IS x アギト 目覚める魂 24: 恐れ、迷い、謎 |
夕食は旬の新鮮な海の幸をふんだんに使った刺身等の魚介類が振る舞われた。教師達は別の部屋で杯を傾けている(主に千冬だが)。
「流石は天下のIS学園と言った所か。羽振りが良い。」
「確かに。豪華だね。」
隣に座っていたシャルロットはわさびをそのまま口に運ぼうとしていたが、一夏がそれを止める。
「それはやめといた方が良い。鼻が痛くなるぞ。」
「あ、う、うん・・・・」
「それは少し醤油に混ぜて食べるんだ。少々舌にビリッと来るから、入れる量には注意する様に。後セシリア、正座がきついならテーブルの方に移った方が良いぞ。後々立てなくなったら困るだろう?」
「う、く・・・・大丈夫ですわ・・・・(この席を獲得する為の努力を考えれば)!」
「いやいや、全然食べてないから、大丈夫には見えないぞ?ちょっと足触るからな。」
浴衣の上からふくらはぎと足の裏を指でトントンと突いた。
「あら・・・?足が・・・」
「おう、血流が良くなるツボを突いた。これで食ってる間位は大丈夫だと思うぞ。」
「ありがとうございます、一夏さん。」
所が、それを何席か離れていた人物はそれを羨ましそうにしていた。
(良いなぁ?・・・・私もせめて向かいの席に座りたかったなー。)
「更識さん、どうしたの?そんな憂鬱そうな顔して。」
「別に何でもない、けど・・・・」
チラリと一夏の顔を見る。楽しそうに周りの女子と一緒に歓談していた。簪の隣に座っていた谷本癒子はそれを見逃さない。
「何でもない筈無いでしょ、さっきから織斑君の事チラチラ見てるし。それに、何か随分と一緒にいる事が多いみたいだしさー。」
そして声のトーンを落とすと、
「好きなんでしょ、彼の事。でも、織斑君とどう言う関係なの?」
「それは、その・・・・」
簪は最後まで言えなかった。喉につかえてしまう。自分は、一夏の何だ?幼馴染み?毎日遊んでいたとは言え半年しか時を共に過ごしていないから少し無理がある。恋人同士?それも少し違う。幾ら一夏のファーストキスを奪ったとは言え、十年近くも前の事だ。あの頃はその意味を大して分かってはいなかった。今でもたまにしているとは言え、関係は微妙な所である。お互いに『好きです、付き合って下さい』の類いの言葉を交わした事も無い。実際の所、一夏は自分の事をどう思っているのだろうか?ふとそんな事が頭を掠める。直ぐに払拭出来る小さな疑問、の筈なのだが段々とその疑問が大きく膨れ上がり、恐怖に変わり始めた。
「私、ちょっと部屋に戻る・・・・」
簪はぎゅっと拳が白くなるまで手を握り締め、部屋に戻った。
(嫌・・・・嫌 嫌 嫌 嫌 嫌 嫌 嫌 嫌 嫌 嫌 嫌 嫌 嫌 嫌 嫌!!!!!捨てないで一夏。捨てられたくない・・・・私は・・・・私は・・・・)
頭がおかしくなりそうだった。一夏は、自分を助けてくれたヒーローだった。彼に会う事が叶わなかった十年程。彼の言葉と思い出だけを支えに日本の代表候補にまでこぎ着け、再会を果たす事が出来た。だが、自分を支えて来たその全てが崩れ落ちそうになる事を思い浮かべると、胸が張り裂け、狂い死にそうな感覚を覚える。
「一夏・・・・私の事、本当はどう思ってるの・・・・?」
そして夕食が済むと、 教員用の部屋では代表候補生達と箒、そして秋斗が千冬から呼び出されていた。
「さてと、全員集まったな。弟は風呂に入っているから暫くの間心配は無い。」
それぞれ冷蔵庫から飲み物を貰い、千冬はビールをグイッと呷った。
「さてと。篠ノ之、鳳、オルコット、デュノア。ウチの弟のどこが良いんだ?」
「私は、あいつが鈍っているかどうか心配なだけで・・・・・」
(道場では一本も取れない奴が何言ってんだか。)
「あたしは只の腐れ縁なだけだし・・・・」
「クラス代表として心配なだけですわ。」
「僕は、その・・・・」
それぞれ上手い事言えない様だ。
「そうか、ではそのように伝えよう。」
「「「「伝えなくて良いです!」」」」
「私は、あの真っ直ぐな所です。」
「私は、男としての甲斐性・・・・強さ、でしょうか?」
「あたしも、セシリアと同じ、かな?」
「僕は、優しい所です。」
「私はその様な感情はありませんが・・・・敢えて言うならば、好敵手、互いを高め合う仲間としてでしょうか。そう言う風にみています。」
順番に答える女子の答えを整理して行く秋斗は妙な胸騒ぎを覚えていた。
(何だ、これ。この嫌?な感覚。)
「まあ確かに。あいつは料理も上手いし、家事も出来る。その上公私混同はせずに分別、けじめ等もキッチリつけるし、いざとなれば殺すつもりで自分の女に手を出した相手を排除しようとする。文句無しで付き合える奴は得だな。どうだ、欲しいか?」
「「「「くれるんですか!?」」」」
期待を膨らませる四人。
「やるか馬鹿。」
「「「「え??・・・・」」」」
一瞬にしてその期待をボロボロに砕かれてしまった。
「何で弟を冗談でも身売りしようとするか分からないですね。そこまでして彼女を作って欲しいんですか?」
「・・・・・・ウォッホン!兎に角だ。奪う位の気概で行かないでどうする?精々自分を磨けよガキ共。」
(あ、コイツ逃げやがった。)
思い切り図星を突かれたのを誤摩化す為にわざとらしく大きな咳払いをすると、言葉を続けた。二本目の缶ビールに手を伸ばす。
「さてと。次はお前に話がある。お前は、どこでどうやって一夏と知り合った?何故一夏を知っている?」
「知ってどうするんですか?また一夏からお小言を食らいますよ。俺の事を詮索するなと。」
「だが、知られて困る様な事ではないだろう?」
「残念だけど、プライベートの話はあんまりしたくないんで。教師命令でも言いませんよ。聞きたいなら、力づくで御願いします。」
千冬以外の全員が凍り付いた。千冬をここまで簡単に臆せず突っ撥ねる、それも彼女より年下の人物を見たのは初めてなのだ。
「ほう?余程自信がある様だな。」
「アンノウンと戦ってるんですから。人間如きには負けませんよ。お言葉ですけど、何でも知ろうとするのが、貴方の悪い癖です。((パンドラの箱|タブー))はいつの世もあるんです。暴けば、火傷じゃ済まないかもしれない。コーヒーご馳走様でした。」
そのままさっさと外に出て行った。
「千冬さん、彼は何者なんですか?」
「分からん。身元を調べた所親兄弟もいないが、一昔前に私や一夏と同じあかつき号に乗っていた事は事実だ。」
「あかつき号・・・・あのフェリーですか?」
「ああ。幸い客も乗組員も全員救出された。だがあのフェリーの中で、アギトの力を図らずも手にしてしまった。私も、一夏も、門牙もな。」
「そう言えば、過去にも同じ様な事件があった様な・・・・?」
鈴音が独りごちる。
「何?本当か?」
千冬が突然気色ばんだ。
「教えろ。それは本当なのか?」
「は、はい・・・・同じ様な状況でこっちも同じく全員が救出されています。小沢さんって人から簡単な説明しか聞いてないから詳しい事はちょっと・・・・守秘義務のサインさせられちゃったしね・・・・」
「でも、変ですわね。あの仮面を付けた様な者をアギトと呼称していたと言う事は、もしかしたら門牙さんや一夏さんも・・・・・」
「いや、流石にそれは無いだろう。アギトとは私達以外にもいるらしい。門牙ならまだしも、一夏がそうであると言う可能性は低いと見ていいだろう。」
「でも、映像で、白式の一部が似ている奴がありました。腕から鞭や鉤爪が現れる、野獣の様な奴です。体は緑色で、目が赤い・・・・」
「あれは、ちょっと怖かったかな・・・・」
「だが、結果的にはIS乗りには出来ない事をして、貢献しているのだ。危害を加える必要は無かろう。」
「だが、気になると思わないか?アギトとやらの正体が。」
「たしかに、それはそうね。」
「でももし一夏だったら・・・・・?」
「その時はその時だ。私の好敵手である事に代わりは無い。」
(一夏・・・・・まさかとは思うが・・・・いや、お前があのような事をする筈が・・・・・)
千冬もまた脳の片隅に払拭出来ない新たな謎が芽生え始めた。空になった空き缶を知らず知らずの内に握り潰してしまう程に、気になり始めている。
「人は、人であれば良い。」
黒服の中性的な顔立ちをした男が何らかの小さな模様を描いた手を空にかざし、笑った。
説明 | ||
学校に戻って参りましたので、一日更新が途切れるかもしれませんが、これからもよろしく御願いします。では、どうぞ。 | ||
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コメント | ||
まあ、確かにね。でも、生身の状態なら千冬さんでも勝率はある・・・・筈です。僅かながら。まあ、低いですけど。(i-pod男) これはオリジナル主人公VS千冬の対決が見られるかなか^^?それとも簪以外をヒロイン達を全員退場フラグか><まあ現時点で千冬に勝てるのは原作のアギト、ギルス、アナザーアギト、Gユニット、新世代のアギト、ギルス、Gユニット、それにアンノウンか!ISパイロットはISがなければ唯の人間の女だからな^^:(yosiaki) |
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