真・金姫†無双 #12
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#12

 

 

かっぽかっぽと馬で闊歩する。クソつまんねー。どうも、のっけから親父ギャグをかます、北郷一刀です。状況としては、嘘ではない。俺はいま、部隊を率いて平野を行軍している。隣には亞莎。反対側には、軍師の雛里と補佐の穏が、俺と同様に乗馬している。

 

「大丈夫か、雛里?」

「あうぅ、お尻が痛いです…」

「そうかそうか、帰ったらお兄ちゃんがさすってやろう」

「あわわっ!?」

 

冗談はさておき。

 

「一刀さん、斥候から情報が入りましたよぉ」

「応」

 

穏から、報告を受ける。いま俺達は、領内に現れたという賊の討伐に向かっている最中だ。聞けば、しばらく行った先の古砦を根城にしているようだ。

 

「どうする、雛里?」

「あわわっ、私ですか!?」

 

隣で穏の説明を聞いていた雛里に作戦を問えば、ビクっと小さな身体を震わせた。何を驚いている。雛里がこの討伐隊の軍師だろ?

 

「あ、そうでした……」

「砦までにはまだ時間がある。それまでに、策を練っておくように」

「はいっ!」

 

抜けているのか気合が入っているのか。元気よく返事をする雛里んでした。

 

 

 

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という訳で、雛里ん指示の下、砦より少し離れた場所で野営を敷き、作戦会議。

 

「領内の砦は、孫堅様の時代にも調査がされていて、ひと通りの地図があります。いま、私達が向かっているところもです」

 

いいながら、雛里は地図を広げた。その後ろでは、穏がうんうんと、生徒を見守る教師のように頷いている。

 

「見張りが立っているのは、さきほど戻って来た斥候の方の情報では、四方に2人ずつ。計8人です。ですが、砦内に見張り台があることも考えると、もう少し増えるかと」

「なるほど。ただ突っ込んでも、向こうは迎撃の準備をしちまう、って訳だ」

「はい。ですので、陽が落ちるまで待ちます。この時間であれば、いま砦を出ても何処にも行けません」

 

言いながら、今度は、この周辺の地図に置いた石をそれぞれ指す。……あぁ、直近の邑って訳だな。

 

「日没後、部隊は待機。それとは別に、潜入の人選をします」

「潜入?」

「はい、夜ならば最小限の見張りを残し、大多数は休みに入ります。その隙を狙って――」

 

雛里が両手の人差し指で、砦の地図にある、割と大きい建物を指す。

 

「――このどちらかが食糧庫です。そこに、火を放ちます」

「火計だな」

「はい……どうですか、穏様?」

 

雛里は不安気に振り返るが、穏は笑顔で頷いた。

 

「はぁい、穏もそれでいいと思いますよ。問題は、誰に潜入してもらうか、ですが」

「ここは、俺だな」

「一刀さんが行くんですか!?」

「だって、俺の部隊にそんなん出来る奴いないんだもん」

「もん、って……でも1人だと危険過ぎます!」

 

俺の妹がこんなに心配性なわけ以下略。

 

「じゃぁ、亞莎が来るか?そうしたら、誰が俺のいない部隊を率いる」

「えと、その……」

「それとも亞莎が潜入するか?」

「あぅ……」

「出来なくはないが、まだ亞莎には足りないものがある」

「足りないもの?」

「?」

「……」

 

俺の言葉に亞莎と雛里は首を傾げ、穏は瞳を伏せる。それだけで、穏も『ソレ』を経験している事がわかった。

 

「ま、それを経験するのが、今回のお前達の課題だ」

「「はぁ……?」」

 

俺もだけどな。

 

 

 

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らられれふぁふぁーっとオカリナを吹いて時間を進め、夜がやって来ました。遠くに野犬か狼の遠吠えを聞きながら、砦を挟んで夜営地とは反対側の山にて、砦を眺める。

 

「ひぃ、ふぅ、みぃ……外壁に、昼は2人ずつ、夜は1人ずつの体制か。間違っちゃいないが、それだけじゃ足りない」

 

奴らが想定しているのは、軍や他の賊による攻撃だ。つまり、敵は多い。しかしながら今ここにいるのは俺1人。俺からすれば、穴だらけだよ。

 

「さて、どっから行こう……ん?」

 

何処が1番脆いか考えながらその4人を見ていると、西側の1人が、何やらゴソゴソとやっている。そうして、懐から小さな瓶のようなものを取り出すと、それを口に当てて傾けた。

 

「おいおい、酒かよ。やる気のねぇ奴だ。それとも眠気覚ましか?」

 

いやいや、賊にそんな殊勝な態度を期待しても始まらない。間違っていたとしても、俺1人ならなんとか生き残るくらいは出来るだろう。

 

「――さて、やりますか」

 

計画通りに、俺は西側の城壁の下にいる。こちら側は陰になっており、俺が見つかる心配も薄い。

 

「予想の通りだ。これだけ古い砦なら、外壁にも綻びが出るさ」

 

それも、古いというだけでなく、誰にも使われていなかった砦だ。外壁の石はそこかしこに浸食による傷があり、そこに手足を掛ければ身体の支えにも使う事が出来た。

 

「よっ…ほっ……」

 

手足を交互に動かして、虫のように壁を登る。ロッククライミング。そう、今の俺は虫。虫。日陰に行き、その機能性は人類を凌駕しながらも存在を疎まれるゴキブリ……。

 

「生まれてきてすいません……」

 

思い込みが激し過ぎて若干鬱になったが、ようやく外壁の淵にまでやって来た。

 

「――――ぷはっ。ったく、飲まなきゃやってらんねーぜ」

 

聞こえてきたのは、呂律がほんのわずかに危うい男の声。ちょうど真ん前にいるらしい。

 

「だいたい…んぐ…なんで俺が……ぷはっ、不寝番なんか」

「じゃぁ、寝てていいんだぜ?」

「へ?」

 

振り向いた男の鳩尾に拳を叩き込み、悶絶させる。

 

「おやすみー」

「ま、待っ――」

 

そのまま首に手を掛けて頭を捻り、気絶させる。音もなくソイツは崩れ落ちた。

 

さぁ、作戦開始だ。

 

 

 

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「こちらスネーク!侵入に成功した!」

 

…………。

 

「どうした、応答しろ!?」

 

ま、無線も何もないんですけどね。

 

冗談はさておき。

 

俺はいま、雛里が地図に指した建物のうちのひとつ、その裏手にて息を潜めている。とはいえ、おそらくこれがアタリだ。城にある蔵ともよく似ている。

 

「暇だな」

「あぁ、眠ぃったらありゃしねーぜ」

 

見張りは2人。こいつらも、俺が投げ捨てた男と同じように、やる気は感じられない。

 

さて。

 

「すううぅぅぅ……はああぁぁぁぁぁ……」

 

ゆっくりと息を吸い、ゆっくりと息を吐く。何度もそれを繰り返す。バクバクと跳ねる心臓が次第に疲弊し、落ち着きを取り戻したと認識できた時、俺はようやく動いた。

懐から取り出したのは、2本のクナイ。短刀でもよかったが、なんとなくカッコイイのでコッチ。冗談だ。使いやすさか。2本の黒い得物は、その大きさに反して重量がある。無理もない。この2倍の大きさの剣が出来るくらいには、鉄を使用したのだ。それを力任せに打ち込み、密度は通常の倍、つまり、強度も倍である。雪蓮や祭ねーさん、それに他の兵が使うような武器だと、力任せという表現に相応しい働きをするが、俺は武将じゃない。これくらいの方が、自制も利く。

 

それはさておき。

 

「っ!」

 

屋根に上り、見張りの背後に降り立つ。2人が反応するよりも速くクナイを奴らの喉に当て、引き裂いた。

 

「……っと」

 

倒れそうになる2人を抱え、蔵の陰に隠す。月明かりでは色の判別もつかないが、俺の上衣は血塗れだろう。

 

「鍵は…っと、あったな」

 

片方の男の懐から、蔵の鍵と思しきものが見つかる。果たしてそれは期待通りのもので、俺は蔵の扉をわずかに開き、その隙間から内部に忍び込んだ。

 

 

 

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「ゔお゙ぇ゙え゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙……」

 

びちゃびちゃと音を立てて蔵の地面に零れるのは、俺の口から溢れた吐瀉物だ。壁と膝に手を着きながら、胃の中身をすべてぶち撒ける。

 

「はぁっ!…はぁっ……」

 

胃液しか出なくなっても落ち着かなかったそれが、ようやく収まりを見せた頃、乱暴に口元を腕で拭って上体を起こした。

 

「クソ、俺でさえコレなんだから、亞莎に任せなくて正解だったな……」

 

俺が亞莎を指揮官として待機させていたのは、偏にこれが理由だった。

人を殺す事の不道徳と不快感。

その所為で亞莎が戦闘不能にでも陥ってしまったら、作戦も何もない。もしかしたら、行動に出る前に捕らえられていたかもしれない。

 

「……まぁ、いい。後は火をつけるだけだ」

 

手筈通りに作物の乾いているところを見繕って、点火する。それは瞬く間に燃え広がり、蔵の中をオレンジ色に染め上げる。

 

「さて、脱出しますかね」

 

わずかにフラつく脚に活を入れ、俺は蔵の出口へと向かった。

 

 

 

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あとがき

 

 

という訳で、#12でした。

 

 

まだストックはある。

 

 

ひと段落がつくまでは、1日1話投稿を目指した。

 

 

それとは別に、新しいバイトを始めた。

 

 

よって、これからしばらくは毎日のように5時起き。

 

 

泣けてくるぜ。

 

 

ではまた次回。

 

 

バイバイ。

 

 

 

説明
という訳で、連続投稿2日目。

一刀くんが頑張ってます。

どぞ。
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コメント
〉〉一朗太さん 青野武さんのことです( ノД`)…(IFZ)
あぁムジュラの時を進める方か あれ聞くとなんかちょっと不安になるw(Alice.Magic)
ゼルダネタか・・・懐かしいなwwww(スターダスト)
ムジュラwww太陽の歌の方が好きですがwwしかし一刀君マジかっけえ(D8)
大佐の中の人が亡くなったのです・゜・(/Д`)・゜・。(エミヤ)
>>IFZ様 え、スネーク死んだの?(一郎太)
>>きまお様 へ、変態だー(AA略(一郎太)
>>一丸様 あとがきに書いた通り、#15からギャグに戻るよ!(一郎太)
>>アイルリッヒ様 アルヤ様 好きなんだよー (一郎太)
>>ロンリー浪人様 #13を描き始めた時は、ギャグにもっていこうと思ってたんだよー(一郎太)
>>みんな お前ら一刀くん大好きだなw(一郎太)
自分も人を殺したことがないのに亞沙を想って汚れ役を引き受けるとは・・・ 何て良い兄貴なんだ! それにしても雛りんはここでお尻をさすられなかったことを後に後悔するんでしょうねwww(happy envrem)
うんうん、さすがいいお兄ちゃんです。(summon)
さすが一刀、いいお兄ちゃんだぜ。(神木ヒカリ)
何故無線に誰も出ないか。大佐は死んだ、もういない・・・Σ(ノд<、ブワッ(IFZ)
ふむ、ひなりんのお尻はお兄さんがさするのか・・・。ならオレはのんたんのおむねとかお尻をさするとしよう。さあщ(゚д゚щ)カモーン(きまお)
ひなりん 俺がさすりさすりしてやるぜ       一郎太さんの尻と一緒に(駆逐艦)
時の重ね歌は古いんじゃないかなぁ。面白いゲームだったけれども。(アルヤ)
さすがお兄さん!カッコイイですねぇ〜。(Fols)
おお〜〜、男?お兄さん?を見せますネエ〜一刀君。かっこいいですよお〜。そして、ギャグがないけどしばらくは、シリアス回が続くのかな?・・・ではでは、続き楽しみに待ってます。(一丸)
亞沙は優しいから・・・そんな細かいところを考えてあげる一刀くんもやさしいな・・・(デーモン赤ペン)
ゼルダのオカリナが混ざってるw(アイルリッヒ)
これぞまさしく漢の鑑!! 冒頭でおやじギャグぶっ放してたやつと同一人物とは思えませんなぁ(ロンリー浪人)
一刀くん、まさに漢だ!(神余 雛)
一刀さん、カッコイイですよ!(本郷 刃)
ギャグが無くなったが、面白ければOK------www(ロドリゲス)
やだ……一刀君、かっこいい……///(八幡の蟹鍋)
やば・・・一刀めっちゃかっこいい(*´д`*)(ゆっきー)
一刀は立派なお兄さんですよ(アサシン)
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真・恋姫†無双 一刀 亞莎 金姫 雛里 かしこかしこまりましたかしこー 可愛いなぁ、もう。  

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