真・金姫†無双 #4
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#4

 

 

そうしてやって来ました、再び長沙の街。

 

「うわあぁ……」

 

初めて目にするその光景に、亞莎は瞳を輝かせている。

 

「こんなにたくさん人がいるなんて……それに本屋さんもあります!あ、あっちの店の点心も美味しそうです!それに向こうの麺屋さんも――――」

 

そんな亞莎を微笑ましく思いながら、俺は口を開いた。

 

「亞莎、まずは落ち着け」

「はややっ!?」

 

とりあえず、最新話のオープニング的なノリで。

 

 

 

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「ビーのおっちゃん、邪魔するぜ!」

「おぉ、北郷か!久しぶり……って言う程でもないくらいに、すぐに来たな。てか、その呼び方、なんかおかしくなかいか?」

 

やって来たのは、麋の商家。相変わらずの笑顔で俺を迎えてくれる。

 

「細かい事は気にするな。それより、俺もこの街で店を開くぞ!」

「おっ、なんだなんだ、いきなりだな!そんなにこの街が気に入ったのか?1日しかいなかったくせに、よく言うぜ」

「何言ってんだ、おっちゃんがいるからに決まってんだろ?」

「そいつは嬉しい事言ってくれるじゃねぇの。だが、俺には母ちゃんがいるからな。諦めてくれ」

「「HA HA HA HA!」」

 

そんな事を話しながら、笑い合う俺とビーのおっちゃん。

 

「いや、そういうノリじゃないだろ」

「ん?」

 

そして冷静に戻る。

 

「色々あってな。俺もこの街で店を開こうと思う」

「へぇ、興味深いねぇ。お前とならいい協力関係が築けそうだな。それで、何をやるんだ?」

 

そんなこんなで商談開始。

 

「なんでも、だ」

「なんでもだぁ?」

「あぁ、名付けて『万屋北郷』だ」

「……」

 

亞莎たんは、ポカンと口を開いたままなのでした。

 

 

 

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ビーのおっちゃんの口利きで、割と簡単に店を構える事の出来た――諸経費はおっちゃんからの((信用借り|ローン))ということで――俺と亞莎は、さっそく開店の準備に勤しんでいた。

 

「一刀さん、卓に対して椅子の数が多すぎるんですけど……」

「それはこっちのカウンター用だ」

「かうんたぁ?」

「あぁ、1人で来る人は、誰かと相席になっても呑み難いだろ?それに、1人者どうしで仲良くなるきっかけにもなるし、そういう人達の為の席だ」

「なるほど……」

 

いちいち感心してくれる亞莎は可愛いとして、まず開くのは居酒屋だ。いくら酒を飲む年齢でなかった俺でも、居酒屋の定番メニューくらいは知っている。

基本は焼鳥で、余った部位を使った品々や、それに加えて豚や牛肉でもあまり使わない部位を用いた料理。簡単な菜物に、米や麺など。高校生の癖に居酒屋でもバイトをしていた俺に死角はなかった。

 

なんやかんやで数日経過。

 

「亞莎、採譜の内容は全部覚えたか?」

「はい、バッチリです!」

「オッケーだ」

「はややっ!?」

 

真面目な彼女は、ウェイトレスの仕事のひとつであるメニュー覚えを終えているようだ。そんな亞莎の頭を撫でてやれば、真っ赤になってしまう。可愛いなぁ、もう。

 

「基本的に俺は料理に専念するから、注文取りと品出しは亞莎に任せるぞ」

「うぅ…緊張します……」

「大丈夫だ」

 

その緊張も、すぐに慣れに変わるさ。

 

「お客さんが来店されたら?」

「『いらっしゃいませー!空いてるお席へどうぞー!』」

「注文を受けたら?」

「『かしこかしこまりましたかしこー!少々お待ちください!』」

「何か分からない事があったら?」

「『すみません、ただいま確認して参ります!』

「酔っ払いに絡まれたら?」

「『私には((店長|マスター))がいますので!』……って、何言わせてるんですか、馬鹿ぁ!」

 

自分から言った癖に、何紅くなってやがる。

 

最終目標はビーのおっちゃんに言った通りに万屋――現代風に言うと総合商社的なものだが、まずはその為の地盤を固めねばならない。手っ取り早いのが飲食店だ。まずは俺と亞莎で一定の利益を出し、余裕が出てくればバイトを雇う事も考えている。ま、そんなこんなで。

 

「『焼鳥・北郷』開店だぜ!」

「おー!」

 

そういう事となった。

 

 

 

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「ますたー!3番卓にモモ・胸・手羽2本ずつと、牛筋煮込みです!」

「あいよっ!」

 

開店早々から、俺達の店はそれなりの賑わいを見せていた。全席埋まるとまでは言わないが、8割方の席には客がついている。

 

「店長!((鶏唐|トリカラ))4番と7番に!」

「任せとけ!」

 

おそらく、半分くらいはビーのおっちゃんからの紹介だろう。残りの半分は、新しい店だからという理由で来店したに違いない。いずれにせよ、彼らの舌を捕まえられるかどうかに、この店の今後がかかっている。彼らが気に入ってくれれば噂となり、噂が客を呼び、その繰り返しとなるのだ。

 

「お客様お帰りでーす!」

「ありがとうございましたー!」

 

亞莎も初めての接客業であるが、精一杯奮闘している。あの人見知りをする亞莎が、だ。

 

「はややっ!?あの、その…私には店長がいますので!」

「おぉっ、愛してるぞ、亞莎ー」

「はややややっやややぁあああっ!?」

「食いに来たぞ、北郷!」

「…………あーぁ、皿を割っちまいやがった。って、ビーのおっちゃんじゃねーか。らっしゃい!」

 

ドジキャラの地位を確立しつつも、である。

 

 

 

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順調に利益も出ており、これならばそろそろローンを返し始めても大丈夫だろうと考えるようになった、ある日の事であった。

 

「あら、新しい居酒屋ね」

「ほぅ、『焼鳥・北郷』……か。確かに今まで見た事はないな

 

開店の準備をしていると、これまたデラべっぴんな女性2人がやって来た。それにしてもエロい格好だな。

 

「冥琳、ここにしない?興味あるし」

「私は何処でもかまわんさ。久しぶりの、お前との休みだしな」

「お姉さん方、ご利用で?開店までもーちょいと待っててくれませんかぃ?」

 

1人は桃色の髪をした女性で、1人は黒髪の、眼鏡をかけた理知的な女性である。

へぇ…この桃髪ねーちゃんは腕がたちそうだ。剣も腰に提げてるし。

 

「あら、聞こえてた?だったら待たせて貰うわね。店の中でもいいかしら?」

「ちょい待ち……亞莎、中の準備はどうだ?」

「はやっ!あとは((卓|テーブル))を拭くだけです!かうんたぁなら大丈夫ですぅ!?」

 

桃髪ねーちゃんに待ったをかけて店内に問えば、いつものような慌てた声。これなら大丈夫だろ。俺は開店待ちの姉さん方に向き直ると、暖簾をずらして示す。

 

「……てな感じだ。こっちの細長い席についてくれ」

「はーい」

「邪魔するぞ」

 

客が来た為か亞莎も普段の5割増しの速度で作業を終え、開店の準備が整う。さて、新規のお客さんのようだが、何を注文するのかね。

 

「お待たせ、何を注文しますかぃ?」

「どうする、雪蓮?」

「そうねぇ、どれも初めて見る料理名ばっかりでわからないわ……ねぇ、貴方のオススメは?」

 

そりゃそうだ。珍しいけど安くて美味い、で売ってるんだからな。

 

「そうさなぁ、今日は肉の仕入れがいまひとつだったから、鶏ならつくね、牛なら煮込み辺りかな?」

「じゃぁ、それひとつずつ頂戴。それとお酒ね」

 

この2つなら、鮮度はそれほど味に関係ない。あくまで『それほど』ではあるが。

 

「あいよ!熱燗と常温、どっちがいい?」

「あつかん……って何?」

「あぁ、そういや姉さん方は初めてだったな。そのまんまだよ。たぶん姉さん達がいつも飲んでるのは常温、熱燗ってのは、湯で酒を温めた奴だ。寒い日に飲むには最適だが……ま、ここ江東の地じゃあまり関係ないな。どうする?」

「初めてね……ねぇ、冥琳、熱燗頼んでもいい?」

「私も興味がある。それにしよう」

「毎度!」

 

注文を受け、俺はつくね串を火にかけ、牛すじ煮込みの鍋をかき混ぜる。当然、細徳利も湯に入れた。

 

 

 

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「煮込みならすぐに出せるんだけど、酒を飲みに来たのに肴だけってのもつまんないだろ?少し待っててくれ」

「えぇ、構わないわ」

「という訳で、((店長|マスター))のトークタイムだ」

「とぉく…たいむ……?」

 

カウンター席は、こういう遣り取りが楽しいのだ。

 

「ますたー、それだと初見のお客様には通じないですぅ……」

「あー…店長のとっても楽しいお話の時間だな」

「あら、面白そうね。私はともかく、冥琳を満足させられるかしら?」

「雪蓮、そういう事はいうものではないぞ」

 

なんだ?こっちの眼鏡姉さんは笑いに厳しいのか?

 

「そういう訳じゃないわよ。でも、冥琳は頭がいいから、すぐに口を挟んじゃうのよ」

「そんな言い方はないだろう」

「おやおや、なかなかマスターのネタの((障壁|ハードル))が上がっちまったな。まぁ、いい。そんじゃぁ……そうだな、俺が狩りをしながら旅をしていた時の話をしようか」

「(一刀さん、また嘘の話を始めちゃった……)」

 

亞莎、顔に出てるぞ。

 

「姉さん方、鹿は知ってるだろ?」

「えぇ、美味しいわよね。お酒に合うわ」

「すぐ食にもってくか、まぁいい。俺が益州の山を歩いている時にな、ばかデカい鹿に出くわしたんだよ。その時の俺は、これまた腹を空かしてて、どうにかして捕まえようと思ってたんだ。だが、狩りの為の矢は尽きていたし、他の道具なんかを持ってる訳もなかった」

「ほぅ?面白い語り口だな」

「あんがと。でも、今言った通り、俺は腹ペコだった訳だ。さて、どうやってその鹿を仕留めたと思う?」

「徒手空拳で挑んだとでも言うのかしら?だったら、是非私とも勝負して欲しいわね」

「そんな訳ないさ。奴らの角はメチャクチャ堅いからな。無謀な事はしない。だが、再三言うが俺は、空腹の極みだった。どうにかして、そいつを捕まえたいと思った。で、荷物を探っていると、見つけた訳だ」

「何を?」

「いらっしゃいませー、空いているお席へどうぞー」

「いらっしゃいませー!朝に食った、さくらんぼの種だ」

「さくらんぼ?」

「あぁ、俺は、これしかないと思ったね。まさに天佑ってやつだ。俺はその種を握り締めて振りかぶり、その鹿に向けて、思い切り投げつけてやったんだ……おっと、そちらの眼鏡の姉さんは何か言いたそうだな」

 

話ながらも鍋をかき混ぜ、燗の様子を確認する。もう少しだ。

 

「あぁ、それで仕留められたら大層な膂力だが、そのような事はまず不可能だろう」

「なによ、冥琳。夢がないわねぇ」

「ふっ、軍師とは現実を精査する性分なのさ」

 

頬を膨らませる桃髪姉さんの横で、黒髪姉さんが眼鏡のつるを直しながら不敵に笑う。ちくしょう、セクシーだ。

 

「モモ・皮・ハツ2本ずつと常温ですね。かしこかしこまりましたかしこー!ますたー!」

「聞こえてたよ!ちょいと待ってな!」

 

亞莎に返し、串を火にかけ、酒を用意する。

 

「亞莎、持ってってくれ……お待たせ。まぁ、そちらの姉さんの言う通り、さくらんぼの種なんかじゃ大鹿を仕留められる訳がない。確かに当たりはしたが、そいつは気にした様子もなかった。俺はなくなく、葉っぱを千切っては食みながら山を降った訳だ。で、話はそれから1年後に時を移す」

「私の予想通りだな、雪蓮」

「待ちなさいってば、冥琳。まだ途中よ」

「あんがと、そっちの姉さんは聞き上手だね。んで、俺はまた、益州の山へと狩りに言ったんだ。だが、その時もなかなか獲物を見つける事は出来ず、ただただ山中を歩いていた……で、見つけたんだよ」

「……何を?」

「さっき話した、1年前の大鹿だよ」

「何故、1年前と同じ鹿だとわかったんだ?」

 

眼鏡の姉さん、略してメガねーさん――胸の方もメガねーさん――が食いついてきた。ここが1番の盛り上がりどころだぜ?

 

「そんなもん一目瞭然さ。なんせ、やつは身体のあちこちから、枝を生やしていたんだからな」

「枝?角じゃなくて?」

「あぁ、それも、さくらんぼの枝だ。奴さん、よっぽどいいもん食ってたんだろうな。どの枝々にも大きなさくらんぼの実がなってたよ。俺が投げつけた種が奴の体内で芽生え、すくすくと育った結果が、あの姿だったって訳だ。そん時の俺はちゃんと矢をたんまりと持ってたからな。そいつを仕留めて肉を食った後、食後の甘味にさくらんぼまで味わえたんだから、かなりの幸せ者だったよ。なかなか面白い冒険譚だろ?

……っと、マスターの話はこれでおしまいだ。熱燗につくね、それから煮込みだ、お待ち!」

 

区切りのいいところで料理を出す。うむ、我ながら話の持っていき方が上手い。ありがとう、ホラ吹き男爵さん。

 

 

 

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「なかなか面白い話だったわね、冥琳」

「あぁ、どこまで本当かはわからぬが、時間を潰すにはちょうどよかったよ」

「素直じゃないんだから」

 

軽口を叩き合いながら猪口をぶつけ合う2人に、お通しの野菜を出す。塩のみのシンプルな味付けだが、酒には合うのだ。

 

「そっちの姉さんの言う通りさ」

「何が?あ、これ美味しい!」

「だろ?じっくり煮込んであるからな。……俺の話は、どこまで本当かわからない。全部が嘘かもしれない。だからこそ面白いんだよ」

「一理あるな。想像を働かせてしまう」

「そういうものかしら?ちなみに、さっきの話はどこまでが本当なの?」

 

楽しそうな笑みで話しかけられると、こっちもマスター冥利に尽きるね。

 

「決まってる。最初から最後まで、真っ赤な嘘さ」

「……へ?」

 

そして、お客さんのこんな呆けた顔がまた、俺を楽しませてくれるのだ。ポカンと口を開けた桃髪のねーさんは、次いで笑い出した。

 

「あっはははは!貴方面白いわね!気に入ったわ!冥琳はどう?」

「あぁ、どちらかといえば静かに飲む方が好きなのだが、店主の話ぶりは、どこか聞き入ってしまう。それなりに頭の回るところは、好感が持てるぞ」

「おっと、俺の事は((店長|マスター))と呼んでくれ。この娘だって、そう呼んでるだろ?」

「はやっ!?私ですか!?」

 

料理を取りに来た亞莎は、まさか自分に話を振られると思っていなかったのだろう。驚きに仰け反り、危うく皿を落としそうになるところだった。

 

「初めて聞く言葉だが……そうだな、店主…いや、ますたぁがそう呼べというのならば、呼ばせてもらうとしよう」

「なんかいい響きね、ますたぁって」

「どもっ」

 

ある程度会話を終えると、俺は自然にその場から離れる。1人客ならともかく、2人で来ているのにあまり話しかけても邪魔になるだけだ。ちょうど客足も増えてきたところだし、俺は亞莎から飛んでくる注文に、専念する事としよう。

 

 

 

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開店してから1時間ほどが経過した。本日最初の客はどうやら役人さんのようで、難しい政治の話をしている。それをBGMに俺は串を焼き、鍋を見て、酒を出す。いつもの店内の雰囲気を楽しんでいる、その時だった。

 

「なんだぁ、この酒は!?安物の不味い酒を出しておいて、こんなに金をとるってのか、あぁ!?」

 

何かが割れる音がし、直後、男の叫び声が店内に響いた。

 

「あ、あの…その……」

 

こんな客は初めての事だし、亞莎も、恐怖よりも先に困惑を感じているようだ。

 

「はいはい、どうしました?」

「おい、店長さんよぉ!どういうつもりだよ、こらぁ!」

 

という訳で、俺の出番。焼き場から、その客達――3人連れで、残りの2人は下卑た笑いを浮かべている――に声を掛ける。他のお客さんは固まっていた。

 

「さっきから言ってんだろ!こんな不味い酒で金をとるのかっつってんだろぉがよぉ!?」

「そうは言いますが、それで3本目ですよ、お客さん。酔っ払ってんでないのかい?」

 

俺の返しに、店内に小さな笑い声が重なる。だが、それが男の神経を逆なでしたようだ。ま、当然か。

 

「なに適当な事言ってんだこらぁ!俺たちは来たばっかだろぉが!」

「ひゃぁ!?」

 

俺の言い方も悪いのだろうが、笑いで済ませられるタイプの客ではなかったらしい。卓の上の皿を床に投げつけ、返す手で亞莎の腕を掴む。

 

「へへっ、よく見れば可愛い嬢ちゃんじゃねぇか。アンタが俺達の相手をしてくれるなら、許してやってもいいんだぜ?」

「あ、あの…その……」

 

んー、やっぱ亞莎には荷が重いかなぁ。そんな事を考えていると、カウンターに座っている姉さんが俺に声をかけてきた。

 

「私がなんとかしてあげるわ」

「へ?」

「これでも街を治める身だしね。民の平穏を守るのが、私の仕事よ」

 

言いながら立ち上がり、腰に提げていた剣に手をかける。こりゃ拙い。

 

「いえいえ、お客さんの手を煩わせる訳にはいきません」

「ますたぁよ、ここは雪蓮に任せておけ。なに、あの店員は無傷で救い出すさ」

 

そこに、さらにメガねーさんの声。そりゃ俺だって武を修めていた人間の端くれだ。姉さんとあの男たちとの腕の違いは、すぐにわかる。でも、ここは酒を飲む店で、俺はマスター。姉さん達はお客さん。この場はこちら側が対処しなければならないのだ。

 

「だから気にしなくていいですって」

「ますたぁこそ気にしなくていいわよ?」

「まぁ見てな」

 

カウンターから手を伸ばして、桃髪ねーさんの肩に手を置き、宥める。そして、亞莎に向かって声をかけた。

 

「亞莎!思いっきりやっちっていいぞ!」

「……っ!はい!」

 

俺の許可に、亞莎は威勢よく頷き返す。次の瞬間。

 

「ぐぁあ!?」

「……へっ?」

 

前者は亞莎の腕を掴んでいた男の、後者は剣の柄に手をかけていた姉さんの声だ。俺達の視界には床に背中から打ちつけられた男と、その袖を握る亞莎の姿。

 

「亞莎、残りの粗大ごみもだ」

「お任せください!」

 

先程までのビクビクとした姿が嘘のように、亞莎は目にも止まらぬ速さで動き、1人の鳩尾に拳を叩き込み、もう1人の頸椎に手刀を打ちこんで気絶させた。

 

「「「「「――――――――!!!」」」」」

 

途端、状況を理解した客達から湧き上る歓声と拍手。

 

「凄いぞ、嬢ちゃん!」

「蒙の嬢ちゃんは強ぇな!」

「いいもん見せてもらった!もう1本だ!」

「はやややややあっやややっややあぁああ!?」

 

そして、先程までの闘気が嘘のように霧散し、お盆で顔を隠す亞莎。可愛いなぁ、もう。

 

「亞莎、お疲れ様」

「か、一刀さぁん……」

「よしよし」

 

俺に抱き着いてくる亞莎の頭を撫でてやり、俺は店内に向かって声を掛けた。

 

「大変お騒がせしました。お詫びに、各お席に大徳利を1本ずつお出しします。御代は結構ですので、今後ともご贔屓を!」

「こいつはありがてぇ!」

「ますたぁ!こっちは熱燗で頼む!」

「こっちもだ!」

「こっちは、それと煮込みを2人前!」

「煮込みは別料金だよ、毎度!ほら、亞莎。お客さんにお酒をお出しして」

「うぅぅ…はいぃ……」

 

そんなひと時。

 

 

 

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あとがき

 

 

風邪っぽいので、特になし。

 

 

また次回。

 

 

バイバイ。

 

 

 

……いや、万屋は別に総合商社じゃねーだろ

 

 

 

説明
そんなこんなで#4。

亞莎たんが頑張るお話。

こういうまったりな雰囲気のままエンディングまで行きたいよな。

どぞ。
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コメント
亞莎2828w マスターの店にいってみたいですなw(よーぜふ)
>>summon様 でも服装は居酒屋なんだよ!(一郎太)
>>ゆぎわ様 マッ〇とはサービスのクォリティーが違うんだよ!(一郎太)
>>本郷 刃様 ホラ吹き男爵の〇険という童話があってだな(ry(一郎太)
>>叡渡様 焦げたんだよ!(一郎太)
>>アルヤ様 言葉遊びなんてそんなもんなんだよ!(一郎太)
>>きたさん様 一刀君が言うように、まずは地盤固めなんだよ!#9あたりでその要素が出て来るんだよ!(一郎太)
>>神木ヒカリ様 焼鳥食べたいんだよ!(一郎太)
>>スターダスト様 〇魂は下ネタも挟んでくるから、運営に怒られちゃうんだよ!(一郎太)
>>MNF様 超えてやるんだよ!(一郎太)
>>不知火様 ほら吹き〇爵の冒険サマサマなんだよ!(一郎太)
>>★REN★様 ゆっくりモードは楽に書けるんだよ!(一郎太)
>>飛鷺様 いま焼いてるんだよ!(一郎太)
>>envrem様 だからタグにもあるんだよ!(一郎太)
>>D8様 品切れなんだよ!(一郎太)
>>ロンリー浪人様 自明の理なんだよ!(一郎太)
>>一丸様 少しでもクスリとしたりニヤけたら勝ちだと思ってるんだよ!(一郎太)
>>まーくん様 300万円だよ!(一郎太)
>>アサシン様 このころは関羽様も全然有名じゃないんだよ!(一郎太)
>>欠陥製品様 ビルから飛び降りれば楽になれると思うよ!(一郎太)
>>殴って退場様 そんなお店を開きたいんだよ!(一郎太)
>>Joker様 どんどんと辞書が厚くなっていくんだよ!(一郎太)
>>八幡の蟹鍋様 それこそが真理だと思うよ!(一郎太)
どじっこはややウェイトレス亜莎か…いい仕事してますね!(summon)
亞莎を見ながらお酒が飲めるなんていいなぁー。北郷マスターの話なら提供に60秒以上かかっても文句言わないよなあw(ゆぎわ)
ますたぁ、自分にはホラ話と亞莎のスマイルを一つずつ。(本郷 刃)
略してメガねーさんて・・・・・・普通略さねーよwww(アルヤ)
万屋といいながらの焼き鳥屋かい。何処にでもいそうなチンピラ瞬殺って、桃髪ねーちゃんに目を付けられたね。(きたさん)
懐かしいネタだなぁ、かしこかしこまりましたかしこって。 焼き鳥はたれも良いし塩も良し、丼やお茶漬けにしても美味しいですよね。(神木ヒカリ)
かしこwwww次は「ヒミコサマwww」とかやるのかwwこの・・・馬鹿野郎♪この野郎♪!万屋なら、一刀は木刀持つべきだなwww(スターダスト)
総合商社…三井を目指すのか・・・(M.N.F.)
さくらんぼの生えた大鹿……某もののけの神様を思い浮かべてしまったww 亞莎たんかわゆす!(神余 雛)
なんかこの路線でいっても納得だわ(デーモン赤ペン)
いいねぇ〜!!この話は好きだ!!(リンドウ)
亞莎かぁいいよ亞莎…。ますたー皮モモ各3本と鳥唐ちょうだ〜い。(飛鷲)
この話だけでも亞莎を可愛いって言い過ぎだから一刀・・・ まぁ激しく同意なんですけどねwww それにしても「ますたぁ」って良い響きですな(笑)(happy envrem)
亜莎が強くてかわいいです。ますたー、鶏唐とつくねと牛煮込み〜〜(D8)
このはやや軍師は、可愛い(断言)(ロンリー浪人)
おお〜・・・ほのぼの回いいですねえ〜〜〜こういう話が続くのもありかとww・・・あれ?ギャクはいずこ?ww・・・・ではでは、続き楽しみに待ってます。・・・あっ、ますたぁ〜、こっちにはつくね五本と牛煮込みひとつ、あと熱燗でお願い!!(一丸)
(^_^)/ますたぁ~つくね3本と熱燗頂戴!(まーくん)
関羽を打ち取ったウェイトレスを相手にするとは、可哀相に・・・チ〜ン(合掌)(アサシン)
亞莎が可愛すぎて生きてるのが辛過ぎるww(欠陥製品)
亞莎が店員兼用心棒…ある意味、最強(よく気が利いて可愛くて強い)の店員かも。(殴って退場)
これは桃髪ねーちゃんから勧誘されるのも時間の問題か・・・。 メガねーさんwwwまた新語だwww(孔明)
亜莎が可愛い。(^^)(八幡の蟹鍋)
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