恋姫無双 槍兵の力を持ちし者が行く 32話
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 皆さん、こんにちは蒼です。

 大きな問題もなく、勝つことが出来、損耗も想定しているよりも軽微で抑えることが出来ました。所謂、大勝ってやつです。

 

 「隊長〜、本当に燃やしちゃうの?」

 

 「ああ、お前も俺も今までは良かったかもしれないが、正規の軍になったんだ。

 そこら辺はしっかりとしないといけない」

 

 「けど……」

 

 「気持ちは分かるが、これは仕方がないことだ。もし、それをやってしまったら俺たちの所属する曹軍の名に傷がつく」

 

 こう沙和に言い合っているのは黄巾党から押収した食料の処分のことだ。

この食料を苦しんでいる民に配った方が良いのではないかというのが沙和の意見だ。

 確かにこれだけの食料を燃やしてしまうのはもったいないし、これをこのまま配ればこっちの食料を減らさずに済む。

 ただ、それをすると『曹操は民を助ける為の食料がないから黄巾党からぶんどった』という風評が流れる。それだったら食料を分けて、『黄巾党を倒し、自分の食料を分け与えた』と

 

いう風評の方がいい。

 

 「まあ、お前もいずれ分かるさ。取り敢えず燃やせ。

 安心しろよ。華琳ならちゃんと食料を援助する分はちゃんとあるんだからな」

 

 「……分かったの」

 

 そういうと沙和は何処か納得していない表情で向かっていく。

 それを見てからさっきの会話を見てた兵士を手と目線で追い払う。

 

 「ったく、ちゃんと仕事しろっての」

 

と言いながら華琳の所へ報告に向かう。

 え?仕事?何事も経験が一番とか言って、凪達に押し付けましたが何か?

 別に仕事がしたくなかったわけではありませんよ。ホントウデスヨ?

 いや、本当に自由な時間はいいね!!ビバ!!自由!!

 ……よく考えると、報告するのももう少し後でもいいんじゃないのか?うん、そうだな。なら、報告は後にして、寝るかな。30分ぐらい。なら、それに適した場所となると……

 

 「何処に行くつもりかしら?」

 

 「……いや、お前の所に報告に向かおうと思ってたんだが、なぜここに?」

 

 「貴方がサボりそうだと、虫の知らせがね」

 

 「何を言っているんだ?俺は今から報告に……」

 

 「なら、どうして人気の無さそうな静かな場所に向かおうとしたのかしら?」

 

 いや、確かに一息つくために落ち着ける場所に向かおうとしたがな、なんでこうピンポイントで来るんだよ。

 いや、一縷の望みをかけて華琳を騙す。それしかねえ。だったら、下手な仕草は出さずにやらないとな。

 

 「……正直に言いなさい。サボるためにそっちに行ったのでしょう。どうせそこまで長い時間サボることはないでしょうけど……」

 

 おおう、的確に読まれている。……なんだか騙すのも面倒になってきたな、正直に吐くか。

 

 「それよりも与えられた仕事はしなさい。後処理を任せたはずだけど、食料の件は?」

 

 「沙和に任せた」

 

 「なら、戦死者の処理は?」

 

 「真桜に任せた」

 

 「ふう……なら義勇軍への連絡はどうしたのかしら?」

 

 「凪に任せたよ」

 

 「……アナタねえ、じゃあ我が軍の被害報告は?」

 

 「ホレ、この通り」

 

 と華琳に纏めた報告書を渡す。いや、秋蘭が殆どやってくれてよかった。

 俺はただ書くだけになったし……

 

 「……して…時に……ちゃんと……のよ」

 

 「え?なんだって?良く聞こえなかったんだが?」

 

 まあ、威圧感がでかくなっている気がするが気のせいだろう。

 それよりも早く休みたい。

 

 「早く休みたいんだ。で、休んでいいのか?」

 

 「……なんでこういうサボるための仕事の意欲はそんなに高いのよ!!

 それにこういうときだけ、より効率的に仕事するのよ!!」

 

 「おい、ちょ…華……琳…落ち…着け……」

 

 胸倉をいきなり掴んでシェイクしてくる。

 いや、不意打ちでさすがにこれはキツイ。

 というか、すこしずつ力が強くなって締まって……

 

 「首、首が締まってるから……」

 

 「……まあいいわ。これで勘弁してあげましょう。けど、これで最後よ。

 今回は見逃してあげるけど、次からは部下に殆ど押し付けず、自分でしなさい。い い わ ね?」

 

 「ゴホゴホ、……あ、ああ。分かった」

 

 そう言って立ち上がると、華琳は呆れたのか、そのまま本陣に戻っていった。

 

 「……ったく、ちょっとは手加減してもいいんじゃねえの?

 いや、怒る気持ちも分かるけどさ……」

 

 そう首をさすりながら少し静かな所に行く。三十分ぐらい経てば最低でも一人は仕事を終わらせて報告にくる。そんな考えを持ちながら……

 

 

 

 

 「で、なんで君がいるんだ?」

 

 「いや、俺は今出来る事が無いから周りを見回ろうと思って……けど俺、戦いの空気っていうのがいまだに慣れないんで、落ち着くためにちょっとここで……」

 

 「へえ、そうか。あ、隣良いか?」

 

 それに了承の意を貰って隣に座りつつ、酒瓶を取り出す。

 

 「ふう、いるか?」

 

 「いえ、俺は……」

 

 「そうか……」

 

 そう断る北郷を見ながら、酒を飲む。

 

 「……よく飲めますね」

 

 「だから、飲めないのか?」

 

 「飲んでも、すぐに酔っちゃいますけど、メインの理由はそれですね」

 

 「は?めいん?」

 

 「あ、主な理由ってことです」

 

 すいませんと続ける北郷のセリフを聞きながら、ひそかに胸を撫で下ろす。一瞬スルーしそうになった。

 ばれるとは思わないが万が一と言うのもあるし、神経質になっていいだろう。

 

 「……まあ、取り敢えず一杯飲みな。戦死者の供養も兼ねてんだ」

 

 まあ、休憩も兼ねてるけどな。と笑う。

 

 「……強いですね。俺は仲間や今までいた人がいなくなるとそんな風にいられません」

 

 そう言いながらうなだれる。

 これはお節介かな?

 

 「……お前は死んだらどんな風にあの世へ送られたい?」

 

 「え?」

 

 「悲しんで、泣きながら、ありきたりに送られたいか?」

 

 「いえ、俺はそんな事考えてもなかったです」

 

 「天の国ってのは随分と平和な所なんだな」

 

 「ええ、まあ」

 

 「こんな乱世にいるんだ。せめて自分の望む死に様ぐらいは考え、それに備えとけ。いつ死ぬか分からないんだから」

 

 と更に酒を煽る。死者が飲めなかった分も飲むように。自分の中にある死の重さを和らげるために。

 

 「で、俺は死んだ時は泣いて悲しんでいいと思っているんだが、送るときには笑って送ってほしい。俺たちは大丈夫だ。安心して逝ってくれって……」

 

 「……だから、死んだ人にも同じように?」

 

 「そういうこった。

 あんまり他の奴に言うなよ。こんな奴が何言ってんだ?みたいな目で見られるのは困る。今回のは辛気臭いのがいて、酒が不味くなりそうだから言ってるだけだ」

 

 「すいません」

 

 そう謝る北郷を言葉に返すことなく、酒を飲む。目の前に広がっている戦の名残を肴にしながら。

 自分で言うのもなんだが全くもって度し難い。こんな光景を見ても、俺は嗤っている。まさしく嗤っている。本当に俺の……

 

 「李高さん、貴方は―」

 

 そう声をかける北郷の方に顔を向けると、北郷は息を飲んで……

 

 「っつ、スイマセンもう戻ります」

 

 そのまま走り去ってしまった。

 

 「おう、じゃあまたな。

 ってどうしたんだ?いきなり走って行ったが……って、そうだよな」

 

 理由は簡単だった。俺はまだ嗤っていた。この顔を見て、怯えたんだろう。

 全く、度し難い。そう呟きながら天を仰ぐ。この戦場の名残を見て。

 

 「俺の存在価値はあそこ(戦場)にあると思ってしまう」

 

 あの世界(前世または天の国)では俺自身の存在価値は希薄だった。けど、ここ(戦場)では違う。いつ死ぬかもわからない感覚、その中で生き抜こうと自分の中にあるものがより一層感じられる。

 だが、それ(戦争)は何時かは終わる夢だ。そして、この夢(戦争)はある者にとっては悪夢になる。

 

 「夢からは醒めなきゃならない」

 

 そう言って、酒を飲み干し、酒瓶を叩き割る。

 そうだ、夢は醒めるものだ。その後に待っている平穏こそ本当に望むべきもので、死んだ者の供養になる。いや、しなければならない。

 

 「さーて、そろそろ戻って手伝いをしますか」

 

 そう言って俺は俺の部隊の下に戻っていった。

 

 

 

SIDE 北郷

 

 今、俺は走って桃香たちの所に戻っている。今、俺が出来る事が無く、居心地が悪くなって、少しでも戦の惨状を自分の目に焼き付けるためにと言う理由を付けて外に出たけど、さっ

 

きのアレを忘れるためにもすぐに戻って皆の顔を見たくなった。

 

 「なんで、あの時あんなことを考えた」

 

 あの人の笑みを見て吹っ飛んだ。言葉が思い出される。

 

 「あの人がなんだか現代の日本にいそうな人だなんて……」

 

 あの人と喋っているとそう感じられたけど、何か違う。あんな笑みが出来ることが現代の日本にいて、普通に生きていたのならならないはずだ。

 いや、ここに来てからでも見たことのない笑みだった。

 ……もうこのことは忘れよう。俺に出来る事は桃香たちを手伝って共に歩むことだけだから……

 

 

 SIDE END

 

 あの後、戦の後処理を合同で終わらして、残党の掃討を終わらせて、義勇軍と別れることになったんだが……

 

 「蒼、アナタあの天の御使いに何をしたの?」

 

 貴方に対して怯えていて、出来る限り遭わないようにしていたようよ。と続ける華琳。また何かやらかしたんでしょと言う目で見ているが……その通りなんだよなあ。

 

 「いや、少し話をしたぐらいなんだがなあ。どうやらその時に怯えさせたみたいだ」

 

 「何を話したの?」

 

 「いや、別に戦場に立つ者の最低限の覚悟について話したんだが。その時にちょっとな……」

 

 「次に会うときにどうにかしなさい」

 

 それに手で答える。

 色々な意味で注目されるだろうから。警戒心だけは取り除けと言うことだろう。

 

 「出来る限りはするさ」

 

 「……全く、ちゃんとやりなさいよ。アナタも無駄に注目されるのは不本意でしょう?」

 

 「まあ、そうだな」

 

 そう言いながら。俺たちは陳留に戻っていった。

 

 

説明
 とりあえず、あけましておめでとうございます。そして、この小説を読んでいる数少ない皆様、申し訳ありませんでした。色々忙しく、今日、投稿することになりました。
 また、できる限り早く投稿するよう心がけます。今年もよろしくお願いします。
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コメント
続き待ってます(ロックオン)
ここまで一気に読ませていただきました。面白い作品なので更新待ってます(join)
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