SAO〜黒を冠する戦士たち〜 第百九十二技 消えゆく世界の中で
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第百九十二技 消えゆく世界の中で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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キリトSide

 

「ん……!? ここ、は……俺は、一体…?」

 

ふと意識を取り戻した俺は眼を開けてみると、一面には夕焼けが広がっていた。

 

俺の視線の先には、下層から徐々に崩壊していくアインクラッドが写った。

 

そして、先程までの激闘と戦いに勝利したことを思い出した。

 

「そうか……俺は、やったんだな…」

 

「その通りだ、キリト君」

 

「茅場、晶彦…」

 

俺から少し離れたところに、茅場晶彦が現れた。

 

その身は真紅の鎧と白のマントに身を覆ってはおらず、白いシャツにネクタイを締め、白衣を纏っている。

 

「中々に絶景ではないか…」

 

「どういう状況なんだ、アレは」

 

「データの完全消去作業を行っている。あと二十分もすれば、全てが消滅するだろう」

 

「そうか……みんなは?」

 

「安心したまえ…先程、生き残った全プレイヤー6937人のログアウトが完了した。時期に目を覚ますだろう」

 

それを聞いて、アスナと仲間達の無事にホッと胸を撫で下ろした。

 

再び崩れゆくアインクラッドへと目を向ける。いまは大体10層に到達したくらいだろうな。

 

「やはりこの世界で死んで逝ったやつらは、向こうでも?」

 

「ああ。人の命は、簡単に扱うべきものではないからね。死者が消え去るのは、どこの世界でも同じことだよ」

 

「……そうだな。命は、なんにだって一つだ。

 だからこそ人は、その一度の生を苦しくとも、汚れようとも、必死に生きようとする…」

 

「以外だね。キミがそんなことを考えていたとは…」

 

「俺が奪った命も、数多いってことだよ…」

 

「なるほど」

 

俺達は崩壊していくアインクラッドを見つめながら、苦笑を浮かべて会話をする。

 

そこで俺は、22層の自宅を見かけた。愛するアスナと共に過ごした場所に思いを馳せた。

 

それでも俺は自身の心の内を語る。

 

「……茅場。俺はお前がやったことは許されることじゃないと思う。

 1万人もの人間を巻き込んで、3000人もの人間を死なせたからな。

 でも……俺はお前がやったことは、やり方はともかく決して間違えているとは思わない…」

 

「ほう…」

 

「今の人間は、ゲームだからと簡単に命を蔑ろにしようとする。

 失敗したからデータを消す、ゲームの中だから命を奪っても問題無い、そんな奴らが多い。

 命を粗末にしすぎている……まぁ、『狩人』の俺が言えたことじゃないがな…」

 

「だが、キミ自身が自分の行いを正しいと思わず、正義だと思わない。それに悪にも染まらない。

 キミは、非常に人間らしいと思うよ」

 

この口ぶりからして、俺が狩人であることを知っていたな…。

 

「先に言っておくが、私はキミ達が『嘆きの狩人』であることは知らなかった。あくまで、予想していただけだよ」

 

「どうだかな…」

 

話しを続ける俺達の傍ら、アインクラッドは既に30層まで崩れている。

 

「何はともあれ、アンタがやった行いは、どの世界においても命の重さを知らしめることになったわけだ。

 特に、俺達という新世代にな」

 

「確かに。予想できなかったわけではないが、僥倖といえるかもしれない」

 

「もし、アンタがこのデスゲーム始めなかったら、俺がやっていたかもな」

 

「……これは驚いたな。まさかキミがそんな考えを持っていたとは…」

 

「俺だって人間だ、歪むところもある……ま、この世界で俺を支えてくれた仲間や出会った奴ら、

 なによりも…アスナのお陰で、変わる事も、変わらない事も出来た」

 

「こんな時でも惚気てくれるね、キミは…」

 

呆れられてしまった。いいだろう、最後くらい…。アインクラッドの崩壊は40層に達した頃だった。

 

「いいな、この世界は……夢であり、((世界|げんじつ))そのものだった…」

 

「解るかね?」

 

「ああ…」

 

「私はこれを目指していたのだよ。

 だが、私は今でも、どこか別の世界にこの城が本当に存在すると……信じているんだ…」

 

「そうだといいな……いや、あるさ、きっと。アンタや俺が、在ると想い続けていれば…」

 

「そうだね、そう信じよう…」

 

俺と茅場の、夢想へと馳せる想いは同じなんだろう。

 

「似ているな、俺とお前は…」

 

「確かにそうかもしれないね。

 キミは科学者に向いているが、同時に一人の武人にも、それ以外の数多の可能性にも道が続いていそうだ」

 

「そういう風に鍛えられたんだよ」

 

「ははは、そうか……キリト君、キミは私にとって最大の敵であり、最高の理解者なのかもしれないな」

 

「(くすっ)同感だな…」

 

アインクラッドの崩壊は、半分の50層にまで至ったようだ。

 

空の上の透明な床に座る俺と立ちながら景色を眺める茅場。そういえば、聞きたいことがあったんだ。

 

「なぁ、茅場?」

 

「む、なんだね?」

 

「お前にも、大切な人がいたんじゃないのか?」

 

「………はっはっはっはっ、まさかそこまで見破られるとは…。

 まぁ、私のような人間には、勿体無い女性だよ。いつも、迷惑ばかりかけてしまった……今回も、な」

 

アスナが俺の後を追うのでは?と、奴は決闘の時に言い、その時に微かに翳りを見せたからな。

 

それでなんとなく気付いたんだよなぁ。

 

「……お互い、良い人に見初められても迷惑しか掛けられないのかもな…」

 

「そこは言わないのが大人というものだよ…」

 

「まだまだ((子供|ガキ))なんでね……それに、死にゆく人間の戯言にも付き合ってやらないとな…。

 死ぬ気だろ、アンタ」

 

「っ!?……本当に恐ろしい少年だな、キミは…。

 まず、私の肉体は確実に死ぬだろう。脳にスキャニングを行うことで、私の脳は焼き切れることになる。

 勿論、非常に高い確率で失敗するだろうし無駄死にということになるが、

 成功すれば私の意識の残像、エコーは『ある物』に宿り続ける…」

 

「((ある物|・・・))…?」

 

「生憎と、成功していない今は何か言えないが……キミがVRMMOに関わっていれば、すぐにわかるさ」

 

「なら、その時を待つか……って、俺って生きられるのか?」

 

「おっと、そういえば言っていなかったな……ゲームクリアおめでとう、キリト君」

 

その言葉を聞いただけで理解できた。そうか、俺は生きていられるのか…。

 

再び、アスナと共に過ごす事が出来ると思うと、胸の奥が温かくなった。

 

特に話すことも無くなり、俺達は無言のまま60層に到達したアインクラッドの崩壊を見つめる。

 

「………っ!?」

 

その時、俺は((それ|・・・))を感じ取った。バカな、これから何が起こると!?

 

「茅場、今すぐプログラムやシステムを確認しろ! 何かが…!」

 

「噂に聞く『嫌な予感』というやつだね。分かった、すぐに行おう」

 

茅場はすぐさまウインドウを開き、それらに目を通していく。すると…、

 

「何者かが、一部のプレイヤー達の意識プログラムをハッキングで強奪しようとしている!? 内一人は、アスナ君だ!」

 

「なっ!?」

 

「このプログラムは……須郷、キミか…!」

 

そんな、アスナが……。

 

「な、なんとかできないのか!?」

 

「人数は300人。彼の実力は私並だ、全てを救う事は出来ない。仮にアスナ君だけを助けたところで、他の者達は…」

 

「くっ……」

 

なにかないのか…!? アスナを助けて、他のやつも助ける、そんなことが……待てよ…?

 

「茅場―――――ということは出来るか?」

 

「出来ないことはないが、一人が限界だ。どうするつもりだね?」

 

「俺の――をアスナの――と―――――ほしい」

 

「っ!? まさかキミは…」

 

「ああ、お前の考えている通りだ。救ってみせるさ、今度こそ…」

 

「……分かった。手伝ってもらえるかな?」

 

「任せろ」

 

俺と茅場の前にコンソールが現れた。俺は茅場の指示に従い、可能な限り高速で打ち込んでいく。

 

一方茅場は俺以上の速さで打ち込み、俺に指示も出していく。

 

人を化け物みたいに言っていたが、お前も十分に化け物だよ…。

 

「「これで、終わりだ!」」

 

―――パシュゥゥゥン!

 

そして、俺達の作業は終わりを迎えた。これでアスナは大丈夫だろう…。

 

既に崩壊は90層まで到達したようだ。ほとんど残っていない。

 

「キリト君。私の運が良ければ、またすぐに会えるかもしれないが…健闘を祈る…」

 

「アンタも、上手くいくように祈るよ…」

 

茅場は俺よりも先に姿を消した。そしてアインクラッドの崩壊が完了した。

 

「また会おう、『アインクラッド』…」

 

そこで俺の意識は完全に途絶えた。

 

キリトSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

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後書きです。

 

本編においては今までで、一番長い話しだったので書く時にかなり混乱しました。

 

支離滅裂なような気もしますし・・・ま、いいですよねw(オイッ!)

 

というわけで、キリトが一手打ちました。

 

予想できる人がほとんどだと思いますが、一応暈かしておきました。

 

それでは、次回の最終話と後書きで・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
第百九十二話です。
キリトと茅場の対話の話しです・・・本編では今までで一番長い話しになっています。

どうぞ・・・。
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コメント
lightcloss様へ 脱字の報告をありがとうございます!(本郷 刃)
今気付いた。キリトの台詞の「似ているな、俺と前は…」ここ、おが抜けてる…。(lightcloss)
アサシン様へ 物語は・・・続く!(本郷 刃)
偽りの王を打ち取り英雄王を救い出せ!黒衣衆!!(アサシン)
サイト様へ 確かに妖精王(笑)ではどうにもならない無理ゲーになりますねw(本郷 刃)
遼東半島様へ この作品では特にキリトと茅場の立場が違いますからね、キリトはやってくれますよ!(本郷 刃)
こらこらキリトさんや、直感(A)スキルを働かせすぎwただでさえ無理ゲーをしようとしている妖精王(笑)が可哀相じゃないかwww・・・難易度 須郷Must Dieはいりました〜須郷さんどうぞお楽しみくださいwww(サイト)
キリトと茅場の関係は原作もそうですが宿敵であっても決してそれだけではない不思議な関係ですね。そして、自分を犠牲にしてでもアスナを救おうとするキリト、ホント男!ですね(* ̄∇ ̄*)(遼東半島)
RevolutionT1115様へ ハッハッハッ、よく分かっているじゃないですかwww(本郷 刃)
どっちにしろバーサーカーアスナさんの誕生はやむを得ない気が…(RevolutionT1115)
不知火 観珪様へ んなことしたらアスナがバーサーカーと化しますよ?(本郷 刃)
茅場さん…… とりま、須郷くんが病室で寝ているキリトくんに婚約を申し込むとかいうwwな展開が来ないことを祈ります←(神余 雛)
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