真・金姫†無双 #9 |
#9
「いやー楽しかった。マスター年甲斐もなく頑張っちゃったよ」
「若造が何を言うておる。だが強いな、ますたぁは。今度は弓で勝負させてもらおう」
「ますたぁさんって凄いんですねー」
祭ねーさん――試合後に真名を受け取った――との勝負を終え、燭台を元にもどし、火を確認して店内へと戻る。穏たん――真名は(以下略)も感心してくれた。
「あ、あちゅかんお待ちでしゅっ!」
「おう、ありがとう鳳統ちゃん……っであぢぢぢぢぢぢぢぢいいいっ!?」
「あわわっ!?」
店内へ戻れば、俺がいなくてもしっかりと切り盛りしている2人が……。
「はやや、焦げちゃいました!?えっと、んと…これはますたぁのお夜食に……」
「亞莎さぁん!お水くださいぃ!」
「えっ?あ、はい、今すぐに……って、お鍋に落としちゃいました!?」
2人が……。
「雛里ちゃん、3番さんに鶏唐!」
「あわわっ、骨が突き出てましゅ!?」
「はややややや…………」
……。
「ますたぁ、酒の追加を貰おう……ますたぁが準備した、な」
「穏もネギマを塩で2本です……ますたぁが焼いたのでぇ」
「……亞莎、雛里」
「あ、ますたぁ!!」
「ふぇぇええん!」
とりあえずは、
「お前ら減給な」
「はやっ!?」
「あわわゎわ……」
この惨状をなんとかしよう。
「穏はもうお腹いっぱいですぅ」
「そうか?儂はまだまだ飲みたいがのぅ」
泣きついてきた亞莎と雛里んを慰め、仕事に戻る。穏たんはもう食べられないようで、お腹をさすりながら食後のお茶を啜っている。祭ねーさんはまだ飲みたそうだった。
「ほら、ねーさん。相手がもう満腹だってのに、1人で飲むのもつまんないっしょ。締めの1杯は如何かな?今日はサービスしとくよ?」
客もまばらになった店内を、亞莎と雛里が交代で給仕する中、俺もある程度の片づけをしつつ声を掛ける。
「締めの1杯とな?別の酒か?」
「違う違う。ほら、あっちの卓のおっちゃんが食ってるだろ。新作の麺料理さ。この店でしか食べられないぜ?酒が八分としても、あれを食っちまえば満足する事間違いなしだ」
「ほぅ、それは楽しみだな。それに、折角のますたぁの厚意だ。無下にする訳にもいかん」
「うぅ…此処だけなら、穏も食べてみたいです……」
「少し分けてやるから、無理はするな」
「はぁぃ」
そんな遣り取りを聞きつつ、俺は昼間に作った蕎麦のラスト1玉を茹で始める。その間に丼を温め、汁を注げば麺がゆで上がった。水気をよく切って汁に入れ、ネギと茹でた鶏肉、それから刻んだ唐辛子を振りかけて完成だ。
「へい、お待ち。締めのお蕎麦だよっ」
「ほぅ、これはなかなかよい匂いだ……さて、まずはひと口」
「早くっ、祭様早くっ」
満腹の穏たんでも、出汁の匂いに刺激されたらしい。祭ねーさんがまず箸を取ったが、待ち切れない様子だ。
「ずず、ずずずっ……これは」
「どうですか、祭様ぁ?」
ひと口啜ると、祭ねーさんは目を見開く。穏たんは急かす様に、行儀悪くも箸で器をカチンカチンと叩いている。落ち着きなさい。
「すまぬ、穏…」
「ほぇ?」
「これほど危険なものを、お主に喰わせる訳にはいかぬ」
「え?」
何の事かと、穏たんが首を傾げたその瞬間。
「ずずっ、ずずずるるっ――――」
「あぁぁああぁあぁあぁあああああああああああああああっ!?」
「はややっ!?」
「あわわわわ……」
昇り立つ湯気も、麺の熱もなんのその。祭ねーさんは勢いよく丼を傾け、息つく暇もなく、その中身を減らしていく。穏たんの悲鳴が店内に木霊した。
「――ぷはぁっ!美味かった!」
「祭様酷いですぅ!」
麺ひとつ、((汁|ツユ))の1滴も残す事なく、祭ねーさんは蕎麦を平らげる。いいねぇ、作り手冥利に尽きる。
「どうだい?初めての味だろう?」
「あぁ、確かに、これは締めの1杯ぞ」
「……あ、あぁ」
ねーさんから丼ついでに空いた食器を受け取り、溜めた水桶に突っ込む。洗剤欲しいなー。
「それより、本当にお主が開発したのか?」
「もともと材料の作物自体は、大陸の北部にあるんだけどね。ただ、この使い方は俺が初めてだろ、たぶん」
「ほぅ、お主は武だけでなく、料理の腕も達人級であったか」
「う、うぅ…」
「それは最初から分かってただろ?」
「まぁな」
そう言って笑い合う俺とねーさん。さて、そろそろ穏たんの方をフォローしとかないと――
「う、ひっく…うぇぇぇえええええええん!」
「「!?」」
――と思った瞬間、穏たんが盛大に泣き始めた。
「ど、どうした、穏?」
「ひ、酷いです、祭様ぁ…っく、えぐ…ひと口くれるって言ったのにぃ……ひっく、うっぐ……ひっ、ひと口、だ、だけでもぉ、良がっだのにぃ……うぇぇええええん!!」
「あーあ、やっちまったな、ねーさん」
「儂の所為か!?」
「ぶぇぇええええええええええん!」
「あ、あぁあ……」
「どう考えてもそうでしょ。仕方がないなぁ」
オロオロとするねーさんは放置して、俺は洗い場からカウンターへと回り、穏たんの隣の席に腰を下ろす。
「うわぁあああん、まずだぁぁあ……」
「よしよし、いい子だから泣かない泣かない」
泣きついてくる穏たんの豊満な身体を抱き締め(役得)、頭を撫でてやる。いやぁ、柔らかいなぁ。
「祭様が酷いんでずぅ…うぇぇええん」
「知ってるよ。ホントに酷い人だよな」
「おいっ!」
聞ーこーえーなーいー。
「穏たんはちゃんと待ってたのにな?」
「はいぃ…ひっく……」
「そんないい子の穏たんには、ますたぁ特製の((甘酒|カクテル))を御馳走してあげよう」
「ぇぐ、ほっ、ほんとー、でじゅかぁ?」
「あぁ、ちょいと待ってな。いい子にしてろよ?」
「はぃ……」
「……」
重たいオーラで凹んでいるねーさんは放置して、俺は調理場に戻る。燗した酒と蜂蜜を1対1で混ぜ、残りは蜜柑の果汁。炭酸水があれば1番いいんだが、そんなものはない。無いが、泣く子と蟻には甘い物が必要なのだ。
「ほら、これでも飲むんだ。落ち着くぞ」
「あ…暖かいでしゅ……それに、甘くて美味しぃ」
「落ち着くだろ?」
「はぃ…」
チビチビと蜜柑酒を飲む穏たんは、このままで大丈夫だろう。さて、今度は祭ねーさんのケアだ。
「反省したかい?」
「む…そうだな、儂が悪かった……」
あれだけ取り乱した相手を見れば、思うところもあったのだろう。申し訳なさそうな顔で、項垂れている。
「まぁ、美味そうに食べてくれたのは嬉しかったよ。という訳で、コレ」
「……なんじゃ?」
「今日の伝票」
「あぁ、そろそろ店仕舞いか。さて、いくらか、の……」
竹の札に、本日の注文内容と値段を書いて渡す。普段はこういう事はしないが、今日ばかりは別だ。
『酒 二十 〇〇
串 四十 〇〇
煮込み 二 〇〇
加 卵 一 無料
((焼麺|ヤキソバ)) 一 〇〇
野菜炒 一 〇〇
奉仕代 一 〇〇〇
計 〇〇〇也』
「……のぅ、ますたぁよ」
「ん?」
「この…飛び抜けて高い『奉仕代』とは、いったいなんだ?」
「そのまんま、俺が奉仕した分の代金だ」
「……ぼったくりではないか?」
「まさか。さっき勝負しただろ?」
「……えっ、アレ?」
なんだよ、もう忘れたのか、この酔っ払いは。
「あぁ、ちゃんと前々回の最後で言ってるじゃん。『ちゃんと今日の分の料金を支払ってくれる事』って。穏たんも聞いたよな?」
「ぐすっ、聞きましたぁ……」
「穏っ!?」
くくく、穏ちゃんは証人だぜ。それも、こっち寄りのな。
「嘘と思うなら、周瑜ちゃんにでも確かめてみな。『奉仕代』なんて払ってない、って言うから」
「駄目ですよ、祭様ぁ。孫呉の宿将が、踏み倒すとか白を切るとかしたら」
「そ、そんな事はせぬわ!……それより穏よ、今日は手厳しいな」
「食べ物の恨みは恐ろしいんですぅ。ね、ますたぁ?」
「くぅっ……ますたぁよ、もう少し、まからぬか?」
「だってその時間、俺は働けなかったんだよ?仕方がなく亞莎と雛里に店は任せたけど、あんな事になっちまったからな」
「はややっ!?」
「あわわ、ごめんなさぃ……」
「あぁ、別にお前達は悪くない。強引なお客さんの相手は、マスターの仕事だからな」
客もいなくなり、片づけもカウンター以外を終えた2人が、泣きそうな瞳で反応する。可愛いなぁ、もう。
「あのあのあの、えっと……」
「ご、ごめんなしゃぃ、お客しゃまぁ……」
「ぐっ……」
うるうると瞳を濡らす2人の少女たちに、祭ねーさんもたじたじだ。落ちたな。
「うぅぅ……あー!もう分かった、分かった!払ってやろう!」
「さっすがは祭ねーさんだ!」
「祭様、気風がいいですぅ」
「「わー!」」
「仕方がないのぅ」
俺と穏たんの賛辞、亞莎と雛里の拍手に、ねーさんは満更でもないようだ。懐から財布を出して、支払いを済ませ――
「……穏よ」
「はぁぃ」
「次の給料日は、何時だったか?」
「えっとぉ、次は4日後ですねぇ」
「ますたぁ……4日後でも良いか?」
――る事が出来ないようだ。ま、いいだろ。
「いいよ。はい、これ証文ね」
「……用意がいいな」
「商売人なもんで」
祭ねーさんはブツクサ言いながらも、しっかりと署名をしてくれる。黄公覆。やっぱりあの黄蓋だよなぁ……。
「――今度は勝負なしで来るぞ」
「穏は、今度こそお蕎麦を食べたいですぅ」
「あはは、今回しっかり払ってもらうからな。次来た時は、たくさんオマケするよ」
「是非頼むぞ!」
「それでは、おやすみなさぁい」
「「「ありがとうございましたー!」」」
祭ねーさんと穏たんを見送り、下げ忘れていた暖簾を片づける。
「さて、テーブル席は2人のおかげで終わってるし、カウンターも終わらせちまったからな。今日はもう上がりだ」
「はーい」
俺の号令に亞莎は頭の三角巾を外す。だが。
「あ、あの……」
「ん、どうした雛里ん?」
「どうしたの?」
雛里が申し訳なさそうに手を挙げる。
「私、その…寝床とかもなくて……」
「「……」」
俺と亞莎は顔を見合わせる。そして目と目で頷き合う。うむ、意見の合致は取れているようだ。
「大丈夫だよ、雛里ちゃん」
「あぁ、こっちは夜でも寒くないからな。風邪をひくこともないだろう」
「あわわっ!?」
「違うでしょ、一刀さん!」
おぉう、怒られてしまった。
「冗談だ。雛里はもう、俺達の家族だからな。ここに住めばいいさ」
「ま、ますたぁ……」
「おっと、今はもう閉店したぞ?」
「一刀さぁん…」
「よしよし」
「もぅ…一刀さんはふざけ過ぎですよぉ」
亞莎は苦笑しながら住居スペースへと移動し、俺も雛里を抱き上げ、灯りを消しながらそれについて行くのだった。
「ぁ、はぁっ…はぁぁ……」
「んんっ、ぁぅ…き、気持ちいいでひゅぅ……」
亞莎が気だるげな、それでいて満足感に溢れた吐息を吐く横で、俺が上下に動く度に、雛里が可愛らしく悩ましい声を上げる。
「ここがいいのか、雛里?」
「ひぅっ、んんぅぅぅ…ひゃぃぃ、そこがいいんでしゅぅ……」
「よしよし、もっとしてやろう」
「んっ…」
いや、ただのマッサージですよ?こんな幼女とあんな事やこんな事をするほど進退極まりない訳画はないし、そもそもが女の相手をする事が食傷気味な性活……間違えた、生活をしていたから、多少の事ならば刺激されない。え、さっきの穏たん?あれはエロスとはまた違った気持ち良さがある訳で以下略。
「――――よし、これでおしまいだ」
「みゅぅ…ありがとうございました……」
「ふふっ、気持ちよかったでしょ、雛里ちゃん?」
「はぁぃ…」
老廃物を血管に溶かし込むように、小さ身体全体に手を滑らせて、雛里のマッサージもお仕舞いだ。
「じゃ、今度は私達が一刀さんを気持ちよくする番だよ」
「は、ひゃぃ…」
「おー、頼むー」
亞莎が脚を、雛里が腰をマッサージしてくれる。うぅむ、役得役得。
「〜〜〜♪」
「んしょ、よいしょっ……」
鼻歌を口ずさむ亞莎と違い、雛里は一生懸命だ。というか、非力。
「雛里、キツイだろ?」
「い、いえ、そんな事は……」
「んー、雛里ちゃんは軽そうだし、乗っちゃえば?」
「……へっ?」
お、それは名案だ。亞莎は今後、ウチの参謀にしよう。
「よし、雛里。踏んでくれ」
「あわわっ!?」
驚く雛里。どうした。
「あの、その……」
「ん?」
「どうしたの?」
「一刀さんは、その…そういう趣味があるんでしゅか?」
「違ぇよっ!?」
「?」
耳年増な雛里んであった。
あとがき
そんなこんなで#9でした。
なんとか少しはギャグ方向に戻せたと思う。
#10は何かとキリがいいので、明日投稿してまた少し時間をもらうかも。
調子がよければずっと続くかも。
ではまた次回。
バイバイ。
説明 | ||
という訳で、#9。 亞莎ちゃんが可愛いです。 雛里んが可愛いです。 穏たんも可愛いです。 祭さんはおっぱいです。 どぞ。 |
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