

 

 

***

 

「くっ!」

 

「ハァッ!」

 

互いに剣をぶつけて弾き飛ばされる。

それでも次の瞬間にはまたぶつけ合う。

最初の一撃をこの敵は軽々と受け切った。おそらく理性をなくしても戦闘技能は変わっていないのだろう。

今ボクが受けている剣は前世でわずかだが見たサーヴァントと同じものをしている。

一撃一撃がきつい。

百パーセントの身体強化をしているのにもかかわらず力で押し込まれる。

剣技でも力でも上をいかれる。

唯一勝っているスピードでも相手はその技術で抑え込まれて動かせてくれない。

 

しかしこうすることによって相手は宝具を発動させることはできない。

そこに勝機はあると考えた。

 

前世の頃にアイリさんが説明してくれた。

このサーヴァントの真名はかの有名な騎士王アーサー、宝具は|約束されし勝利の剣《エクスカリバー》

は最高位の宝具。

しかしその威力故に放つにはそれ相応の時間がかかり、さらには大上段が振り下ろさせなければならない。

こうして近づいて斬り合うことでその条件は揃わない。

しかしボクの持っている宝具「現実を切り取る剣」にその条件は当てはまらない。

こうして斬り合っている間もボクはずっとセイバーの体を「認識」している。一回でも当てることが出来れば一撃で勝負は決まる。

その分遠距離攻撃はできないけどね。

 

そうやって斬り合いを始めて早くも三分ほどたった。

 

「ハァッ!」

 

「うおぉっ!」

 

まずい、非常にまずい。

三分間連続して斬り合い悟ったことがある。

この敵は本当に強い。なんで最優のサーヴァントって呼ばれているのかよく分かる。

この三分間に小さい傷を一回でも与えることができていない。

対してこちらには切り傷が数か所できている。

それだけ技術に差があるということだ。

それだけではない。

 

「はぁはぁ、くっ!」

 

「セァッ!」

 

相手の振りかぶった一撃を「現実を切り取る剣」と砂鉄の剣でそらし、カウンターを繰り出す。それさえも相手は余裕の様子で避ける。

相手が離れている間に息を整える。

理由は簡単。

 

この体が戦闘に耐えれていないのだ。

前世の成長していない体よりマシとはいえこの小さい体に英霊と戦うだけの体力はないのである。

しかも休むことなく剣をぶつけ合ったらこうなることは明白だった。

これはボクの失態だ。相手を甘く見すぎた。

どうする?

 

焦ったその瞬間ボクの目に映ったのは相手の脇にできたわずかな隙。

反射的にそこに剣で斬りつけようとするボク。

 

「!?」

 

そしてそれは失敗する。

それは相手が意図的に作った隙だった。

相手は剣を持っていたはずの左手をいつの間にか離してボクの剣の狙いをそらした。

その結果「現実を切り取る剣」は地面に突き刺さり一瞬防御にも攻撃にも使えなくなる。

その一瞬は相手にとって十分だった。

 

「がっ…は…!」

 

鳩尾に向かって柄を使った強力な一撃が放たれ、なすすべもなく吹き飛ばされそうになる。

しかしセイバーはボクの足を踏み移動することを許さない。

そうして動けないボクに剣を振りかぶり強烈な斬撃を放とうとする。

とっさに砂鉄の剣を使いセイバーの足を狙う。

攻撃を中止して後ろに飛んで逃げるセイバー。

それを追おうとするが足が言うことを聞かない。

 

(ここまでか……!!)

 

今まで仮にも互角に戦えていたのは身体強化百パーセントで、しかも全力で戦っていたから。

しかし今の一撃で体の身体強化が八十パーセントにまで落ちケガまで負ってしまった。

これを再び百パーセントまで戻すには時間がかかる。

しかしそれを待ってくれる相手じゃない。

たとえ戻せても今までと同じことはできない。

 

「|砲撃《ファイア》!」

 

「っ!!」

 

飛びかかった相手に魔力弾が当たる。

そうしてボクの隣にたって不敵に笑う凛さん。

手にはいつの間にイリヤから渡されていたのかルビーが握られていた。

 

「大丈夫かしら」

 

「ゲホッゲホッ!」

 

「全然大丈夫そうじゃありませんわね」

 

「アレ相手にあそこまで戦えるなら十分よ。おかげでこの魔法陣も出来たことだし」

 

凛さんとルヴィアさんの後ろには|砲撃《シュート》六つ分の魔法陣があった。

それを放つために相手をけん制し距離をとらせたのだろう。

 

「かはっ!くっ凛さん、それを使ったら…ガハッ!」

 

しかしそれは下策だ。

そんなことをしたら相手に宝具を使う隙を与えてしまう。

それを伝えようとしてもボクの口はうまく動かない。

大切なことを伝えることが出来ないまま凛さん達は砲撃をセイバーに向かって撃ち出す。

 

「ッ!!」

 

見事にそれは全弾セイバーに当たる。

二人の魔力弾は橋の下にあった川の一部を吹き飛ばす一撃だった。

 

「ホーーーーーッホッホッホ!!楽勝!快勝!常勝ですわ―!!」

 

「よーやくスカッとしたわ」

 

その結果に胸をなでおろすイリヤたち。

しかしこの程度でやられるのならばセイバーは“最優のサーヴァント”なんて呼ばれていない。

 

そんな思いを持っていたボクの予想通りセイバーは川の上に立っていた。

圧倒的力の差に絶望する四人。

そして発動される最強の宝具。

 

集められているのは圧倒的な魔力。

そんなものを放たれたら絶対に死ぬ。

なら少しでも抵抗してやる!

約束されし勝利の剣に集められてる魔力を「認識」、出来る限り「切り取る」!

 

 

「|約束されし勝利の剣《エクスカリバー》!!」

 

「|現実を切り取る剣《リアルカット》!!」

 

 

撃ち出された「約束されし勝利の剣」の魔力を「現実を切り取る剣」によって四割削るが分かってはいたがすべてを消すことはできなかった。

抵抗空しく黒い極光はボクや凛さん達を一瞬で飲み込んだ。

 

 

***

 

 

圧倒的差。

 

この惨状を表すのはそれが一番だろう。

アルカナによって軽減されているとはいえ「約束されし勝利の剣」の威力は川を消しとばし、鏡面界を両断した。

そして黒い極光が通った後には何も残っていなかった。

 

そんななかアルカナは生きていた。

無事とは言えないほどの傷を負いながらも五体満足で生きていた。

 

『ここまでとはさすがに思っていませんでした』

 

『さすがアーサー王というべきですかねー』

 

「ありえないなんてありえないってどこかのホムンクルスも言ってたよ……」

 

『あっ、起きましたか』

 

「考えうる限り…最悪の目覚め…だけどね。ところで…ここは?」

 

『土の中ですよー。さすがに見殺しにするのはしのびなかったので』

 

「あ、りが…とう、でも…ならセイバーは…まだ、やられてないんだな」

 

『そういうことになりますねー』

 

「なら…早く…ここから…出してくれ…!」

 

『なっ!?あなたは今大怪我しているんですよ!そんな状態で何をするつもりですか!』

 

「…まもらきゃ…イリヤを…守らなきゃ…!」

 

黒い極光がアルカナ達を飲みこむ瞬間ふたつのステッキが緊急回避を行っていた。

そのため凛たちは負傷したとはいえ無事だった。

 

しかしアルカナはそうはいかなかった。

二人よりも前にいたということにより二人より遥かに大きいダメージを負ったのだった。

そんな状態でセイバーと戦うというのは自殺行為に等しい。

 

しかしアルカナは迷わない。

自分を救ってくれた少女を守るためなら命すら投げ出す。

それは彼の前世の死因でもある。

彼のそれは明らかな歪みだった。

 

 

後にそれによってある事件をおこす、だがそんなことに今は誰も気づかない。

 

 

ともあれふたつのステッキの説得を無視しアルカナは地上に出る。

 

そこは戦場だった。

威力のありすぎる攻撃は周りの地形を変えてしまう。

そんななかでセイバーとイリヤは戦っていた。

 

セイバーは先ほどの「約束されし勝利の剣」に魔力を使いすぎたためか動きがアルカナと戦っていた時よりも数段落ちていた。

イリヤはまるでアルカナが前世で経験した第五次聖杯戦争でみたアーチャーのような姿をしていた。

アルカナは知る由もないがその動きや能力はまさに「英霊エミヤ」だった。

 

しかしアルカナが驚いたのはそイリヤが英霊の力を使っていることではなかった。

 

(あのイリヤの魔力はまさか!)

今イリヤの纏っている魔力は前世で彼が一緒にいた時と同じ、すなわち聖杯の力が宿っていた。

(だとすればこの戦闘は問題ない。それよりも問題なのは)

この戦闘後これを彼女が覚えていたら間違えなくショックを覚える。

 

しかしそんなアルカナの心配を置いて彼女たちの戦いは激化する。

 

飛び上がりながら投影によって剣を三本製造しそれを矢として放つ。

それをセイバーは避け、あるいは弾き回避する。

それを予想していたように二本の剣を新たに投影し振り下ろしセイバーにダメージを与える。

セイバーは剣によって攻撃を加えようとするがイリヤはそれすら後ろに下がることによって避ける。

そして剣を捨ててすぐさま矢と弓を投影、放ち、セイバーを攻撃する。

セイバーは首を傾け避けるが、かすったことにより目を覆っているバイザーが破壊される。

 

まさにその戦闘は「英霊アルトリア」と「英霊エミヤ」のものだった。

 

その戦闘もすぐに終わりを迎える。

 

イリヤが距離を取ったことにより再びセイバーが「約束されし勝利の剣」を発動させる。

ミユはそれに焦るがイリヤとその力を知っているアルカナは動じなかった。

 

「|投影《トレース》 |開始《オン》」

 

そのキーワードを呟き作り出すは相手と同じ「約束されし勝利の剣」。

 

 

「「|約束されし勝利の剣《エクスカリバー》!!」」

 

白い極光と黒い極光がぶつかり合う。

しかし均衡は長く続かなかった。

 

「う…ああああああああ!!!」

 

「……ッッ!!!」

 

イリヤは今まで以上の魔力を出しセイバーを圧倒する。

そしてセイバーは白い極光の中に飲み込まれカードとなった。

 

 

そして普段の姿に持ったイリヤとそれを見たアルカナは気絶した。

 

 

 

 

こうして最優のサーヴァントセイバーとの戦いは終わった。

 

 

 

 

 

 

多くの謎を残して……

 

 

 

 

 

 

説明
少年アルカナは死んだ。大切な少女を守り、約束を守り死んでいった。しかし気が付くと死んだ場所ではない全く違う場所にいた!しかも近くには死んだはずの恩人たちの姿が!どうやらここは似ているが全く違う世界らしい。そしてなんやかんやでホームステイした家では守りり抜いたはずの少女がいた!そんな平和な時間を過ごしていたが戦いの時は迫っていた!これはとある魔法(奴隷?)少女と魔術使いの少年の物語。TINAMIにも投稿しています。アニメ化が近いということで思わず書いてしまった小説です。主人公は映画版Fate/stay nightから来ています。
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映画Fate 転生 オリ主 プリズマイリヤ 

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