魔導師シャ・ノワール無印偏 第二十三話 ノワール散る |
「なのは!そっちに行ったよ!」
「うんっ!まかせて!」
《ドドーン!》
大きな水柱が轟音と共に立ち上る。
ここは地球の太平洋のど真ん中、何もない海の上で更に結界を張り
水上に水没した仮想に作られた高層ビル郡が並び立つ場所が模擬戦場となっていた。
《ドドーン!》
大きな水柱が轟音と共に立ち上る。
「くそがッ!」
ブリッツアクションを連続使用し。なんとか、高町なのはが放つ砲撃を回避する。
海面スレスレを出来る限りの高速で飛行し。
海上から生えたようなビルとビルの隙間へと逃げていく。
だがすぐ後ろにはフェイト・テスタロッサがジワリジワリ迫る。
加速ではこちらがやや優位だが、通常速度ではフェイトの方が上だ。
「まずはフェイトを落として...ッ!?」
ビルの角を拘束で曲がるとその先に違和感を感じて急上昇してそれを回避した。
僅かに足先がそれに引っかかり。緑色とオレンジ色のリングが突然現れた。
上昇して回避しなければリングバインドに囚われていただろう。
「「チェーンバインドッ!!」」
さらに魔法で作られた8本の鎖が頭上から降り降りる。
無論、チェーンバインドを放っているのはアルフとユーノ・スクライアだった。
「こんな物でッ!!」
『ザドーシュ・ブラード!』
カートリッジが炸裂し。黒い魔法刃がクローシュを纏い。
降り注ぐチェーンバインドを切り裂いて無力化する。
「なのはッ!」
「ディバイン...」
「ふざけッ!」
「バスターッ!」
ユーノ・スクライアの掛け声で。なのはの放った砲撃が放たれた。
バインドを捌いていた為に。動きが遅くなり。
まさに直撃コース。咄嗟に左手でシールドを展開するが...
「クソッ!重ぇ!!」
幾らかシールドを貫通して微弱なダメージを負う。
「ハァァァッ!!」
「くッ!?」
≪ガキィン!ドォォン!≫
砲撃が止むと共にそこへフェイトの斬撃のよる追撃が入り。ブレードの刃でバルディッシュを受けるが
受け止められずに後ろへ吹き飛ばされる。
衝撃でビルに突っ込む前に壁に足を当て、膝を曲げながら衝撃を吸収して。透かさずブリッツアクションを使用して逃げる。
アルフとユーノ・スクライアが張った設置型の『リングバインド』
そこへ俺を誘い込むような、なのはとフェイトの動き。
そして、一連の連携攻撃。並みの魔導師なら撃墜されていた。
とても、急に組まれたチームだとは思えない。
導き出される結論としては一つだ。
「指揮官まで居やがるな!くそッ!」
管理局side
「フッフフ〜ン♪さっきので終わりかと思いましたが流石、ジェネルの鍛えた子ね」
リンディ提督は薄っすらと微笑みながらいつもの艦橋とは違う。暗い管制室で呟いた。
「まあ、ノワール君もそうですけど、なのはちゃん達もすごいですよね。あの連携」
その横にはエイミィ管制員が話しながら忙しなくキーパネルを操作していた。
管制室に映る映像には巧妙に練られた罠を掻い潜りながら
戦闘する黒い魔導師の姿が映っていた。
そして、それを追う白い砲撃魔導師と黒の近接魔導師、そしてオレンジ使い魔と緑の結界魔導師。
お互いの長所短所をカバーし合いながら。ほぼ一方的に黒い魔導師を追い詰めていた。
「でも、本当にすごいわね。あの子」
「なにがですか?艦長」
先ほどから戦闘を見つめていると大したダメージをノワールは追っていない。
確実に追い込まれてはギリギリの抜け道を見つけ。離脱していた。
エイミィ管制官が見る限りでは一方的な戦いだった。
「彼は持久戦に入っているわ。絶望的な状況でも諦めずに唯一勝てる方法を取っているのよ。
なのはさんの砲撃は魔力消費が激しいし。その援護が少なくなればアタッカーをしている
フェイトさんを下げなければならないわ。そうなればこちらの攻勢は崩れます。
単純なパンチ力では一対一で彼に敵う魔導師が我々には居ません」
「・・・恐ろしい相手ですね」
「まあ、あと2回ほど追い詰めてから。プランKを行います。
このまま持久戦をさせては不味いわ。皆にそう伝えて」
「了解です艦長」
out
「ミストラルッ!」
《ボンッボボボンッ!》
俺のミストラル(誘導弾)の爆風で複数の誘導弾が砕け散る。
あの追い込まれた連携からさらに二回。
組み合わせ、使用魔法こそ違うが似たような状況になり。
初手ほどではないが余裕を見て逃げることができた。
指揮官は所詮人間だ。人はそれぞれ癖がある。それは作戦も同じ。
一度、二度と作戦に嵌まりもすれば。その人物象も固まってくる。
まだ、俺などに悟られるくらいの腕となれば。出張っている管理局のリンディ提督ではないだろう。
恐らくは執務官のクロノ・ハラオウン。なら、戦闘エリアとなっているどこかにいる筈だ。
即席のチームでここまで、俺を追い詰める作戦を即席で組み上げ。
実行までさせているなら必ずどこかに....
「ディバインバスター!」
「はっ、当たるかよ」
後方からなのはの放つ砲撃が飛んでくるが。飛行している体をロール(回転)させ
機動をずらして回避する。が、前方に聳え立つ大きなビルが砲撃の直撃を受け、崩れていく。
仕方がなく瓦礫を避けるように左のビル郡へと飛行ルートを変えた。
「サンダースマッシャー!」
「今度はフェイトか?」
今度はフェイトの砲撃が横合いから飛んで来た。それを回避するべく
ビルの合間の隙間に入り込み。その合間から抜け出るとそこは妙に開けた場所に出てしまう。
海面には破壊されたビルの柱が見える。最初の頃に砲撃で破壊されていた場所に出てしまったようだ
それと同時に冷たい汗が頬を伝った。
なぜ連携も取れていない、当たる可能性の低い砲撃をなのはが放っていたのか?
なぜ高速戦闘が得意なフェイトが魔力消費の多い砲撃を撃って来たのか?
そんなのは決まっている。ビルを倒壊させ、回避を促し。俺をここまで誘導したに違いない。
そして、反射的に空に浮ぶ太陽に目を向ける。
そこには青く光る無数の魔力刃と管理局執務官 クロノ・ハラオウンの姿が見えた。
「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!」
一度、空中で一回転した刃は、そのまま俺に向って一直線に降り注いでくる。
「エリクスッ!」
俺の左手に張ったシールドはいつも通りの性能を発揮し。
次々と着弾する刃はシールドに弾かれ、砕ける。
外れた刃は俺の後方の水面に水柱を上げていた。
しかもこの魔力刃は砕ける事に細かな魔力の塵が粉塵となって視界が無くなる。
無論、クロノ執務官が出て着たのには驚かされたが。
この程度で終わりはしないだろう。続いてなにか来るはずだ。
そして、そんな予感は見事的中し....
「バルエル・ザルエル・ブラウゼル。フォトンランサー・ファランクスシフト。撃ち砕け、ファイアー!」
「な、に?」
俺が次に視界に捕らえたのは。粉塵を掻き分け、前進してくるフォトンランサーの群れ。
しかも襲って来たのは背後。
俺の防御の切り札である『エリクス』は一度に一方しか防御できない。
さらに、移動や同時展開も不可能であり。
成す統べなく。俺はフェイトの放つファランクルスシフトに抵抗できず
無防備な背中を撃ちぬかれた。
《ドドドドドドドドドドドドッン!!》
「はぁはぁ・・・仕留めたか?」
「・・・お生憎とこれぐらいで落ちるかよ」
クロノ執務官の問いに軽口を返す。
だが、口ほどの余裕は残されていない。
バリアジャケットの防御機能は今のでかなり低下したはずだ。
さらにはフェイトの電撃属性の魔力は体を痺れさせている。
だが、負けるつもりもない。
「ブリッツ!」
「ノワールッ!?」
魔法を放ったばかりで移動も覚束ないフェイトに向けて俺は突撃した。
そう、ここで彼女を落とせたならまだ正気はあったのだろう。
「なっ!?」
フェイトへと続くルートにはバインドによるトラップが多数仕掛けられていた。
無論、それらが仕掛けられていたことは考慮しての機動を取り。
回避しながら進もうとするが
右足、次は左腕、一箇所でも掛かった時点で後付けによるバインドが飛んでくる。
最後にはそれを仕掛けた二人によるチェーンバインドで体が簀巻きにされてしまった。
「ユーノ・スクライアに・・・アルフか」
「もうそろそろ降参してくれませんか?」
「な、なあ?もう諦めてもいいんじゃない?」
ユーノは困った人だな〜っと言った様子で。
アルフは、と言うと心配そうにこちらを見つめていた。
そこにクロノ執務官もゆっくりと降りてくる。
「ゲームオーバーだ。それ以上続けるならアレが飛んでくることになる」
クロノ執務官が指差した先には軽くビルの幅を超えた大きな光の球体が見える。
やや、離れた上空で浮んでいる光は優しい桃色で。それはまさしく高町なのはの集束砲撃魔法だった。
なんだかこれに似た流れが前にもあったな・・・。
「アレを食らったら君もただじゃすまないだろう?」
もっともな意見だが。聞けるはずも無い・・・。
「・・・ミストラル」
「なっ!?君はッ!」
「ミシールッ!」
《ボボボボンッ!!》
体の四方にミストラルを4つ発動し。そのまま起爆。
爆風と共に俺を拘束していたバインドが一斉に砕け散る。
バインド解除する一般的な方法はハッキングだ。
魔法術式で作られるバインドを解析して解除する方法。
だが、猶予のない時など攻撃魔法などで破壊する方法もある。
それはもちろん拘束されていた者にもダメージを与えるが。
形振り構ってはいられない!
爆発で吹く飛ばされた体は海面を転がり。どうにか海中に落ちる事無く立て直し。
集束砲撃でスタンバっている高町なのはへ飛翔する。
「なのはぁあああああッ!」
このまま、コケにされたまま負けるつもりはない。
既に体はボロボロでバリアジャケットも裂けているが、構うものか!
「うそっ!?ノワールくん止まって!」
「黙れッ!撃ちたければ撃てばいい!俺を舐めるなあああああああッ!」
あの砲撃を防ぐ手段はある。なら、最大の火力である高町なのはを倒せば。
まだ勝てる・・・いや、これは強がりだ。
残る4人を相手にして勝てる手段もない。これは単なる意地だ。
不規則な人数による。一見すればリンチに近い模擬戦闘。
だからと言って一人も落とせずに負けるつもりなど無い!
「止まってってばあああ!スターライト・ブレイカー!」
一線の細い光が俺のすぐ横を通り過ぎ。すぐさまそれに釣られるように大量の魔力砲撃の光が降り注ぐ。
「エリクスッ!」
『エクスプロージョ《ガキィン!》・・・』
「は?」
砲撃に向って掲げた左手にシールドが張られず。
異音がした右手に持っているクローシュに視線を移すと、あろう事か・・・
「ジャムだと・・・」
銃剣の形をしているクローシュのカートリッジシステム。
使用済みのカートリッジを廃莢させるスライドに廃莢させるべきカートリッジが挟まっていた。
質量兵器である銃なら兎も角、デバイスでカートリッジが動作不良を起こすなんてまず、ありえない。
しかもこのタイミングで?バカな・・・。
『ありゃ〜ジャムったにゃ。困ったにゃね〜』
などと、クローシュの暢気な声と共に俺は光に飲まれた・・・。
濁流に飲み込まれたかのような衝撃を受け海中に没する。
真っ暗な海の中で無意識に伸ばした俺の手を誰かにつかまれたところで。俺の意識は完全に途絶えた...
前話にコメントいただいた回答ですが、この作品のユーノは女の子です。
なぜTSなのかについては、登場人物紹介をまた追加する予定なのでそちらで説明が入ります。
にしても、主人公強えええ・・・というよりかは粘るなぁ・・・。
※読んでくれてありがとうございます!感想などなどはお気軽に!
※誤字脱字などの指摘もどんどんお願いします。
※また誤字脱字や妙な言い回しなど見つけ次第修正しますが特に物語りに大きな影響が無い限り報告等は致しませんのであしからず。
説明 | ||
神様などに一切会わずに特典もなくリリカルなのはの世界へ転生した主人公。原作知識を持っていた筈が生まれ育った厳しい環境の為にそのことを忘れてしまい。知らず知らずの内に原作に介入してしまう、そんな魔導師の物語です。 ※物語初頭などはシリアス成分が多めですが物語が進むにつれて皆無に近くなります。 ※またハーレム要素及び男の娘などの要素も含みます。さらにチートなどはありません。 初めて読む方はプロローグからお願いします。 | ||
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回答ありがとうございやす。今回も面白かったっす。(なるさん) | ||
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