IS x アギト 目覚める魂 37: 『神』、始動 |
時を同じくして、ある焼肉店では、氷川、一条、尾室、そして小沢の四人が氷川の復活祝いと夕食を兼ねて食事をしていた。
「いやー、秋斗君のお陰で助かりました。」
「全くもう・・・・いくら人を守る為と言っても、貴方があの攻撃を食らっちゃ意味無いでしょ、馬鹿ね。」
辛辣な言葉とは裏腹に内心はほっとしていた。仲間の一人に死なれては寝覚めが悪い。特に彼はG3-Xの装着員なのだ。欠員が出てしまってはSAULの今後の行動にも支障を来すし、何より適切な人員を見つけるのは簡単では無い。と言うのも、小沢澄子の御眼鏡に叶う様な連中はそうそう出て来ないのだ。管理官と言う立ち場である以上、人員の選択は厳しく、くぐる為の門は名門大学よりも狭い。
「けど、どうしても分からないっすね。何でアンノウンが氷川さんを殺そうとしたのか。氷川さんはアギトじゃないのに・・・・」
「でも、邪魔したから排除するって言うのは納得出来るわよ。」
ビールの大ジョッキの四杯目を一気に煽ってまた肉をがっつき始めた。
「確かにな。だが、やっぱり分からねえ。邪魔をするならアンノウンだったらどこへなりと素手で吹っ飛ばせるだろう?奴らの狙いはアギトの力を持った人間だけなんだからな。」
「そうかもしれないですけど・・・・」
尾室は肉をタレに付けて口に運ぶ。
「どうも、皆さんお揃いで。」
「貴方は・・・?」
「真島医院で外科をやっています。木野薫と言う者です。貴方が言う、アンノウンが狙うアギトの力を持った人間ですよ。」
全身黒服でサングラスと言うかなり厳つい風体だが、その見た目とは裏腹に優しい声で答える木野。
「え・・・・?」
「今回は、警告に来ました。門牙秋斗君からの伝言です。『『闇の力』は人類を見限った。人類、神により生み出された子供達は自らの手で、滅ぶ。自らその命を絶つ事になる。』」
「どう言う、事ですか?」
氷川は恐る恐る聞いてみる。
「詳しい事は何も。ですが・・・・アギト狩りが今まで以上に活発化する事は確かです。アギトの種を持つ人間は、次々死んで行く可能性が高くなります。用事はそれだけです。では。」
木野はそれだけ言うと店を出て行き、バイクに乗ってどこかへ走り去った。
「木野薫・・・・ね。でも、まさか秋斗君からそんな事を言付かっていたとは私も正直驚いてるわ。でも、もし彼の言う事が本当なら・・・・」
「本当の戦いは、まだ始まっちゃいないって事か・・・・」
一条が静かに食事を続けながら唸る。
「あれで、良かったのですか?」
「はい。すいません、忙しいのに使いっ走りをさせちゃって。」
「今日は非番ですから、ご心配無く。ですが、また、見たんですね。夢を。」
「嫌な夢ばっかりで安眠なんて出来ないですからね。的中率百パーセントの予知夢なんて、見るだけ迷惑です。」
「ん?」
木野はヘルメットを外し、顔を上げる。そして、電柱の上に一体のアンノウンの姿を見つけた。そのアンノウンは、二人の姿を見ると飛び降りて両手で何らかのサインを作ると二人に向かって走り出した。
「来ましたね。」
「私が相手をしよう。」
「待って下さい。・・・!!まずい・・・・!(ヤバイヤバイヤバイヤバイ!この気配は・・・・間違い無くあいつだ。)」
「貰いますよ。貴方の・・・・アギトの力を。」
そのアンノウンの後ろに現れたのは、全身黒い衣服に身を包んだ首元までの長さがある茶髪の二十代前半の男性だった。手の甲には、何らかの小さな模様が描かれている。
「あの男・・・!ここは退いた方が良さそうですね。あの小沢澄子とか言う人物に連絡は?」
「今やってます!」
『はい。』
「小沢さん!急で悪いけど、氷川さんと一条さんに出動してもらって!ちょっとヤバい事になってるから!」
『ヤバい事?どう言う意味よ、ちゃんと説明して!』
「今はそんな暇は無い!早く!大至急御願いします!」
それだけ言うと、秋斗はバイクに乗り、木野と一緒にその場から逃走した。だが、当然アンノウンがアギトを、それを二人も逃がす筈が無く、飛翔しながらも追跡を始めた。手に持った弓に矢を番え、バイクの車体を狙って攻撃して来る。
「二手に分かれよう!」
「駄目です!初っぱなから俺達を引き離すつもりでいるんだ!このまま逃げましょう!」
だが、アンノウンは二人の前に降り立ち、弓を構えて、矢を放つ。二人は停車せざるを得なくなり、バイクから転げ落ちそうになった。
「逃がしませんよ。貴方達はその力の所為で傷つき、今まで苦しんだ。ですが、もうそれも終わりです。」
「お前には悪いが、俺はまだやる事がある。お前の眷属と言えば良いのかな?」
そう言って、目の前にいる鷹型のアンノウン、風のエルを指差した。
「そう言う奴らを全員ぶっ倒した後なら、考えてやっても良いぜ?」
「私は元々反対です。戦いはどうやら避けられない、か・・・・」
「「変身!」」
秋斗はアギト グランドフォームに、木野は両手で拳を作り、広げるとへその一で両腕を交差させた。腰のベルト、アンクポイントが光り、オレンジ色のマフラーに人型のバッタに近い外見を持つアナザーアギトに変身した。風のエルは矢を番えて再び放つが、すかさずアギトが前に飛び出てオルタリングの左腰のスイッチを叩き、ストームフォームにチェンジ、引き抜いたストームハルバードでその矢を叩き落とした。黒服の男は何もせずに二人が風のエルと戦うのを見ていた。
「あれ・・・・何?!」
アギトはその声がした方に顔を向けた。
「楯無・・・・・何でお前がここに?!」
「その声・・・・門牙さん!?」
「アギトの種・・・・また一人・・・!」
黒服の男は右手を突き出した。すると、光の奔流がその手から伸びて彼女に襲いかかる。
「どけ!」
俊敏に動けるストームフォームであった為にすぐに行動する事が出来た。ストームハルバードを投げつけ、その光の奔流を邪魔しようとした。だが、それは一分も立たずに亀裂が入り始め、徐々に砕け散って行く。
(糞!)
アギトはストームハルバードを砕いたその光の前に立ち・・・・オルタリングを正確に貫かれた。
「っ!!あ・・・・!」
あまりの激痛に声にならない叫びを上げた。まるで内蔵が一撃で潰された様に腹部に痛みが走り、変身が解けてしまう。秋斗の体から白い服の小さな子供が現れ、光のたまに変わって黒服の男の中に消えて行った。その衝撃で体をくの字に折って胸を押さえたが、風のエルに連れて行かれて姿を消した。
「糞・・・・・!」
「門牙君!無事ですか?」
「体に・・・力が入らない・・・!」
「アギトの力を、奪われた所為でしょう。長年体内に宿っていた物が突然喪失するとそうなる物です。今回は事無きを得ましたが、次はどうなる事やら・・・」
「門牙さん・・・・私・・・」
「俺が勝手にやった事だ、お前が自分を責める必要は無い。兎も角、今の俺は当分こっちで戦うしかありませんよ。」
腕に巻き付いたG4-X0をトントンと叩いた。
「まだ戦えるだけマシです。私のアギトの力が奪われてしまえば、私は変身出来ない只の人間だ。津上達にも伝えておいた方が良いのでは?」
「津上さん達の方は御願いします。一夏には俺が。気を付けて下さい。」
「お互いに、です。特に貴方は、アンノウンを察知する力がありません。」
しっかりとお互いの手を掴んで握手すると、木野は路地の角を曲がって姿を消した。
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そろそろテオスを動かしますかね。 | ||
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