IS x アギト 目覚める魂 33: 試運転と戦い
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授業を終わらせた放課後、屋上にて。一夏は簪の膝枕でゆっくりしていた。簪は一夏の頭を撫でている。恋人同士と言う味方もあるが、現在はどう見ても飼い主とペットの様にしか見えない。((一夏|ペット))がじゃれている様にしか見えないのだ。そんな中、一夏の携帯が鳴る。

 

「はい・・・・」

 

眠そうに電話を耳に当てる。相変わらず簪の膝からは動かない。

 

『私だ。今直ぐに第三アリーナに来い。門牙はもう来ている。更識妹も連れて来い。』

 

「何故に?」

 

『セカンドシフトしたお前達のISのデータ収集の為に他の代表候補達と模擬戦をして貰う。まあ、お前達の腕なら大して時間は掛からないだろうが。』

 

「分かった。すぐ行きまーす。」

 

電話を切るとズボンのポケットに携帯を押し込んだ。

 

「どうしたの?」

 

「呼び出しを喰らった。簪も連れて来いってさ。俺のISのデータ取る為に模擬戦するんだと。かったりぃー・・・・あ、そう言えば、簪の専用機出来たのか?」

 

「うん。一夏のデータを貰ったから、思った以上に速く終わったよ。」

 

「そりゃよかった。良しと、行こうか。」

 

「うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「秋斗。聞きたい事がある。」

 

箒は腕組みをしてアリーナの壁にもたれている秋斗に声をかけた。

 

「何だよ?」

 

「アンノウンの目的は、アギトである人間を殺す事だな?」

 

「ああ。」

 

「アンノウンが現れたのは、お前がここにいるからなのか?」

 

「俺と、後一夏と・・・他にも何人かいる。だが、俺達がここからいなくなった所で人が死なない訳じゃない。どこかしらで誰かが殺される事は確かだ。アギトの正体を探りたいのかどうかは知らないが、余計な事に首を突っ込んだらタダじゃ済まないぞ。少し飛んでみるか・・・・」

 

秋斗はネロが進化したデウス・エクス・ルーチェを展開、アリーナ上空に舞い上がって一零停止、イグニッションブースト等の基本動作から難易度の高い技までを一通りやった。やはりセカンドシフトしたからなのか、感度が良く、秋斗のイメージ通りの操縦が出来ている。再び降りて来ると、セシリアと鈴音が待っていた。

 

「秋斗さん。一夏さんは・・・やはり狙われ続けるのでしょうか?アンノウンに。」

 

「ああ。奴らを全滅させない限りな。」

 

心配そうなセシリアの質問に秋斗はにべもなくそう告げる。

 

「私達には・・・・何も出来ないって訳?」

 

「見ただろう?あの映像を。ISを使おうが無意味だ。奴らを倒せるのはアギト、そしてSAULが開発したGシリーズのパワードスーツだけだ。あれはISじゃなくてあくまで『モドキ』だからな。どんなに腕に自信があろうと、奴らに取っては障害にすらなりえない。只の人間を嘗めるな、と奴らに言ってやりたい所だが、人間は所詮矮小な存在でしかないのさ。」

 

悔しそうな顔をする鈴音には、自分は何も出来ないと言う言葉を贈る。

 

「秋斗さん・・・・はっきり聞くよ。あの時私達を助けてくれたのは、秋斗さんと一夏なの?」

 

「私もそんな気がしていた。何となく気配と言うか、雰囲気がどこか似ている気がしてな。どうなのだ?」

 

いきなり核心を突く質問に秋斗は思わず答えそうになったが慌てて口を噤んだ。ここで正体をバラすわけにはいかない。ここにはいない人物にも迷惑がかかる。

 

「だったら何だ?」

 

「もしそうなら・・・・・・お礼が言いたいんです。」

 

「まあ、またアンノウンが現れたら出来るんじゃないか?こっちとしちゃ現れない方がマシなんだがな。一々狙われてるんじゃこっちもヒヤヒヤするぜ。」

 

「お待たせー!」

 

「一夏か。随分ゆっくり来たな。」

 

「これでも急いだんですよ。」

 

「よし、ではまず織斑から始める。順番はオルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、鳳、篠ノ之、そして更識妹だ。」

 

管制室からの通信で千冬が指示を出す。

 

「私も混ぜてもらっていいかしら?」

 

「更識・・・・!まあ、良いだろう。最後尾に加わるが、それでも構わないか?」

 

「はい。」

 

どこからか楯無が突如現れた。手には『参戦求む』と書かれた扇子が握られている。

 

「私もセカンドシフトした二人のISに興味津々なの。だから、来ちゃいましたー。」

 

「何あの人?」

 

鈴音が首を傾げる。その際ツインテールが揺れた。

 

「あんなユルい性格のゆるふわガールでも学園最強の生徒会長だ。しかし、驚きだな。生徒会長御自ら出向いて来るとは。」

 

「生徒会長?!」

 

「何故そんな方がワザワザここに・・・?」

 

「俺達男とやり合いたいんだそうだ。」

 

「まあ、相手に取って不足は無いですね。」

 

一夏は白式を展開、アリーナに躍り出た。右手には雪片を握っている。セシリアもブルーティアーズを装着し、定位置に移動した。試合開始のブザーが鳴ると同時に飛び出した一夏は左手のクローを最大稼働し、振り下ろした。

 

「(速い!)くっ・・・!!流石は一夏さん、スピードは相変わらずですわね。ですが!」

 

ビット二つを切り離しながらスターライトmkIIIのスコープを覗いて一夏を捉えようと何発か撃つが、全て避けられてしまう。

 

「ほらほら、どうしたどうした!!??来いやぁああああああーーーーーーー!!!」

 

体全体が新たなワンオフアビリティー、((完全武装|フルイクイップ))によって鉤爪、鞭を生やしてセシリアに襲いかかる。必死にビットとライフルを使って撃ち落とすが、手数の差ではセシリアは圧倒的に不利だった。スラスター一つ一つでイグニッションブーストを放ち、複雑な軌道を描きながら接近した。雪平を振り下ろそうとしたが、緊急用の短剣、インターセプターがそれを阻む。

 

「私も・・・!!いつまでも昔のままではありませんのよ!」

 

ガシャン!

 

「この距離でミサイル!?」

 

「毒を食らわば皿まで。無茶苦茶な戦いは、一夏さんの専売特許ではありませんのよ!」

 

弾道ミサイルが直撃し、二人は爆発に包まれた。セシリアのシールドエネルギーは絶対防御発動の影響で半分程減っている。

 

「これで・・・・少しは利いた・・・・筈ですわ・・・・」

 

スターライトを再び構え直して次に備える。

 

「流石に今のは危なかったな。コイツの発動が遅れていたら、俺でもヤバかった。」

 

「なっ?!無傷・・・!?」

 

届かなかった。捨て身で放った渾身の一撃が、利いていなかった。

 

「私の様にAICが積まれている訳ではないのに、何故・・・?!」

 

ラウラはその現象の謎に顔を顰めた。

 

「見て!一夏のエネルギーが!」

 

「嘘・・・・回復してる・・・何よそれ・・・!?」

 

シャルロットの言う通り、一夏のエネルギーは零落白夜とイグニッションブースト発動によって減っている筈だ。だが、そのエネルギーはまるで最初から減っていなかったとでも言う様に満タンになっていた。

 

「俺のワンオフアビリティーだ。燃費の悪さと言う一番のネックが解消されたから良かった良かった。ここからだぜ。進化した俺の力・・・・見せてやる!ウォォォオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

一夏の気迫に押されて照準がズレてしまい、第一射を外してしまった。

 

「お返しだ!」

 

左手がクローからカノンに代わり、荷電粒子が放たれた。

 

「くっ!?」

 

ビットを引っ込め、再び回避するセシリア。今まで放ったエネルギー兵器の攻撃は悉く無効化されてしまった。元々零落白夜だけでも相性最悪だと言うのに、燃費の悪さが唯一勝つ為の道だった。だがそれすらも無くなってしまい、更にはエネルギーが何らかの方法で回復させる事を可能とする手段を手に入れてしまったのだ。

 

「今から俺は・・・・加速する。今まで以上に。だから、しっかり見ろよ。避けれるなら、避けてくれ。」

 

スラスターにエネルギーを限界に達するまで溜めて行き・・・・・・一つ一つを丁寧に解放した。一つ目の勢いが死ぬと二つ目、二つ目の勢いが死ぬと三つ目、全てのスラスターを使った((最大瞬時加速|マキシマムイグニッションブースト))でセシリアに接近した。ハイパーセンサーと言えど、最大速度が五十パーセント向上した白式・雪羅について行くには限界があったのか、まったく反応出来なかった。一夏はセシリアの後ろに現れ、残り少ないエネルギーを荷電粒子砲の一撃で削り切った。ISを解除されたセシリアを地面までゆっくりと下ろしてやる。

 

『勝者、織斑一夏』

 

「は・・・・速い・・・・!」

 

「ラウラ・・・・今の、見えてた?」

 

「ヴォーダン・オージェを使った。見えなくはないが、あの速度は異常だ。普通ならばあの様な無茶な飛行はGの影響で体に何らかのダメージがある筈なのだが、一夏にはそれが見えない。一度白式のデータを見せて貰ったが、ファーストシフトの時に比べると、速度は倍近く上がっていた。強敵だぞ。特に、ワンオフアビリティーが一つ以上もあるとなると・・・・」

 

「一夏、あのアビリティーは一体・・・?!」

 

「模擬戦を終わらせたらしっかり教えてやる。セシリア、大丈夫か?」

 

「ええ、大丈夫ですわ。流石は一組の筆頭ですわね。」

 

「俺は喧嘩が無駄に強いだけのガキだ。ごめんな、俺試合が始まると熱くなり過ぎ手加減を忘れちまうんだ。負けはしただろうが、成果は十分に見える。その調子で頑張れよ。俺も、たまには自主練付き合うから。」

 

「そのお言葉だけで十分ですわ、一夏さん。」

 

ポンと肩を叩いてやると、シャルロットとの対戦の為にアリーナに出た。

 

「次はシャルか。」

 

「負けないよ、一夏。」

 

「お前の相手は厄介なんだよな。ラピッドスイッチが俺は嫌いだ。あんなえげつない能力・・・・ま、言っても仕方無いか。」

 

試合開始のブザーと同時にシャルロットが動き出した。得意のラピッドスイッチを使った分厚い弾幕が一夏を襲う。最後にはグレネードが投入され、爆発が起こった。

 

「この程度じゃ利かない事は分かってるんだよ、一夏。さっさと煙の中から」

 

「もう出てるぜ。」

 

「え、うわあっ!?」

 

突如上空から振り下ろされる踵のクローに対し、ブレッドスライサーを使って防御する。一夏にダメージが通った様子は無い。

 

『ワンオフアビリティー:コキュートス発動』

 

ピシピシピシ・・・・パキキ、キン・・・!

 

「え?!嘘!ブレッドスライサーが、凍ってる!?」

 

更に、空気が冷たくなり始め、吐息が白いもやになって吐き出される。

 

「ようこそ。極寒のバトルフィールドへ!」

 

凍ったブレッドスライサーをパンチで粉々に砕き、カノンで撃ち、追い打ちに雪片で斬りつけた。使い物にならなくなったブレードを投げ捨てると、別の武装をコールしようとするが・・・・

 

「あ、あれ!?何で!?まさか別のアビリティー!?」

 

そう、光の粒子は漂うばかりで形を結ばないのだ。

 

『警告:システムに異常が発生。武装の展開が出来ません』

 

「アッロンディー!!」

 

雪羅のクローで一閃。更に雪片を投擲してエネルギーを削ろうとするが、楯で阻まれてどこかに弾き飛ばされてしまった。

 

「ヤベッ・・・」

 

フィーラーを伸ばして雪片を回収すると、再びそれを構えた。

 

「俺、強くなっただろ?」

 

「うん。本当に強いや。僕じゃ勝てないよ。」

 

シャルロットは頭を振って棄権を宣言すると、ピットに戻って行った。

 

「二人抜きか・・・・あいつ、中々やるな。」

 

ラウラは立ち上がってアリーナに出る。観客席にはいつの間にかギャラリーが集まっていた。戦闘の映像を携帯で撮ったりしている生徒、写真に収めている生徒もいる(主に一夏を)。

 

「いつの間に・・・・」

 

「私が呼んじゃった♪」

 

「何してくれてんだよ・・・・・まあ、いいや。とっとと始めよう。」

 

「私も、本気で行くぞ。」

 

眼帯をかなぐり捨てたラウラはシュヴァルツェア・レーゲンを纏って一夏の前に立った。

 

「使うか、それを・・・・待ってたぜ。」

 

「私も、この日をどれ程待ち侘びていたか。もう一度やり直そう。今度こそ、横槍無しの真剣勝負だ。行くぞ。」

 

「おう。来い!!」

 

「ウォォオォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

プラズマ手刀と雪片がぶつかり合って火花を散らす。鍔迫り合いになる所で、ラウラのレールカノン、雪羅の荷電粒子砲が火を噴いた。爆発の中から飛び出した二人は再び近接で渡り合う。

 

「凄い・・・・何と言う激しい戦いだ。一夏は、あそこまで強くなっているのか。」

 

箒は純粋に一夏の技量に驚いていた。

 

「流石は現役軍人ですわね・・・・特にラウラさんの機体は私とは相性最悪ですのに・・・」

 

「ラウラもそうだけど、一夏はあの目・・・・ヴォーダン・オージェって言ってたかしら?あれの反応について行けてるって言うのが一番の驚きね。人間の脳がハイパーセンサーと互角の反応を示す事が出来るなんて・・・・異常よ?」

 

鈴音は手に持っていたボトルを指でトントンと叩きながら試合から目を離さない。

 

「ラウラと初めて対戦した時はタッグだったからね・・・・今回はどうやってAICを回避するつもりだろう?」

 

「ウォリヤアアアア!!」

 

飛んで来る砲弾を空中で切り落として行き、爆発したそれのエネルギーが吸収されて行った。再びシールドエネルギーが回復する。

 

「くっ・・・・こうも厄介なアビリティーがあるとはな・・・・」

 

「人の事言えるか、AICがあるだろうがお前は。何故使わない。」

 

「お前と雌雄を決する為だ。あの時の私は弱かった。本当の強さをお前は教えてくれた。私が今まで育んで来た強さを見せる為だ。」

 

「良いだろう。じゃあ、俺もそれに敬意を表して零落白夜だけを使ってお前に勝ってやる。」

 

プラズマ手刀の出力を最大限に展開したラウラと、零落白夜を発動した一夏。イグニッションブーストで、真っ向からぶつかり合った。

 

「グルルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

獣の様に吠えて、ラウラの攻撃を押し切らんとする一夏。そして遂に・・・・

 

「勝者、織斑一夏!」

 

代表候補三人抜きを決めた。

 

説明
一夏&秋斗vs 専用機持ちの回です。
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タグ
仮面ライダー アギト IS インフィニット・ストラトス 

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