詩集「奏詞」現巻
[全29ページ]
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【現今】

 

水が流れているのと同じように

社会の歯車に組み込まれていく生活

 

意識していようがしてまいが

おかまい無しに流れ回っていく

 

無理にでも止めようとするならば

簡単に爪弾きにされる

 

欠けてしまえば簡単にかわりが用意され

再び元に戻る事は決してない

 

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【並日】

 

心地よい疲労感を感じ

一日が終わりを迎える

 

何てことはない日々の生活

ただそこにあるだけで

幸せが溢れかえっている

 

それに気づくか気づかないか

もしくは気づいているが

満足していない

 

人によって受け止めかたはそれぞれ

幸せは望めば望むほど限りはない

妥協しようと思えばいくらでも

幸せは満足出来る

 

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【酔惑】

 

ゆっくりと酔いたい

酔っていたい

 

何も考えずに

深く深く酔っていたい

 

口の中に広がる果実の香り

舌の上でとろけるアルコール

 

気を抜けば酔っていける

でも飾ってしまう構えてしまう

 

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【ある一日】

 

紙風船が転がっていく

日溜まりに霞む縁側に

 

庭の片隅にネコが寝そべる

お腹を空に向けて

 

お茶請けに饅頭を一つもち縁側へ

転がった紙風船を拾い上げ腰を据える

 

ゆったりとした時間

おわることのない一日の一コマ

いつまでもつづく穏やかな風景

 

うつらうつらとうたた寝し

少しひえた夕方に

くしゃみとともに目が覚める

 

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【流止】

 

ずっと続くと思っていた

なんてのはウソ

 

終わりがあるのは知っていた

続かないから今が面白い

 

でも出来るだけ長くその状態でいたい

 

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【無騒】

 

無数の音が行き交う世の中で

無音の場所なんてどこにあるんだろうか

 

静かで音のないところを彷徨い求めて

人々は生きている

無音の世界は生きた先の世界にあるのだから

 

【終始】

 

終わりは始まり

始まりは終わり

 

視点を変えるだけで

物事の表現は変わる

 

新しい時代の始まりは

古い時代の終わりを意味する

 

だから終わりは始まりで

始まりは終わりなんだ

 

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【瞑事】

 

刻々と過ぎし時間の流れは

無情にも止まらない

 

気づかない振りをして

毎日毎日をくりかえし

 

何かを探し彷徨い

足掻きもがき

その行動に意味があるのか問い

 

一日がいつの間にか終わり

焦りだけを残していく

 

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【微寝】

 

まどろみの中で色々と

思う事を並べてみる

 

一人でなんとかなるもの

相手がいるもの

 

クリアーな状態では

決して交差する事ない

出来事も

 

まどろみの中では

上手い具合に交差する

 

ずっとまどろみの中に

いる事が出来ればそれでもいい

 

でもまどろみはまどろみ

クリアーな世界ではない

 

いつかはさめる

かりそめの世界

 

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【非余】

 

最近はゆっくりと歩くことがない

余裕がないから

 

毎日通る道でもゆっくりとよく見て歩くと

新しい発見がある

 

昔はよく道草したっけ

ワザと一本道を外してみたり

左に曲がる所を直進してみたり

 

目的地に着くと言うことも忘れて

気ままに歩いていたよな

いつからしなくなったのかな

 

いつからだっけ思いだせないや

思いだせないぐらい余裕がない

 

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【始止】

 

いつもと違う日常を求めて

いつもと違うことをするのは

すごく難しい

 

だからいつもしていることを

なんとなく止めてみる

すると簡単にいつもと違う日常が訪れる

 

変化なんてこの二つしかない

やっていることをやめる

やってないことをはじめる

 

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【混世】

 

ちぐはぐな世界を彷徨いながら進んでいく

自分が進むべき道を迷わず歩いているか迷っているのか

認識することもなくただただ彷徨い進んでいく

 

疲れを知らないため立ち止まることなく

ひたすらひたすらに世界を進んでいく

何を目指して歩いていたかさえも忘れるぐらい長い間

 

ただただ彷徨いながらこのちぐはぐな世界を進んでいく

 

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【独我】

 

気がついたら一人だった

違うな気がついたらじゃ無くて

 

そういう風に生きてきたから

一人なんだろうな

 

後悔はしていない

 

なんて格好をつける事はできない

だって一人って思っている以上に寂しい

 

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【舞台】

 

大人になる

それは偽りを演じること

 

偽りの役

偽りの顔

偽りの心

偽りの声

 

これらを駆使して

時にはまわりにとけ込み

時にはまわりを欺き

時には独走して

所狭し舞台を動き回る

 

それが大人になるということ

 

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【滲現】

 

意識してはじめて見えてくる現実の輪郭

近くもなく遠くもなく適度な距離で現れる

 

はっきりと見えないから先に進み

はっきりと見えないから後ろえ下がる

 

意識しなければそれは見えず

進む事も下がる事も出来ない

 

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【視否】

 

闇はどこからどこまで続いているのか

その先はどこからどこまで続くのか

ただただ続く闇を彷徨うのか

 

無を想像できないから

闇雲に闇を代わりに想像する

 

その闇がどこまでつづきどこに続くのか

誰も答えを知らない

 

知っていると言うはペテン師のみ

誰しもがそこに辿り着く

けど誰も帰ることはない

 

そこに辿り着いてない者が

何故それを知りその先を知るのだろうか

 

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【理深】

 

思いを直接言葉にできない

でもそれでいいと思う

 

言葉の意味をお互いが推測し思いをはせる

 

その思いにズレが生じるからこそ

物語が始まり物事が動く

 

ひととなりを知らなければ

読みあうが出来ない

 

だから直接言葉にしない方が

相手を深く理解することが出来る

 

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【休止】

 

頑張らなくていい

そう頑張らなくていいのだ

 

頑張ることにあまり意味はない

ゆっくりと力を抜いて大きく深呼吸して

ゆったりとしてみる

 

すると頑張っていたときには

感じられなかった事がはっきりと感じられる

 

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【戻進】

 

ちょっとだけワクワクしながら

毎日を過ごしていた日々

 

あんな時もあったんだなと

年甲斐もなく思い浮かべる

 

当時の自分が今を見たら

たぶん羨ましく思うだろう

 

縛られるものがなく

限りない自由がある

 

でも今の自分は

当時の自分を羨ましく思っている

 

縛りはあるものの

そのなかに溢れていた限りある自由

 

どちらも無い物ねだり

そんなことはわかっているけど

出来ることなら両方とも手元に置きたい

 

-19ページ-

【写紡】

 

溢れ出していた文字はいつしか落ち着き

枯れた泉のごとく出なくなる

 

そうなる前にいくつもいくつも

溢れ出た言葉を紡ぎ残しておきたい

 

例えそれが紡いでいる時は意味のない

陳腐な落書きのかたまりだったとしても

あとで何かの鍵になる事もあるだから紡ぎ続ける

 

-20ページ-

【似非】

 

力がある者が動けば変わる

こんなわかりきった事なのに

力がある者は動くことをしない

 

では何の為に力をもったのか

自己満足の為にもったのなら

さっさと返上して欲しい

 

力をもって寝ている狸

どうにも好きになれない

 

-21ページ-

【社沌】

 

世の中がどうかしている

もしかして私がどうかしているんだろうか

 

私がありえない思うことが毎日のように

それが当たり前のようにおこっている

そしていつの間にかそれが日常となるんだろうか

 

行き先が不明な社会だってのは何となくわかる

でも何だか短絡的な物事が起きすぎ

 

そんなのをみていると「バカじゃないの」

そう言いたくなる

 

-22ページ-

【求姿】

 

あるべき姿を求めて

彷徨い歩き続ける

 

そもそもあるべき姿なんて

あるかどうかも疑わしいが

 

あるべき姿を求めて

彷徨い歩き続ける

 

具体的な形がないままに

彷徨い続ける

けどどこもかしこも中途半端

 

短かったり長かったり

少なかったり多かったり

均一なところはどこにもない

 

それでもあるべき姿を求めて

彷徨い歩き続ける

 

-23ページ-

【中間】

 

大勢で集まり騒ぎ狂うほど若くもない

落ち着き払い孤独を嗜めるほど老いてもいない

だから寂しさと不安に包まれ温もりを求めたくなる

 

-24ページ-

【無意味】

 

右にならえが嫌だったんじゃないの

だからそうしようと思ったんじゃないの

それなのにわけわかんないよ

 

結局だれかと同じじゃないとだめだったの

せっかく右にならえを止める覚悟したのに

最後の最後で右にならえで終わるなんて

人がしたことを最後で真似るなんてバッカじゃないの

 

貴方のしたことは無意味

貴方は意味があったつもりでしょうけど

 

はたから見れば残念ながら無意味

あぁ、またあったので終わりなんだから

 

-25ページ-

【踏幸】

 

小さな幸せをいくつも潰して

大きな幸せを夢見ている

そして何も叶えられず破滅する

 

今ここに存在しているという幸せ

夢見る大きな幸せからしてみたら

ほんとうに些細な幸せかもしれない

それでもそれは幸せな事なんだ

 

それに気づかず勝手に不幸と決め

絶望し道を踏み外し他人の小さな幸せ踏みつぶす

 

自分で自分の幸せを踏みつぶすことには

何も言わないそれは自分がしていることだから

 

ただ人の幸せを踏みつぶすのは許せない

他人の幸せを潰した者は

けっして英雄なんかではない

 

かりに不幸な境遇であったとしても

今ここに存在しているという幸せを

蔑ろにした者に同情するつもりも微塵もない

 

-26ページ-

【非現】

機会仕掛けと思えるような

タイムカードの刻印

 

定刻より早い出勤

デフォルトの残業

 

止まる事の知らない

時計のように正確に

刻印をつづける

 

夢見ていたような華やかな出来事

そんなものは

まれまれごく一部の

ほんの些細な部分

 

あるのは退屈な毎日

それが

今感じられるすべて

 

愛でるべき花もある

でもその花は手を出す事を許される花じゃない

ただ眺め愛でることが許されている花

 

他人が育てている花

だから無性に美しくて魅力的で惹かれていく

夢のなかでは自分の物なのに

目が覚めると遠い

 

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【現代人】

 

空っぽの箱に無理矢理詰め込む

溢れるばかりにどんどん詰め込んでいく

 

底に穴が開こうが蓋が閉じなかろうが

そんなことは関係ない

 

ただただ詰め込んでいく

取り出せないぐらい詰め込んでいく

 

最後にその箱の中には何が入っているんだろうか

たぶん何も入っていない空っぽの箱

 

これと同じなのを毎日見ている

気がつかずに多くはまだ

詰め込むことをやめていない

 

-28ページ-

【らくがき】

 

文字を紡ぐ

意味のない文字をひたすら紡ぐ

 

何を表すのかは紡いでから考える

紡いだ文字は単語となり文となり意見に変わる

 

誰と特定するわけでもなく発信する

誰でもよいし

少数でもいい

ちょっとでも振り向いてくれれば

それでいい

 

多数の人々たちの共感をえたいわけじゃない

だから別に多数に聞き流されてもかまわない

 

なにせ文字を紡ぐのは

己が生きていた証だから

 

-29ページ-

【世視】

 

淀みなく流れている確定的な流れ

このまま流れに乗っていって良いのか悪いのか

 

人は常にこれを考えて生きている

美味しい事を考えて多くの人はギリギリまで選択を待つ

 

だがそれが間違いゆえ多くの人が失敗をする

目に流れが見えるときはそれはどちらにしても終焉

 

良い流れなら乗り遅れ手遅れ

悪いの流れなら破滅し手遅れ

 

流れの質を見極める目が今求められる

 

 

説明
詩集「奏詞」の第三巻
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コメント
>風舞桜子さん。コメントありがとう。【休止】気に入っていただけたようで嬉しく思います。頑張っている時って、だいたい何かに追われて焦っているなんてことが私は多いです。そんなときに思いきって一息つけると気持ちが楽になる。そんな思いから書き綴りました。最後になりましたがページ数が多いのに関わらず読んでいただいた事感謝しています。(華詩)
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