SAO〜黒戦After story〜 EP1 結城明日奈・前編
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EP1 結城明日奈・前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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京子Side

 

私は自分の娘のことを何も理解してあげていなかったのかもしれない。

私が決めた通りにし、反抗することもなかった娘の明日奈。

私の言うことを聞いていれば、それが幸せに繋がると彼女も理解していたと思っていたのだから。

 

 

 

娘が兄である浩一郎のナーヴギアを被り、あのゲームに閉じ込められたのが2年前。

そして先程、ゲームがクリアされてプレイしていた人達が解放され、目を覚ましたというニュースが流れた。

病院からも明日奈が目を覚ましたと連絡が入り、私は夫の彰三と共に病院へと車で向かった。

病院に辿り着き、娘の病室がある階にエレベーターで昇り、その階についた時、その声が聞こえてきた。

 

「教えて!? ねぇ、教えてよ!?」

 

病院にも関わらず大きな声が聞こえる。

ただその声は掠れてはいるものの、紛れもなく娘の声だった。

声の方向に夫と共に視線を向けてみると、ナースステーションの看護婦に掴みかかっている明日奈がいた。

 

「お願いだから、教えてよ! キリトくんは、和人くんは生きているの!? ねぇ!?」

 

「お、落ち着いてください!? ほ、他の方の事を教えることは出来なっ…ぐっ!?」

 

「教えろぉ!」

 

明日奈はそのまま看護婦の首を絞めた。

私は今までに見たことのない娘の形相と行動に、その場で固まってしまった。

 

「明日奈、落ち着きなさい!」

 

「離して、離してよ! キリトくんが、和人くんが…!?」

 

「げほっ、えほっ……はやく、先生に! 鎮静剤も!」

 

夫はすぐさま明日奈を取り押さえ始めた。

解放された看護婦が他のナースにも指示をだし、少しすると一人の女性医師が明日奈に鎮静剤を打った。

それでも明日奈は少しの間もがいていたが、やがて体の動きが散漫になった。

 

「か、ずと…く、ん……」

 

誰かの名前を口ずさんでからそのまま意識を失ったようだ。

明日奈は担架に乗せられてから、病室へと運ばれていった。

 

「おそらく、目を覚ましたばかりで錯乱したのでしょう。すぐに落ち着くとは思いますが、こちらも注意しておきますね」

 

「はい、お願いします」

 

医師の言葉に夫が答えるが、私はあまりのことに未だに呆然としている。

明日奈に一体何があったのかしら…。

この日、明日奈が目を覚ますことは無かった。

 

 

 

翌日。私は仕事を休み、明日奈の元へ向かった。

どうにも昨日のことが気がかりで、明日奈の傍を離れてはならないような気がするから。

病院に到着した私は、面会の手続きを終えるとすぐさま病室へと入った。

そこには、ベッドで座っている明日奈がいた。

 

「明日、奈…」

 

「ぁ……ただいま、母さん…」

 

「おかえり、なさい…」

 

彼女の名前を呟くと小さな声で返事をした。

自分は帰ってきたと、そう言った明日奈だけど……その姿は今にも消えゆきそうだ。

返事を返すものの言葉に詰まってしまう。

 

「朝ごはん、食べないのかしら?」

 

「食べたくないの…」

 

病院食の中でも、最も軽く食べやすい食事であるお粥を一口も口にしていないようだ。

 

「栄養が付かないわよ?」

 

「いいの……生きている意味なんて、もうないから…」

 

「っ!?」

 

明日奈と眼を合わせた私は彼女の眼に光が宿っていないことに気が付いた。

この娘は、本当に死ぬ気なのかもしれない。

そんな考えが頭を過ぎったけれど、すぐに忘れようとした。

そんなこと、考えたくもなかったから…。

この日、明日奈は結局何も口にすることは無かった。

 

 

 

さらに翌日。昨日のことを夫に話し、今度は二人で明日奈の元へ向かった。

病室に入ると、昨日と同じ姿勢のまま明日奈は座っていた。

私達に気付いた明日奈は声を掛けてきた。

 

「父さんも母さんもどうしたの? こんなところに来て」

 

「明日奈のお見舞いに決まっているじゃないか」

 

夫が「当たり前のことだ」というように答えたが、明日奈が発した一言に私達は硬直してしまった。

 

「お見舞い? ((道|レール))から外れた出来損ないの?」

 

「「っ!?」」

 

この娘は私達を見ていない。

視線は向けているけれど、ここでないどこかにだけ目を向けているのだ。

明日奈のベッドにあるテーブルの上には、昨日と変わらずにお粥が置かれており、一切口を付けていない。

この娘は、ここに生きていない…。

 

「明日奈、お前はまだ若い。いまからでもやり直せるさ。だからあの世界のことは忘れなさい」

 

「わす、れる…?」

 

「明日、奈…?」

 

夫の言葉に明日奈が反応したことに私は気付いたが、様子がおかしい…。

 

「忘れる、の? キリトくんを? ユイちゃんを? 友達を? 思い出を? 私が和人くんを殺したようなものなのに?」

 

「あ、すな…?」

 

彼女の名前を呟くけれど言葉を紡ぐことが出来ない。

どこか狂ったかのように言葉を発していく明日奈。

私は自分の子供に恐怖を抱くとは思わなかった。

そして明日奈は、

 

―――ガッシャーンッ!

 

近くにあった花を活けていた花瓶を割り、その破片を手に持って自分の喉元に付きつけた。

 

「明日奈! やめなさい!」

 

「どうしました……っ!? せ、先生を呼んできて!」

 

夫が止めようと制止の声を掛け、音を聞きつけて看護婦が部屋に入ってきた。

すぐさま他のナースに指示を出していく。

私は一昨日のように、動けなくなった。

 

「明日奈! とりあえず落ち着「うるさい!」!?」

 

明日奈を落ち着かせようと夫が話しかけるが、明日奈は興奮しており、聞く耳を持たない。

 

「いつもいつも、決められた服、決められた付き合い、決められた道!

 あの世界でいきなり自由になって、どうすればいいか分からなくなって、

 それでも自分の道を見つけることが出来て、初めて自分の好きなことが出来た!

 初めて好きな人が出来て、愛し合うことが出来たの!

 なのに、わたしのせいで死なせてしまったの!

 彼がいないんじゃ、もう生きてる意味が無いの!」

 

私は初めて自分のやってきたことに後悔した。

娘に自分の都合を押しつけてきただけだったのだ。

それが娘の幸せになると、信じていたから…。

しかしそれが、彼女を苦しめていただなんて…。

明日奈はすぐにでも花瓶の破片で、喉を切り裂こうとしている。

どうすれば………その時、

 

「そんなことをして、和人君が喜ぶと思うのですか?」

 

「そうね。それは彼に対する侮辱だわ」

 

二人の女性が現れて、明日奈にそう言った。

 

京子Side Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

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後書きです。

 

というわけで始まりました『黒戦After』!

 

形式を本編や今までと変えて、投稿を始めました。

 

そしてまさかの京子さん視点からのスタートですw

 

いきなり明日奈の依存度の高さからこのような錯乱状態で始まりましたが、かなり書いてみたかったんですよね〜。

 

まぁ、次回で明日奈個人の話しは終わりです。

 

ちなみに最後に出てきた二人は『黒戦』でお馴染みのあのお二人ですw

 

それでは・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
黒戦After storyの第1話、EP(エピソード)1です。
タイトルは明日奈ですが視点は別のキャラです。

それでは、どうぞ・・・。
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コメント
アサシン様へ 黒戦でお馴染みのあの2人です♪(本郷 刃)
二人の女性は一体?(アサシン)
サイト様へ 確かにその通りですが、目覚めた直後で思考も混乱していたんですよ。(本郷 刃)
旦那がまさしく命がけで救ってくれた命を投げ捨てちゃあかんよ、まず考えるそして行動だ!気持ちが分らなくも無いがね・・・(サイト)
仁吉様へ これくらい錯乱しているアスナの本音を聞けば、さすがの京子さんでも色々思うかと思った次第です。アスナの立ち直りは登場した二人が鍵を握っていますよ。一方のキリトさんですか・・・ふっw(本郷 刃)
京子さんがえらく感情的で、びっくり。まぁ母親はこれぐらいが当たり前なんですよね。これなら好感がもてますね。アスナが弱ヤンデレ化、あんだけLOVEなら、まぁそうなりますよね。ここからどう立ち直るか、期待です。今からでもALO編が楽しみです。今からでも無双キリトがオベイロンをゲーム内でも現実でもギタギタにする姿が目に浮かびます。投稿頑張ってください。(*´∀`*)(仁吉)
龍聖無双剣様へ キリトとのラブラブっぷり自体がフラグだったのです・・・アスナは持ち直せるのでしょうかね。(本郷 刃)
ゆん様へ 彼女を生かす為にお二人の登場です。(本郷 刃)
まあ、あんぐらいキリトに依存してたらこうなるのは目に見えてたな。↓「ゆん」さんと同じく「アスナ嬢ぉー強く生きろ〜」(龍聖無双剣)
明日奈ーーーーー!! 強く生きてくれーーーーー!!(ゆん)
神薙様へ 京子さんは普通の反応をしただけ、ということですからね。(本郷 刃)
まあ、今まで良くいう事を聞いてきた娘がいきなり錯乱した様な言動をとったら確実に混乱するよな…(神薙)
魅沙祈様へ 優しくなったというよりも自分のやってきたことに気付いたということですね。(本郷 刃)
soutiro様へ 責任は自分に、ということですね。(本郷 刃)
京子さん、なんか優しくなってる…?自分の道を決められているのはなんだかな〜、ていう感じです。まあ、私はわりと自由ですけど…。将来の夢も決まってますし。(魅沙祈)
ウチもその感じです、悪い事じゃないならねWW(soutiro)
soutiro様へ 確かにそういう親が多いですよね・・・ちなみにウチの場合は好きにやっていいという感じですw では、次回をお楽しみに♪(本郷 刃)
今現代社会の親はほとんどこの感じだよな、自分の決めた事はそれは子供の一番いいて、特に台湾が一番酷いな...更新お疲れ、次回もお楽しみです!(soutiro)
竜羽様へ ありがとうございます! 次回もお楽しみに♪(本郷 刃)
書き方が変わって読みやすくなりました。次回も楽しみです(竜羽)
Mr.X様へ なんとなくは分かりますか・・・続きは明日更新です。(本郷 刃)
最後の2人・・・何となくわかるが気になる。続きは明日更新ですか?(Mr.X)
不知火 観珪様へ まぁ明日奈の錯乱状態を見たからこそという感じなんです、これからもっとまるくなりますよw(本郷 刃)
こちらのお母さまは、ずいぶんとまるくなられたようで好感が持てますなww 最後に現れたのは例のお二人ですね? わかります(神余 雛)
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