いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した
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 第九十七話 ツンデレラ・ロード・ディアーチェ

 

 

 

 クロノ視点。

 

 「ごめ、んなさい。ごめんな、さい。ごめんなさい」

 

 「…フェイト」

 

 僕等は会議中に感知した異様なエネルギー発生地帯に行くと異様な生物の群れと遭遇し、仕方なく戦闘になった。

 そこでフェイトは自分の姉であり、恩師でもあり、元プレシアの使い魔。いや、闇の書の欠片で作り上げられたリニスと遭遇。他の皆と同じように戦闘になりながらも欠片の一部でありながらも元のリニスとしての人格を宿していたのかフェイトは説得を続けていた。

 だが、そこにアサキムが現れリニスを急襲。そのリニスを助けようとフェイトは自身が持つ最大出力の魔法・ジェットザンバーを繰り出す。

 しかし、その攻撃はかわされその攻撃射線上にはリニスがいた。

 

 「ごめんなさい。ごめんなさいぃいいい」

 

 医務室の前で泣き崩れるフェイト。その背中を支えるアルフ。その視線の先には医療ポットの中にいる人影の方を見てまた謝る。

 

 「ごめんなさい高志ぃい…」

 

 医務室の中に設置された医療ポットの中にいるのは『傷だらけの獅子』沢高志。

 彼の前で泣いているフェイトは返事がない彼の容態を見ながら涙を流しながらお詫びの言葉を紡ぐだけだった。

 

 

 

 あの時。フェイトの大剣が振り降ろされた時、そこに飛び込んできた赤い翼。

 ガンレオンのマグナモードを展開した高志だった。

 剣が振り降ろされる直前で高志はリニスと剣の間に割り込んだ。

 本当はアサキムを掴んで剣に刺さっているリニスを助けようとして飛び出したのだが、フェイトの攻撃に合わせてアサキムが体制を変えた。

 その次に見た光景がフェイトの手によってリニスにとどめを刺そうとしていたという状況。フェイトの悲鳴じみた叫びを聞いて状況を理解し、無理矢理リニスとフェイトの間に割り込みフェイトの全力攻撃をその身に浴びた。

 そこでアサキムが追撃をかけてこなかったのが唯一の幸運。

 通常状態の高志だったら医務室に運び込まれるほどの大事にはなってはいなかった。

 それはあまりにも不幸なことが重なったからだ。

 

 

 

 一つ目は、マグナモードによる全身に駆け巡る激痛。

 二つ目は、フェイトの全力攻撃を受けたこと。

 三つ目は、アリシアも受けるはずだったダメージ分も肩代わりした事。

 

 そして…。((四つ目|・・・))。

 これが一番の原因でもあった。

 

 

 

 ディアーチェ視点。

 

 「っ?!………あの馬鹿が!」

 

 「っ。…ディアーチェも感じ取りましたか」

 

 「どうしたんですか?王様…。ヤミちゃん」

 

 異空間で身をひそめながら体を休めていた我は、完全に途切れた気配に思わず愚痴をこぼした。

 その愚痴を耳聡く聞いた桃色が我に質問を投げかける。

 U―Dの方も何かを感じ取ったのか我の顔色を窺っている。

 

 「…リニスの反応が完全に消えた」

 

 魔力のラインを辿ってアサキムにばれるかもしれないと言い、怪我も完全に直っていないのに少ない魔力とU―Dに貸し与えられた獣だけで時間を稼ぐと言っていたのにあまりにも速すぎる。

 小烏達とアサキムの同時を相手にしたとしか考えられない。

 あの二組が組むとは思えない。となれば、アサキムが漁夫の利を狙ったとしか考えられない。

 

 「あの猫耳さんが…」

 

 「…近くで、一瞬ですけど『傷だらけの獅子』の力も感じました。だけど、それも一瞬。まるで星が爆発したのかと思わせるようなエネルギー量でした」

 

 リニスは我の使い魔。そして、U―Dも我等と似たような構成で出来ているから何かしら感じ取ったのだろう。

 その上、U―Dは『偽りの黒羊』を持っているからな。

 そして、その模写物。我等が探していた『砕け得ぬ闇』も持っている。

 スフィアの力に関しては誰よりも感知能力は高いだろう。

 

 「…ところでヤミちゃん。暴走する恐れがあるのはわかったわ。でも、貴女は暴走していない。その理由を教えてくれない?」

 

 桃色はU―Dの事を『砕け得ぬ闇』から取ってヤミちゃんと呼ぶようになっていた。が、今はどうでもいい。

 

 「貴様!何様のつもりだ!リニスが消えたというのに!」

 

 「暴走とは本来の力以上の力を扱って手が付けられないことを言います。なら、その状態ならあのアサキムとも互角に戦えるんじゃないんですか?」

 

 「…それは」

 

 「桃色!貴様!」

 

 「このままじゃあ、全滅です。王様もそれは分かっていますよね?使えるモノは使う。私だってエルトリアが救えるのならこの命いくらでも投げ捨てます!だけど、その為にも私達は絶対に生き残らないといけないんです!」

 

 「ぐ…」

 

 「…確かにそうかも知れません」

 

 「シュテル!目覚めたのか!」

 

 悔しいぐらいに、そして憎いぐらいに正論である。

 そんな時、参謀役のシュテルが目覚める。と、同時にレヴィも目を擦りながら目覚める。

 

 「はい。王の膝枕でぐっすりと休ませてお蔭で全快になりました」

 

 「ふわふわ〜な枕だ〜…。むにゃうにゃ…」

 

 と言いながらも我の膝の上から頭を上げようとしないシュテル。気が付いたのなら頭を上げろ!

 シュテルが言う通り、我はずっとこの二人を仕方がなく!膝枕して解放していたのだ!

 

 仕方がなくだぞ!!

 

 あと、レヴィ!二度寝しようとするな!

 あ、こら!そこから先は…。

 

 「余計なことは言わんでいい!あといい加減、起きんかぁああああ!」

 

 「にゃああああ!王様、痛い痛い!」

 

 「…痛いです王」

 

 我は寝ぼけているレヴィと真顔で我を見上げているシュテルの頬を思いっきり抓り上げる。と、ようやくレヴィが覚醒する。シュテルは相変わらず無表情だったが…。

 あやうく、臣下に操を奪われるところだったわ!

 

 「まあ、王の操はどうでもいいですが…」

 

 「どうでもよくないぞ?!お前は本当に臣下か!?」

 

 「冗談です」

 

 無表情で言われても、…のぅ。

 

 「スフィア持ちにはスフィア持ちで当たった方がいいです。正直言うとあの融合騎。傷だらけの獅子。そして、U―D以外でアサキムを相手するのは愚策です。ですが…。我等も元は『紫天の書』の一部。それを元に戻せば打てる手は増えます」

 

 紫天、の書?

 なんだ聞いたことが無いぞ。

 

 「貴女の持つ本ですよ、王」

 

 「これの事か?」

 

 我は錫杖の傍に浮かべていた紫色の闇の書にも似た本を手に取る。

 

 「あらん、シュテルンちゃんには何か手立てでもあるのかしら?」

 

 「…ええ。とは言っても思い出しただけですけどね。((あの|・・))アサキムを相手にするのです。貴女にはメッセンジャーになってもらいますキリエ。勿論、ただとは言いません。全部上手くいけば、システムU―Dの力の一部を貸してもいいです」

 

 自分の口元にピンと立てた人差し指を当てながら桃色に交渉を持ちかけるシュテル。

 

 「シュテル?!我に何の説明もなく話を進めるな!」

 

 「王は黙っていてください。今は一部たりとも戦力を削ぐわけにはいかないのです。キリエ、貴女はオリジナル。…なのは達の所に言って共同戦線を持ちかけてください。この時、必ずあの『傷だらけの獅子』と融合騎の協力を受諾してきてもらってください」

 

 「小烏達の力を借りるだと?!」

 

 そんな赤恥さらしをするなど…。

 

 「…王」

 

 分かっていますよね?と言いたげなシュテルの瞳が我の顔を映す。

 

 「…ええいっ!仕方がない!今回だけは!今回だけはあいつ等の力も使ってやろうではないか!弾避けぐらいにはなるだろう!」

 

 「それでこそ王です。では、お願いできますね?キリエ」

 

 「ヤミちゃんの答えをまだ聞いていないんですけど…」

 

 「その答えもこの魔力結晶の中にあります」

 

 シュテルは緋色のひし形の石のような物を桃色に渡す。

 桃色は何か悩んでいる顔をするも諦めたかのように受け取る。

 

 「…はぁ。わかりました。でも、私を((異空間|ここ))から出すときはあっちにばれないようにお願いしますよ」

 

 そう言ってキリエは空間に出来た穴に自分の身を投げ出し外へと出て行った。

 それを見送った後、シュテルは我等に向かって声をかける。

 

 「まずU―D。いや、あなたの本当の名前はユーリ・エーデルヴァイン。我等の盟主です」

 

 「ん〜、つまり王様よりユーリの方が強いの?」

 

 「そ、そんなことは…」

 

 「ありますよねユーリ?」

 

 「え、えと、は、はい。今の状態なら私の方が強いかと思います」

 

 「いいだろう、ここで絶対的力関係を見せるのもいいのかもしれんがぁ!」

 

 シュテルの錫杖で頭を殴られた。その隣ではレヴィも涙目になりながら頭を押さえていた。

 

 「これ以上暴れるというのならば私が相手になります。そのあとユーリと模擬戦をしてもらいますかね」

 

 「「我(僕)が悪かったぁああああああ」」

 

 シュテルの冷たい瞳の中に蠢いていた地獄の炎あれが溢れ出したら殺されていたのかもしれんな。

 

 「ユーリーて、言うんだね。僕レヴィ。宜しくね♪」

 

  ユーリの手緒を取って軽く握手するレヴィを放っておきながらシュテルは今後作戦を思案した。

 

 まず、ユーリの持つスフィアと『砕け得ぬ闇』の力で交戦。

 不利になり始めたら我等が介入。ただし、三人が合体した状態で…。

 「な、!?合体など無理だろう!」

 

 「王、私とレヴィは元はあなたのサポート的存在。故に一つにまとめることも容易に出来ます。その力でアサキムに立ち向かってください」

 

 「合体!!かっこいいいいいい♪」

 

 「この子は力が強いうので私と王で操作しましょう」

 

 「王様みたいにカッコいいスーツかな。でもシュテルの長いスカートも…」

 

 レヴィが何やらぶつぶつ言っていたが話を進める。

 

 「シュテルが言う通り、今度戦う時はスフィアも『砕け得ぬ闇』も解放して戦います。でも、それで本当に勝てるんでしょうか?」

 

 「それはあちらしだいですね。あちらがが全ての力を持って協力してくれれば勝てます」

 

 「王様―、シュテルンー、早く合体しようよ〜」

 

 困惑している空気を壊してくれたレヴィの頭をぐりぐりと撫でながら合体するためにお互いの手をつなぐ。

 

 「では合体用の魔方陣を…」

 

 シュテルがそうしようとした瞬間に我等の三人の前に円錐状の玩具が転がって来た。

 見た感じだと玩具のドリルだった。

 

 「王様、シュテルンっ。早く合体しようよ〜天元突破だよ」

 

 それを聞いた我はそのドリルを持ち。思いっきりぶん投げた。

 

 「ああああっ」

 

 「遊んでないでやるぞ!」

 

 「フルユニゾン!」「ダブルイン!」

 

 するとどうだろう。シュテルと涙目もレヴィの体全体が光になると我の背中の中に入っていき我の黒い羽は付け根が黒。中間部分が蒼。中間から羽先が紅になった。

 

 「…おお。今までに感じたことのない力だ。これがあの二人の力か」

 (王、お喜びの所申し訳ございませんけど、今の状態ではユーリが暴走した時の為のバトルスーツです)

 我が驚いているとまるで直接頭に話しかけているかのような声がした。シュテルのようだ。

 (対アサキム対策としても役に立つでしょうがアサキムを倒したあともこの状態を続けられるようになってください。この姿はいわばユーリのブレーキですので)

 

 「…私が暴走していない理由は『偽りの黒羊』の力を使っています。このスフィアの力を使ってスフィア自身にまだ成長していないよ。と、呼びかけています。もう一つは暴走状態の『砕け得ぬ闇』にまだ待機中という『嘘』をかけて封印している。でも、それのどれかが崩れると私は暴走状態になります。ディアーチェ達を殺してしまうのかもしれないのです」

 

 つまり、いつ爆発する爆弾の傍に我々を置いておきたくないという訳か。

 

 「ユーリ。あまり我々を舐めるなよ。貴様ごときに殺されるものか。だからどんと構えていろ(そうですね)(そうだよ)」

 

 「………ディアーチェ・シュテル・レヴィありがとうございます」

 

 「ユニゾンアウト」

 

 「そう言えば自己紹介がまだでしたね私はシュテル・ザ・デストラクター」

 

 「僕はレヴィ。レヴィ・ザ・スラッシャー!」

 

 「そしてこやつらの王「ツンデレラ・ロード・ディアーチェ」」

 

 シュテルぅうううううう!!

 

 「冗談ですよ冗談ですよ」

 

 と、異空間の中を走って逃げるシュテルを追う我。だが、オリジナルに比べてシュテルは足が速かった。

 戻ったら絶対にとっちめてやる。

 こうしている間にもアサキムはこっちに迫ってきている。それなのにこの賑やかな空間で初めて優しい笑顔を浮かべた。

 

説明
第九十七話 ツンデレラ・ロード・ディアーチェ
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コメント
たびたびの誤字申請ありがとうございます。訂正しました。(たかB)
シュテルの名前、「シュテル・『ザ』・デストラクター」。シュテルにも『ザ』が入りますよー(緋詩)
誤字修正しました。どうもです。(たかB)
フェイトの全力全開の一撃をリニスの変わりにその身に受けてしまい大怪我を負ってしまった高志が何時復活するのか、マテリアル達と協力関係が築けるのか気に成るし、リニスが如何成ったのかも次回が楽しみです。(俊)
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