真・金姫†無双 #10
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#10

 

 

「うーん……」

 

さて、困った。竹の板に向けていた筆を鼻と口の間に挟みながら、俺は唸る。

 

「どうしたんですか、ますたぁ?」

 

声が掛けられた。亞莎はいま店の前を掃除している為、必然的に雛里となる。

 

「いや…なぁ……?」

「んょ?」

 

とてとてと寄ってきた雛里を抱き上げつつ、板をパタンと閉じる。見せても読めないし。

 

「何かお悩みですか?もしかしたら、その、私にも力になれるかもしれませんし……」

 

ふむ、やはり察しはいい。俺の行動が暗に、雛里は頼りにならないと言っているように感じたのだろう。表情が暗くなる。というか、頼る頼らない以前の問題でなぁ。

 

「それ以前、って?」

「あぁ。もう10話なのに、まったく話が進まないのもどうかと思って」

「……」

 

おっと、茫然としちゃった。だから言ったろ?それ以前の問題だ、って。

むにむにと雛里の頬で遊んでいれば、段々と瞳に涙が……んん!?

 

「ふ、ふぇぇ、役に立てなくてごめんなさぁあい!!」

「ますたぁ!また雛里ちゃんを泣かせたんですか!?」

「いや、そういう訳じゃ――――」

 

亞莎も姉役が板についてきた。飛び込みざま、箒を掲げて俺に睨みを利かせてくる。若干過保護なきらいもあるが……。

 

という訳で、今回もまったり行こうと思います。

 

 

 

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「おや、お久しぶりですね、孫策様」

「えぇ、ここのところ、ずっと立て込んでてね」

 

いつものように仕入れ――その間、亞莎と雛里は家で勉強をしていた――をし、いつものように店先で開店準備を進めている時の事だった。やって来たのは孫策ちゃん。何やら相談事らしい。

 

「本日はご予約で?いつものようにカウンターでいいですか?」

「あぁ、今日は違うわ。ちょっと借りたい物があってね?」

「借りたい物、ですか?」

「えぇ、お金は払うわよ?」

「いきなりですね。そいつはちょっと――」

「……」

 

最近は少しばかり仕入れの状況が悪く、また客足が遠のいていて売上も下がっている。商売になるならば何でも手を出したいと思っていたが、雪蓮ちゃんの無言の視線に、俺は何かを感じ取った。

 

「……中で話しましょうか。大事な商談です」

「えぇ、流石は北郷ね」

 

ガラリと引き戸を開けて、孫策ちゃんを中に招き入れる。

 

「あれ、雪蓮様、いらっしゃいませ」

「あわわ、雪蓮しゃまっ!?」

 

亞莎は慣れたものだが、雛里はいまだに緊張するらしい。まぁ、街のトップだから仕方がないのかもしれない。……いや、雛里の反応が普通なのか?

 

「さて、茶にします?それとも昼からお酒?」

「茶でいいわ、ありがと」

 

おや、珍しい。これはホントに、真面目な話のようだ。

 

 

 

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「――――さて、本当の目的は一体何だい、雪蓮ちゃん」

「やっぱり察しがいいわね。少しばかり言い出しにくい事なんだけれど、さ」

 

真名については、何度も通われるうちに祭ねーさんの時のように勝負をするようになり、その結果預けてもらえる事になった。流石に、勝負ごとに金を請求する事はしなくなったが。

 

茶を人数分準備して、亞莎と雛里は住居スペースにさがらせる。俺は残りの茶をカウンターに置き、ひとつ席を空けて孫策ちゃんと並んで座った。

 

「その前に聞きたいんだけれど……最近、どう?」

「どう、とは?」

「店の調子よ。儲かってる?」

 

これはまた恐ろしい事を聞くもんだ。

 

「……金貸しならやらないよ?」

「違うわよ。最近、調子悪いんじゃない?」

 

なんだよ、分かってんのかよ。

 

「……まぁね。仕入れもよくないし、売り上げも前より下がってる。でも、それが?」

「その原因、わかってるんでしょ?」

 

……そっちも分かってたか。

 

「そりゃ、居酒屋だ。商人の話だって、よく聞くさ……黄巾党、だろ」

「えぇ」

 

そう、黄巾党である。古代中国で後漢が滅びるきっかけとなった、大陸の安寧を脅かした賊の集団。雪蓮ちゃん達が頑張ってる為、長沙周辺ではそれほどの被害は出ていない。それでも、あくまで『それほど』だ。市場に並ぶ品物がその外側から来る事も考えれば、その影響は大きい。

 

「商談をするんなら、まずは外堀から埋めていくんだが……俺と雪蓮ちゃんの中だ。まどろっこしい事はなしにしようぜ。俺に何を求めている?」

 

核心に至るまでの過程も好きではあるが、今回はそれを楽しむ状況じゃない。雪蓮ちゃんの眼が言っている。

 

「察しが良くて助かるわ。簡潔に言う。手伝って欲しい。貴方を借りたいの」

「……」

「いまウチで武将を張れるのは、私と祭だけなの。兵の練度には自信があるけれど、それをまとめ、率いていけるような存在が、圧倒的に不足しているのよ」

「部隊長じゃ駄目なのか?」

「今言った、『まとめる』という部分なら問題ないわ。でも、率いて敵を倒せるか、って言うと、そうでもない。それが将軍と部隊長の違いよ」

「俺は素人だぜ?」

 

戦なんざ、経験した事ない。現代社会のぬるま湯に浸かってた、ただの金儲け好きな学生だ。

 

「でも強い」

 

言い切られた。

 

「……」

「それも、私や祭に並ぶくらいに」

「買い被り過ぎだ。本気を出されたら、手も足も出ない」

「私はそうは思わない」

 

おいおい、どこまで俺を高く見てるんだか……っと、軽く流すこともさせてくれない。真っ直ぐ俺の眼を見てくる。ここら辺りの振る舞いや威厳は、やはり王族という訳なのか。

 

「……悪い」

「……えっ?」

 

厨房の方で、蒸籠がカタカタ鳴っている。視線を向ければ、湯気が濛々と立ち昇っていた。

 

「……ちょっと、亞莎たちにおやつを渡してきてもいいか?」

「点心?」

「あぁ、餡饅だ。食べるか?」

「ん、欲しい」

「待っててくれ」

 

断りを入れて席を立ち、調理場に行く。蓋を開ければ、いい塩梅に蒸し上がっていた。

 

 

 

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「――お待たせ」

「いーえ。美味しかったわ」

「お粗末さん」

 

亞莎と雛里におやつの餡饅を届け、少しだけ話をして階下に降りる。雪蓮ちゃんは餡饅を食べ終えたところだった。

 

「ひとつ聞きたいんだが」

「答えられる事なら答えるわよ?」

 

茶をひと口啜って唇を湿らせ、俺は問いを発する。

 

「ん……なぜ、この時期なんだ?」

「え?」

「まだ奴らの活動は、雪蓮ちゃん達で抑えられない程じゃない。確かに度重なる賊討伐は精神的に堪えるものもあるだろう。だが、部隊長から将軍へと昇格させられそうな人材を育てる時間は、まだある。何故、今なんだ?」

 

俺の問いに、雪蓮ちゃんはまさに苦虫を噛み潰したかのような顔で答える。

 

「黄巾党を抜きにして……私達がどういう状況にあるか、知ってるでしょ?」

 

知っている。孫堅さんの死後、袁術に領地を乗っ取られ、今は客将として妹さん達とも離れ離れになっている。だが、いずれは――――。

 

「正解」

「散々愚痴ってたじゃん」

「まぁね。でも他の客が帰った後なんだから、愚痴くらい言わせてよ。他所じゃ言えないんだから」

「それも俺の仕事さ。……それで?」

「問題は、その『客将』って部分なの」

 

袁術の客将。『客』と言えば聞こえはいいが、言ってしまえば部下だ。それも、街ごと人質に取られた……あぁ、そういう事か。

 

「なるほど。袁術からの命令が増えてるわけね」

「やっぱり、一刀は凄いわね」

「店ではますたぁと呼びな」

「ふふっ、まだ開店してないじゃない」

「そういや、そうだな」

 

そう言って、軽く笑い合う。どんな時でも笑顔は大事だぜ?

 

 

 

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「一刀も言った通り、袁術から、アイツの領地に出て来た賊の討伐も命じられちゃってるの。私の領内だけなら私と祭、規模によっては穏でもいいんだけど、南陽の方まで出るのは、かなり厳しい」

「袁術の噂も聞こえてくるよ。相当にヤバい政治をしてるんだって?」

「あれを政治と呼べるなら、子どもの我が侭はみんな政治になっちゃうわ」

「そんなに酷いのか……」

 

実際に南陽の街の様子は見た事ないが、噂以上に暴政を敷いているようだ。雪蓮ちゃんの感情面も含んだ感想かもしれないが。

 

「袁術軍は、確かに多勢。でも、賊に向けられる回数も規模も、大したことないの。正直、よくもつ、というのが私や冥琳の率直な印象ね……話が逸れたわ」

「それで、俺に軍を率いて欲しい、ってか。……質問を重ねたいんだが」

「えぇ、どうぞ?」

 

彼女たちの状況はよくわかった。だが、いくつか聞かなければならない事もある。

 

「雪蓮ちゃんは、俺に『手伝って欲しい』って言ってたよな。って事は、黄巾党との戦いが落ち着けば、また店に戻れると解釈しても?」

「かまわない」

「そうか。じゃ、次。これが一番の問題なんだが……俺みたいな一般人が、いきなり軍で指揮をする事に問題は?」

「……へ?」

「ん?」

 

俺の質問に、これまでの真面目な雰囲気が嘘だったかのように、雪蓮ちゃんはキョトンとした顔をし、これまた真面目な雰囲気を吹き飛ばすかのように、次いで笑い出した。

 

「あっはははははは!何おかしな事言ってるのよ、一刀!」

「え?……えっ?」

 

それほど変な事を言ったのだろうか。雪蓮ちゃんはケタケタと楽しそうに大笑いし、お腹を押さえている。なんかムカつくな。

 

「ひーっ、お腹痛かった。あぁっ、ごめんごめん!謝るからそんな顔しないで?」

「別に怒っちゃいねーよ。それより、さっきのはどういう意味だ?」

「貴方ね、自分がどれだけ有名人で人気者か知らないの?」

「はぁ?俺がぁ!?」

 

そんな目立った事をした記憶はない。有名になるとしても、店の方だろ。

 

「お店もそうだけど、貴方もよ。考えてごらんなさい。ここには街の住人だけじゃなく、兵もくれば、私や祭のような武将も来る。貴方は、酔っ払いの相手とはいえ、軍の長たちと対等に話す事が出来て、武でも引き分けてる。噂が広まらない訳がないわ」

「マジか……」

「大マジよ。というか、ある意味私達よりも人気者かしら。男なのに、私たちと張り合えるんだもの」

「闘んなきゃよかった……」

 

思わず頭を抱えてしまう。そんなつもりはなかったんだよー。たまには身体を動かしたいと思って、そんで最初の方はお金を払ってくれてたから、俺も楽しかったんだよー。

 

 

 

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「――で、どうかしら?」

 

説明は終えたと、雪蓮ちゃんは聞いてくる。どう、って言われてもなぁ。

 

「もちろん、無料とは言わない。その間、武将と同じだけの給金は支払うし、亞莎や雛里の生活費も出してあげる。貴方が自分でも言ったように、貴方は徴兵に応えている訳ではない一般人。でも、相当の実力者。それだけの事はさせてもらうわ」

 

確かに、黄巾の乱が落ち着かなければ、店なんて出してもどんどんと売上が下がっていくばかりだ。だが、俺は知っている。いずれ勅命が下り、諸侯の合同軍が首謀者である張角を討ち取る事を。つまりは、待っていればこの状況も落ち着くのだ。

 

……歴史を知ってるってのも駄目だな。動きが縛られる。

 

でも。

 

「悪いが、断らせてもらうよ」

「理由を聞かせてもらっても?」

「…俺が、商売人だからだ」

 

そう、俺は商売人だ。戦なんて出来るようなタマじゃない。

 

「嘘ね」

「嘘じゃない」

「嘘よ。店長のとぉくは嘘ばっか」

「ひでぇ言われようだ……」

 

そんな風に思われていたのか。

 

「……なんてね。冗談よ。でも、その理由は、本当の理由じゃない」

「どうしてそう思う?」

「亞莎と雛里」

「……」

「あの娘たちでしょ?」

 

否定は、出来ない。

 

「なんていうかなー……」

「ふふっ、聞くわよ?」

 

畜生、こんな時だけ大人のおねーさんの笑みをしやがって。

 

「あら、いつも聞いてもらってるんだから、そのお返しよ。ほら、お姉さんに言ってごらんなさい。うりうり」

「だーっ!言うっ!言うから抱き着くな撫でるな頬擦りするな!」

「ケチー」

「仮にも王族だろ、アンタは。もっと節操を持ちなさい」

「『仮』じゃないわよ。本物だもん。で、どうなの?」

 

ったく、もっと自分の見た目とスタイルを自覚しろよ。あー、柔らかくて気持ちよかった。

 

「ま、雪蓮ちゃんの言う通りだ」

「あ、やっぱり?」

「茶化すな。止めるぞ」

 

俺は、観念して話し出す。そのくらいを話してもいいかなというくらいには、雪蓮ちゃんとは仲良くなれてると思うから。

 

 

 

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仕方なしに、俺は言葉を続ける。

 

「亞莎と雛里の境遇は、前に教えたと思う」

「えぇ。保護者と借金取り役やってるんでしょ?」

「まぁ、間違いではないな。亞莎に関しては、武将がどういうものか知る為にも、参加させてもいいと思うんだ。むしろ、俺が行くと聞いたら自分も行きたいと言い出しかねない」

「じゃぁ、雛里は軍師?」

「あぁ、頭がいいのは雪蓮ちゃんだって知ってるだろ?」

 

こないだも、冥琳ちゃんや穏ちゃんと対等に話してたし。

 

「頭がいいなんてもんじゃないわよ。少なくとも、私なんかじゃ相手にならないわ」

「俺だってそうさ。雛里も、あの実力なら文官としてもやっていけるだろう」

「文官?軍師じゃなくて?」

「雛里は軍師になりたい、って言ってるんだけどな」

「……そこに何かあるみたいね」

 

やっぱり、雪蓮ちゃんは鋭い。

 

「ほら、私の勘って当たるし」

「違いない。ま、そうだな。ずっと2人と過ごしてきてさ、思うんだよ。優し過ぎる、って」

「……」

「あぁ、そうさ。あの2人は弱虫で、泣き虫で、臆病で……それ以上に、凄く優しい娘たちなんだ」

「それは…えぇ、わかるかも……」

「そんな娘たちにさ、俺は人を殺させたり、殺す指示を出させたりするのか、って自問しちまうんだ。あの娘たちに、人を殺せるのかって思っちまうんだ」

 

そう、それこそが、俺を動かさない理由だった。

 

「優しいのね」

「あぁ、あの娘たちは優しいんだよ……」

「違うわ、一刀もよ」

「何処が優しい。ただ、あの娘たちに辛い想いをして欲しくないと言う俺の我が侭で、俺はあの娘たちを縛っているんだよ」

 

なんでこんな事言ってるんだろうな……って、それもわかってる。否定して欲しいからだ。こんな計算高い自分も、それに気づいている自分も嫌になって仕方がない。

 

「我が侭なんかじゃないわ」

「言ってくれると思ったよ。俺のどこが――」

「ねっ、貴女たちも、そう思うでしょ?」

「――えっ?」

 

同意を求める今の声は、俺に向けられたものじゃない。雪蓮ちゃんに釣られて視線を動かせば、奥につながる敷居から、妹2人が顔を覗かせていた。なんとも悲しそうな表情で。

 

 

 

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「うわぁああん、一刀さぁああん!」

「ふぇぇええええんっ!!」

「うぉわっ!?」

 

その2人が、涙をポロポロと零しながら抱き着いてきた。

 

「一刀さんは優し過ぎですっ、うぇぇええん!」

「わた、私、知りませんでした、ぇっく、そんなにわた、わたひっ、たちの事、想っててくれた、なんてぇ!ふぇぇえええええん!」

「あらあら、健気な妹ちゃん達ね。蓮華やシャオを思い出すわ……性格はだいぶ違うけど」

 

なに呑気な事言ってんだ、このねーちゃんは。他人事だと思いやがって。コラ、遠い目をするな。

 

「私っ、が、頑張り、ますっ!もっと、もっと強くなりますぅ!」

「私もでしゅ!だから、そんなっ、ひっく、悲しい事、言わないでぇ!」

「……」

「ほら、貴方が今するべき事なんて、ひとつしか無いでしょ、お兄ちゃん?」

「……恨むぞ、雪蓮」

 

分かってる……あぁ、分かってるよ。

 

「あら、初めて『ちゃん』ってつけられなかったわ」

「ちくしょう……あー、ほらほら、泣かないの。お得意さんの前だぞ」

「ひっく、えぐ、はいぃ…ぅぇぇええん」

「お兄ちゃぁあああん!」

「よしよし」

 

俺は雪蓮に恨みがましい視線を送りながら、妹達の頭を撫でるのだった。

 

 

 

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「落ち着いたか?」

「はぃ…」

「ぅん…」

 

亞莎たちをしばらく膝に乗せてあやしていると、ようやく落ち着きを見せる。というか雛里ん、呼称と口調が変わってるぞ。……可愛いからいいや。

 

「というかニヤニヤしてんじゃねぇ」

「ふふっ、いいもの見せて貰ったわ」

「人情劇じゃねーぞ、ったく」

 

雪蓮は雪蓮で微笑ましいと言わんばかりにニヤついてやがる。

 

「あの、一刀さん……」

「ん?」

 

そんな彼女を睨み付けていれば、胸元から亞莎が見上げてきた。どうした。

 

「一刀さんは、前に言ってくれました。私がなりたい自分になれ、って」

「……言ってたな」

「何かしたい事があるなら、全力で応援してくれる、て……」

 

あぁ、そうだな。

 

「だから、応援して欲しいんです」

「……」

「軍で戦って、私が何に成りたいのか分かるかもしれないし、分からないかもしれません。でも、それでも、何かを掴めると思うんです。だから……」

「あのあの、お兄ちゃん!私もですっ!」

「雛里……」

 

今度は雛里か。

 

「お兄ちゃんの優しさは、凄い嬉しいです。でも……私が勉強してきた事は、いま使わないといけないんです。借金は、ちゃんとお給金が貰えるようになったら払います。だから、私も……」

「一刀さん……」

 

2人にじっと見つめられる。潤んだ瞳が、これまた庇護欲を……そうではなく。

 

「雪蓮」

「なぁに?」

「さっきの返答だが、撤回する」

「あら、どうするのかしら?」

 

決ってるだろう?

 

「さっきの話、受けるよ。条件付きでな」

「言ってみて」

「俺を武将として使うなら、副官には亞莎をつけてくれ」

「認めるわ。むしろ、さっきの話を聞いたら、これが1番いいんじゃない?亞莎にとっても」

「はやっ?」

「で、どんな小さな討伐隊でもいい。雛里を軍師として、冥琳ちゃんか穏ちゃんにつけてやって欲しい」

「それも認める。なるほどね、貴方の考えは理解したわ」

「いい考えだろ?」

「えぇ」

「「?」」

 

まぁ、兎にも角にも、だ。

俺は雪蓮に向けて、雪蓮は俺に向けて、手を伸ばす。

 

「商談成立だな」

「よろしくね?」

 

がっちりと握手を交わす。さて、今夜は休業前セールだな。

 

 

 

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「あぁ、雪蓮」

「なぁに?」

「俺が店を閉める前に、ツケは払っとけよ。倍にするぞ」

「げっ……」

 

そんな、とある昼下がり。

 

 

 

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あとがき

 

 

まったりじゃないじゃん!全然まったりじゃないじゃん!

 

 

まぁ、話が急展開になるのはいつもの事。

 

 

という訳で#10でした。

 

 

序章『一刀くん、商人になる』編は、ひとまず今回で終わり。

 

 

次回から、『戦う商売人』編に行きたいと思います。

 

 

前書きにもある通り、一郎太は旅に出るので、しばし暇を。

 

 

ではまた次回。

 

 

バイバイ。

 

 

 

説明
#9にも王冠がついていた!

……何者かの陰謀に違いない!

という訳で、この世の悪を倒す旅に出かけてきます。

どぞ。

あ、支援ありがとうございました。
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コメント
結局戦っちゃうのかよ・・・商人であった意味が薄れちゃうじゃんか(彼方)
>>ヒトヤ犬 うわぁぁあああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!(一郎太)
>>★REN★様 俺だって呼ばれたいんだよ!(一郎太)
┌(┌^o^)┐ 「ふぇえええんん 一太郎お兄ちゃあああああんんん!!」 カサカサカサカサカサ(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
ひなりんにお兄ちゃんって呼ばれたい・・・(リンドウ)
>>駆逐艦様 ここにも変態がいたんだよ!(一郎太)
>>不知火様 #10.5あたりで食べてると思うよ!(一郎太)
>>アルヤ様 断固拒否なんだよ!(一郎太)
>>叡渡様 冥琳ちゃんと一緒の時はちゃんと払ってるんだよ!(一郎太)
>>デーモン赤ペン様 よくわからないんだよ!(一郎太)
>>スターダスト様 雛里んはまだ子どもだから、お兄ちゃんに憧れるお年頃なんだよ!(一郎太)
>>ゆぎわ様 とりあえず、次回までに全額返してると思うんだよ!(一郎太)
>>ロンリー浪人様 親衛隊はTINAMIの人たちのことなのかな?(一郎太)
>>アサシン様 まだ出番はないんだよ!(一郎太)
>>ゆっきー様 ここにも変態がいたんだよ!(一郎太)
>>IFZ様 いま#13まで書いてるんだけど、最初の方針とかけ離れてるんだよ!(一郎太)
>>八幡の蟹鍋様 このロリコン野郎が!なんだよ!(一郎太)
>>envrem様 適当につけた副題だから、次には忘れてるんだよ!(一郎太)
>>神木ヒカリ様 ゆっくり待ってて欲しいんだよ!(一郎太)
>>一丸様 次回もギャグにしたいんだよ!(一郎太)
>>きまお様 もうバレてる気がするんだよ!(一郎太)
>>ロドリゲス様 祭ねーさんも小遣いから引かれてるんだよ!(一郎太)
>>summon様 雛里んを可愛く描くだけなら、誰にも負けないんだよ!(一郎太)
>>本郷 刃様 この時代の通貨感覚なんて知らないんだよ!(一郎太)
>>匣様 お小遣いから少しずつ返してると思うんだよ!(一郎太)
>>殴って退場様 冥琳ちゃんにはとっくにバレてると思うんだよ!(一郎太)
>>D8様 目標は1週間なんだよ!(一郎太)
あいかわらず一郎太さんの作品はロリ分がいいな Yesロリータ!Yesタッチ!      あれ?(駆逐艦)
あいかわらずのツケかww 戦う商人編に入る前に穏たんに蕎麦をー!(神余 雛)
一郎太さん、旅のお供に漢女はいかがです?(アルヤ)
……何者かの陰謀に違いない! ←ゴルゴムの仕業だ!(デーモン赤ペン)
めっちゃシリアスで良い話wwwwww凄く面白いwwwwてか一刀への呼称がお兄ちゃんに変わったwwwあの二人と被る事に成らないと良いんだけどなwてかツケww桁で言うならいくつだ? あ、前回のコメントで言い忘れたんですけど、一刀の隠への愛称が昔の絵本を思い出させましたわw(スターダスト)
やっぱり雪蓮はツケていたのねw 払っていないだろうけど、これから細々した事で雪だるま式に増えていきそうだなww(ゆぎわ)
雪蓮……これは冥琳にばれて説教パターンだなwww あと雛里んの「お兄ちゃん」は反則でしょ。親衛隊が鼻血でぶっ倒れる絵が浮かぶww(ロンリー浪人)
これは呉ルートに行くのでしょうか?最後の一刀容赦ねぇ(汗) 風「一郎太さん、どこぞの暗殺者ではなく。風にお返事ください、でないと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(アサシン)
・・・・壁ω・)<雛りんの「お兄ちゃん」・・・・・・・・・・・・( ゚Д゚)・∵. ブハッ バタ(ゆっきー)
この後、一刀の妹2人があの様なことになるなど、思いもしなかったのでした。(IFZ)
雛りんが「お兄ちゃん」……だと……?なんて…破壊力だ…。(八幡の蟹鍋)
雛りんの「お兄ちゃん」は反則ですってwww 次回からの『戦う商人編』も楽しみにしてますね。(happy envrem)
次回から戦う商人編ですか。楽しみに待ってます。(神木ヒカリ)
おお〜〜ほのぼの編は終了ですか〜〜〜そして、次回からは殺伐編ですかあ〜〜〜ではでは、次を楽しみって旅に出るのはマジだったのかww・・・仕切りなおして、ではでは、次の話を楽しみに待ってます。(一丸)
つーかこのままだと呉の軍師密度が高くなりそうだなwそしてオチの額が気になるのは自分だけではないようだ・・・。これをネタにしてフリーダムさんとの交渉(脅迫?)を進めるんだろうな、断金にばらされたくなければ・・・とか言ってw(きまお)
ツケは相当でしょうねww祭もしていたら店一軒潰れそうですね(ロドリゲス)
卑弥呼ちゃんや貂蝉ちゃんはさすがにいらない……今回も「んよ」だったり「うん」って素直に頷く雛りんはかわいすぎました!(summon)
ツケの額が気になるのは何故だろうか・・・?(本郷 刃)
雪蓮さんのツケを冥琳さんは、知っているのだろうか?もし内緒ならば・・・(-_-;)(匣)
というより雪蓮…どれだけツケためているんだ…。冥琳や蓮華にばれたら説教ですまないだろうなwww。(殴って退場)
ついに商人が戦場に・・・・!雛りんのお兄ちゃんにニヤケが止まらないのはオレだけでは無いはず。帰還をお待ちしてるよー(D8)
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