呉編 第八章 雪蓮生存ルート
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呉の各地で起こった混乱を見事に鎮圧した雪蓮ら呉軍。

 

国内ではその手腕に対して、更に声望が高まっていた。

そんな状況を受け、雪蓮は本拠地を建業へと移し、新たな呉としての出発を内外に示した。

雪蓮の決定を良しとした呉の人々は、より一層雪蓮の事を讃えるようになった。

 

こうして、呉国内はようやく安定の兆しを見せたのであった。

 

しかし呉国内の安定と前後するように、大陸に割拠している軍雄たちの間では熾烈な権力争いが起き始めていた。

 

まずは曹操が官渡の戦いにより北方の雄・袁紹を破り、大陸北部を手中に収めた。

 

そんな中、隣国の劉備軍、呂布軍が不穏な動きを見せ始めていたのだった……

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「軍備も充実、内政も良好。あとは各所へ討って出て領土を広げていくだけなんだけど……さてどの方向に進軍する?」

 

そう雪蓮に尋ねられた呉の面々は頭を捻っていた。

 

「はい、亞莎ちゃん!どの方向が良いと思う?」

 

そう雪蓮に急に問われた亞莎はこれでもかというぐらい慌てふためきながらも、

 

「えええ、ええっと、けけけ、荊ひゅう方面などはい、いかがでひょうか!?」

 

噛みまくりであった。

 

「荊州…という事は西ね、一刀あんたはどう思う?」

 

「う〜ん西はあんまり賛成できないかな。」

 

「ほう、何故だ北郷?」

 

そう冥琳に尋ねられた一刀は、

 

「荊州に攻め入ること自体は問題ないと思う。でも問題は劉備さんと呂布にあると思う。もし西を攻めている最中に北から呉に攻め入れられたら建業への退路が断たれてしまうから……かな。」

 

「ふむ、それなら北郷はどこに攻め入るのが良いと思う?」

 

「う〜ん、南かなぁ。あそこは海も近くて交易品も充実しているからな。そこから生まれるお金は呉の国庫を潤してくれるはずだよ。それに兵と兵糧も充実させないといけないしな」

 

「「「「「「「「お〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」」」」」」」」

 

「……何ですか皆さん?」

 

「みんな一刀さんに驚いてるんですよ〜。これ程的確に指摘してくるとは思っていませんでしたよ〜。さすがは一刀さん、100点満点です♪ですよね亞莎ちゃん?」

 

「はい、さすがは一刀様です!私はそこまで気づきませんでした……私ももっと頑張って勉強します!」

 

「ふむ、ということは南方かのぉ」

 

「えぇ理由は先程北郷が述べた通りです。南方を攻略し、来るべき敵・曹操と激突する日の布石としてなんとしてもこの南征は成功させねばなりません。雪蓮すぐに南征軍を編成しましょう」

 

「そんなのもう考えてたわよ。出陣する武将は私、孫権、孫尚香、陸遜、呂蒙、甘寧。そして建業の守りを周瑜、黄蓋、周泰、そして北郷以上とする」

 

「「「「「「「「御意!!!!!!!!」」」」」」」」

 

「なあ策殿、儂も南征軍に加えてもらえんかのう?どうもここのところ暴れたりんのじゃが」

 

「だ〜め。祭には私たちの家を守ってもらいたいの。帰ったら家が無かった!なんて嫌だしね〜。それと明命には一刀の護衛も兼ねてもらうから」

 

「拗ねるな、黄蓋殿。私も居残り組だ。そう不貞腐れるず共に家を守ろうではないか。なぁ幼平」

 

「はい!共に我らの家を守りましょう!そういえば一刀様は今回なぜ留守組なのですか雪蓮様?」

 

「あぁそれは私も気になっていた。雪蓮、あなたと北郷が別の部隊になるとは少々予想外ね」

 

明命、冥琳の問いかけに皆同じ疑問を抱いていた。雪蓮暗殺未遂事件以来雪蓮と一刀の距離は急速に近くなっていた。それはもう周りの将が呆れるほどであった。どこに行くのも一緒のような状態だったからである。そんな二人が別部隊になったのである。しかも雪蓮直々の指示で。

 

「う〜ん、勘かな。軍師が冥琳一人だけというのも何だし、それに一刀の天の御遣いという名が役に立つかもしれないしね〜」

 

「また勘ですか姉様…」

 

「な〜によ蓮華、文句でもあるわけ?私の勘は当たるのだから信用なさい」

 

「はぁ……」

 

「それじゃ準備にかかるわよ。思春、蓮華は部隊の編成、穏、亞莎は兵站の準備を急ぎなさい!」

 

「はっ!」

「はい!」

「了解でありまーす」

「御意です!」

 

「穏、ちょっと」

 

「はいはい〜、何ですか雪蓮様?」

 

「今回はあなたの傍に亞莎を常に置きなさい。理由は…分かるわよね?」

 

「うーん、何となくは分かりますね〜」

 

「そっ、ならお願い。あの子はいずれ呉の柱石となれる子よ」

 

「はい〜、冥琳様と一緒にビシビシ鍛えていきますよ〜」

 

「任せたわね。それでは皆準備にかかれ!」

 

「「「「「「「「御意!!!!!!!!」」」」」」」」

 

そう皆に告げた雪蓮は自らも遠征の準備にかかろうとしていた時、冥琳に呼び止められていた。

 

「雪蓮」

 

「ん、何冥琳?」

 

「北郷を南征に連れて行かなかった理由……それはただ北郷を戦場に連れて行きたくなかったからでしょう。そこで北郷が負傷するのを恐れたんじゃないの?」

 

「……………さぁ、何の事かしらね」

 

「ふっ、そうか。だが安心しろ雪蓮。何かあっても北郷は私達があなたの代わりに守っててあげるから」

 

「何かその言い方は嫌ね……まぁいいわ、それじゃ行ってくるわね冥琳。留守は任せたわよ」

 

「えぇ、いってらっしゃい雪蓮」

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南征する皆を見送り、城に戻ろうとしていた一刀は不意にある男から声をかけられていた。

 

「おーい、天の御遣い殿、元気になったようだな」

 

「?すみませんどこかでお会いしたでしょうか?」

 

「おっと、そういや起きている時に会うのは初めてだったな。俺の名は華佗。五斗米道の教えを受けた流れの医師をしている。先日君が受けた毒矢の治療を施したのが俺なんだ」

 

「あぁ、あなたが華佗さんですか!この度はどうもありがとうございました。おかげさまでピンピンしてますよ!3人組の人達に助けてもらったと聞いたので、あとのお二方にも御礼が言いたいのですが…」

 

「残念ながら貂蝉と卑弥呼とは今は別行動をとっているんだ。俺からそう言っておくよ………ってどうした天の御使い殿!どこか具合でも悪いのか!?」

 

「いや、貂蝉と聞いた途端何故か猛烈な吐き気と焦燥感が……もう大丈夫です」

 

「そうか……何かあればすぐ俺に言うんだぞ。俺に治せぬ病は無いのだからな!(恋の病以外)」

 

「そう言えば、冥琳……周瑜の顔色が優れないんだが診察してもらえるか?」

 

「当然じゃないか!どんな病でも治してみせるぜ!」

 

「さすがは医師王!!」

 

「医師王?何だそれは?」

 

「い、いや、気にしなくていい。それと遠征に行った兵の怪我の治療をお願いしたいのでしばらくはここに居てもらっていいか?」

 

「あぁ、お易いご用さ。それでその具合の優れない人はどこにいるんだ?」

 

その後冥琳を診察してもらったのだが………俺もあんな風に治してもらったのか?鍼をもって何かと戦い?ながら最後には賦相成・五斗米道ォォォと叫びながら鍼を刺す。さすがは中国四千年奥が深いぜ!…………もう俺は何もつっこまないと心に決めた。

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―――――南征軍

「亞莎、今回はあなたが指揮を執るのよ」

 

「雪蓮様!?わっ、私がですかっ!?」

 

「大丈夫、補佐に穏をつけるし、敵は所詮烏合の衆だから好きなようにやりなさい。穏、補佐は頼んだわよ」

 

「は〜い、頑張りましょうね亞莎ちゃん」

 

「は、はい…でも私なんかに大軍の指揮なんて可能なんでしょうか……?」

 

「何も初めての指揮ででいきなり成功を収めろとは言わないわよ。亞莎、この戦いで経験を積み、統率力を身につけなさい。そして人を動かす術も身につけなさい。あなたには自分では気づいてないでしょうが無限の可能性があるわ。この孫伯符が言うんですもの。自信を持ちなさい」

 

「はっ、はい!が、頑張ります!!」

 

「うん、宜しい♪」

 

そう亞莎に言った雪蓮には自分と冥琳のような関係を、蓮華と亞莎なら築けると確信していた。そしてこの二人が呉をさらに大きくしてくれるに違いないとも確信していた。

 

「姉様、敵は籠城戦に持ち込むようです」

 

「やっぱりね〜。籠城戦はめんどくさいから嫌いなのよね…それで亞莎は上手いことやってるかしら?」

 

「現在穏と共に城の状況を観察しております」

 

「そっ。亞莎はどんな策を持ってきてくれるかしらね。楽しみだわ」

 

「姉様は今回も何も口を出さないおつもりですか?」

 

「そうよ。今回私は呉の王としてここにいるだけ。主役は蓮華、亞莎ら次代の呉を担うあなた達よ。田舎領主共に私や冥琳がいなくても孫呉はこれほど恐ろしいのだということを叩き込ませなさい。敵を知り、己を知れば、百戦して危うからず よ」

 

「雪蓮様!今回の策を講じて参りました!」

 

「ご苦労様。じゃ、あなたの策を全軍に示しなさい」

 

そして亞莎の策を聞いた雪蓮は「良い策じゃない。合格合格♪」と亞莎を讃え、蓮華と亞莎に後の事は全て任せた。そして実行された策は見事成功を収め、南方制圧は見事大成功に終わった。

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―――――――建業

「つまらんつまらんつまらんつまらーーーん」

 

「ちょっ、祭さん!?さっきから明らかに剣の速度が上がって………ぎゃーーーー」

 

建業の留守を任された居残り組はというと、祭の暇つぶしの相手として一刀が訓練という名の一方的な虐待を受けていた。その様子をハラハラしながら見ている明命、呆れながら見ている冥琳。と皆平和に過ごしていた。しかしそんな穏やかな時が一変する知らせが舞い込んできたのだった

 

―――――呂布軍が建業に向かって来ている―――――

 

「キタキタキタキタキタキターー!」

 

「祭殿、雪蓮達が帰ってくるまでは籠城戦を行います。当然打って出るのは禁止ですからね」

 

「うううー、そんな…折角活躍できる好機なのに…勿体ない……」

 

「何が勿体ないですかまったく。黄蓋、周泰は籠城戦の準備を!北郷は雪蓮達にすぐに伝令を出せ!」

 

「「「了解!!!」」」

 

 

―――――――南征軍

呂布が建業に迫っている―――その知らせを聞いた後の雪蓮の行動は速かった。まず穏と亞莎をこの場に留まらせ、本隊を蓮華と小蓮に任す。そして思春と雪蓮自身が先行部隊として建業に向かうと命じたのであった。もちろん雪蓮が先行部隊となる事に皆反対した。しかし、

 

「黙れ!!そんな事で時間を割くな!穏!すぐに漁村に向かい船をありったけ確保し、兵糧を建業から東に十里ほどの所にある湾に送りなさい!蓮華はそこに兵糧集積場を作っておきなさい!思春ら先行部隊はすぐにでも出発できるようにしておけ!全軍すぐさま行動に移れ!時間を無駄にするな!!!!」

 

「「「「「「「「ぎ、御意!!!」」」」」」」」

 

雪蓮の鬼気迫る命令により誰も反論できなくなってしまったのであった。

 

「(一刀………)」

 

 

――――――建業

「おうおうイキがいいのぅ!戦いがいがありそうじゃ♪」

 

「祭殿…あまりウキウキせんで欲しいのですが」

 

冥琳の問いかけにコクコクと頷く一刀と明命であったが、

 

「無理じゃ」

 

「「「ですよねー」」」

 

「つまらんぞー北郷!」

 

「俺に言わんで下さいよ!雪蓮達が帰っきたらすぐに反撃に移りますからそれまでは我慢して下さい!」

 

「分かった我慢する……そのかわり儂が先鋒じゃぞ?約束じゃぞ!絶対じゃぞ!!」

 

「「はいはい……分かりましたよ………はぁ」」

 

二人の軍師はこの大きな子供の相手をすることで無駄に疲弊していた。そんな中呂布軍の攻撃が始まった。元々兵の差が大きく、しかも相手はあの飛将軍・呂布率いる部隊である。冥琳でなければ今頃城は落とされていたかもしれない。さすがは呉の名参謀・周公謹であった。しかしそれもそろそろ限界に達しようとしていた。

 

「拙いわね、呂布の強さに兵が戦意を失いかけているわ。それに城門もそろそろ限界ね……幼平!」

 

「はっ!」

 

「あなたの命、呉のために捧げることはできるかしら?」

 

「!!もちろんです!」

 

「わかったわ……周幼平!今から戦場に単騎で向かいなさい!そしてお前の勇猛さを呂布軍と我らに見せつけるのだ!」

 

「はい!!!!!」

 

一刀はそんな作戦はダメだと言おうとしていた。しかしこの世界にきてそれなりの時を過ごした一刀にはそんなのはただの甘さに過ぎないと分かっていた。それに今の状況では門が突破されるのも時間の問題であり、少しでも時間を稼いで雪蓮達の部隊の到着を待つしかミチは残されていなかったのだ。この時一刀は自分の無能さ、弱さに腹が立っていた。

 

「待て公謹!!それは儂のような老将がするべきじゃろう!幼平はまだ若い。次代の呉を担う逸材をこんな所で散らすわけにはいかんじゃろう!?」

 

「黄蓋殿には弓での援護をお願いします。あなたの腕なら敵を的確に射ることができるはずです。それに乱戦においては俊敏さが物を言います。幼平、とにかく動いて動いて相手をかく乱しなさい。決して止まってはダメよ。雪蓮達が戻ってくるまでは何としても耐えなさい!」

 

「御意!!!!」

 

そう言うと明命は城門へと駆けて行った。

 

「皆の者!我らは今、呂布軍の猛攻を受け危機的状況に陥っている!呂布の強さに恐れをなした者もいるだろう!しかし、我が軍にも呂布にひけをとらない猛将がいる!その者の名は周幼平!皆周泰の雄姿をその目に焼き付けよ!そして何としても我らが家を守り抜くのだ!!!!」

 

冥琳の号令と共に飛び出していた明命は敵軍に突撃して行った。そして冥琳の言いつけ通り戦場を駆け巡っていた。周泰の縦横無尽な行動に呂布軍を大きく混乱した。そしてその相手を手玉に取る周泰の姿は味方の兵士たちへの鼓舞となり、圧されていた戦況を圧し返すほどであった。

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その時東方では砂塵が巻き上がっていた。その中には孫旗の牙門旗が揺らめいていたのであった。

 

「周瑜様!孫旗の牙門旗です!孫策様がお戻りになりました!」

 

「よし、間に合ってくれた…急いで幼平に戻ってくるよう伝えろ!黄蓋殿お待たせしましたな。皆、出陣準備をせよ!」

 

「応ッ!!!」

 

皆が出陣の準備をしている最中一刀はふと明命のことが気になった。そろそろ帰城しているはずであったからだ。労いの言葉でもかけようと思い明命を探してみたがいくら探しても見つからないし、誰に聞いても見ていないと言うのであった。

 

「(!まさかまだあの戦場にいるのか!?)」

 

一刀は急いで城壁へと上り戦場に目を凝らして探した。

 

「(いた!っ、まずい、囲まれている!)」

 

敵に囲まれている明命の姿を見つけた一刀は急ぎ助けに行こうとしていた。しかし

 

「待て北郷!何処へ行く!!」

 

冥琳に呼び止められ明命のことを説明し、今から助けに行くと説明したが、

 

「ダメだ。それにお前が行ったところで何になる。お前の実力では幼平に辿り着くことすらできまい。それに幼平はこうなる事とわかっていて戦場へ行ったのだ。北郷…お前はまだ甘いな」

 

その冥琳の言葉に一刀は何も言い返せないでいた。全てその通りであったからだ。自分の無力さにここでも嘆いている時、思ってもない人物から提案があったのだ。

 

「たしかに北郷一人の力じゃったら無理じゃろうが、そこに我ら黄蓋隊の援護射撃があればどうじゃろうな冥琳よ。我らが敵兵の気をひき、その隙に北郷が救援に向かう。どうじゃ良い作戦じゃろう?」

 

「黄蓋殿!?本気ですか?確かにそれなら成功するかもしれませんが…北郷には無理です!それならば他の者に……」

 

「公謹!儂は北郷を行かすと言ったのじゃ!で、じゃ北郷、できるな?」

 

「はい!必ず明命を助けだしてきます!!」

 

そう言って駆けて行った一刀であった。そして残された冥琳と祭は言い争いをしていた。

 

「正気ですか黄蓋殿!いくらあなたの隊が優秀だと言っても向かうのは北郷です!あいつは未だに戦の後で吐いているような奴ですよ!?そんな奴を向かわせるなど正気とは思えません!!それに北郷にもしものことがあれば雪蓮に何と言えば…」

 

「冥琳よ、そなたはあの北郷の顔を見なかったのか?あの悔しさでいっぱいの顔を。あのような表情を見せれるという事は死ぬ気で与えられた任務にかかるじゃろう。まぁ死んでもらっては策殿に殺されるかもしれんので困るのじゃがな。それにあ奴は儂が訓練をし、儂の部隊の訓練を見てきているのじゃ。儂の考え、部隊の動きを一番理解しておるのは北郷なのじゃ。それに儂も敵にみすみす北郷を殺させたりはせんよ」

 

「祭殿……」

 

冥琳は祭と北郷の信頼関係の深さに驚くと同時に、自分は北郷一刀という者のことを軽んじていたと感じていた。

 

「てぇーーーーーーっ!!!」

 

祭の号令と共に正確無比な弓撃を放つ黄蓋隊の面々。それにより明命を囲んでいた部隊は徐々に右翼右翼へと寄せられていた。

 

「(!?これなら逃げれる!)」

 

そう明命が思っていた時である。思ってもみなかった人物から声をかけられたのだ。

 

「明命!こっちだ!!」

 

それは間違いなく自分の愛する人―――― 一刀であった。

 

何故一刀様がこんな所にいるのだろうと思った明命であったがとりあえず今は逃げることに専念した。

 

「一刀様、あちらの方が敵兵数は少ないのですが?」

 

「いや、この道が城までの最短距離なんだ。それに祭達がきっとこの道を切り開いてくれる」

 

そう一刀が言った直後であった。無数の弓の雨が降って来たのだ。その弓によりなんと本当に道が切り開かれたのだった。

 

「急ぐぞ明命!」

 

「はい!!つっ痛!!」

 

その時明命の右腕に激痛が走った。あのような乱戦の中にいたのだ。無傷であるはずがない。痛みで手綱を放し落馬しそうになった明命であったがそこを一刀が見事に抱きかかえたのである。

 

「明命!大丈夫か!?しっかり掴まってろ!すぐに治療してやるからな!」

 

そう言った一刀は明命を抱きかかえながらもなんとか城に戻ったのである。

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「陳宮さま!背後に孫策の部隊が現れました!」

 

「なんですとーっ!?ぐぬぬ、あまりにも早すぎですぞ!?もっと掛かるはずですー」

 

そう陳宮が言っているうちに一人の者が前方に出て、名乗りを上げていた。呉王・孫伯符である。

 

「呂布!あんた主が居ない城を攻めるとは良い度胸してるじゃない!でも主不在の城を落とせないなんて所詮あんたはその程度の人物ってことよ。飛将軍だか何だか知らないけど私達・呉に喧嘩を売ったこと後悔させてあげるわ!!全軍抜刀せよ!!かかれーーーーーっ!!!」

 

その掛け声とともに突撃を開始した雪蓮ら南征軍に策など無く、ただ攻めて攻めて攻め続けるのみであった。その中で特に異彩を放っていたのが雪蓮であった。あの呂布と真っ向から殺り合っていたのである。しかも互角の戦いであった。その雄姿に呉軍の士気は上がり、反って呂布軍はあの飛将軍と互角に戦っている人物に驚き、士気が下がっていた。こうなれば呂布軍が撤退を始めるのに時間は掛からなかった。

 

「甘寧!追撃部隊を編成し適度に追撃をせよ!あまり深追いはしなくても結構よ」

 

「御意!」

 

そして雪蓮達はようやく冥琳ら留守組と合流できたのである。

 

「お疲れさま雪蓮。さすがに速いわね。というか早すぎじゃないかしら?」

 

「何よー、折角急いで帰ってきたというのに文句?………ありがとう冥琳。よく守ってくれたわ。そう言えば一刀は?」

 

「おやおや、やはり愛しい者の様子が心配なようで。安心なさい、今は明命の傍に居るわ。今回は明命と北郷のお陰で我らは救われたのだからな」

 

雪蓮は冥琳から事の事情を聞いていた。明命の雄姿に喝采を贈った後、一刀が一人で助けに行った事を聞くと冥琳に「何故一刀にそのような事をさせたの!?」と詰め寄っていた。

 

「雪蓮、確かに北郷は戦いは何もできない。はっきり言って弱いわ。その事は奴自身もよく分かっていたよ。それでも明命を助けに行くと言ったのだ。戦ができるという事だけが強いという事ではないという事よ。北郷にはそうじゃない強さがあるわ。奴はもう立派な呉軍の将軍なのよ」

 

「へー、冥琳が一刀をそこまで褒めるなんて意外ね。一刀に惚れちゃったりした(笑?」

 

「えぇそうかもしれませんね。私の身体の事もとても心配してくれていましたし。北郷も私に気があるのではないかしら」

 

そう笑いながら城へ戻っていく冥琳に雪蓮は固まっていた。

 

「はぁぁ!?ちょっと!どういう事よ冥琳!詳しく説明しなさい!ちょっと待ちなさい冥琳!!!」

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―――――――周泰の部屋

「ここは……私の部屋?」

 

目が覚めた明命は寝起きという事であまり記憶が定かではなかった。

 

「(えぇっと、確か私が敵に囲まれていた時に一刀様が助けに来てくれて、その後倒れそうになった私を抱きかかえて………)」

 

全てを思い出した明命は一刀にお礼言いに行こうと思って寝台から起き上がろうとした。しかし全身の痛みから起き上がる事ができなかったのだ。自分の姿を見てみるといたる所が包帯だらけであった。

 

「おっ、目が覚めたか明命。華佗の話では全身に十二ヵ所も傷を負っていたらしいぞ。一週間は絶対安静だってさ。あと戦いは先刻雪蓮達が呂布軍を撤退させて終わった。それもこれもこんなに傷だらけになってまで皆を守ってくれた明命のおかげだよ……本当にありがとう明命」

 

そう言って明命の頭に手を伸ばそうとした一刀であったが明命に何故か逃げられてしまった。一刀が不思議におもっていると

 

「今の私はこのように傷だらけです……そのような汚れている私になど一刀様は触れてはいけません」

 

そう言って逃げようとする明命であったが、一刀は明命の傍に行き明命を抱きしめた。

 

「か、一刀様!!??」

 

「明命俺の心臓の音が聞こえるね?今俺がここに居ることができるのは明命のおかげなんだ。勿論俺だけじゃなく冥琳も祭も…今ここにいる皆を守ったのが明命なんだ。そんな明命のことを汚れているだなんて思うはずないだろう。俺達が今在るのは、明命のおかげだ」

 

そう一刀が言うと同時に明命が泣きながら一刀に抱きついた。

 

「敵に囲まれていた時一刀様にもう会えなくなると思ってました…そんな時に一刀様が助けに来てくださり…わっ、私は本当に、本当に嬉しかったんです…私が今在るのも一刀様のおかげなんです……」

 

そう言って泣き出してしまった明命を一刀は優しく抱きしめていた。

 

 

―――――――――― 一方廊下では………

「「「「「「「(姉様、お姉様、雪蓮、策殿、孫策様、雪蓮様)今入ってはいけません!!!!」」」」」」」

 

「なんでよー、私も一刀に会いたいのに、明命だけずるいーー!!」

 

「姉様、今部屋に入るのは天の国の言葉風に言えば「けいわい」です!」

 

「知らないわよそんなこと!!一刀に会―わせーてー!私もいちゃいちゃしたーい!褒めてもらいたーい!」

 

「「「「「「「「(ダメだこいつ、早く何とかしないと……)」」」」」」」」

 

呉は今日も平和?です。

 

説明
調子に乗って八章もk(ry

先に言っておきます、無駄に長いです。
しかもいちゃいちゃが少ないです。

なんてこったい……
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コメント
この感じ好きだ。(readman )
雪蓮はこのKYなところが面白くて、そして、かーわーいーいーーーー(キーパー)
nokakaki様 KYな所が自分の中での雪蓮の立ち位置です。いや、本当に書き易いww(超級覇王)
munimuni様 感想にw←がつけられると嬉しいのですw(超級覇王)
呉楽様 雪蓮はほのぼのとしてる姿が一番好きです。全部好きですがw確かに医者王ですね…ご指摘ありがとうございます!(超級覇王)
雪蓮は可愛いなぁ・・・ほのぼの。「医師王」→「医者王」ですかね。(呉楽)
にゃ〜様 さぁ皆さんご一緒に、さんはい、「雪蓮最高!!」 華佗は本当に便利ですw多分他の作者様も思っていると思いますw(超級覇王)
雪蓮かわいいなおいw あと、華佗が便利すぎるw(にゃ〜)
goo様 自分はこの三人が父・一刀、母・冥琳、子・雪蓮のように見えます。子宝……小蓮にはまだ早(ry(超級覇王)
一刀、雪蓮、冥淋の3人の掛け合いは、やっぱり良いですね〜。目指すは真の子宝エンド。(goo)
武御雷様 雪蓮を無礼るなあぁぁぁ!!!! えっ、違いますか!?違いませんね(爆(超級覇王)
crow様 華佗の使い易さは異常。卑弥呼の使い難さは異常。いやいや自分はしがない都の踊り子ですよww(超級覇王)
作者・・・アンタ最高だよ。完結目指してがんばって、(武御雷)
漢ルートで便利なキャラが出たので生存ルートはさほど意外ではないが・・・このクオリティ、只者ではない!(crow)
THE10様 自分の中では呉=雪蓮ですからね!頑張るぜ〜、超頑張るぜ〜(笑(超級覇王)
マスター様 おぉそのような事を言われるとやる気が出てしまうではないか!頑張るゼーーット!(超級覇王)
ファビン様 何か雪蓮が残念な子になってきてる気がしてきた。だがそこが良い…はずw(超級覇王)
一刀と雪蓮の2人が揃ってでの呉編、今回も大変面白かったです!これからも頑張って下さい。(THE10)
今回もとても良いお話でした!!完結目指して頑張ってください!(マスター)
泣く明命 KYな雪蓮 止める呉の武将 GJ!(ファビアン)
nemesis様 完結…させます!必ず!!それまでどうか御贔屓に(笑(超級覇王)
羅陰様 死亡フラグ?何それうまいの?的なノリです(笑 もっとやらかしますw(超級覇王)
MiTi様 ありがとうございますorz!華佗は使い勝手が良いですww彼にはもう少し活躍してもらいますw(超級覇王)
この調子で生存ルート完結目指してがんばってください。(nemesis)
平和だ(笑)それにしても、冥琳死亡フラグをあっさりと潰しましたな…いいぞ〜もっとやれ〜(羅陰)
一刀がいて孫策が生きているからこそのオチ(ついでに華佗)…微笑ましくていいですね。続き待ってます!!(MiTi)
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ct004khm 真・恋姫†無双  

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