「明命、あな･････」

　振り返ったそこに、明命の姿はなかった。

「あぁ、もう！二人して･････絶対、一刀は渡さないんだから！」

　そう言うと、思春が走り去ったほうへ走って行った。

「ここまでくれば、大丈夫だろう」

「････思春、そろそろ訳を教えてくんないかな？」

「あ、あのだな、今日は演習を見て貴様の･･･････」

「一刀様！」

「明命、大丈夫だったのか？」

「はい、大丈夫でした」

　どこからともなく、明命が現れた。

「それどころではありません、一刀様、思春様、早くしないと雪蓮様が」

「見つけたわよ、一刀！」

　全く速度を落とすことなく、一刀を抱きしめた。

「さぁ、遊びに行くわよ！」

「ちょ、ちょっとまってくれ雪蓮」

「二人とも、俺に何か用があったんだろ？」

「そうだ、今日は北郷に演習を見てもらい、意見を聞きたいと思いまして」

「へぇ〜思春には珍しいわね」

「そのあとに、一緒に市を見ながら、お猫様を探すんです」

「どちらにしても駄目よ、今日は私と遊ぶんだから」

「じゃ、じゃあ、明日は？」

「明日も私と、明後日も、明後日もその後もずっと空いてないわ」

　つまり、いつまでも雪蓮と一緒で予定が開いていないということである。

「いくらなんでも、それは横暴です、雪蓮様！」

　たまらず明命が一刀の手を引くが、負けじと雪蓮も一刀の腕を引く、明命だけでは分が悪いと思ったのか、思春まで参戦し一刀を挟み綱引きが始まった。

「痛い！痛い！」

「明命、思春、一刀が痛がってるでしょ！放しなさい！」

「いやです、雪蓮様が話したらいいじゃないですか！」

「今回ばかりは、明命に同感です」

　両者ともに一歩も譲ることなく引き合いを続けている。

「腕が！腕が！祭さん！助けて！」

　偶然通りかかった祭に助けを求めた。