詩集「奏詞」現巻 |
【現今】
水が流れているのと同じように
社会の歯車に組み込まれていく生活
意識していようがしてまいが
おかまい無しに流れ回っていく
無理にでも止めようとするならば
簡単に爪弾きにされる
欠けてしまえば簡単にかわりが用意され
再び元に戻る事は決してない
【並日】
心地よい疲労感を感じ
一日が終わりを迎える
何てことはない日々の生活
ただそこにあるだけで
幸せが溢れかえっている
それに気づくか気づかないか
もしくは気づいているが
満足していない
人によって受け止めかたはそれぞれ
幸せは望めば望むほど限りはない
妥協しようと思えばいくらでも
幸せは満足出来る
【酔惑】
ゆっくりと酔いたい
酔っていたい
何も考えずに
深く深く酔っていたい
口の中に広がる果実の香り
舌の上でとろけるアルコール
気を抜けば酔っていける
でも飾ってしまう構えてしまう
【ある一日】
紙風船が転がっていく
日溜まりに霞む縁側に
庭の片隅にネコが寝そべる
お腹を空に向けて
お茶請けに饅頭を一つもち縁側へ
転がった紙風船を拾い上げ腰を据える
ゆったりとした時間
おわることのない一日の一コマ
いつまでもつづく穏やかな風景
うつらうつらとうたた寝し
少しひえた夕方に
くしゃみとともに目が覚める
【流止】
ずっと続くと思っていた
なんてのはウソ
終わりがあるのは知っていた
続かないから今が面白い
でも出来るだけ長くその状態でいたい
【無騒】
無数の音が行き交う世の中で
無音の場所なんてどこにあるんだろうか
静かで音のないところを彷徨い求めて
人々は生きている
無音の世界は生きた先の世界にあるのだから
【終始】
終わりは始まり
始まりは終わり
視点を変えるだけで
物事の表現は変わる
新しい時代の始まりは
古い時代の終わりを意味する
だから終わりは始まりで
始まりは終わりなんだ
【瞑事】
刻々と過ぎし時間の流れは
無情にも止まらない
気づかない振りをして
毎日毎日をくりかえし
何かを探し彷徨い
足掻きもがき
その行動に意味があるのか問い
一日がいつの間にか終わり
焦りだけを残していく
【微寝】
まどろみの中で色々と
思う事を並べてみる
一人でなんとかなるもの
相手がいるもの
クリアーな状態では
決して交差する事ない
出来事も
まどろみの中では
上手い具合に交差する
ずっとまどろみの中に
いる事が出来ればそれでもいい
でもまどろみはまどろみ
クリアーな世界ではない
いつかはさめる
かりそめの世界
【非余】
最近はゆっくりと歩くことがない
余裕がないから
毎日通る道でもゆっくりとよく見て歩くと
新しい発見がある
昔はよく道草したっけ
ワザと一本道を外してみたり
左に曲がる所を直進してみたり
目的地に着くと言うことも忘れて
気ままに歩いていたよな
いつからしなくなったのかな
いつからだっけ思いだせないや
思いだせないぐらい余裕がない
【始止】
いつもと違う日常を求めて
いつもと違うことをするのは
すごく難しい
だからいつもしていることを
なんとなく止めてみる
すると簡単にいつもと違う日常が訪れる
変化なんてこの二つしかない
やっていることをやめる
やってないことをはじめる
【混世】
ちぐはぐな世界を彷徨いながら進んでいく
自分が進むべき道を迷わず歩いているか迷っているのか
認識することもなくただただ彷徨い進んでいく
疲れを知らないため立ち止まることなく
ひたすらひたすらに世界を進んでいく
何を目指して歩いていたかさえも忘れるぐらい長い間
ただただ彷徨いながらこのちぐはぐな世界を進んでいく
【独我】
気がついたら一人だった
違うな気がついたらじゃ無くて
そういう風に生きてきたから
一人なんだろうな
後悔はしていない
なんて格好をつける事はできない
だって一人って思っている以上に寂しい
【舞台】
大人になる
それは偽りを演じること
偽りの役
偽りの顔
偽りの心
偽りの声
これらを駆使して
時にはまわりにとけ込み
時にはまわりを欺き
時には独走して
所狭し舞台を動き回る
それが大人になるということ
【滲現】
意識してはじめて見えてくる現実の輪郭
近くもなく遠くもなく適度な距離で現れる
はっきりと見えないから先に進み
はっきりと見えないから後ろえ下がる
意識しなければそれは見えず
進む事も下がる事も出来ない
【視否】
闇はどこからどこまで続いているのか
その先はどこからどこまで続くのか
ただただ続く闇を彷徨うのか
無を想像できないから
闇雲に闇を代わりに想像する
その闇がどこまでつづきどこに続くのか
誰も答えを知らない
知っていると言うはペテン師のみ
誰しもがそこに辿り着く
けど誰も帰ることはない
そこに辿り着いてない者が
何故それを知りその先を知るのだろうか
【理深】
思いを直接言葉にできない
でもそれでいいと思う
言葉の意味をお互いが推測し思いをはせる
その思いにズレが生じるからこそ
物語が始まり物事が動く
ひととなりを知らなければ
読みあうが出来ない
だから直接言葉にしない方が
相手を深く理解することが出来る
【休止】
頑張らなくていい
そう頑張らなくていいのだ
頑張ることにあまり意味はない
ゆっくりと力を抜いて大きく深呼吸して
ゆったりとしてみる
すると頑張っていたときには
感じられなかった事がはっきりと感じられる
【戻進】
ちょっとだけワクワクしながら
毎日を過ごしていた日々
あんな時もあったんだなと
年甲斐もなく思い浮かべる
当時の自分が今を見たら
たぶん羨ましく思うだろう
縛られるものがなく
限りない自由がある
でも今の自分は
当時の自分を羨ましく思っている
縛りはあるものの
そのなかに溢れていた限りある自由
どちらも無い物ねだり
そんなことはわかっているけど
出来ることなら両方とも手元に置きたい
【写紡】
溢れ出していた文字はいつしか落ち着き
枯れた泉のごとく出なくなる
そうなる前にいくつもいくつも
溢れ出た言葉を紡ぎ残しておきたい
例えそれが紡いでいる時は意味のない
陳腐な落書きのかたまりだったとしても
あとで何かの鍵になる事もあるだから紡ぎ続ける
【似非】
力がある者が動けば変わる
こんなわかりきった事なのに
力がある者は動くことをしない
では何の為に力をもったのか
自己満足の為にもったのなら
さっさと返上して欲しい
力をもって寝ている狸
どうにも好きになれない
【社沌】
世の中がどうかしている
もしかして私がどうかしているんだろうか
私がありえない思うことが毎日のように
それが当たり前のようにおこっている
そしていつの間にかそれが日常となるんだろうか
行き先が不明な社会だってのは何となくわかる
でも何だか短絡的な物事が起きすぎ
そんなのをみていると「バカじゃないの」
そう言いたくなる
【求姿】
あるべき姿を求めて
彷徨い歩き続ける
そもそもあるべき姿なんて
あるかどうかも疑わしいが
あるべき姿を求めて
彷徨い歩き続ける
具体的な形がないままに
彷徨い続ける
けどどこもかしこも中途半端
短かったり長かったり
少なかったり多かったり
均一なところはどこにもない
それでもあるべき姿を求めて
彷徨い歩き続ける
【中間】
大勢で集まり騒ぎ狂うほど若くもない
落ち着き払い孤独を嗜めるほど老いてもいない
だから寂しさと不安に包まれ温もりを求めたくなる
【無意味】
右にならえが嫌だったんじゃないの
だからそうしようと思ったんじゃないの
それなのにわけわかんないよ
結局だれかと同じじゃないとだめだったの
せっかく右にならえを止める覚悟したのに
最後の最後で右にならえで終わるなんて
人がしたことを最後で真似るなんてバッカじゃないの
貴方のしたことは無意味
貴方は意味があったつもりでしょうけど
はたから見れば残念ながら無意味
あぁ、またあったので終わりなんだから
【踏幸】
小さな幸せをいくつも潰して
大きな幸せを夢見ている
そして何も叶えられず破滅する
今ここに存在しているという幸せ
夢見る大きな幸せからしてみたら
ほんとうに些細な幸せかもしれない
それでもそれは幸せな事なんだ
それに気づかず勝手に不幸と決め
絶望し道を踏み外し他人の小さな幸せ踏みつぶす
自分で自分の幸せを踏みつぶすことには
何も言わないそれは自分がしていることだから
ただ人の幸せを踏みつぶすのは許せない
他人の幸せを潰した者は
けっして英雄なんかではない
かりに不幸な境遇であったとしても
今ここに存在しているという幸せを
蔑ろにした者に同情するつもりも微塵もない
【非現】
機会仕掛けと思えるような
タイムカードの刻印
定刻より早い出勤
デフォルトの残業
止まる事の知らない
時計のように正確に
刻印をつづける
夢見ていたような華やかな出来事
そんなものは
まれまれごく一部の
ほんの些細な部分
あるのは退屈な毎日
それが
今感じられるすべて
愛でるべき花もある
でもその花は手を出す事を許される花じゃない
ただ眺め愛でることが許されている花
他人が育てている花
だから無性に美しくて魅力的で惹かれていく
夢のなかでは自分の物なのに
目が覚めると遠い
【現代人】
空っぽの箱に無理矢理詰め込む
溢れるばかりにどんどん詰め込んでいく
底に穴が開こうが蓋が閉じなかろうが
そんなことは関係ない
ただただ詰め込んでいく
取り出せないぐらい詰め込んでいく
最後にその箱の中には何が入っているんだろうか
たぶん何も入っていない空っぽの箱
これと同じなのを毎日見ている
気がつかずに多くはまだ
詰め込むことをやめていない
【らくがき】
文字を紡ぐ
意味のない文字をひたすら紡ぐ
何を表すのかは紡いでから考える
紡いだ文字は単語となり文となり意見に変わる
誰と特定するわけでもなく発信する
誰でもよいし
少数でもいい
ちょっとでも振り向いてくれれば
それでいい
多数の人々たちの共感をえたいわけじゃない
だから別に多数に聞き流されてもかまわない
なにせ文字を紡ぐのは
己が生きていた証だから
【世視】
淀みなく流れている確定的な流れ
このまま流れに乗っていって良いのか悪いのか
人は常にこれを考えて生きている
美味しい事を考えて多くの人はギリギリまで選択を待つ
だがそれが間違いゆえ多くの人が失敗をする
目に流れが見えるときはそれはどちらにしても終焉
良い流れなら乗り遅れ手遅れ
悪いの流れなら破滅し手遅れ
流れの質を見極める目が今求められる
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詩集「奏詞」の第三巻 | ||
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コメント | ||
>風舞桜子さん。コメントありがとう。【休止】気に入っていただけたようで嬉しく思います。頑張っている時って、だいたい何かに追われて焦っているなんてことが私は多いです。そんなときに思いきって一息つけると気持ちが楽になる。そんな思いから書き綴りました。最後になりましたがページ数が多いのに関わらず読んでいただいた事感謝しています。(華詩) | ||
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