ソードアート・オンライン フェイク・オブ・バレット 第五話 予選を終えて
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キリト、デュオ、シノンは順調に勝ち進んでいき、3人揃って本戦出場が決まった。

予選が終わり、キリトとデュオはシノンと分かれると総督府前まで出てそのままログアウトした。

長時間付き合わせた安岐さんに、和人と大地はお礼を言って、既に薄暗くなった病院から出ると、帰路に着いた。

帰宅途中、それまで黙り込んでいた和人が突然口を開いた。

 

和人「なあ、大地・・・」

 

大地「なんだ?」

 

和人「お前は・・・自分があの世界で殺した奴の事どれくらい、覚えてるんだ?」

 

大地「突然だな。」

 

恐れるようだが、しかし後悔はしていないという様子の和人と、自嘲気味な笑みを浮かべた大地の間を、冷たく乾いた風が駆け抜ける。

 

大地「正直なところ誰も覚えてない。」

 

和人「えっ・・・?」

 

意外そうな顔をした和人に対して、大地はさらに続ける。

 

大地「でも、顔だけははっきりと覚えてる。奴らは死ぬ間際に俺に同じ((表情|かお))を見せて逝ったよ。俺に対する怒りや憎しみ、そして死への恐怖に満ちた((表情|かお))を・・・」

 

和人「・・・」

 

大地「カズ、お前が何を考えてるのかはだいたい分かる。だから言っておく。」

 

大地は言葉を切ると、真剣な顔をして言った。

 

大地「罪だけを見るな。お前は確かに人を殺した。だけど、同時に人を救ったんだ。」

 

和人「ああ・・・そうだと良いな・・・」

 

大地の言葉に、和人は暗い表情のまま答えた。

すると、大地は和人に言う

 

大地「過去を変えることはできない。それから逃げることもそれを償うこともできない。だが、過去を受け止め背負うことはできる。」

 

和人「っ!!」

 

大地「過去に怯えて生きるのも、過去を背負って生きるのもお前しだいだ。じゃあな。」

 

大地はそう言うと、和人とは方向が違うため別の道に行こうとした。

 

和人「大地!」

 

和人が大地を呼び止めると、大地は足を止めて振り返る。

 

和人「お前も過去を背負っているのか?」

 

大地「ああ、背負ってるぜ。お前よりも罪深い過去を。」

 

それだけ言い残して、大地は夜の闇へと消えた。

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デュオ視点

翌日、俺はGGOにダイブした。

和人は安岐さんと少し話してからダイブするとのことで、後で合流することになった。

ダイブ直後にドレビンからあるもの≠受け取ってから、総督府の前に戻る。

するとそこには、シノンがいた。

 

デュオ「ようシノン。早いな。」

 

シノン「今日はちょっと余裕を持って入ったから・・・」

 

デュオ「余裕持ちすぎだろ・・・あと3時間はあるぜ。」

 

シノン「あなただってもうダイブしてるじゃない。」

 

デュオ「今日は((GGO|これ))しかやることがないんだよ。」

 

シノン「暇な人。」

 

デュオ「悪かったな。それより、ちょっと情報交換しないか。いくつか訊きたいことがあるんだ。」

 

シノン「・・・本当なら断るんだけど、いいわ。私もあなたに訊きたいことがあったし。」

 

俺はシノンの行きつけの店というNPCが経営する酒場に入る。

今の時間からダイブしてる奴は少ないのか、ほとんど人がいなかった。

 

デュオ「さっそくなんだが、シノンは前回の大会は出てたんだよな?」

 

適当に飲み物を頼んでから、俺はシノンに問う。

 

シノン「ええ。順位はあんまりよくなかったけど。」

 

デュオ「その時の出場者の名前って覚えてるか?」

 

シノン「ええ。ていうか、BoBも3回目だから、ほとんどの人は顔見知りかな。」

 

デュオ「じゃあ、今回初めて見る名前の奴は何人いる?」

 

シノン「そうね・・・」

 

シノンはメニューウィンドウを開き、選手三十人の名前を列挙したページを開くと他人にも見えるモードに変え、肩を寄せてこちらにも見えるようにした

 

シノン「・・・あなたたちを除くと3人だけ。」

 

デュオ「何て名前の奴だ?」

 

シノン「【銃士X】と【ペイルライダー】、それに・・・あとは・・・これはスティーブンかな?」

 

シノンがぎこちなく読み上げた名前を確認する。

【Sterben】そこにはそう書かれていた

 

デュオ「ステルベン・・・」

 

俺が呟くと、それを聞いたシノンが訊ねてくる。

 

シノン「ステルベン?そう読むの?」

 

デュオ「ああ・・・これはドイツ語だ。」

 

シノン「訳すと、どういう意味の言葉なの?」

 

デュオ「う〜ん・・・俺もドイツ語はよくわからないけど、日本の医療用語で死≠意味してる。」

 

シノン「死・・・」

 

シノンがつぶやくと俺たちの間に沈黙が走る。

俺はテーブルに置かれたジンジャーエールのグラスを持ち上げ、一気に飲み干す。

すると、突然シノンが訊いてきた。

 

シノン「で、結局あなたは何を知りたかったわけ?」

 

デュオ「いや、もう分かったからいい。」

 

シノン「何よそれ!ちゃんと教えなさいよ!」

 

デュオ「注意すべき相手が分かったってことだよ。」

 

シノン「なんだ、そういうこと。」

 

デュオ「教えろって言っておいて、なんだってなんだよ・・・まあいいか。それより、シノンも俺に聞きたいことがあるんじゃなかったか?」

 

シノン「ああ、大したことじゃないんだけど、あなたのその銃、いったいどこで手に入れたの?M82なんてコンバートしたての人が手に入れられるようなものじゃないでしょ?」

 

デュオ「ああ、そんなことか。知り合いにちょっとした武器商人がいるんだよ。」

 

シノン「ふ〜ん、そうなんだ。」

 

デュオ「シノンって、訊くときは積極的なのに、返すときは適当だな・・・」

 

シノン「ねえ、今度その人の店紹介してよ。」

 

デュオ「聞いてないし・・・まあ、いいぜ。ただし1つだけ条件がある。」

 

俺の言葉に、シノンは一瞬警戒するような視線を向ける。

 

シノン「どんな条件?」

 

シノンの言葉に、俺はニヤリとしてから答える。

 

デュオ「BoBに優勝すること。」

 

すると、シノンは一瞬驚いてから、挑発的な表情で返してきた。

 

シノン「それなら問題ないわ。絶対優勝するから。」

 

そう言うと、シノンはグラスからコーヒーを飲み干した。

 

シノン「そろそろ、待機ドームに移動しないと。装備の点検やウォーミングアップの時間がなくなっちゃう。」

 

デュオ「もうそんな時間か。よし、行くか。」

 

俺とシノンは立ち上がると、待機ドームへと移動した。

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コメント
遼東半島さんへ 大地(デュオ)は、和人(キリト)ことを、相棒であると同時に弟のように思っているので、家族のような接し方をしています。(やぎすけ)
前から読んでいて思っていたことなのですが、デュオは温かく時には厳しくキリトを支えているのですね。こういった関係はなんかほっこりきますね。(遼東半島)
本郷 刃さんへ 大地は和人よりも殺した人が多い上に、ある悲惨な過去を持っています。それ故、たまに年上(兄)のような接し方をするが時あるのです。これからどうなるかは本編で(やぎすけ)
大地にも和人にも、人を殺した過去がある・・・それをどう受け止めて、どう背負うかが問題なんですよね。そしてステルベンに気が付きましたか・・・さて、どうなることやら?(本郷 刃)
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