IS 黄金騎士物語 第二話 |
再会
鋼牙視点
自己紹介も終わり休み時間。ここで気の合う人と喋ったりするのが普通だろうが、残念な事に俺に限ってはそうではない。自分のクラスの視線に、他のクラスの子、さらには上級生が廊下の窓やらドアから俺を見てる。廊下なんてもう溢れかえってるよ。
そんなに俺が見たいのか。自慢ではないが、そんなに顔はかっこよくないぞ。
これを親友の弾に以下同文。無論、返り討ち。
「あれが噂の男子ね」
「超カッコいい。イケメンよ。イケメン。超イケメン」
「千冬様の弟だって」
「姉弟そろって顔立ち整ってるな〜」
「あぁ〜いいなぁ。変わって欲しい」
何やらひそひそと喋ってるな。聞き取れないがそれはいい。どうやってこの状況を打破すべきか。それが問題である。
男子は俺一人だがそれは今はいい。女子だらけだがせっかくの高校生活。友達もいないなんて淋しすぎる。
取り敢えず、後ろか隣の人と仲良くなっていくべきだろう。そう考え、実行しようとすると、
「ちょっといいか」
誰かに声をかけられた。声の方向に目を向けると、髪をポニーテールに束ね、若干険しい顔をした、6年前に引っ越した幼馴染の篠ノ乃箒がいた。
「なんだ箒か。久しぶりだな」
「あ、あぁ。ひ、久しぶりだな」
?何を驚いているんだ。すると、周りが何やらざわめき出した。
「こ、ここでは落ち着かないから、ほかで話せないか」
「ああ。いいぜ」
というわけで、屋上にきています。
「いや〜風が気持ちいいなぁ〜。いい所だなここ」
「そ、そうだな」
「・・・」
「・・・」
さっきから何も話題がない。箒は何やらさっきからもじもじしているし。
こういう場合俺が話題を振るしかないか。仕方ない。
「ホントに久しぶりだな、箒。六年ぶりだっけ?」
「あ、あぁ、久しぶりだな鋼牙」
「そういや中学の剣道の大会優勝したんだってな。おめでとう」
「な、なんでそんな事をしっている!?」
いや、そんな事って。
「新聞読んだから」
「なぜ新聞などを読んでいる!!!」
読んじゃいけないのか?しかしなんで顔を真っ赤にしているのやら。
「ま、でも一目で箒ってわかったぞ」
「えっ?」
「髪形、昔から変わっていなかったからな」
「よ、よく憶えていたな」
「そりゃ、幼馴染だからな」
すると、ギロッと睨まれた。なんでだよ。
「でもよ、話しかけてきたのに何も話題がないのか、お前は」
「い、いや、それはだな」
「昔から口ベタなのは知っているが、少しは直したらどうだ」
「う、うるさい!!そんな事は分かっている!!」
ホントかよ。しかし昔っから変わっていないなこいつは。口ベタで仏頂面だし。
「でも、見ない間に美人になったな箒」
「なぁ?!?!」
?何かおかしなこと言ったか
「な、何を言って?!」
「いや、ホントに美人になってるよ箒。綺麗になったと俺は思うぜ」
「!!!!!!!!!」
顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。自分の気持ちを素直にいっただけだが。
「っと、箒。次の授業もあるし早く戻ろう」
「・・・・」
「箒?」
「さ、先に行ってくれ。私は少し風に当たってる」
「そうか、遅れると鬼崎先生に怒られるから気をつけろよ」
「わ、分かった」
箒視点
鋼牙が屋上から出ていくのを見届け私は深呼吸をする。鏡を見なくても顔が真っ赤になっているのが分かる。風に当たれば収まると思ったが、さっきの言葉を思い出すとまた顔が熱くなる。
(い、いきなり、び、美人など呼ぶとは)
まさか美人と呼ばれるとは思っていなかった。嬉しい反面、恥ずかしい。少しでも赤くなった顔を冷まそうと風に当たる。すろと、風に吹かれ髪が顔に当たる。
(・・・髪形を変えなくて良かった)
ポニーテールの先をいじりながらそう考える。まだ小学一年の頃、一度だけ褒めてもらったこの髪形。鋼牙と離れ離れになってもう一度会いたいと願掛けに髪を伸ばし、ずっとこの髪形にしていた。おかげですぐに私だと分かってくれた。あの時は本当に嬉しかった。
(そ、そ、そして美人と、とととと!!!!!)
先ほどの光景を再度思い出す。
*なお、これより乙女の恋のフィルターと妄想が混ざってあるので注意してください。
『箒、美人になったな。見違えたよ』
『ば、馬鹿者。そんなことはない』
『・・・・箒』
『きゃ!?いきなり、何を!!』
『もう離さない。お前はずっと俺の傍にいてくれ』
『こ、鋼牙・・・・!!』
二人の距離は徐々に近づき・・・・
「・・・・・は!!!!!!」
自分がとんでもない妄想をしている事に気づき頭をぶんぶんと顔を振る。
(こ、鋼牙のせいだ!!そうだ鋼牙のせいに決まっている!!)
いきなりあんなことを言ったのだ。故に鋼牙のせいなのだ。そう結論付けると、
キーンコーンカーンコーン
「・・・・んっ?」
チャイムの音が聞こえたのだが、気のせいだろうか?
そう考え、今、自分がいる場所を思い出す。
「・・・!!!!」
すぐさま、屋上から出て、教室まで走り出す。しかし、走った甲斐なくその後担任からありがたい出席簿アタックを受けたと追記しておく。
(・・・・全部鋼牙のせいだ!!!)
どう考えても八つ当たりだが、そう考える箒であった。
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