IS x アギト 目覚める魂 29: それぞれの気持ち |
テーブルを挟んで座る生徒会長とISを動かせた二人の内一人の男子。その周りの空気は途轍も無く張りつめている。
「話って何?」
「アンノウン。知っているだろう?人間を超えた超能力で不可能に思える現象を起こして人を殺す集団。」
「ええ・・・・それが何?」
「ここからは長ったらしい確認作業も入るが・・・・ISもその他の既存の兵器が何の役にも立たない事は分かってるよな?」
「実証済みよ。貴方、確かSAULの協力者だったわよね?G4-Xの装着員。」
「まあな。だが、他の事も聞いているだろう?そのアンノウンを次々と葬り人を守っていると言う証言すらある謎の仮面の戦士。都市伝説で雑誌に載っていた。今ではその仮面の戦士を、仮面ライダーと呼ぶそうだ。」
「眉唾物ではあるけど、目撃情報が甲も殺到していたらね・・・それがどう関係しているの?簪ちゃんとの接点も見えないんだけど。」
「じゃあ、今この場で証拠を見せよう。変身。」
変身ポーズを取るとオルタリングの両腰のスイッチを叩いた。眩い光に包まれてその姿が変わった。人類が進化し、超越した肉体を持つアギトに。だが、直ぐに変身を解いてソファーに座り込んだ。
「これはアンタだから打ち明ける事だ。正直、この事が知れたら色々とヤバい事になる。理由は説明しなくても分かるよな?」
「ええ。確かに、ISを一撃で倒せる程の力を秘めているのなら、危険視されて当然ね。」
「率直に言おう、お前と簪にもその力が宿っている。アンノウンはその力を持つ人間、たとえ覚醒していようがいまいが執拗に狙って殺そうとする。だから、気を付けて欲しい。」
「じゃあ、簪ちゃんも・・・・狙われる可能性があるって事・・?」
「その可能性はもう無い。一夏が彼女の力を彼女の了承を得て抜き取った。狙われる心配は無い。後はお前と、家族だけだ。」
「え?」
「アンノウンは特定の人間だけでなく、血縁関係に当たる人間も殺す。つまり、お前の両親も狙われる可能性があると言う事だ。まあ、いざとなれば俺がどうにかする。だから、俺の事はバラすな。それだけ。話は終わりだ。じゃあな。」
秋斗が去った後、楯無は側に置いてある新聞に目をやった。堂々と立っているのは、仮面ライダーと呼ばれるアギト。シルエットは人間とほぼ同じだが、能力も外見も人間とは全く次元を事にした存在。それが今目の前に現れたと言う事が未だに信じられなかった。アンノウンの事は何度も聞き、危険であると言う事も嫌と言う程注意されている。だが、自分や親が狙われる・・・・聞いただけでも身が堅くなる様な話だ。
「彼に、頼るしか無いのかしらね・・・?」
「おい、簪。いい加減に起きろ。」
「ん・・・・?あれ・・・?何でここに・・・・?」
「お前が俺を枕にして思い切り眠り始めたんだよ。俺今汗かいてるからシャワー浴びたいんだけど。体がべたついて気持ち悪い。それにそっちだって男臭い匂いは嫌いだろ?」
「一夏なら・・・・別に、良い。」
「いや、まあ、御礼を言うべきなのかどうかは分からないが・・・俺はとりあえず清潔が好きだから。シャワー浴びさせて。」
「ん。」
簪は体を起こすと、一夏は洗面所に入って行った。服を脱ぐと、今までアンノウンと戦って来た時の傷が露わになる。中でも一番見た目が痛々しいのは、まるで砲弾を腹に受けたかの様な傷、左肩を一周する裂傷だった。腹の傷は変身する前にクロウロードに喰らった攻撃だ。あばらを何本か折られてしまい、その内二本が肺を掠ると言う重傷を負い、左肩はまだギルスの力が完全に制御出来なかった頃にカマキリの様な姿をしたアンノウンに左腕をバッサリと切り落とされたのだ。一分程してからようやく腕が完全に再生したが、それから一週間近くは左腕をまともに持ち上げる事が出来なくなった事がある。その他にも切り傷や刺し傷、咬み傷、火傷の痕等が後を絶たない。骨を何度か折られた事もある。ビルの屋上から地面に叩き付けられたり、水の中に落とされたりと、秋斗や他のアギト達に出会うまでは散々な目に遭って来た。怪我は一週間程あれば直ぐに治ってしまい、脱臼も自分で関節を嵌め直せる。数時間もすれば痛みも退いてしまう。
「振り返る程に俺の人外さが目立つな。」
シャワーのノブを捻ると、お湯が出て来た。頭からそれを被りながらそろそろ髪の毛を切った方が良いかな、等とどうでも良い事を考え始める。
(それよりも、今の所問題は二つだな。)
そう、一つはセカンドシフトした白式・雪羅だった。雪片は相変わらずだが、左腕がカノン、クロー、シールドモードに変形する新たな機構が現れたのだ。クローやフィーラーは相変わらず使用可能で、スピードもパワーもかなり上がっている。だが、燃費の悪さと、何よりもう一つのワンオフアビリティーが問題だった。アイスフレアフォームと言う強力な力を手にしたのは良いが、どうやらアギトの力はISにも反映されるらしく、対戦相手の体が冷える、風邪を引きかける等の症状が続出している。そのワンオフアビリティーは『コキュートス』。触れた相手の機体を文字通りフリーズさせる。システムがフリーズするだけでなく、機体自体が氷結するのだ。それに加えてアリーナが北極の様に冷えて行く。そしてもう一つは、未だにG4-Mildを今の所まだ使っていないと言う事だ。データを早く送って来いと言う催促メールが一日十件以上になり、パソコンのメールボックスは本能寺並みに炎上していた。
「あれを毎回見てたらまるで呪いに掛かったみたいだ。」
(ガチャリ)
この時一夏はドアが開いたのに気が付かなかった。そしてシャワーブースにタオルを巻いた簪が入って来た。
「・・・・・・・何してんだ、お前は?」
「汗の臭い、落としたい・・・・」
「だったら俺の後で入れば良いだろうに。すぐ済むから。」
「やだ・・・・一緒に、入る・・・・」
後ろから抱きつかれてタオル越しに柔らかい感触が当たる。
(考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな!!!)
「凄い傷・・・・」
細い指先でなぞられて行くのが擽ったい。
「どうしたの、これ?喧嘩?」
「まあそんな所だ。」
「一夏。」
「ん?」
「私も、好きだよ?十年前からずっと。」
「ありがと。」
「こっち向いて。」
「いや、タオル巻いてるとは言え色々とマズくないか?」
「良いから・・・・」
仕方なしにゆっくりと、本当にゆっくりと振り向いた。眼鏡を外して濡れた髪が頭に張り付き、上気している肌。はっきり言ってかなりエロい。自然と二人の顔の距離が縮まって行って遂にはゼロになった。一夏より頭半分程背が低い簪は背伸びをしながらの状態になってしまう。
「このままじゃ逆上せるから、一旦出よう。」
かく言う一夏も頭がぼうっとしており、若干足元が定まらない状態に陥っていた。それに加え色々と限界に近づいている。二人はとりあえず体を乾かして二人並んでベッドの上で横になった。簪は一夏の腕を枕にする。
「懐かしいな。夏に木の下で良くこうやって昼寝したっけ?」
「うん。雲の形の当てっこもしたね。」
「そうだったな。(ヤバかった・・・・あのままじゃマジでヤバかった。あのまま襲ってたらシャレにならんぞ。)」
「一夏は、ずっと戦わなきゃ行けないんだよね?」
「・・・・まあそうだけど。どうしたんだ急に?」
「いつまで?」
「さあな。いつまでだろうな?俺も分からない。でも、その内終わる・・・・筈だ。それまで待って欲しい。」
簪は突然一夏の腹の上に馬乗りになった。
「やだ。今じゃなきゃ、やだ・・・・・」
それだけ言うと再び覆い被さって来た。再びキスの後に離れる。
「ヤバい・・・・脳味噌、蕩けそう・・・・」
「一夏ぁ・・・・早く来て・・・・」
それから次の朝までイロイロと続いたのでした。
説明 | ||
楯無との面会で、秋斗は・・・? | ||
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コメント | ||
ご指摘ありがとうございます。修正しました。(i-pod男) 誤字発見です。 何本香られてしまい→何本か折られてしまい 最速メール→催促メール(神薙) |
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