天才と二重人格と世界一過保護な兄と 第3話 Bクラス戦と明久の異変 |
『『『ギャァァァァァァァァァッ!』』』
どうも、教室で待機している吉井明久です。
ただいま僕達FクラスはBクラスと戦ってるんだけど……。
『戦死者は補習ーーーーーっ!』
『ゲッ、鉄人が来たぞ!』
『嫌だ! 拷問は受けたくない!』
『拷問? 違う、これも立派な教育だ。補習が終わるころには、趣味は勉強、尊敬する人は二宮金次郎という立派な生徒にしてやる!』
『『『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』』』
西村先生、さすがの僕でもそれは嫌ですよ……。
ちなみに横では兄さんが「てっつんナイスだ!」とガッツポーズしながら言っており、雄二は怖かったのかすこし震えていた。ちなみに秀吉は土屋君と一緒に敵の偵察をしている。
「雄二、僕達本当に行かなくてよかったの?」
「ああ。それにあいつらは1度地獄を見ておいた方がいいしな」
「ちなみに、姫路と島田も含む」
兄さん、雄二……屋上の出来事、まだ根にもってたの?
あの2人に嫌われてるなら仕方ないんだし、気にしてるわけではないのに……。
すると教室の扉がいきなり開いた。
「明久、経久よ! ちょっと一緒に来てほしいのじゃ!」
「? どうしたの秀吉」
「島田が人質にとられたのじゃ!」
ブチィ!
この言葉を聞いた瞬間、兄さんと雄二の頭の中で何かが切れたような音がした。
2人を見てみると、目には怒りが混ざっており、殺気が混じったどす黒いオーラをまとっていた。
「ユウジ、シマダノコト……ヤッテイイカ?」
「カマワナイゾ。トイウカオレモイク」
すでに悪魔と化してしまった兄さんと雄二から離れ、聞こえないように小声で秀吉と話した。
(ひ、秀吉、2人が怖いんだけど……)
(島田が人質にとられた、というところで切れておったからのぅ。何か理由が……あ)
(原因がわかったの?)
(おそらくじゃが……島田は前線部隊の隊長を任されておったのじゃ)
そこまで聞いて、僕は2人が切れた理由がわかった。
島田さん、人質、前線部隊、隊長……
ここまできたら、僕にも島田さんに対して怒りが込み上げてきた。
こうなった以上、あいつらをとことん殺りに行く!
((俺|・))は((兄貴|・・))達に向かって言った。
「((島田|・・))をBクラスの奴ら共々殺りに行くぞ!」
「「おうっ!」」
教室に秀吉だけを残して、俺達は島田のところに向かった。
〜秀吉SIDE〜
誰もいなくなった教室でワシはただ1人、さっきの出来事を思い出して震えていた。
(おかしいのじゃ、さっきのような光景は見慣れたはずなのに……。きっと見たのが久しぶりじゃったから、こうなっているだけなのじゃ)
しばらく深呼吸をしていると心が落ち着いたのか、震えがなくなっていた。
そのことに安堵したのか、そのまま畳の上に座りこんでしまった。
そしてそれと同時に、中学のころの出来事が脳裏によみがえってきた。
倒れている数十人の校外の男子生徒、その中央にただ1人立っているクラスメイト、感情がないせいか、ただただ目の前にいる人を病院送りにしていて、まるで操り人形のような体……。
我に返ったワシは今思い出したことを忘れるかのように振り払った。
教室を見渡して誰もいないことを確認し、ポツリと呟いた。
「……たとえこの世界にいる人を全員殺したとしても、絶対に嫌いになったりしない。その苦しみも、何もかも受け止めてあげるのじゃ。じゃから、操り人形にならないでほしいのじゃ、明久……いいや、『((久遠|くおん))』……」
ポロポロとワシの瞳から涙が出てきて、そのまま畳へと落ちていった―――――。
「「「島田はどこだぁぁぁぁっ!!」」」
俺と兄貴と雄二は島田とBクラスの連中を殺りに行くため、廊下を走り回っていた。
そんなことをやっていると、目の前にFクラスの奴らが現れた。
皆が見ている先には捕らわれている島田の姿があった。
「よ、吉井! お願い、たすk「「「Fクラス、突撃用意!」」」え!?」
「何言ってるんだお前ら!」
こいつは……須川ってやつだったな。てか、説明が足りなかったか?
「悪いな、言い直す」
「だ、だよな。よか――――」
「島田もまとめて、補習送りだ」
『『『は!?』』』
「ちょっと、さっきから聞いてれば何よそれ!」
俺達……いや、正確には俺の言った言葉がムカついたのか、相手を威嚇している犬のように俺達を見てきた。
別の人にやったら怖がるかもしれないが……俺達は全然怖くない。
俺は島田よりも睨みつけ、さらには殺気も放った。それを見た島田は恐怖の顔に歪む。
「島田、相手に何の嘘を吹き込まれたかは知らないが、隊長を任されていたんだろ? なんで持ち場を離れたんだ?」
「だって、吉井が瑞希の下着を見て鼻血を出したっていうから、一発殴りに行こうと……ヒッ!?」
島田の言った言葉にさらにムカつき、俺はさっきよりも多く殺気を放った。
それを見た島田は涙目になり、周りにいたBクラスやFクラス(経久、雄二除く)の奴らも震えていた。
まったく、なんでここにはこんな情けない奴らばっかいるんだ。
……だがそんな価値もない奴らをぶん殴ってやりたい、そう思っている自分がいる。
誰だろうと関係ねぇ。ここにいる全員ぶっ倒してやる!
「試験召喚獣……サモン」
俺は召喚獣を呼ぶと、兄貴と雄二以外の奴らを全員戦死にした。
「戦死者は補習ーーーーーっ!」
『『『嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』』』
「吉井! 覚えてなさいよーーーーーっ!」
ほう、これが負け犬の遠吠え、ってやつか。初めて見たぜ。
「そんじゃ明久、かえr「嫌だ」は?」
雄二がFクラスに帰ろうと言うが、ここまでやった以上、わかりましたって帰ってたまるか。
この俺がBクラス代表を倒してやる!
「俺はBクラスに行ってくる。行かないなら先に帰ってろ」
「明久、なにw「((経久|・・))、黙ってろ」!? お前、まさか…っ!」
なるほど、これだけで気づくくらい敏感になってるのか。
だがまぁ、今は関係ない。根本……だったか? そいつを倒しに行ってくるだけだ。
後ろで2人が止めているのを無視し、俺はBクラスへと向かった。
〜経久SIDE〜
『経久、黙ってろ』
あの時明久はそう言った。だが明久は怒った時に『兄貴』と呼ぶことはあっても、『経久』と呼ぶことはなかった。
じゃあ、あの明久……いや、明久の((中にいる誰か|・・・・・・))は、もしかして……。
「経久、いまお前のこと、呼び捨てで呼んでなかったか……?」
「ああ、だから考えられるのは……」
「……((あいつ|・・・))が出てきたか」
もしそうならば今は敵だが、恭二に知らせる必要があるな……。
そう思った俺は、恭二に電話をした。
『よう、経久か? どうしたんだ?』
「恭二、おそらく明久がそっちに来る。だがその中にいるのは……」
『!? あいつ、なのか!?』
「可能性はある。だから戦う時は注意しながら戦ってくれ」
『……わかった』
そしてそのまま電話を切った。
こうなった以上、俺達もBクラスに向かうしかないじゃねーか……!
雄二と目で会話してお互い頷いたら、Bクラスに向かって走り出した。
「「あまり暴れんなよ、『久遠』!」」
その体、お前が何かやる前に明久に返してもらうぜ!
あの後、俺は目の前に来たBクラスの奴らを次々と倒していき、気がついたらBクラスの教室についていた。
「そんじゃ、楽しみますか!」
バンッ、バキィ!
俺は勢いよく扉を開けた。するとその衝撃のせいか、扉は壊れていた。つーか、頑丈にしとけよな。
「Fクラスの吉井明久だ! Bクラスに一騎討ちを申し込む!」
俺がそう言うと、その場にいたBクラスの奴らはざわついていた。
そんな中、1人の男が視線をそらさずにこっちを見て近づいてきた。
「お前が代表か?」
「ああ。Bクラス代表根本恭二、その勝負、受けて立つ!」
「威勢がいいな! 気に入ったぜ!」
俺が気に入るような威勢を持っているお前には、特別コースで戦死させてやるぜ!
教科は……数学か。あまり本気で受けてねぇな。ま、いいか。どうせ勝てるだろうし。
そう思った俺は召喚獣を召喚し、すでに召喚していた相手の点数を見た。
しかしそこに書かれていた数字は、俺を大きく動揺させた。
数学
Bクラス 根本恭二 625点
VS
Fクラス 吉井明久 283点
「嘘、だろ……? なんでそんなに……」
「さっき経久から報告を受けてな、本気を出してテストを受けてきたんだ。じゃなきゃお前に瞬殺されるからな。そうだろ?」
根本は俺以外の誰にも聞こえないくらい小さな声で話しかけてきた。
こいつ、まさか知ってやがるのか?俺の正体を、((俺という名の存在|・・・・・・・・))を……!
「明久……いや、『((五十嵐久遠|いがらしくおん))』、と言った方がいいか?」
この時、俺の脳は完全に思考停止した。
〜経久SIDE〜
俺と雄二がBクラスについた時、明久は倒れていた。
「明久っ! 大丈夫か!?」
「おい恭二、まさか明久は……」
「その話はこの戦争を終えてからにする。負けてやるんだから、設備を交換するなよ?」
「ああ、わかった」
雄二がそう言うと、恭二は先生のところに行って話をした。
それを聞いた先生は頷くと、右手を高らかにあげて言った。
「Bクラスの降伏により、Fクラスの勝利です!」
Fクラスからは歓声が、Bクラスからは恭二に対する罵倒が聞こえてきた。
つーか、騒ぎ過ぎだし、すんげーうるせぇ!
「お前らちょっと黙れーーーーーっ!!」
これじゃあ落ち着いて話ができねぇじゃねーか!
*
全員が落ちつた後、戦後対談(という名の説得)をやって、雄二と恭二以外は全員帰した。
長かったな……。今はもう6時半を過ぎちまってるし……。
俺は一息つくと、恭二に聞いた。
「そんで……どうだった?」
「お前の言った通り、明久じゃなくて久遠だった」
「やっぱりか……」
俺がそう唸った時、後ろから物音が聞こえてきた。まさか、誰かに聞かれたのか!?
そう思って後ろを振り向くと、そこには秀吉と優子だけでなく、姫路と島田と土屋がいた。
くそっ、秀吉と優子は知ってるからいいが、まさかこの3人に聞かれるとは……!
「今の……どういう、事?」
「吉井君の中に、『久遠』という人がいるんですか……?」
「……詳しく教えてくれ」
俺は困って雄二と恭二を見た。しかし2人は仕方ない、という顔をしていた。
秀吉と優子を見ても、同じような顔をしていた。
だよなぁ……。あーもー、仕方ねぇ!
「話してやるが、ここにいる人以外に話すな。いいな?」
「……(コクリ)」
「わかりました」
「聞かれたくない大事な話なんでしょ?なら当たり前よ」
こいつらのこと(特に姫路と島田)は信じられないが……無理やりにでも信じるしかないか。
俺は一呼吸すると、話し始めた。
「そんじゃ、話すが……まず前置きとして言わせてもらう。叫んだりするな」
3人が頷いたのを確認し、何も知らない人にとっては衝撃的な一言を言った。
「明久の中にいる五十嵐久遠は……((3年前に死んでいる|・・・・・・・・・))」
これを聞いた3人が、息をのむのがわかった。
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最初に言っておきます。 根本は良い奴です。明久達の友達です。 |
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