真・恋姫†無双 真公孫伝 〜雲と蓮と御遣いと〜 1−29 |
この作品は【 恋姫†無双 】【 真・恋姫†無双 】の二次創作です。
三国志の二次創作である物に、さらに作者が創作を加えたものであるため
人物設定の違いや時系列の違い。時代背景的な変更もありますので
その辺りは、なにとぞご容赦をお願いいたします。
上記をご理解の上、興味をお持ちの方はそのままお進み下さい。
人中の呂布。
馬中の赤兎。
そう現代にも伝わるほどの知名度を持つ武将、呂布。
その天下無双の呂布は突如飛来した謎の感覚に支配されていた。
元々感情の起伏が薄い彼女は精神的な経験が少ない。
その弊害でもあるだろうが、そこにすら彼女の考えは思い当たらない。
今の彼女に分かるのはそれが食べ過ぎで気持ち悪くなった時の感覚に似ているということだけ。だがそれは似て非なる物。
彼女の中では今まで感じたことの無い感覚と感情が暴れていた。
――今、斬ったのは何?
普段ならばこんな疑問は抱かない。
自分の中にあるのは敵か味方か、それだけ。嫌なヤツなのかそうでないヤツなのか、たったそれだけ。
自分が見ている物、斬っている物は紛れもなく、人という『物』だというのに。
――今、斬ったのは誰?
物が人へ、人が誰かへ変わっていく。白い靄が掛かっているような記憶の中に、優しい表情の誰か。
それを認識した瞬間、全身を震えが襲った。
その感情の意味、答えを知っていたなら、彼女は卒倒していたかもしれない。
――気持ち悪い。
――世界が回る。
そんなもの、許容出来る筈が無い。
彼女がその手で斬ったのは、彼女の――
「「き…っさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」」
――絶叫が彼女の思考を遮った。
感じた複数の凄まじい殺気。前から一つ。背後から二つの計三つ。
鬼の如き殺気を感じた呂布は感情より本能で動いた。
殺気の元を確認するより早く、反転し方天画戟を頭上に翳す。
ガギィィィィィィィィィン!!!!!!!!!!
一拍遅れて凄まじい音と衝撃。腕が痺れるどころの話では無い。骨が軋む。掌の皮膚が裂傷を起こす。
拮抗する力と力。呂布はここに来て初めて自分の意思で顔を上げ、敵を見た。
――鬼。
そう形容するのも生易しいと思える人間がそこに居た。
美しい黒髪に青龍堰月刀を持つ関羽。小さい身体に似合わぬ丈の丈八蛇矛を持つ張飛。
呂布を睨みつけるその眼には、殺気以外のものは宿っていない。
だが殺気に当てられた獣はそれすら凌ぐ獣となる。
「あああああああ!!!!!!!!」
当て続けられる殺気によって本能だけの存在となった呂布は純粋な力のみで二人の少女を弾き飛ばした。だが止まっている暇は無い。
既に背後から首を狙う殺気を感じている呂布は、地を舐めるが如く体勢を低くした。
同時に
ブヴンッッッッッッッッ!!!!!!!!!!
直前まで呂布の頭があった場所を凄まじい速さで槍の切っ先が薙ぎ払って行った。
常人ならその一撃に乗っていた殺気に気圧され数秒は動けないだろう。
だが今の呂布は本能の獣。恐ろしく俊敏な動きで殺気の元から距離を取る。
――先刻、弾き飛ばされた愛紗と鈴々。
二人は弾き飛ばされた際、辛うじて反撃の致命傷を避けていたが、衝撃を殺しきれなかったのか、武器を支えに膝立ちのまま。
その眼からは、強すぎる殺気は既に消えていた。代わりに、その眼にあるのは困惑。
しかし、その顔は苦しげに歪み、荒く息をしていた。
距離を離した呂布に殺気の元――星の龍牙が迫る。
その眼は愛紗達と同様に極限まで見開かれ、血走り、瞳孔が開いていた。
「――!!!!!!!!」
すでにその喉から発せられているのは言葉ですらない。
我武者羅に龍牙を振るい続ける。連続する凄まじい風切り音。
だがその悉くを呂布は避け、捌いていた。そして時折、反撃を苛烈に叩き込む。
どちらも本能のままに攻撃し、防御し、捌き、捌かれ、避け、避けられを繰り返す。
薙ぎ、突き、払い、自分の持てる全てを使い、目の前の者の全てを駆逐しようと動き続ける星。
方天画戟の機能を駆使し、隙あらば眼前の敵をバラバラにしかねない呂布。
見ている者すら呼吸を忘れそうな凄まじい殺しあい。
両者は最早戦闘マシンと化していた。――だが、それは唐突に終わりを告げる。
「――あ」
一進一退の攻防を続けていた呂布の眼に偶然、自分が斬った、倒れたままの誰かが映り込む。
そう、何かでは無く誰か。
視界が歪む、世界が歪む。立っていられないほどの吐き気が呂布を襲った。
一進一退の攻防が崩れる。一瞬でも隙を見せればどちらかの命が散る。
隙を見せてしまった呂布。
しかし、軍配は星に上がらなかった。
「ぐっ――うっ!?」
呂布の首を取らんとしていた龍牙がその手から落ちる。戸惑いの声と共に、星は地に倒れ伏した。
今や土埃と血によって少なからず汚れた星の白い服。その裾から伸びるスラリとした脚に、血が滲んでいた。
突然両者が倒れ伏すという結果に終わった激戦。そして誰も動かぬ戦場。
静寂の場に馬の蹄の音が響き渡った。同時に甲高い少女の声。
「れ〜ん〜ど〜の〜!!!!!!」
栗毛の馬の背にちょこんと乗った陳宮。その背後には深紅の呂旗と共に数十人の呂布隊。
「……ちん、きゅ?」
焦点の合っていない眼で傍らに降り立った陳宮の名を呼ぶ呂布。その様子はまるで、捨てられた幼子のようだった。
「そうなのです!助けに来ましたぞ恋殿〜!」
自身の敬愛する呂布に傷が無い――つまり無事だと安堵する陳宮。その小さい身体で呂布を支え、馬に押し上げる。
徐々に元の身体の感覚が戻りつつあるのか、途中から陳宮の力を借りずに呂布は馬へとしがみ付く。
それを見届けた陳宮は呂布の後ろへ飛び乗った。次に見せたのは自身の主を見守る慈愛の顔ではなく、指揮官としての顔。
「一番!放てーなのです!」
陳宮の合図と共に呂布隊の弓兵から一斉に矢が放たれる。その先には括り付けられた藁。そして
「二番、火矢放てーなのです!!」
二度目の陳宮の号令。再び呂布隊の弓兵から矢が放たれた。
宣言した通り、放たれた矢の先には火。数秒と待たず藁に着弾したそれは、辺りを炎上させた。
いわばそれは炎の壁。敵軍と味方の間を遮ったそれは次と次と燃え拡っていく。
「残った藁矢を広範囲に拡散斉射ー!!撃ちきった者から各自撤退なのですー!」
悪あがきと言えなくも無い指示。しかし、再び放たれた矢は広範囲に拡散し、更に炎を燃え広がらせていく。
藁の量は小量。すぐに鎮火するレベルの火計。だが彼女達、呂布隊が逃げる時間を稼ぐには充分だった。
「さあ逃げるのです恋殿ー!!」
栗毛の馬に鞭打つ陳宮。馬は一啼きすると凄まじい勢いで火とは反対の方向に走り出していく。
――揺れる馬の背で、呂布は考えていた。普段は考えることを殆どしない彼女が。
自分が斬ったのは誰なのだろう、と。
自分が今、馬の背に乗っているだとか何から逃げているだとか後ろに音々が乗っていて自分の隊に指示を出し続けているとか、それすら今の自分にとっては蚊帳の外。
彼女は生まれて初めて、許容を越えた混乱というものを経験していた。
だからこそ
「……ご、しゅじん……さま」
切れ切れに口から出た言葉に、気付くことは無い。
脚が上手く動かない。
我に還れば全身に痛みを感じ、地面を舐めている自分が居た。その手に龍牙は無く、それを支えに立ち上がることも出来ない。
だが今、星の関心は自分の武器では無く、たった少し歩ければ辿りつける場所に倒れたままの少年にあった。
歯を食いしばり、腕の力だけで身体を前進させる。惨めだとは思わない。情けないとも思わない。
身の内から湧き出る感情がそれを凌駕していた。時間を掛け、やっとその傍らまで辿りつく。
白い服を着た少年。その胸には赤い染みが拡がっていた。少年の顔を見る。眼は閉じていて、開く気配が見られない。
今の自分の精神状態では息をしているのかを確かめることも出来ない。彼の身体を揺する。――反応が無い。
「かずと…どのっ」
反応が無い。
「かずと、どのっ…!」
反応が無い。
「かずとどのっ!!」
反応が――
星の眼から雫が一つ零れた。
「ある……じ」
それは皮肉にも呂布と同様に。自分が何を口にしたのか分からぬまま、星の意識はそこで途絶えた。
夢を見ていた。
……何故分かるのかって?そりゃあまあ、自分の視点が空中にあるから、かな。
夢じゃなけりゃ幽体離脱とか。でも今見ている光景に覚えは無い。――城が炎に包まれて炎上している光景になんて見覚えあるはずがない。
城と言っても日本のじゃ無い。今俺が迷い込んだ世界、三国時代の城だ。その周囲は暗い。いや、暗いというか黒い。
その城以外の風景がここには存在しなかった。ベタ塗りでもしたような真っ黒い背景に、炎上している城。実際、相当シュールで不気味だった。
城はその間にも炎上し続けている。攻城戦でもあったのだろうか?炎上しているだけじゃなく、城の所々が壊れていた。
――と、いきなり身体が引っ張られる。俺の身体は徐々に城に近付いて行く。……あれ?このまま行くとぶつかるんじゃね?
(やばいやばいやばいやばい!!)
だが既に時遅し。身体は俺の命令なんてまったく聞かない。俺の脳からの虚しい制止信号を振り切ってそのまま壁に激突――しなかった。
(……お?)
どうやら身体は動かなくとも眼を瞑る、という芸当は出来たらしい。いつまでたっても訪れない衝撃に疑問を感じ、閉じた眼を開いた。
そこは、朱一色だった。
血の赤とは違う、炎の朱(あか)。それは美しくも猛々しく残酷に、周囲を焼き尽くそうと燃え盛っていた。
眼に映った建造物が次の瞬間には炎に包まれ姿を消していく。それほど火の勢いは強かった。
だけど俺の眼にそれが映ろうとも頭の中には記憶として残らない。――それ以上に俺の眼が、心が惹かれるものがあった。
燃え盛る炎の中、辛うじて、奇跡的に柱が噛み合うその向こうにそれはあった。遠目では分からない、おぼろげな輪郭。
けれどそれは間違いなく人間――少女だった。
彼女はそこから動かない。怪我をしているのか、柱に脚でも挟まっているのか、それは分からない。
彼女はその場に座り込んだまま動かない。でもひとつだけ分かることがあった。
助けなければ彼女は間違いなく――死ぬ。
(おい、聞こえないのか!すぐにそこから離れろ!でないと――!)
声が出ているかどうかも分からない。自分の中ではあらん限りの声を上げている。
だが彼女は反応しない。ここが夢の中だろうがなんだろうが関係ない。
彼女を助けなければならない。救わなければならない。そんな感情だけが今の俺の動力源だった。
身体が動かないことをここまで悔しく思ったことは今まであったか?――否、無い。
必死に手を伸ばそうとする――動かない。
必死に脚を動かそうとする――動かない。
必死に、逃げろと口を動かす――声が出ない。
ふいに、彼女の顔が上がった。だけど顔はこちらを向いていない。その視線が天に向けられただけ。俺はその姿から、その横顔から眼を離せなかった。
その横顔は泣き笑いのような表情で、天に向かって何かを問うている様な――
――もう一度だけでも――
「え――」
聞こえるはずの無い声。同時に、いくら頑張っても出なかった俺の口からも声が漏れる。
彼女がそれに反応し、こちらを向いた……気がした。だけどもう、それを確かめることは出来ない。
なぜならそれと同時に彼女の姿は炎の中に消え――俺の視界は真っ暗に染まっていたのだから。
朦朧とした意識の中、眼を少しづつ開く。どうやら寝てたらしい。えーと……寝る前ってなにしてたっけ?
「……一刀?」
「ん……あ」
掛けられた声。徐々に覚醒して行く意識の中で、それが誰の声かを当てようとする。というか考えるまでもなく答えは出ていたけど。
「ああ……白蓮?」
「かずとぉ……!よ、よかった〜!おいみんなー!一刀が眼を覚ましたぞー!!」
「ちょっ……耳元でうるさっ」
耳元で響く白蓮の声に鼓膜を多少やられながら、上半身を起こす、が。
「いつっ……!」
胸部に走った痛みに顔を顰めた。気になって胸に眼を向けるとそこにはなんと、白い包帯が巻かれていましたとさ!
はっはっはー……なんで?
「ちょ、ばかっ!まだ無理すんなって!」
「えーと、白蓮?なんで俺包帯巻かれて寝てんだ?なんか怪我してるっぽいんだけど……」
「殿!?覚えていないのですか!?まさか頭の方にもお怪我を!?」
……白蓮以上に声の音量がでかい娘が約一名。
というか気付いたら星を除いて全員が天幕内――つまり俺が寝ている簡易ベッドの周りに集まっている。全員が全員、心配そうな表情をしていた。
「あわわ……大変です!すぐにお医者さんを呼ばなくちゃ!」
「とりあえず落ち着いて、雛里。大丈夫だから。……すまん。状況が分からないんだけど、誰か説明してくれないか?」
「北郷さんは趙雲殿を庇って呂布に斬られたのですが……」
ド直球な燕璃の説明。ただ、回りくどくないのが有り難い。おかげで急速に記憶が戻りつつあった。
「ああ……ああ!」
思い出した。今更ながらに無謀と思う自分の庇い方を。
「あー……俺、死んだ?」
ボカッ!
殴られた、白蓮に。しかもグーで。……でもそんなに痛くなかった。
「馬鹿言うなよ!」
「ご、ごめん!今のは言葉のアヤっていうかなんていうかね?ね?」
「まだ混乱しているんでしょうね。大きな怪我を負った人間は時たまそういう傾向になると書物で読んだことがあります。……ま、北郷さんの怪我は大きな怪我に入りませんが」
「あ、そうなの?」
「ええ。掠り傷とは言いませんが、不思議にも皮が少し裂けただけで済んだようです。その大袈裟な包帯は舞流と軍師殿が巻いたものですし」
この中で一番冷静な燕璃が受け答えをしてくれているのが助かる。
舞流と雛里は気が気ではないといった様子で、俺が一言「痛い!」とでも漏らせばどこかへ担いで行かれるようなそんな感じ。
白蓮は白蓮で眉間に皺寄せて怒ってるし。あ、でもちょっと可愛いかも。口にしたらもう一発叩かれる気がするので言わないけど。
……でも、皮が裂けただけ?天下無双の呂布に斬られたのに?そこだけが腑に落ちなかった。しかし考えても分からないことは後に回すに限る。
そんなことを考えながら周囲(といってもそう広くない天幕の中だが)を見渡した。あとここにいないのは――
「そうだ……星!星はどうしたんだ!?無事なのか!?」
「――私のことでしたらご心配無く」
声がする方。つまり天幕の入り口に顔を向けるとそこには、所々に白い布を貼った星がこちらを見て微笑んでいた。
「星!怪我したのか?」
「いえ、ただの掠り傷ゆえ心配無用。それより一刀殿。庇っていただき、感謝します」
律儀に頭を下げる星。その動きにぎこちなさなどが見られない所を見ると、本当に掠り傷程度なのかもしれない。ほっ、と安堵の溜め息を吐いた。が、しかし
「ですが――」
「え?」
星の表情が険しくなった。
「身を呈して護るなど阿呆の極みです。私はただの一武将、代えはいくらでも利きます。だが一刀殿は違う。天の御遣いとして今や白蓮殿と対等の立場。その存在は計り知れないほど大きいものだ。安易にあのような手段を取るのは慎んでもらいたい」
「同感ですね」
「わ、悪かった。……あの時は自分が死ぬかもとか考えもしなかったからさ」
星、燕璃と続く正論の応酬を受け。自然と頭が下がる。
自分の立場をそこまで大きいものだとは思っていないが、それでも彼女たちの言っている事は正しかった。もちろん、ただ一つを除いては。
「でも――「星」」
俺の声は唐突に、白蓮の声で遮られた。普段とはまた違った、白蓮の真面目な声に。
「なんですかな、白蓮殿」
「確かにお前も燕璃も言ってることは正しい。私も一刀の行動は安易だったと思うし、これから先は二度とやらないで欲しいとも思う」
白蓮の言葉が胸に刺さる。
「でもな、ひとつだけ聞き捨てなら無いことがあった。……代えはいくらでも利く?そんなわけないだろ」
「……む」
「私の仲間はみんな代えなんて利かない。だからそんなこと二度と言うな。今度似たようなこと口にしたらぶっ飛ばすからな!」
姐さんと呼称される人間が口にしそうな啖呵。白蓮はどこまでも真面目にそれを口にした。ぶっ飛ばせるかどうかは度外視。
そこがまた白蓮らしいと言える。それに少し苦笑した。
「……すみませぬ、白蓮殿。私が軽率でした」
さすがに星も自分の口にしたことを改めて冷静に振り返ったのか、珍しくシュンとなる。
そして白蓮がこっちを向いた。不意打ちといえば不意打ちだったので少し驚く。
「一刀もっ!いきなり馬で出てって前線に行ったと思ったらこんな……。大事な仲間が二人も倒れてるとこに呼ばれても見ろよ!報告受けた時だって血の気が引いたってのにさぁ……まったくお前たちはさぁ……でも無事で良かった……ホントよかった」
唇をグッと閉じて微妙にへの字にしている白蓮の眼からポロポロと涙の雫が落ちた。
「ちょっ!ぱ、白蓮さん!?いくらなんでも泣くことないだろ?」
「泣いてない!……泣いてなんかねえよ」
「泣かせましたね」
「泣かせたでござるな」
「あわわ……泣かせちゃいました」
「幻滅ですぞ一刀殿。女人を泣かせるとは」
「「半分はお前のせいだろ星!」」
見事に俺と白蓮の声が重なる。星は「おお」なんて他人ごとみたいな反応を示したが。
まったく同じ台詞を吐いたことに少なからず吃驚し、白蓮と俺はキョトン顔のままお互いに眼を合わせた。一瞬の沈黙。
そして、どちらからともなく笑い声が漏れ始める。それは然程時を置かず、周囲を巻き込んでより大きな物へと変化していった。
目覚めてから初めて、自分が生きていることを実感できた瞬間だった。
結果的に俺は怪我をしたけれど、誰も死んでない。だからこれはこれで良い結果だったと思う。
無論、口には出さない。さすがにもう一度、白蓮に叩かれるのは御免だった。
眼を覚ましてからしばらくして聞いた事だが、俺は丸一日意識を取り戻さなかったらしい。そりゃあ心配もされるわけだ。
その一日の間に虎牢関での戦が終わっていたことにはもっと驚いたけど。
俺が星を庇ってからそれほど長い間を置かずに呂布が撤退――というか逃亡。
張遼は曹操軍に退路を阻まれ、応戦していたが力及ばずに捕縛されたらしい。その際に夏候惇が眼を負傷したとか。
俺の記憶が正しければ夏候惇の眼は虎牢関の戦いでは無く、下?の戦いで呂布軍との交戦中に失われた筈だ。
改めて自分の知識と現実の違いを再認識させられる。それと同時に、今回の戦いでその可能性を思いつかなかった自分の浅慮を呪った。
――ともかく虎牢関は俺さえも予期せぬ形で、唐突に終わりを告げた。
一番被害が大きかったのは最前線で呂布と接敵した袁紹軍。
……周囲は見るも惨たらしいものだったらしい。死屍累々――大地は血で深紅に染まっていたそうだ。まるで彼女の、呂布の旗色のように。
次に被害が大きかったのは袁術軍。後退する孫策を(雛里の見解では偽装撤退らしいけど)追撃した、張遼の突撃に巻き込まれたとのこと。
ここだけの話、まったくと言っていいほど防御態勢を取っていなかったらしい。
最前線に布陣し、安全性度外視で手柄を焦った袁紹。前線の後方に位置し安全を確保したうえで漁夫の利を狙おうとした(これも雛里の見解)袁術。
皮肉にも両極端に作戦を練った両軍が最も損害を負ったことになる。……欲を掻いたら駄目ってことなんだろうな、きっと。
俺が眼を覚ましたのは、虎牢関を出た反董卓連合軍の先鋒――つまり、甚大な被害を負わなかった曹操軍、劉備軍、西涼軍、公孫賛軍が、洛陽から数里離れた場所に駐留して間も無い頃だった。
ちなみに、孫策は残るのを渋って駄々を捏ねたと風の噂で聞いた。……周喩さんも大変だ。
ん?俺は意識の無い状態でどうやって移動してきたのか、だって?虎牢関から洛陽までの間、簀巻きにされて舞流に担がれて移動してきたんだってさ。
はははー……はぁ。切ねえ……。
【 あとがき? 】
はい!年明け最初の表作を更新です!
ん〜、見た感じ今回は会話少なめですねー。
まあしょうがないと言えばしょうがないのですが。
ここ最近、一人称書きと三人称書きが確立していない感じ。
まあ今回は一刀視点で書いた故の弊害ですが。
やはり一人称視点で書くと文が多くなっちゃうのかなー?う〜ん、分からん。
両立というか、書き分けが出来れば一番いいんですけどね。とにかく頑張ります!
【 補足と言う名の駄文 】
今回、春蘭と張遼――というか曹操軍×張遼の話を書かず、事後で補足したのは意図的です。なぜかと思う方も少なからずいるかもしれませんが、これはあくまで『公孫伝』なんです。作者のストーリー構成です。あしからず。
Ps.作者の文構成は雑です!!一貫してません!ホントすんませんっ!orz
説明 | ||
深夜更新……だ。 過労……じゃい。 タイトルはこちら 【 虎牢関閉幕 】 それではオヤスミ……ガクッ。 |
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コメント | ||
ポリエステル=一刀さんだからなぁ 他の呼び名だったら種馬辺りがポピュラーか(Alice.Magic) ほほーなぞの現状で修復かぁ、面白い。何って一刀の天の御使い服の素材でしょ?原作やってないの?(PON) オレンジペペさん、ありがとうございます。だからポリエステルって何!?(じゅんwithジュン) summonさん、ありがとうございます。ふふふ……伏線を張っていきますよー。まあ個人的には伏線と感じさせない伏線を張っていきたいんですよねー。(じゅんwithジュン) アサシンさん、ありがとうございます。次回か次々回にて!(じゅんwithジュン) mokiti1976-2010さん、ありがとうございます。虎牢関を結構あっけなく終わらせた感がありますからねー。次頑張ります!(じゅんwithジュン) 一刀さんが無事なのはよかったですけど、恋の記憶やら燃え盛る城やら気になることが増えたような。続きを楽しみにしていますね。(summon) 董卓達はどうなるのだろうか?(アサシン) とりあえず一刀も無事で何よりでした。次は洛陽でしょうか?続きに期待です。(mokiti1976-2010) |
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