真・恋姫†無双 〜我天道征〜 第22話
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注意 本作の一刀君は能力が上方修正されています。

 

   そういったチートが嫌い、そんなの一刀じゃないという方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

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【語り視点】

 

  ズリュ   ドサッ!

 

「一刀!一刀!一刀ーー!!」

「いやーーーーっ!!」

「そんな、嘘です、そんなことあるはず。」

「北郷、殿・・・・」

 

4人が絶望の声をあげる中、

 

「はははははははは。」

 

厳政だけは、愉快そうに笑っていた。

 

 

「な、何が、そんなに、可笑しいん、ですか!」

 

そんな不快な態度に、人和は厳政を睨みつける。

 

「いえいえ、あれだけ皆を助けるなど大口を叩いていたのに、それがこうもあっさりと。

 これが、笑わずにいられますか?」

「厳政!よくも、よくも、一刀、を、絶対、殺して、やるー!」

「一刀!一刀!一刀ー!」

 

そんな厳政の言葉に、地和は殺意をぶつける。

天和は、未だ一刀の名前を叫び続けていた。

 

 

しかし、どんなに怒っても、悲しんでも、自身の身体はまったく言うことを聞いてくれない。

殺したいほど憎い相手が、目の前にいるのに。

すぐにでも駆け寄りたい愛しい人が、倒れているのに。

指一本動かせず、ただ叫ぶことしかできないのだ。

 

「ふう、五月蠅い娘達ですね。そんなに大事な者なら、顔くらいは見せてあげましょう。」

 

そう言って厳政が片手を挙げると、趙雲が一刀から離れる。

そのまま厳政は3人を引き連れて、倒れたままピクリとも動かない一刀へと近づく。

 

 

「どういう、つも、りですか?」

 

厳政の不可解な行動に、人和がその理由を尋ねる。

 

「さっき言ったとおりですよ。貴方方には、大変お世話になりました。

 だから最後に、そんな愛しい殿方のお顔を見せて差し上げようという、私なりの優しさなのですが。」

「貴方、という、人は、どこ、までも、腐った、人間、ですね。」

「おやおや、お気に召しませんでしたかな?」

 

その問いへと答える厳政の顔は、ずっとニヤついていた。

それは、優しさなんて微塵もない。

一刀の死に顔を見せることで、3人がどんな反応をするか、それを見て楽しみたいという下衆な理由。

 

人和はその真意に気付くが、それに逆らうことはできない。

せめてできることといえば、恨み事を言うくらい。

そんな人和の言も、今の厳政にとっては、自信を楽しませる楽器の一つにすぎなかった。

 

 

「さてと。」

 

  ゲシッ

 

一刀へと近づいた厳政は、その体を蹴って、仰向けへとひっくり返す。

 

「「「!!」」」

 

そんな一刀を見て、3人は息をのんだ。

一刀の服は、ずっと水たまりに浸かっていたせいか、上も下も赤く染まっていた。

それとは反対に、その顔は青白く、生気がまったく感じられなかった。

 

 

「「「・・・・・」」」

 

3人は言葉を失った。

さっきまで怒鳴り散らしていた地和も、泣き叫んでいた天和も、皆が黙り込んでしまった。

信頼し、感謝し、本当に助けにも来てくれた、好意を抱いていた男性の、そんな姿に。

こんなの見たくないと目を逸らしたくても、操られ、その姿を見せ続けられる。

3人には、動かない一刀を見て、涙を流すことしかできなくなっていた。

 

 

「ははははは、いや、いいものが観れました。ありがとうございます、御三方。」

 

そんな絶望に打ちひしがれた3人に満足したのか、厳政はとても嬉しそうだった。

しかし誰も、もうそんな厳政へと何も言えなくなっていた。

 

「お礼に、御三方もすぐに、愛しい人に遭わせて差し上げましょう。」

 

それを合図に、3人が厳政から離れ、一列に並ばされる。

そして3人の前には、趙雲が。

 

「・・・それでは、これで終わりに致しましょう。」

 

そういって厳政が念じ始めると、太平要術の書が一際強く発光する。

 

 

 

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「そうだな、これで終わりだ。」

「「「「「えっ!?」」」」」

 

そして次の瞬間。

 

シュッ!  スパッ

 

厳政の手にあった太平要術の書が、真っ二つになっていた。

それに伴い、操られていた4人は、その呪縛から解放され、自由に動けるようになった。

 

突然の出来事に全員が驚く中、聞こえるはずのない、あの者の声が確かに聞こえた。

皆が、そんな声のする方へと視線を向ければ、

 

「夢じゃ、ない、よね。」

「良かった、良かった・・・」

「うそ、そんな・・・」

「ふぅ。さすがは、私の見込んだ御仁だ。」

 

白銀の刃を構えた、北郷一刀の姿がそこにあったのだった。

 

 

 

 

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一刀は何故無事だったのか?

少しだけ、時間は遡る。

 

【side 一刀】

 

「趙雲みたいな子が、この大陸には必要なんだ!死ぬなんて、駄目だ!」

「しかし、それでは!」

「それでもだ!天和も、地和も、人和も、そして趙雲も、みんな助ける!!」

 

そう、誰一人、見殺しに何かしない。

華琳と出会ったときに、俺はそう誓ったんだ。

 

 

「じっとしていて、もらいましょうか。

 麗しき友情ですか?美しいですが、愚かですね。

 ですが、もうこの余興も見飽きました。そろそろ、終わりにしましょう。」

「一刀。」

「くっ。」

「おっと、その武器も捨てて下さいよ。助けるのでしょう?

 そんな大事な女性が、死んでしまいますよ。」

 

地和が、いや、この場合3人ともが、直接的な人質にされちまった。

元々殺すつもりだったんだから、攻撃を避ければ、奴は躊躇なく斬るだろう。

同じ理由で、一旦退くというのも除外。

 

(くそっ。あいつ一人なら、いや、せめて皆とアイツがもう少しだけ離れてくれれば。)

 

そんなことを考えるが、そんなことあり得ない。

臆病といえるくらい慎重なアイツのことだ、自分を守る盾となっている皆から、距離を取るとは考えられない。

さらに、怒りに身を任せたあの不意打ち、あれが致命的だ。

あれのせいで、さらに周りを固めて、引き離すのが困難になっちまった。

 

 

(それこそ、俺が目の前で死にでもしない限り、離れるなんて、こと、は・・・・・俺が、死ねば!)

 

追い込まれた俺に、ある一つの策が浮かぶ。

それは、大雑把に言ってしまえば死んだふりだ。

俺が死んだとなれば、厳政の奴も油断するかもしれない。

 

だがこれは、一か八だ。

油断しても、皆と距離を取るとは限らないし、先に俺へのとどめをさすかもしれない。

なにより今からやる技、さすがに初めてだからな、フリじゃなくて、本当になりかねない。

だけど、皆を助けられる可能性が、少しでもあるのなら。

 

 

  カランッカラカラ・・・

 

「わかった。言うとおりにする。」

 

俺は刀を離し、無防備に立ち尽くす。

 

「そう、それでいいのです。さあ、とどめをさしなさい。」

「くっ、やめ、ろ。」

 

趙雲が槍を構え、俺の方へとゆっくり向き直る。

俺はそれを確認し、ゆっくりと息を整え、精神を集中させる。

 

「とま、れっー!」

(北郷流忍術 『((沈丁花|じんちょうげ))』 )

 

趙雲は、自由に動けない自信の身体を呪うかのような叫びをあげながら、俺へと突っ込んでくる。

俺は冷静に、その攻撃の軌道を見極める。

そして、

 

  ズブッ

 

その攻撃を自分の腹へと、あえて受ける。

 

 

(こな、くそっ!)

 

あらかじめ内臓上げの技術を使い、重要な臓器はどかしていたので、致命傷はない。

それでも、かなり痛いけどな。

 

「ごふっ。」

 

口内を切って貯めておいた血を、派手に出して見せる。

 

  ズリュ   ドサッ!

 

そして倒れると同時に、一応のために仕込んでおいた血のりを破り、血だまりを演出する。

皆の悲しそうな声と、厳政の奴の楽しそうな声が聞こえてくる。

 

(なんとか。第一段階は、クリアだな。)

 

みんなを悲しませていることに、心苦しさを感じつつ、今の所、策が上手くいっていることに安堵する。

 

 

「ふう、五月蠅い娘達ですね。そんなに大事な者なら、顔くらいは見せてあげましょう。」

 

しばらく話を聞きながら、まわりの気配を探っていたが、厳政の言葉の後、趙雲が俺から離れるのを感じた。

そしてそのまま、厳政が俺へと近づいてくる。

 

(チャンスか? ・・・いや、まだみんが近すぎる。)

 

どうやら厳政一人ではなく、天和達3人も一緒みたいだった。

もしこれで失敗すれば、もう打つ手はなくなる。

だからこそ俺は、まだ早いと考えじっくり機会を窺う。

 

「さてと。」

 

  ゲシッ

 

俺は体を蹴られ、仰向けにされる。

すでに顔面への血流も操作済みだ、ばれることはないだろう。

 

 

  ポタッ

 

(えっ?)

 

俺の顔に、何か液体が落ちる。

目は開けられないけど、たぶん涙だ。

そしてそんな倒れてる俺の上には、3人の気配が。

 

「ははははは、いや、いいものが観れました。ありがとうございます、御三方。」

(こいつ・・・)

 

続く厳政の言葉を聞き爆発しそうになるが、ぐっと堪える。

もう少し、もう少しだと。

 

 

 

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とうとう、その時は訪れた。

 

「お礼に、御三方もすぐに、愛しい人に遭わせて差し上げましょう。」

 

その言葉を合図に、天和・地和・人和・趙雲、皆が厳政のやつから離れていく。

俺は自分の位置、落とした刀の位置、そして厳政のやつの位置を頭の中で思い描く。

そして――

 

 

「・・・それでは、これで終わりに致しましょう。」

「そうだな、これで終わりだ。」

 

シュッ!  スパッ

 

俺は素早く刀を拾い、そのまま目標目掛けて振る。

その刀の軌跡は、奴の手にあった太平要術の書を真っ二つにした。

 

「夢じゃ、ない、よね。」

「良かった、良かった・・・」

「うそ、そんな・・・」

「ふぅ。さすがは、私の見込んだ御仁だ。」

 

そして本を斬ったことで、術の力が解けた4人は、自由に動けるようになっていた。

 

 

「ま、まだ、こ、この書を、くっつけられれば。」

 

厳政は悪あがきのように、落ちていた書の半分を拾いあげようとしていた。

 

  ズブッ

 

「ひっ!」

 

しかし俺が、先にその書に刀を刺し、拾い上げる。

そのことに厳政が驚き、短い悲鳴をあげて尻もちをつく。

 

「それと、これもだな。(パシッ)」

「ああっ。」

 

さらに俺は、厳政がもっていた残り半分も、その手から取り上げる。

 

「趙雲。」

「おっと。」

 

そしてその2つを、俺の後方にいた趙雲へとパスする。

 

「か、返せ!」

 

厳政はそれを取り返そうと、立ち上がろうとしていた。

 

 

「まかせた。」

「ふむ、心得た♪」

 

俺がそれだけ言うと、趙雲がその意図を理解し、とても楽しそうに返事をした。

そして趙雲は、照明用に置いてあった火へと、それを近づける。

 

「や、やめろ!やめてくれっ!!」

 

俺達が何をしようとしているのか理解した厳政は、それを止めさせようと叫ぶ。

しかし、そんなものに何の意味もなく、

 

  メラメラメラメラ

 

「あぁぁーーーっ!!」

 

太平要術の書に火がつけられ、勢いよく燃えてゆく。

その火はあっという間に全体を包み、太平要術の書をただの灰に変えてしまった。

 

 

「わ、私の力が、私の、野望が〜・・・」

 

それを見ていた厳政は、その場で呆然自失となっていた。

だけど、これだけで許してやるつもりはない。

 

「まずは、一発だな。」

「へっ?」

  バキィィィン!

「うげぇっ!(ズザザザザザー・・・)」

 

俺は怒りを込めた拳を、やつの顔に叩きこむ。

アイツは地面を滑っていき、そのまま気絶してしまった。

 

「ふぅ。」

 

そこでようやく、俺は一息つくのだった。

 

 

 

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「「一刀!」」「一刀さん!」「北郷殿。」

 

そんな俺の所に、4人が駆けてくる。

 

「生きてるよね?幽霊じゃないよね?」

「ああ、ちゃんと足もあるだろ。」

 

天和が不安そうな顔でペタペタ触ってくるので、足を叩きながらおどけてみせる。

 

「うわ〜ん、良かった〜。」

「い!?その、あ、ごめんって・・・」

 

そんな俺の姿に安心したのか、天和はまた泣き出してしまった。

 

「流石に、北郷殿を刺してしまった時は、私も肝を冷やしましたぞ。」

 

そんな状態にオロオロしている俺へ、趙雲が話しかけてくる。

 

「悪い、趙雲。だけど、皆を助ける方法が、これしか思いつかなくて。」

「別に、北郷殿を攻めている訳ではござらぬ。それより、無事でよかった。」

 

趙雲はいつも通りの調子で話しかけるが、その顔には安堵の表情が浮かんでいた。

 

 

(これしか思いつかなかったとはいえ、皆には心配かけちまったな。)

 

そんなことを考えていると、

 

「ちぃを騙すなんていい度胸じゃない、このば一刀!(ドスッ)」

「おごっ・・・(プルプルプル)」

 

涙目で怒ってる地和が、創口へとピンポイントパンチを叩きこむ。

俺はその一撃に、短い呻き声をあげて俯き、体を震わせる。

 

「え、嘘。本当にケガしてたの?」

「・・・だ、大丈夫。この痛みは、みんなを騙した罰ってことで、ね。それより、心配させてごめんな。」

「・・・本当よ、ば一刀。」

 

俺があまりにも痛そうにしたためか、今度は地和がオロオロしだした。

また心配させるわけにはいかないと、俺は必死に我慢し笑顔をつくる。

しかしそんな俺の顔を見た地和は、そっぽを向いてしまった。

うーん、怒らせちまったかな。

 

「一刀さん。(ポスッ)」

 

人和が、背中越しに俺へと抱きついてきた。

 

「人和? てか、今俺、ひどい状況になってるから、そんなことしたら人和まで。」

「構いません。それより、もう少しこのままで・・・」

 

今の俺は血のりでべったりのため、汚れることを心配するが、人和はそれでも抱きついたままだ。

 

「・・・良かった、グスッ、生きてて。」

 

背中越しに、か細くだが、そんな声が聞こえてきた。

 

 

 

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「さてと。」

 

ようやく皆が落ち着いてきた所で、最後の仕上げに取り掛かる。

 

「よいしょっと。」

「うう・・・。」

 

俺は、未だ気を失っている厳政の体を起こし、正座の状態にする。

そのことで軽く呻き声をあげるが、まだ覚醒はしなかった。

 

「一刀さん、その人はどうするんですか?」

「私の感情的には、すぐさまとどめをさしたいところですな。」

「ちぃも、同意見ね。」

「今回は、私もそれに賛成ですね。」

 

厳政への怒りが爆発してるせいか、皆はかなり過激な発言をしている。

 

「それで、結局どうするの、一刀?」

「なに、事件の張本人はこいつなんだ。だったら、その責任もこいつにとってもらおうと思ってね。」

 

かくいう俺も皆と同じ気持ちだが、こいつには、もっと罰を受けてもらわなくちゃな。

 

 

「北郷流忍術 『((黒百合|くろゆり)) 』 」

 

正座状態の厳政の首の側面を、俺は両母指で圧迫する。

それと同時に、気を放出し、相手の気の流れを操作する。

 

「―――――」

 

一分程そうした所で、俺は厳政に言葉かける。

 

「―――。よし、終了っと。

 そこに寝てる二人も、こいつの部下みたいだし、一蓮托生してもらうか。」

 

それが一通り終わった俺は、突入時にのした二人にも同様のことをする。

 

 

「さっきのは、何してたの、一刀?」

「イイコト♪ま、見てな。 ふっ!」

「はっ!?」

 

天和の質問に俺は笑顔で返し、未だ朦朧としている厳政に活を入れて、覚醒させる。

 

「わ、私は? はっ!き、貴様ら。」

「お前の名前は?」

「我が名は、張角。黄巾党の首領なり。 なっ、私は何を?」

 

俺の質問に対し、自分の意思とは無関係に言葉が出てくることに、厳政の奴は困惑してる。

 

「じゃあ次に、この事件の張本人は、お前で間違いないんだな?」

「そうだ。不甲斐ない朝廷に代わり、この私が大陸を支配するためにな。 そんな、口が勝手に。」

「ははははは♪ やるのは久しぶりだけど、どうやら成功だな。」

「え?え?え?」

「ほ、北郷殿、これは一体?」

 

技が成功したことを確認し、俺は笑い出す。

皆はもちろん訳がわかっていないので、俺に何がどうなっているのかを尋ねてきた。

 

 

「なに、ちょっとこいつに暗示をかけたのさ。」

「暗示?」

「そ、自分の名前を張角って言うようにするのと、質問には素直に答える様にってね。」

 

そう、さっき俺がしてたのは催眠術だ。

文字通り、こいつには事件の首謀者としての責任を、全部とってもらおうと思いついたのだ。

 

「それじゃ、こっちの二人には。」

「そいつらには、張宝と張梁役をしてもらうよ。言ったろ、責任を取ってもらうって。」

「すごい一刀、そんなこともできるんだー。」

「こいつらが身代わりになるなら、私達安心だもんね。」

 

こいつらが3人の代わりになれば、3人ははれて自由の身になれる。

そのことに天和、地和は喜ぶが、人和は何かひっかかっているようだ。

 

「どうかしたのか、人和?」

「いえ、私たちすでに舞台で顔も名前も晒してしまっているので、このままではと。」

「ああ〜、そういえばそうだった。」

「どうしよ〜。」

「ああ、それなら一応。おい、お前じゃない奴が張角って名乗ってたらしいけど、どういうことだ?」

「そ、それは、只の神輿だ。駒を増やすのに、便利だったのでな。」

「その者達は、今どうしてるんだ?」

「ふん、邪魔になったのでな、すでに始末してしまったわ。」

「って、感じに仕込んでみたんだけど。」

「抜け目ないですな、北郷殿。」

「そういうことなら、問題ありません。」

 

まあここら辺は、多少の嘘も織り交ぜさせてもらったけど、人和のひっかかりもとれたみたいだ。

 

 

「と言う訳で、とっとと脱出するか。」

「ま、待て。元に、元に戻せ!」

 

やるべきことが終わり、ここから出ていこうとすると、厳政が喚きだす。

俺はそんな厳政へと向き直り、

 

「イ・ヤ・ダ。それよりも、早く逃げた方がいいんじゃないのか?

 運良く、出会い頭に斬ってくれれば楽なんだろうけど、もし捕まったりなんてしたら。

 これだけのことをした大罪人なんだからな、どんな拷問を受けることになるのか、考えただけで・・・

 

 楽しみだな♪」

「ひ、ひぃ・・・」

 

満面の笑顔をしてやった。

厳政がそんな拷問を想像したのか、顔がどんどん青ざめ震えだした。

 

「じゃあな、張角さん。」

 

俺はそう皮肉を言って、今度こそ皆と一緒にそこから立ち去った。

 

 

 

 

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【語り視点】

 

砦を脱出した一刀達は、山道を下山していた。

そして追手などの気配もないため、一刀は最後の問題を解決することにした。

 

「あー、趙雲。」

「なんですかな、北郷殿?」

「えと、実は、3人のことなんだけど・・・」

 

そう、趙雲に天和達のことがばれてしまった件だ。

この事件の結末を全て知っているのは、一刀達と趙雲だけだ。

だから、

 

「頼む!今回のこと、ないしょにしてほしいんだ!」

 

一刀はこのことを黙秘してもらうよう、頼み込むことにした。

 

 

「もし、嫌だと言ったら?」

「そ、その時は・・・」

 

趙雲は、真面目な顔でそう答える。

一刀はそんな趙雲の答えに、言い淀んでしまう。

 

(趙雲くらい精神力の強い人間には、((黒百合|くろゆり))も効かないだろう。

 確実なのは口を封じることだけど、俺に、出来るのか?)

 

一刀は、知り合いに手をかけるということに迷いを見せる。

 

そんな一刀の迷いを察したのか、趙雲の雰囲気が柔らかいものへと変わる。

 

「冗談です、北郷殿。命まで助けていただいた恩人の頼み、聞き入れぬほど薄情ではありません。」

「じゃ、じゃあ。」

「この趙子龍、此度のことを決して他言せぬと誓いましょう。」

「よ、よかった〜。」

(それにあんな悲しそうな顔、この方には、してほしくないからな。)

 

思いっきり安心した顔になる一刀を見て、趙雲はそんなことを思っていた。

 

「その代わり、と言っては何ですが、北郷殿に我が真名を預けたい。」

「え、そんな、えと、いいの?」

「ええ、むしろ預かって頂きたいくらいです。」

「わかった。」

「ふふ、それでは、我が真名は星、この名を北郷殿にお預け致します。」

「確かに。前にも言ったけど、俺には真名がないんだ。だから、俺のことは一刀って呼んでくれ、星。」

「わかりました、一刀殿。」

 

名を交わし合った2人は、そのまま握手を交わすのだった。

 

 

しかし、そんな状況を面白くないと思う人物が、3人ほどいた。

 

「随分と嬉しそうですね、一刀さん。」

「え、いや、そんなことは、ってか、なんか怒ってない?」

「べつにー、私たちぜーんぜん、怒ってないよー。」

「いや、絶対怒ってるって。え、何、俺何かした?」

「だから、怒ってないって言ってんでしょ!この、バカズト(パンッ!)」

「へぶっ!」

「はははははは。(なるほど、風が気にいるわけだ。もっと早く、気付いておればな・・・)」

 

そんな一刀達のドツキ漫才を、星は複雑な心境で見守るのだった。

 

 

 

 

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さらに歩くこと、数時間。

ようやく麓近くに到着し、うっすらとだが華琳の軍を確認できるところまでやってきた。

 

「一刀殿、ようやく見えてきましたぞ。」

「あれが、一刀がお世話になってる軍?」

「へえ、結構すごいじゃない。」

「ようやく、一息つけるんですね。」

 

そのことに、全員がそれぞれの反応を示すが、一様に嬉しそうだった。

 

 

「ああ、そうだな。ここまでくれば、もう危険は」

 

一刀も同様に、そのことを喜んでいたのだが、

 

 

  ドックンッ!

 

 

「かはっ・・・」

 

突如、心臓が大きく鼓動を打ったと思った次の瞬間には、体に異変が起きていた。

心臓は、握りつぶされる様な苦しさを。

頭は、叩き割られるのではないかという程の痛みを発していたのだ。

そのことに一刀は、頭と胸を抑えながら、膝をついてしまった。

 

「一刀殿!」

「か、一刀、どうしたの?」

 

全員がそんな一刀を心配し、駆け寄る。

 

 

「はあはあはあはあ・・・ (今のは、一体?)」

 

だが数秒後には、さっきまでの辛さが嘘のように、一刀の体から消えていた。

 

「大丈夫ですか、一刀さん?」

「もしかして、さっきのことが原因で」

「いや、大丈夫。ちょっと疲れただけだと思う。もう、何ともないよ。」

 

そんな不安そうな顔をする皆に、一刀は笑顔で応える。

 

「それより、早くみんなと合流しちゃおう。」

 

一刀は、それを誤魔化すかのように、先に進むことを促すのだった。

 

 

その後一刀達は、無事に華琳達と合流を果たし、張三姉妹の救出に成功したのだった。

 

黄巾党のほうがどうなったかといえば、張宝・張梁は討ち取られたが、張角は逃亡。

しかしそれも2週間ほどであり、袁紹の軍に捕らえられ、極刑にされた。

張角と名乗っていた男は、その逃亡生活のせいで憔悴しきり、最後は見るも無残な姿だったらしい。

これが、世間一般に流れている話であり、真相を知る者は、極々少数のみだった。

こうして、大陸全土を騒がせた黄巾の乱は、幕を閉じた。

 

 

 

一刀の身に起きた異変は、その後起きていない。

次第に一刀も、そのことを気にしなくなっていった。

しかし、この異変が始まりにしか過ぎないことを、一刀はまだ、知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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あとがき

 

sei 「そんなこんなで、第22話をお送りしましたが、結構最後の方、駆け足になっちゃいましたね。

   更新ペースもあがらないし、まったくもって、困った作者ですね。

 

   まあ、特に話すネタも思いつかないので、とっととゲストを呼んじゃいましょう。

   前回、なんだかんだで出番の多かった、この人です。」

 

地和「はーい、みんなの妹、地和ちゃんだよー♪」

 

sei 「はい、というわけで今回のゲストは、猫かぶり貧乳アイドルの地(グシャッ!)ほぶぅ!」

 

地和「誰が、貧乳だって?(グリグリ)」

 

sei 「いや、昔の偉い人が、貧乳はステータスだ、希少価値だって言ってたので。褒めたつもりだったんですけど。」

 

地和「どうやら、このまま踏みつぶされたいらしいわね。」

 

sei 「ごめんなさい、悪気はなかったんです。

   いよっ、大陸一のアイドルマスター。地和さんの色香に、男共は骨抜きですね。」

 

地和「なによ、やれば出来るじゃない。初めから、そう言ってればいいのよ。」

 

sei 「・・・だって、あまり嘘はつきたくないから。(ボソッ)」

 

地和「何か言った?」

 

sei 「いいえ、何も。さあ、トークコーナーの始まり、始まりー。」

 

 

地和「だけど、今回もご都合主義な技ばっかだったわねー。」

 

sei 「まあ、しょうがないですね、全部思い付きですから。」

 

地和「偉そうに言ってんじゃないわよ、まったく。」

 

sei 「それじゃまず、『((沈丁花|じんちょうげ))』について説明しますか。」

 

地和「それって確か、一刀が死んだフリした時に使ってたやつよね。どんな技なの?」

 

sei 「まあ、そのまんま。死んだフリ全般に使う技名です。」

 

地和「はあ?」

 

sei 「詳しく言えば、重要臓器をずらすために用いた内臓上げや、血のり、それに顔色の変化など、

   それらを総合的に用いた、かなりリアルな死んだフリをする技ってことになりますね。」

 

地和「そんなもんにまで技名つけるなんて、何考えてんだか。」

 

sei 「まあ、なくても良かったんですが、ノリです。

   ちなみに顔色の変化は、以前説明した『((仏ノ座|ほとけのざ))』を使っています。」

 

地和「次は、『((黒百合|くろゆり)) 』についてね。」

 

sei 「まあ、これは作中でも説明しましたが、催眠術をかける技です。

   脳へと向かう気や血の流れを操作して、相手に暗示をかけるのです。」

 

地和「そういえば、かなり初期に『((白百合|しろゆり)) 』って技があったわね。」

 

sei 「あれの派生技みたいなもんですが、向こうはあくまで、催眠状態にするくらいしかできません。

   『((黒百合|くろゆり)) 』はかけるのに、時間や手間はかかりますが、その分しっかりとした催眠をかけられます。」

 

地和「でも本編を見る限り、これってかなり卑怯じゃない?かけちゃえば、敵なしじゃない。」

 

sei 「これもちょっと書きましたが、精神力の高い人には効きがすごく悪いです。

   つまり文官・武官問わず、英傑クラスの人達にはほとんど意味がないのです。

   今回あそこまでかかったのも、厳政たちがしょせんは雑魚だからです。」

 

地和「そう上手くは、出来てないのね。」

 

 

sei 「次は、コメントにいってみましょう。」

 

地和「一刀を心配するコメントが多かったわね。まあそりゃ、あんな最期じゃねー。」

 

sei 「あ、あはははは・・・。」

 

地和「その結果が死んだフリだったって、どうなの?」

 

sei 「いやー、まあー、ね。ここで一刀が死んだら終わっちゃうし、これも一つのお約束ってことで。」

 

地和「はあ。今回はいつにも増して、言い訳が多いわね。」

 

sei 「・・・面目ないです。」

 

地和「それと、厳政むかつくってのもあったわね。」

 

sei 「厳政は、一刀がとどめをさしてもよかったのですが、あえてしませんでした。

   あっさりではなく、じわじわ時間をかけて精神的に苦しんでから、とどめをさすことにしました。」

 

地和「まあ当事者からしたら、ざまあみろって感じなんだけど、

   今回の処罰や、厳政の悪役っぷりといい、あんた自身、相当な下衆なんじゃないの?」

 

sei 「うん、どうポジティブに考えても、それは絶対に褒めてませんよね。(― ―;)」

 

 

地和「さて、言いたいことも言ったし、そろそろ終わりにしましょ。」

 

sei 「また勝手な。まあいいですけど。

   次回は、張三姉妹の拠点でも書こうと思ってます。」

 

地和「やっと、私達の拠点パートなのね♪ちなみに、どんな内容なの?」

 

sei 「決まってません。」

 

地和「は?」

 

sei 「だから、全然、まったく、これっぽちも、決まってませ(ドゴッ)んふぅ!」

 

地和「(ゲシッゲシッ)ふざけんじゃないわよ、一体どういうつもりなのよ!」

 

sei 「だってー、基本思いつきで書いてるんだけど、何もネタが浮かんでこないんだもん!」

 

地和「だもん、じゃないわよ。どうするつもりなのよ。」

 

sei 「ここは、最終奥義『オーディエンス』ですね。」

 

地和「は?何、それ?」

 

sei 「つまり、また見ている皆さんからアイデアもらって、パク(ドガーン)りゃあああ・・・・(キラーン)」

 

地和「どこまでも、成長しない作者ね。

   それじゃ皆、星になったsei が帰ってきたら、また会いましょう。ばいばーい。」

 

 

説明
太平要術の書の力により、操られてしまった趙雲。
そんな趙雲を助けようと、一刀も奮闘するが、ついにその刃が一刀を捉え、貫いてしまった。
そのまま倒れ、動かなくなってしまった一刀。
果たして、どうなってしまうのか。
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コメント
作品を途中で投げ出してんじゃねぇよ死ね(Chloe_jun1986)
早く続きよみたい(ナハト)
こんな所で終わるはずのない!!待つ次回!!!!!(味野娯楽)
俺は待ってるぜ!!(ケフカ・パラッツォ)
続きはまだなの?(デューク)
つ、続きを。(十六夜 出雲)
初めましてm(_ _)m、続きまだですか?っとプレッシャーをかけてみる(・∀・)ニヤニヤ。(黒鉄 刃)
頑張れガンバレ!!!!やればできる!!!!シチュエーションを考えれば後は勝手に恋姫たちが動いてくれるさ!!!!!!自信を持て!!!そして・・・熱くなれよ!!!!!(風見海斗)
続きまだか(兎)
続きはまだかな?(デューク)
前原 悠 様>やっとこ、初期に出したこの話のきもがだせました。(sei)
不知火 観珪 様>星になったsei、まったく気付かんかったw 改めて言われると恥ずかしい・・・(sei)
匿名希望 >まだ始まりに過ぎないですけどね。今後その影響がどうなっていくのか。(sei)
グアンクー 様>今後どうなっていくかは、お楽しみ?に(sei)
イマ 様>ネタ提供ありがとうございます。 一刀がぼこられるのはいいんですけど、なぜ、私まで???(sei)
メガネオオカミ 様>ネタ提供ありがとうございます。安心して下さい、私はそんなありふれたネタさえ思いついてなかったです (゚∇^d) グッ!!(sei)
アサシン 様>恋姫本編の流れとは、若干違う流れにしてみました。(sei)
本郷一刀 様>うちの一刀君は、ギャグパート以外、微妙にリアル系になっているので、どうしてもこんな感じの技になっちゃうんですよねw(sei)
本郷 刃 様>かなり初期からアレが出てきてますけど、それでも一刀は、ずっと一刀らしく進ませたいと思ってます。(sei)
アルヤ 様>作者をいじめる、ドSなコメントなんて見えない・・・(sei)
なんか危ない予兆だな・・・・(前原 悠)
ロンリー浪人 様>ハッピーエンドになるのか、それとも悲しい結末なるか、お楽しみに。 それと、ネタ提供ありがとうございます。(sei)
霊皇 様>そうです。魏√おなじみの、アレです。まだ、一刀は気付いてませんが。(sei)
星になったseiさん……オヤジギャグかと思たww← ようやく星さんと真名を交換(正確には戴いた?)できたので、これからのフラグに期待します!←(神余 雛)
拒絶の兆候・・・(匿名希望)
消える予兆早くも出てきたな〜(グアンクー)
他からの嫉妬の嵐に期待。そしてとばっちりを受ける一刀とseiさんに期待ww(イマ)
今回も一刀の忍術が見れて良かったです。次は拠点パートですかぁ。元々あの三姉妹と行動を共にしていましたし、今回のことで好感度はMAXでしょう。(イマ)
内臓上げ……助かるとは思っていたけど予想以上に無茶をしましたね、一刀さん。拠点は「ライブでほわぁぁぁああ!→とてもよかったよby一刀→イチャイチャ→覚悟はできてる?by他魏軍」というのは? ……ありきたりですみません; (メガネオオカミ)
まだ大局に逆らってはいないはず・・・・(アサシン)
一刀の技が結構えげつない感じですねぇ…三姉妹の拠点、楽しみにしています!(ミドラ)
うわ〜お〜・・・内臓上げって、恐ろしいことしますね一刀・・・。しかし、頭痛がこの段階で起き始めるとは・・・果たしてどうなるのか?(本郷 刃)
前回のコメ?あとがきのメンマネタに対してで一刀に関して触れてないよ?(アルヤ)
ああー、例の頭痛ですか。さて、ここの一刀はどんなEDを迎えるのやら……。三姉妹の拠点は「天和の天然発動→地和が対抗して喧嘩に→人和がしれっと一刀とイチイチャ→お・や・く・そ・く」ってのはどうでしょう?(ロンリー浪人)
ああ・・きっとあれなんだな・・・√魏だもんな・・・がんばれ一刀(霊皇)
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