十二支・幻想奇譚 ボカロ界からの脱出! 第1話 ついてないKAITOと天使ミクと守護者ルカ
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(冬のとある街にあるアイスクリームチェーン店・夜)

 

 シンシンシンシン・・・・

 

お客:えっと、チョコミントとバニラクッキーのダブルコーンで

海斗:はい、どうぞ。有り難うございましたー!

 

 寒い日なのに、アイスクリームはかなり売れていた。しかし、さすがに夜だったので、お客は先ほどの一人だけだった

 

店長:うーん、雪がかなり降ってきたな・・。あ、海斗君、今日はもう上がっていいよ

海斗:あ、はい! では、お先に失礼します!

店長:はい、お疲れ

 

 “工藤海斗”は、とある街にあるアイスクリームチェーン店のアルバイト店員。冬のとあるその日は、夜に雪が降ってきてしまい、店長の判断で、海斗は早く帰ることが出来たのだった。挨拶の後、更衣室で着替えて、宝物の青いマフラーを巻いて、荷物を持って、スタッフ側のドアを出て帰ることにした。

 

 シンシンシンシン・・・・

 

 その夜から降り出した雪は、降り始めの勢いが止まらず、見事に“大雪”になってしまった。帰宅中の海斗も、帰路で悪戦苦闘していた。

 

海斗:うわー、凄い雪だな・・・・。車とか自転車のスタッフは大変だろうな・・・

 

 そんなこんなで気を付けて歩きながら、自分のアパートに向かっていた海斗は、とある広い公園の横に差し掛かった。長細い公園で、海斗の進行ルートはちょうど今の位置から公園を突っ切って反対側だった。そうしないと、ぐるっとUの字型に遠回りしないといけなかったのだ。

 

海斗:さて、いつものように、この公園を使ってショートカットするか

 

 タッタッタ・・・

 

 海斗はかなり雪で覆われた、誰もいない公園に入り、出来るだけ雪がかかっていないルートをたどって、公園を渡っていた。ちょうど大きな大木と古い屋外時計がある部分は、木が笠になっていたので歩きやすかったので、海斗はそこを通って公園中央に出ようとした。

 

 その時・・・

 

 メキ・・・ガサッ!!!!

 

 雪の重みに耐えきれず、木の枝が軽くしなった後、折れてしまったのだった!

 

 ガン!・・・・・・・メキメキ!!!!

 

 なんとその枝は、その下にあった“古い屋外時計”に直撃し、シャフトがかなりさびていた屋外時計を真っ二つに折ってしまったのだった! そして折れた屋外時計の“盤面”部分は、凄い勢いで海斗の頭上に落ちてきたのだった!!!

 

海斗:う、うわ!!!!!

 

 ガン!!!!!!!!!

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(???)

 

海斗:・・・・・・う・・・・う〜ん・・・・ん? なんだ? ここは?

 

 海斗が目を覚ました“その場所”は、“大きな時計”が地面に刻まれており、実際、それはカチカチと動いており、さらに、1〜11までの位置と中央にそれぞれ“扉”がある、変な世界だった。扉には、それぞれ1個ずつ、色々な“動物”が刻まれていた。

 

???:お目覚めミクか?

海斗:え?・・・君、誰?

ミク:私は、天使のミク。0:00の子の宝玉の守護者にしてボカロ界の案内人ミク

海斗:??????? な、なんだかわからないけど、天使が出てくるって事は、俺、死んだのか・・・

ミク:正確にはまだミク。現世のアナタは気を失っていて、更に、死亡寸前ミク

海斗:現世の俺??? でもって、ここは、その、“ボカロ界”だっけ? なんだ、それは

ミク:“ボカロ界”は、「生死の境の世界」ミク。一般的には“三途の川”みたいに呼ばれているミクけど、実際にはここで試されるミク。時間軸は現世では止まった状態。そしてここにいられるタイムリミットは、この下の“時計”が再び0:00を告げるまでミク

海斗:た、試される?・・・・・えっと、確かミクさんは、“子の宝玉の守護者”で、案内人だっけ? ゲームみたいな展開で考えると、要するに、時間内に、その“宝玉”ってのを全部集めると、死なずに済むわけか?

ミク:飲み込みが早いミクね。その通りミク。0:00以外の各場所にある“干支の扉”を開けて、中にいるミクと同じような“守護者”を対戦で倒して宝玉を受け取り、全部集めて、その中央の扉を開けて入れば、海斗さんは現世に戻って、意識を取り戻すミク。そのあとの人生は貴方次第だけど、とりあえず“今”は三途の川を渡らずに済むミク。ちなみにタイムオーバーだと、即死亡ミク

海斗:ううう・・・・なんたるシチュエーション・・・。ま、まぁいい! とにかく、その“脱出ゲーム”、始めるよ! 最初は誰だ! あの“牛”が彫られた“1:00の扉”か?

 

ミク:違うミク。私ミク

海斗:え? ミクは無条件にパスじゃないの?

ミク:そんなに世の中甘くないミク。0:00の子の宝玉の守護者である、私を対戦で倒さないと、“子の宝玉”と案内人の私を入手する事はできないミク

海斗:わ、わかった! とにかく時間が惜しいから、挑戦するよ! 対戦形式は!?

ミク:“ジャンケン”ミク

海斗:ジャ、ジャンケン!?

ミク:そうミク。ミクに1回でも勝てれば、勝利ミク

海斗:うう・・命1つがジャンケンで決まるなんて・・・ああ、もういい! やるよ!

ミク:では、行くミク。じゃーーーーんけん、

 

 ポン!

 

 ミク(グー)vs海斗(チョキ)

 

ミク:残念ミクね。何度でも挑戦できるけど、当然、時計は動いているから気を付けるミク

海斗:じ、時間が・・・次!

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15分後

海斗:はぁ・・・・はぁ・・・・

ミク:海斗さん、弱いミクね〜。これだけやってまだ勝てないのは、珍しいミクよ?

海斗:(はぁ・・・・はぁ・・・こ、これは「人間の知恵」を使わないと・・・)

ミク:どうするミク?

海斗:すまんが、次は、俺が開始のかけ声をかけてもいいか?

ミク:? いいミクよ

海斗:よし! じゃあ・・・最初はグー!!!!

 

 ミク(グー)vs海斗(パー)

 

海斗:やったぞ! 勝ったぞ!

ミク:ミクぅ〜、汚い手を使うミクね〜

海斗:勝てば官軍だ!

ミク:わかったミク。勝負は勝負ミク。納得いかないミクが。はい、これ

 

 ミクは、“子”と書かれた輝く小さな宝玉を海斗に渡した。

 

海斗:こ、これが“宝玉”

ミク:ミクのは“ねずみ年”の「子の宝玉」ミク。こういう“干支の動物が彫られた宝玉”を12個集めればいいミク

海斗:よし! じゃあ、約束通り、案内してくれ!

ミク:じゃあ、さっさと行くミクよ。次は、1:00の“牛の扉”ミク!

 

 こうして、海斗と案内天使ミクは、1:00の位置にある「丑年」の“牛の扉”を開いて、中に入ったのだった。

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(牛の扉の中)

 

カウガールの姿のピンク髪の女性:はい、こんにちは。私は“1:00の丑(牛)の宝玉の守護者”のルカです

海斗:あー! なるほど! “牛の守護者”なのは、立派なバスt

 

 ブゴン!

 

 ルカは思いっきり、牛乳の瓶を海斗に投げつけた!

 

ルカ:気にしていることを、づけづけ言うな!

 

 ガゴン!

 

 ルカは凄い勢いで、後ろにあった“小さいドラム缶の上に皮を張った対戦台”を海斗とルカの中央に荒っぽく置いた。

 

ルカ:はい!! これが対戦台! 対戦形式は、“アームレスリング”、つまり、“腕相撲”だ!

海斗:痛たた・・。よ、よし! 俺だって男の子! 女の子に負けるわけにはいかん! それにお店の飲み会の余興でも優勝した事がある! 1回で勝つ!

ルカ:ほぉ、自信はあるようだな。じゃあ、やってみようか

 

 対戦台の上で、海斗の右手とルカの右手が組まれ、ルカが開始の合図をした!

 

ルカ:レディーーーーー、ゴォ!

海斗:ウルォァ〜!!!!!

ルカ:ぬるい

 

 ガン!!!

 

 ルカの右手は、あっさりと海斗の右手を押し倒してしまった!

 

海斗:ぬぉおぉおぉぉ!!!

ルカ:ハッタリだらけの人間ね〜。思いっきり弱っちかったわよ!

 

 海斗は右腕をプラプラさせて、楽にしてから、ルカを指さした!

 

海斗:ぬぉおお・・・・つ、次!

ルカ:一応言って置くけど、腕相撲で連戦はきついから、出来るだけ早めに勝たないと、キツイわよ?

海斗:わ、わかってるよ!

 

 こうして次々とルカと海斗は腕相撲をしていたが、海斗は毎回、あっさりと負けてしまったのだった。

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5回対戦後

海斗:ぬぉお・・・・も、もう腕が・・・限界じゃ・・・・

ルカ:私も連戦してるのに、弱いわね〜

海斗:(・・・こ、これは、、また知恵を使わないと・・・)

ルカ:どうする?

海斗:一つ、訊いていいか? ミクは俺とのジャンケン勝負で負けた。だからここにいるんだけど、ミクは俺達の対戦中、「何をしていてもいい」んだな?

ルカ:? まぁ、対戦している腕に触るとか、そう言うのでなければ、部外者だから、なんでもいいけど

海斗:よ、よし! ちょっと作戦タイム!

ルカ:わかった

 

 海斗は後ろに少し移動して後ろを振り向き、ミクを呼び寄せ、“作戦”を告げた。

 

ミク:そ、それ・・・いいミクか?

海斗:本人が“腕とかに触らなければいい”って言ったんだ。無問題だ

ミク:わ、わかったミク

 

 海斗は振り向いて、対戦台に戻ると、ルカに1つ提案をした。

 

海斗:ルカさん、ミクはあなたの横で観戦して、今後の対戦の参考のために、見ていることにしたが、いいか?

ルカ:いいけど、腕には触らないでよ?

海斗:わかってる

 

 海斗とルカは、また同じように対戦台の上で右手を組んで、ルカが合図をした。

 

ルカ:レディーーーーゴォ!!

 

 その時、ミクは口をルカの右耳の横に持ってきて、軽く“息を吹きかけた”。

 

ミク:ふぅ〜

ルカ:ひ、ひゃぁぁあぁぁ!!!!

 

 ルカは真っ赤になって叫んでしまった! 力が抜け、腕相撲どころではなくなってしまったが、腕は組まれたままだった。

 

海斗:うりゃ!

 

 ドン!

 

 海斗の右手はルカの右手を押さえ込み、一応勝ったのだった!

 

海斗:やったぁ!!!

 

 ルカは腕を放して、両手で右耳を押さえて、真っ赤になって、ちょっと涙を溜めて、海斗をののしった!

 

ルカ:こ・・・この、卑怯者! こんなの“反則”よ!

海斗:ミクは腕には触ってないぞ。吐息を君の耳に吹きかけただけだ

ミク:恥ずかしいミク・・・・

ルカ:ううううう・・・・・・わ、わかったわよ! はい、これ!

 

 ルカは右手で、牛の宝玉を海斗に手渡した。

 

ルカ:こ、こんな対戦者、初めてよ・・・・

 

海斗:うんじゃ、次行くか

ルカ:待って!

 

 ルカは両手でミクの手を握っていた。

 

ルカ:・・・ミクさん? 一緒に付いていっていい?

ミク:!? ミクはいいけど、海斗さんはどうする?

ルカ:アイツはどうでもいいの! 私はミクさんに付いていくの!

海斗:はぁ〜、吐息1つでノックアウトか・・・。ああ、いいよ。でも負けは負けなんだから、ルカさんにも協力してもらうよ

ルカ:わ、わかったわよ! ミクさん・・・行こ?

ミク:ミク

 

 ミクは冷や汗を1つかいて、頷き、ルカと手を繋いで、海斗と一緒に次の扉を目指すことにしたのだった。

 

(続く)

 

CAST

 

工藤海斗:KAITO

0:00の子の宝玉の守護者&案内天使・ミク:初音ミク

1:00の丑(牛)の宝玉の守護者・ルカ:巡音ルカ

 

お客、店長、その他:エキストラの皆さん

説明
○ボーカロイド小説シリーズ第11作目の” 十二支・幻想奇譚 ボカロ界からの脱出!“シリーズの第1話です。
○私の小説シリーズでは、“KAITOにーさん”が初の“主役”を勝ち取った作品です。
○内容は、まぁ、にーさんの代表曲のように、卑怯というか、何というか…。久々に脱出物です。
○なにやら不思議な空間に飛ばされたKAITOにーさん、どうなるのでしょうか?

☆初のKAITO兄さんが主役です!
☆今回は“脱出物”です。対戦形式なので、戦闘以外、出来るだけこれまでの話と被らない物を使っています。
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タグ
Vocaloid KAITO 初音ミク 巡音ルカ 

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