魔法少女と魔術使い
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第五話

 

 

 

 

セイバーをイリヤが倒したあの激戦の翌日。

 

「くうぅぅ!!」

 

「動かないでください」

 

「情けない、この程度で動けなくなるなんて情けないよ!」

 

「そうはいってもこの体では!」

 

動けないことにもどかしそうそうにするボクをなだめるように言うセラさん。

本当にボクは現状が情けなくてたまらない。

そうあの戦いのせいでボクは

 

 

 

筋肉痛で動けなかった。

 

 

 

 

あの夜に見たイリヤの魔力についてアイリさんに聞きたかったが今もどこに居るかも分からない状態だったためにそれは断念した。

イリヤは昨日のことを全く覚えていなく安心した。

 

怪我については凛さんとルヴィアさんの治癒魔術によって大体回復した(その際裸を見られ体にあった無数の傷について説明を要求された)。

しかし百パーセントの身体強化をした代償としてかなりひどい筋肉痛になってしまった。

腕を上げようとするだけで凛さんの砲撃をくらったように痛む。

くらったことなんて一回もないんだけどね。

 

「しかし、この程度の筋肉痛で学校を休むわけには…!あいたっ!」

 

「少し触っただけでもそんなに痛むのに無理しないでください」

 

「だけど成績とか…」

 

「小学校はそんなに厳しくないから大丈夫です。それにイリヤさんに比べてあなたの成績はトップクラスでしょう」

 

「今さりげなくイリヤを貶したような…」

 

「とにかく!今日はイリヤさんも休ませますから貴方もゆっくりしてください」

 

「うぅぅぅーーー」

 

「うめいてもダメなものはダメです」

 

どうやら今日はどうあっても休むことになったらしい。

仕方ない、休むなら休むでをしっかり寝ておこう。

 

 

***

 

 

最高位の礼装であるステッキマジカルルビーは暇を持て余していた。

彼女の主であるイリヤスフィール・フォン・アインツベルンは高熱を出してしまい学校を休むことになった。また彼女と同じ家に住むと同時に思い人であるアルカナ・バーンも昨日の戦闘の影響で休むことになったようだ。

 

イリヤが眠ってしまったために暇を持て余したルビーは暇をつぶすと同時に昨日の戦闘についてアルカナに聞くつもりだった。

あの戦闘はどう見ても素人ではない。

あの最優のサーヴァントであるセイバーと短時間ではあるが斬り合うことが出来たのだ。

贔屓目に見ても明らかに英霊クラスの実力を持っている。

大人になりさらに力を増したらまず最強クラスの力を持つことになるだろう。

 

イリヤによるとアルカナは三年前ほどにイリヤの母親であるアイリの手によってこちらに来たらしい。

それまでのことは本人も離さないためどのような生活をしてきたのかイリヤだけでなく家族も知らないらしい。

 

そんな謎の少年アルカナの部屋にルビーは潜入していた。

 

(いや〜思ったよりもファンシーな部屋ですねー)

 

その感想は的を得ていた。

部屋の至る所に動物をコミカルにしたようなぬいぐるみが置かれていた。

ぶっちゃけイリヤの部屋よりよっぽど女の子らしい部屋である。

 

(う〜ん、部屋に入ったことがばれたら確実に解体されますね)

 

実際はこの部屋のことを隠しているわけではない為そんなことは起こらないのだが、そんなことを知らないルビーには絶好の壊す理由が出来て嬉々としてルビーを壊しに来るアルカナの姿が目に浮かんでくる。

 

(ばれないうちに出ていきましょう)

 

「う〜ん」

 

彼の正体のヒントもないうえ、命あっての物種ということで撤退しようとしてたルビーはアルカナの声によって動きを止めてしまう。

そしてアルカナは一言。

 

「大丈夫だよー、イリヤはボクが養うから」

 

(何というか夢の中を覗きたいような覗きたくないような。それよりもイリヤさんはあなたにとってどんなイメージの人なんですか?と聞きたくなる寝言ですね)

 

微妙に続きを聞きたいようなそんな寝言。

アルカナのイリヤへの評価が気になるが、そんなイリヤもニートになりなどと寝言で言っているためその評価は正しいと言えるだろう。

ある意味お似合いである。

 

ためになったようななっていないような、そんな微妙な気持ちを抱えてアルカナの部屋から出ていくルビーだった。

 

 

***

 

 

「う…ふぁーーーー。よく寝たな」

 

窓を見てみるともう日が昼を越えていることに気付く。

時計を見ると二時とあった。

 

「寝すぎたかな、まぁいいや」

 

よっと体を動かすと筋肉痛はだいぶマシになっていた。

眠っていたために行くことの無かったトイレに行こうとするが、その前に寝汗で汚れたパジャマを変えることにした。

 

「これって絶対リズさんの仕業だよね」

 

ボクが開いたタンスの中に入っていた服はきれいさっぱり消えていた。

そのかわりということで合計十着ほどの執事服にはいっていた。

 

「寝汗が気持ち悪いから着替えないっていうのは嫌だからなぁ」

 

仕方なく執事服を着る。

前世でもイリヤに着させられたことがあるから手順は覚えている。

少年執事というにふさわしいという褒め言葉なのか分からない褒め言葉をいただいたこともあった。

 

 

そうして着替えたボクはトイレを無事に終えてリズへのお叱りを終わらせて暇をもてあそんでいた。

 

「そうだ、イリヤのところに行こう」

 

そういえばイリヤの様子を見ていないことに気付いたボクは彼女の部屋に行くことにした。

 

 

ゆっくりドアを開けて入ると中から寝息を立てながら寝ているイリヤの姿が見える。

起こさないように入り近くにあった椅子に座る。

どうやらルビーはどこかに行っているようだ。

 

その小さな額に手を当てる。

どうやら熱は下がっているようで安心した。

 

しかし彼女はどの世界においても色んなものを背負っているのだと昨日あらためて感じた。

あの魔力は間違いなく聖杯の力だった。

やはり聖杯戦争が起きることはなくておその分の重荷は変わらず彼女の背中にあるようだ。

その重荷を代りに背負ってあげられない自分に怒りとあきれが生まれる。

そう、ボクはこの少女の重荷を背負うことは出来ない。

だから…せめて

 

「絶対に…君を守って見せる…」

 

彼女に救われた人間として彼女の助けになってみせる。

そう誓おう。

 

 

 

イリヤの部屋から出ると珍しく空気を読んだのかルビーがドアの前にいた。

 

『あなたにずっと前から聞きたかったんですが』

 

「なにを?」

 

『イリヤさんに対してあなたは少し過敏じゃありませんかねぇ』

 

「そう、かもしれないね」

 

『否定はしないんですねー』

 

「出来る要素がないからね」

 

『実際のところあなたはイリヤさんをどう思っているんですか』

 

「どうって?」

 

今までと違ったその質問に少し戸惑う。

 

『決まってるじゃないですか、つまり恋愛対象として見れるかどうかってことですよ』

 

「さぁ」

 

『さぁって…』

 

何だそんなことか。

少し構えてしまったボクがバカみたいじゃないか。

それに実際どうなんだろうと考えやはり答えは出なかった。

 

「やっぱり家族っていう面が大きいかな。これから大きくなれば見方も変わってくると思うけど今は分からないよ」

 

『やっぱり小学生ならその程度なんですかねー』

 

「それじゃあボクは部屋に戻るよ」

 

『ええ、質問に答えてもらってありがとうございましたーそれではお大事にー』

 

そう言ってイリヤの部屋に戻るルビー。

さて僕も自分の部屋に戻るかな。

 

そういえば今あるカードって確か

 

・セイバー

 

・アーチャー

 

・ランサー

 

・ライダー

 

・キャスター

 

だっけ。

ということは残るカードは二枚。

アサシンとバーサーカー。

そしてボクの予想通りならきっと…

 

今は気にしてもしょうがない。

次の戦いがいつか分からないから少しでも体力と魔力を取り戻さないと。

予想通りなら確実に「アレ」を使うことになるし。

 

 

 

この時のボクは思っていなかった。

今まさにボクを見てる目があるなんて。

 

 

***

 

 

アルカナが去りイリヤの部屋に戻ったルビーがまず最初にやったことは

 

『いやー、思い人にあんなこと言われて、女冥利につくってことですかねー』

 

「うぅぅぅーーー」

 

真っ赤になって顔を枕に押し付けている自分のマスターをからかうことだった。

 

『まさか起きてるなんて気づかずにあんなことを言うとは、さすがのわたしも思いませんでした』

 

「うるさーい!」

 

真っ赤な顔を隠していた枕をルビーに投げつけるイリヤ。

それを軽々とかわすルビー。

そんな風にふざけながらもルビーは頭の中で珍しくまじめなことを考えていた

 

(あの様子からしてどうやらイリヤさんに危害を加えることはなさそうですねー。どっちかというとイリヤさんを守ることに依存しているという感じですかね。あそこまで依存する理由はイリヤさんの話を聞く限りでは思い当りませんが…まぁ今答えを出さなくてもしばらくは大丈夫でしょう)

 

『ちなみにどんな感じですか。好きな人に「守ってみせる」なんて言われた感想はー』

 

「か、かなり嬉しかったよ」

 

『いやー青春してますねー』

 

「笑うなー!!」

 

色々と投げつけて来るマスターを見ながら今の生活を心から楽しんでいた。

 

 

***

 

 

「暇だなー」

 

今日は徹底的に体を休めると決めたため毎日やっている筋トレをするでもなくじーっとしていた。

結果、かなり暇だ。

魔力を回復させるために小さな魔術を使うのも躊躇う。

 

もしかしたらイリヤが起きてるかもしれない、そう思いイリヤの部屋に行こうとドアを開ける。

するとドアを開けた先にはメイド服を着たミユさんがいた。

 

……は?

 

まさかあのミユさんがメイド服を着ているはずがないと思い目を押さえてみる。

…見間違えではなくやはりメイド服を着ていた。

 

「えっと…」

 

「……」

 

「に、にあってるね」

 

そうじゃないだろ、っていう突込みをする人に聞きたい。

じゃあどうすればいいの!?

 

何かミユさん顔を真っ赤にして俯いてるし、ボクはボクで内心頭を抱えているし。

そうして30秒くらいが経った。

 

「……イリヤスフィールに呼ばれてきた」

 

「あ、そうなんだ。ちょうどボクも行くところだったし一緒に行こうか」

 

そう言いながら歩くボク達。

…イリヤはどうしてミユさんを呼んだんだ。

 

「いらっしゃーい!」

 

「あうっ!?」

 

その様子で大体分かった。

きっとテレビ電話かなんかで今のミユさんの格好を知って自分の目で見たいがために呼び出したんだ。

かわいそうに、いくら向かいの家だからって人の目がないわけでもないし。

ちょっととめるか。

 

「イリヤ、その辺にしt」

 

「すごいッ!こっちはこっちで少年執事だ!」

 

その言葉で自分の体を見る。

うん、自分が執事服を着てたっていことを忘れてた。

さっきミユさんがこっちをじっと見てたのはこれが理由か…。

それよりも僕たちの目の前で眼を輝かせてるイリヤを止めるか。

 

「ちょっと「ご主人様」って言ってみて!」

 

今のイリヤに近づきたくないな。

ごめんよミユさん、ボクは無力だ。

だからそんな目でこっちを見るのはやめてほしい、イリヤに気付かれてしまうじゃないか。

祈り空しくミユさんがこっちを見ているのに気付いたイリヤは今度はこっちを向いた。

その眼はもともと赤かった目をさらに血走らせさらに赤くさせていた。

 

「そういえばアルもいたよね!アルも「ご主人様」って言ってみてっ!」

 

「え、普通はお嬢様じゃ…」

 

 

「というかなんでそんなこと…」

 

「いいから!」

 

「「ご、ご主人様ーッ!」」

 

今のイリヤは昨日のセイバーよりも遥かに怖かっただけ言っておこう。

 

 

***

 

「落ち着いた?」

 

「うん、ごめん」

 

「ボクじゃなくて」

 

「う、ミユさんごめんね。なんか変なテンションになっちゃって…」

 

「い、いえ別に…」

 

あわれミユさんは顔を真っ赤にして俯けている。

どこの世界に行ってもイリヤもドSだって思った。

まさか前世でもあのやりとりをやったとはだれも思わないだろう。

まさかやることになるとはボクも思わなかった。

 

その後いろいろボクがトイレに行ってる間にイリヤがミユさんをベットに押し倒すところを見たときは本当に引いた。

でも許してほしいと思った。

 

その後イリヤとミユさんは正式に友達になれたみたいだった。

 

「それじゃあらためてよろしくねミユ!」

 

「こ、こちらこそ…よろしく……イリヤ」

 

そう言って握手する二人。

 

「それじゃミユさん、ボクもアルカナじゃ長いからアルって呼んでいいよ」

 

「別にかまわない」

 

……どうやら僕の好感度はイリヤよりずいぶん下らしい。

差し出された手も無視されたよ…。

 

その後クラスメイト達が乗り込んできた。

どうやら鈴木君も見舞いに来てくれたようでボクとしては大変うれしかった。

 

イリヤの友達を見てるととても楽しそうだった。

どうかミユさんもイリヤと仲良くしてほしいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後二人の空気がかなり悪くなっていた。

 

 

 

説明
少年アルカナは死んだ。大切な少女を守り、約束を守り死んでいった。しかし気が付くと死んだ場所ではない全く違う場所にいた!しかも近くには死んだはずの恩人たちの姿が!どうやらここは似ているが全く違う世界らしい。そしてなんやかんやでホームステイした家では守りり抜いたはずの少女がいた!そんな平和な時間を過ごしていたが戦いの時は迫っていた!これはとある魔法(奴隷?)少女と魔術使いの少年の物語。TINAMIにも投稿しています。アニメ化が近いということで思わず書いてしまった小説です。主人公は映画版Fate/stay nightから来ています。
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