真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第二章『三??†無双』 其の十八 |
第二章 『三??†無双』 其の十八
本城 皇帝執務室 (時報:桂花 一人目 金桂 生後十日)
【赤一刀turn】
「主さま!主さま!七乃が懐妊したのじゃ♪」
俺たちの執務室に飛び込んで来た美羽が、はしゃぎながらそう言った。
「「「おお!・・・・・・・・で、当の七乃は?」」」
部屋に入って来たのは美羽一人だけ。
「ほへ?・・・おらんの・・・・・・・はて?先ほどまで一緒にいたのじゃが・・・・・」
美羽が部屋の中をぐるりと見回した後、パタパタと入口に走って行く。
「なんじゃ、まだそこにおったのか。ほれ、七乃。主さまに報告申し上げるのじゃ♪」
扉の陰を覗き込んだ美羽の様子から、七乃はどうやら部屋の外に居るらしい。
「はあ・・・・・仕方ありませんねぇ・・・・・それでは、一刀さんたち・・・私懐妊しちゃいました。」
扉の陰から姿を現した七乃は・・・・・なんか落ち込んでる?
こんな顔で懐妊の報告をされたのは初めてだ。
今までの唯一の例外である桂花だけが、怒って物を投げつけてきたけど・・・・・そういえば思春も俺たちに言うまでは色々と悩んでいたって言ってた・・・・・七乃も美羽に申し訳ないと思っているのか?でも、美羽はこんなに喜んでくれているし・・・・・。
「つきましては慰謝料と養育費がわりに寿春を頂けませんかね?なんだったら南陽でも構いませんけど。」
「「「・・・・・・は?」」」
「主さま、七乃は照れて冗談を言うておるのじゃ♪のう、七乃♪」
そうなの?なんか七乃の顔はさっきの落ち込んだ表情とは打って変わって期待に満ち満ちてる様に見えるんだけど・・・・・。
「「「じょ、冗談・・・・・なの?」」」
「お嬢様がそう仰るから、そういう事にしておきましょう・・・・・」
このとても残念そうに見える態度も演技なのか?
「所で一刀さん。私は後宮に入れられてしまうんですか?」
「入れられてって・・・・・医療体制とか警備も万全にしてあるからその方が安心出来ると思うけど?」
「警備が万全!?そんな!私を逃げられない様にして昼夜を問わずあんな事やこんな事をするつもりなんですねっ!!」
「・・・七乃、お前はここの後宮をどんな所だと思ってるんだ?」
「普通、後宮と言ったら一刀さんたちの欲望全開の酒池肉林御殿じゃないですか。」
それなんてエロゲ?
今の後宮に居るメンバーでそんなことしたら、どう考えても俺たちの方が食われる側だよね?
「ええと・・・名目上後宮と呼んでるけど、あそこは妊婦さんが安心安全に出産子育て出来る様にした施設だよ。」
「はあ、そうなんですか・・・・・」
また残念そうな顔をする・・・・・ま、まさか期待してたとか!?
「でも、お断りします。私が後宮に行ってしまったら誰が美羽お嬢様のお世話をするんですか・・・・・はっ!まさか私を遠ざけた後で、お嬢様に昼夜を問わずあんな事やこんな事をっ!!」
「「「しないって!!」」」
七乃の頭の中での俺たちって鬼畜設定なのか?
「美羽も一緒に後宮に移ればいいだけだろう?紫苑だって璃々ちゃんを連れて来てるし、麗羽も斗詩と猪々子が一緒に居るし。」
七乃は少し考えてから美羽の方に向いた。
「一刀さんはああ言ってますけどどうします、お嬢様?」
「うむ、妾は元々七乃と一緒におるつもりだったぞよ。」
「でもお嬢様、あそこには孫策さんと麗羽さま、それに恋さんまで居るんですよ。」
「雪蓮とは仲良くなったし、麗羽姉さまも大丈夫じゃ。れ、恋ともきっと仲良くなれるのじゃ。七乃の安全を考えれば後宮に行った方が良いと妾も思うぞよ。」
美羽は笑顔で言ってるけど、肩が震えてる・・・・・恋に対するトラウマがまだ完治してないのか・・・。
「あぁ、お嬢様!私の為にビクビクと震えながらも無理に笑顔を作って・・・・・感激ですぅ!」
それは美羽の心遣いにか?それともその姿が見れた事にか?
なんかこの二人だけで後宮に行かせるのが心配になってきた。
「今から俺たちも一緒に後宮まで行こうか?」
「おお!主さまたちが一緒に来てくれるとは、心強いのじゃ♪」
「はあ、ありがとうございます・・・・・はっ!まさか後宮に行く振りをしてどこか秘密の部屋にお嬢様と私を監禁して昼夜を問わずあんな事やこんな事をっ!!」
「「「それはもういいってのっ!!」」」
本城 後宮談話室
【七乃turn】
「一刀さんたちに『俺たちの色に染め上げてやるぜ!ぐへへへへへへへへ!』とされてしまった結果、ここにやってまいりました。みなさん、美羽お嬢様共々よろしくお願いいたします。」
私はまず、みなさんへのご挨拶をしました。
今まで昼間のお嬢様と一緒にいる時間を取り上げられていましたから、ここで上手く立ち回って取り返さなければいけません。
「「「・・・・・俺たちそんな事言った覚えは無いぞ。」」」
「まあまあ、??さんたちがどんな趣味に目覚めようと、風を含めここに居る全員は生温かい目で受け入れますのでご心配なく〜。」
「「「そんな受け入れ方はあまり嬉しくないんだけど・・・・・」」」
むむ、これは中々手ごわそうですね。
「一刀たちの新たな性癖の事は後で聞かせてもらうとして、取り敢えず歓迎するわ。七乃、美羽、後宮へようこそ。」
華琳さんがそう言うと、みなさんも歓迎の言葉を言ってくれました。
やっぱり華琳さんが後宮を仕切っているんですねぇ。
「美羽おねえちゃん!今度から学園には一緒に行こうね♪」
えっ!?今、璃々ちゃんが何て言いました!?
「うむ!もう明日から学園への行き帰りは璃々と一緒なのじゃ♪」
「お、お嬢様?別に学園に行かなくてもこの後宮に華琳さんがいらっしゃるんですから、お勉強はここで出来るんじゃないんですか?」
「華琳は子育てで忙しいのでここしばらく休講になっておるのじゃ。のう、華琳。」
「ええ、それに後宮では赤ん坊達が泣き出して講義に集中できないでしょ。」
そ、そんな・・・・・私の計画が最初から頓挫しちゃいました・・・・・。
「そういえば、七乃。貴女を後宮に迎えるに当たって気付いたことが有るわ。」
「はて?何でしょう?」
「私達が知る貴女と、美羽、斗詩、猪々子の言う貴女では余りに印象がかけ離れているの。そこで親睦を深める意味にも、これから色々と付き合ってもらうわよ。」
この華琳さんの笑顔の裏にはどんな陰謀が隠されて居るのでしょう?
「はっ!それはまさか昼夜を問わず」
「「「しつこいっ!!」」」
「はあ・・・それで・・・お料理なんですか?」
私は後宮内にある厨房に連れてこられました。
早速お嬢様と離ればなれにされて・・・・。
でも、後宮内にこんな所があるなんて、やはり華琳さんの趣味の所為なんですね。
「貴女は料理が出来ると聞いていたので、その腕前を知りたいの。一刀たちの理想は『子供には母親の手料理を』だから。」
「あれ?紫、赤、華琳に話したのか?」
「「いや、華琳なら眞琳の為に料理するのは当然だろうと思ってたから言ってないけど・・・・・」」
「一刀、この後宮であなたたちの情報は完全共有よ。一日の行動も全て筒抜けだから♪」
「「「お、俺たちにプライバシーは無いのか・・・・・」」」
「一刀さんたちの人権は別にどうでもいいですけど、私は何を作ったらいいんでしょう・・・・・ちょっとお嬢様に相談してきていいですか♪」
「却下よ。蜂蜜水だけ作ってお茶を濁されては意味がないもの。」
「そんな!私はむしろお嬢様が蜂蜜水を飲みすぎない様に注意してるんですよ!!」
私は手近にあった大根を握りしめて抗議しました。
「まあまあ、七乃さん。落ち着いて。」
斗詩ちゃんが間に入ってくれました。
「前に作った炒飯はどうですか?あれ、とっても美味しかったですし、美羽様も喜んでましたよね。」
「炒飯ですか?そんな簡単な物でいいんですか?」
「あら、頼もしい発言ね。聞いた?桃香♪」
「うぅ・・・耳が痛いです・・・」
あらら?桃香さんってお料理がダメなんですね。
「作れると言うのならもう少し手の込んだ物がいいわね。余り懲りすぎるのも困るけど。最低でも五十人前は作ってもらうから。」
「ご、五十人前ですか!?まさか三国のみなさんにも食べさせるんですか?」
「いいえ。この後宮の中だけで、貴女と美羽の歓迎会をするつもりよ。今から作ってもらうのは、まあ、自己紹介みたいな物よ。」
「それじゃあ何で五十人前も・・・・・ああ、恋さんが居たんですもんね・・・」
「そういう事。取り敢えずまともな料理が作れる人間が一品ずつ作るわ。」
それでこんなに多勢、厨房に人が集まってるんですね。
確認すると、華琳さん、桃香さん、斗詩ちゃん、紫苑さん、祭さん、桔梗さん、凪ちゃん、蒲公英ちゃん、そして冥琳さんと・・・・・。
「あのぅ・・・・・どうして雪蓮さんと思春ちゃんがここに居るんでしょう?」
「どうしてって、料理を作るからに決まってるじゃない。」
「私が料理を作るのはそんなに意外か?」
お二人はとても心外そうにしてますけど・・・・・。
「作れるんですか?本当に?」
「私は農家のおばあちゃん達の手伝いとかしてるうちに覚えたのよ。家庭料理だったら華琳にだって引けを取らない自信があるわよ♪」
「私は蓮華様が料理を習っているのを手伝っているうちに・・・・・・」
なんか歯切れが悪くなりましたね。
この場に蓮華さんが居ないという事は、思春さんが追い越してしまったといった処ですか。
「全員、貴女とは違うものを作るつもりだから、何を作るか決めて頂戴。」
「そうですねぇ・・・・・そういえばお嬢様は焼売が食べたいと昨日仰ってましたっけ。焼売にします。」
【赤一刀turn】
七乃が焼売を作ると宣言をした。
それはいいんだが・・・・・。
「なあ、七乃。さっきから黙って見てたけど・・・・・話をしながら、その大根を削って作ったのって・・・」
「はい?・・・・・ああ!無意識に美羽様人形を作ってしまいました!」
無意識だったのか・・・・・前に木彫りの方は見せてもらってたけど、遂にそこまでになったか。
「大根の白さがお嬢様の透き通る様な白い肌を再現していて中々いいと思いませんか?服の方は大根の皮で作ってましたから脱がせる事ができますね。脱がせてみます?」
「いや・・・・・遠慮しておく・・・」
「七乃さんって器用なんですねぇ。美羽ちゃんに対する愛を感じるなぁ♪」
桃香は七乃の作る美羽フィギュアを見るのは初めてなのか。
「ええ!それはもう!!お料理だって基本は愛情じゃないですか♪」
「そうですよね!私もそう思います♪」
二人で盛り上がってるけど・・・・・桃香、それは飽くまでも基本をマスターしている人間の発言だぞ。
「愛情が有ればこそ、相手に美味しく食べてもらって、健康に育ってもらいたいって、料理を覚えるんですよね〜♪」
あ、なるほど。食べさせたい相手が居るから料理を覚える。確かに七乃が言う通り、愛情が基本の人も居るのか。
「私の愛情をたっぷり込めた料理をお嬢様が食べて、それが血となり肉となりお嬢様を成長させていく・・・・・つまりお嬢様の身体は私の愛情でできているんですよぉ♪」
良い事を言っている筈なんだが、七乃の表情を見てると何だか下心全開に思えるんだけど・・・・・。
「わたしもご主人様たちの為に愛情たっぷりの料理を作るね♪」
桃香、お前は料理大会の時の事を忘れたのか?
「一刀さんたちの為にですか・・・・・そう言われると急に作る気力が無くなりますねぇ・・・」
「そんな事言わずに七乃の料理を食べさせてくれよ。」
俺だって七乃の料理の腕前を知りたいぞ。
「その辺から石ころを拾ってきて、塩を振りかけたの出してもいいですか?」
「・・・・・・・・・それって料理どころか食べ物ですら無いよね・・・・・」
ミネラルたっぷりとか言う次元を超えてるって!
多少問題は有ったが、無事みんなの料理が完成して歓迎会が始まった。
俺たちの前には石ころではなく、ちゃんと七乃が作った焼売も並んでいる。
「「「美味い!七乃の料理の腕って期待以上だ!!」」」
「そう言ってもらえるとやっぱり嬉しいですね。それじゃあこちらもどうぞ♪」
七乃がお椀を俺たちの前に並べた。
「「「え?これは?」」」
「せっかくですから一刀さんたちの分だけ特別に作りました。」
さっきはあんな事言ってたけど・・・・・これは照れるな・・・。
「「「じゃ、じゃあ早速いただこうかな・・・」」」
俺たちが椀の蓋を取るとそこには・・・・・大根美羽フィギュアが居た・・・・・。
「「「あの・・・・・これって・・・・・」」」
「食べ物を粗末にできませんから♪」
笑顔で言われた。
再びお椀に視線を戻すと、お椀の中にはまるでお風呂に浸かるが如く、出汁の中に美羽フィギュアが鎮座している。素材が大根なのに、細部まで綺麗に仕上げられている部分が煮崩れをしていない。彫刻の腕も然ることながら、大根を炊き上げる火加減の腕も間違いなく一級だ。
しかし・・・・・・・・・。
これを食えと?
かわいい動物を模したお菓子を食べる時の罪悪感の比じゃないぞ。
次の日
【七乃turn】
「七乃、赤ん坊とは実にかわいいのぉ♪」
母親のみなさんが赤ちゃんをあやしたり、お乳をあげています。
今いる赤ちゃんの真名は眞琳ちゃん、香斗ちゃん、蓮紅ちゃん、烈夏ちゃん、愛羅ちゃん、嵐ちゃん、金桂ちゃんでしたね。
「ええ、そうですねぇ。でも、美羽様が赤ちゃんだった頃はもっと可愛かったですよ♪」
あの頃は『地上に舞い降りた天使』とは正に美羽様の為に有る言葉だと思いました。
今も美羽様は天使ですけどね♪
「わ、妾の事はべつに・・・」
「そうですわねぇ。美羽さんが赤ちゃんの頃にオシメを濡らして泣いていたのを思い出しますわぁ♪」
「麗羽ねえさま・・・・・・なぜ、よりにもよってその様なところを思い出すのですか?」
「七乃、お主はそんな頃から美羽に仕えていたのか?」
愛紗さんが愛羅ちゃんを抱いて私に聞いてきました。
「はい♪私の母が美羽様のお母様にお仕えしていましたので、私は美羽様のお世話係りの一人に選ばれました。」
「ほう、ならば赤ん坊を抱くのも経験しているのだな。ひとつ愛羅を抱いてみてくれないか?」
「よろしいんですか?」
「ああ、是非。」
私は愛紗さんから愛羅ちゃんを受け取り抱いてあげます。
「ふふ、懐かしいですねぇ。お嬢様を抱っこしていた頃を思い出します♪」
「うむ、本当に手馴れているな。実に様になっている。」
「そうそう、美羽様ってこうして抱いていると、お乳も出ないのに私の胸を触ってきまして。」
「妾はそんな事をしていたのかや!?」
「はい。おかげでおっぱいがこんなになっちゃいました♪」
実はお嬢様って今でも寝てる時に私のおっぱい触って来るんですけどね♪これは美羽様にも内緒にしている私だけの秘密です♪
あら?何やら桂花さんが金桂ちゃんにお乳をあげながら私達を睨んでいますねぇ。
ああ!そういえば桂花さんって貧乳党の党首をなさってるんでしたっけ。
「あのぅ、桂花さん。」
「なによ!その脂肪の塊の自慢でもしに来たわけ!?」
これは相当ですねぇ。
「(いえいえ、桂花さんと私は立場が似ていると思いまして。)」
「?」
「(愛する主の為に一刀さんたちの子供身籠った処です。)」
「(なに?七乃、あなたもそうなの?)」
「(美羽様の子供が身篭れるならそうしたいですが、女同士ではやはり無理ですし・・・)」
「(七乃。あなたとは急に気が合う気がしてきたわ。春蘭、秋蘭、稟とは違って華琳様を取り合わないですむ所が特に良いわ。)」
「(そうでしょう♪それに胸の事ですけど、お乳の出が良いんですからむしろ誇るべきですよ。)」
「そ、そうよね。女の胸は本来赤ん坊にお乳を飲ませるために有るのだから!」
「そうですよぅ!だからそんなコソコソと服で隠してお乳をあげなくても」
「これは隠してるんじゃなくて、隠れるのよっ!!悪かったわねっ!!」
う〜ん、ちょっと失敗してしまいました。
ひと月後
【赤一刀turn】
今日も後宮に朝食を食べに来た俺たち。
「「「いただきま〜す♪」」」
まだまだ寒い冬の朝だが、みんなで食卓を囲む後宮は雰囲気からしてとても温かだ。
しかしその空気が茶碗を落とす音で凍りついた!
「七乃!どうしたのじゃ!?し、しっかりせい!」
七乃が卓に伏せ、美羽がその七乃を心配し取り乱している。
「お、お嬢さま・・・・・ど、毒を・・もられたようです・・・・・」
「ど、毒じゃとっ!!」
「「「毒っ!?そんなまさかっ!!愛紗の料理が今日は無いじゃないかっ!!」」」
「いえっ!お館様!愛紗の料理は最近普通の料理に擬態するようになってきておりましたぞっ!!」
「ご主人様っ!!桔梗っ!!私の料理は妖怪ですかっ!!?」
冗談はこれくらいでいいだろう。
七乃が倒れた理由は美羽以外のみんなが察していた。
つわりが来たんだろうと。
「ぬ、主さま!早く華佗を!華佗を呼んでたも!」
「ああ、わかってる。すぐに華佗が来てくれるから・・・」
「い、いいえ・・・お嬢様・・・七乃はもうダメです・・・」
七乃は本当に青い顔をして気分が悪い様だ。先に寝台に連れて行った方がいいかな?
「し、死ぬ前に・・・お嬢様の裸前掛け姿が見たいです・・・・・」
そんな事が言える余裕があるなら大丈夫そうだな。
「その姿が見れたら毒も消えるかも知れません・・・・・」
どんな理屈だ、それは!!
「わ、わかったのじゃ!待っておれ、今すぐ・・・」
「「「わあっ!待て待て!!」」」
俺たちは服を脱ぎだそうとした美羽を慌てて止めた。
「七乃、今寝台に運んであげるからもう少し辛抱してくれ。」
「うぅ・・・気分が悪いのは本当なんですよぉ・・・・・」
「アニキ、あたいが運ぼうか?」
猪々子がおかずの焼き魚を骨ごとバリバリやりながら言ってくれたが。
「いや、七乃一人を寝台に運ぶぐらいどうって事ないさ。お前は朝飯をしっかり食ってくれ。」
後宮に居る武将で身重じゃない猪々子と斗詩は、麗羽の相手以外にも色々と力仕事なんかで忙しい。朝ごはんはしっかり食べてもらわなくちゃな。
「アニキの命令だからしっかり食わなくちゃな♪斗詩、おかわり♪」
「文ちゃん・・・もう少し空気読もうよ・・・」
そう言いながらも、斗詩は猪々子の丼にご飯を山盛りによそってあげていた。
「それじゃあ、七乃。行くぞ。」
「はあ・・・お手数おかけします・・・」
俺は七乃をお姫様抱っこして歩き出す。
「こうして七乃ちゃんは??さんの朝ごはんとして美味しくいただかれちゃいましたとさ。」
「風!変なナレーション付けないでくれ!そもそも七乃はつわりで苦しんでるんだからそんな事しませんっ!!」
「つわり・・・・・そうなのかえ?七乃。」
「どうやらそうみたいです、お嬢様・・・・・なに分初めての体験な物で勘違いしてしまいました。」
「ほ・・・・・良かったのじゃ、七乃が死んでしまうかと思ったら目の前が真っ暗になってしまったのじゃ・・・・・」
「申し訳ありません、お嬢様・・・・・でも、本当に気分が悪くて・・・・・お部屋に戻って裸前掛けで看病してくださったら、すぐに良くなると思うのですが・・・・・」
まだ言うのか・・・・・。
「こうして??さんは七乃ちゃんをオカズに美羽ちゃんを朝ごはんとして美味しくいただきましたとさ。」
これ以上風にツッコミをしていたら七乃の具合がもっと悪くなりそうだ。
俺は美羽も連れて部屋を後にした。
「「うわ!桃香!雪蓮!麗羽!たんぽぽ!いきなり倒れてどうした!?」」
「「「「なんか急に気分が♪」」」」
そんな声が背後から聞こえて来た。
これはあの部屋には戻らない方が良さそうだ・・・・・・紫、緑、そっちは任せた。
あ!朝飯食いっぱぐれたな。
まあ、厨房に行けば何か有るだろ。
そして季節は巡り、秋
本城 分娩室
【七乃turn】
「「「お疲れ様、七乃。」」」
「は、はい・・・・・・・・・本当に・・・疲れました・・・」
痛くて、苦しくて・・・・・もう出産なんてコリゴリですよ・・・。
大体、月経、破瓜、つわり、出産と女性ばかりが辛い思いをするのに、男性は気持ちいい思いをするだけなんて不公平過ぎます!
それに一刀さんたちは妙に落ち着いてて・・・・・そりゃあ一刀さんたちにしてみたら十九人目の子供かもしれませんが、私は初めての出産なんですよ!
「「「こうやって励ましてていつも思うんだけどさ、この苦しみを代わってあげたいって・・・」」」
ええ!本当に体験させてあげたいですよっ!!
「はい、お待たせしました♪赤ちゃんとのご対面ですよ♪」
産婆さんが初着に包まれた赤ちゃんを抱いて私に顔を見せてくれます。
「あ・・・・・・・」
私がたった今産んだ赤ちゃん・・・・・ついさっきまでお腹の中にいた八?が目の前で元気に泣いています・・・・・。
私は無意識に手を伸ばし我が子を求めていました。
「みなさん赤ん坊を抱く練習をなさっておいでですからお上手ですけど、七乃様は特にお上手ですねぇ♪」
私の腕の中にいる小さな命がこんなに愛おしく感じるなんて・・・・・。
「七乃、実は伝え忘れていた事が有るんだ。」
「はい?なんでしょう?」
「「「俺たちの子を懐妊してくれて、そして、産んでくれてありがとう♪」」」
「・・・・・懐妊って・・・・・今更ですか!?」
「「「うん・・・伝え忘れてた事には、結構前から気づいてたんだけど・・・・・なかなか言い出す機会が無くってさ・・・・・」」」
本当にこの人たちは・・・・・。
「私も一刀さんたちに伝える事をついさっき思い付きました。」
私は一刀さんたちを順番に見つめてから口を開きます。
「八?を授けてくださってありがとうございます。」
なんだかもう一度くらいなら出産してもいいかなと思えてきました♪
おまけ壱
七乃の娘 ((張路|ちょうろ)) 真名:((八?|やや))
三歳
本城 北郷学園保育部 (時報:桂花 五人目妊娠九ヶ月)
【赤一刀turn】
「やだやだぁ〜!みうおねえちゃま、きんけいおねえちゃまのおうちにいっちゃいやぁあ!うわああぁぁぁん!!」
眞琳達の『媽媽のおっぱい論争』と思春、愛紗のお説教から解放された俺は美羽と七乃を追って来たんだが、聞こえてきたのは八?の泣き声だった。
「うぅ・・・困ったのう・・・・・」
オロオロしている美羽は八?に手を伸ばそうとしては引っ込めるのを繰り返している。
「こりゃまた見事な駄々っ子だ。」
八?は床に仰向けになって手足をバタバタ振り回しながら泣きじゃくっていた。
「主さま!・・・・・さ、先程は先に居なくなってしまってごめんなさいなのじゃ・・・」
「気にしない、気にしない。それよりも八?だな。事情はおおよそ見当がつくけど。」
美羽、七乃、八?は三人で一緒に暮らしてる。
美羽が懐妊して後宮に行く事を話したんだろう。
母親の七乃はまるで諭す気無し・・・・・・・何を考えているかは丸分かりだけど。
「??ぁ〜!パパァ〜!み、みうおねえ・・・えぐっ・・・おねえちゃまがぁ〜・・・うあああぁぁぁああん!!」
俺に気付いた八?が飛び起きてズボンにしがみついて来た。
これはこれで凄く可愛いんだけど、このままじゃさすがに八?が可哀想だ。
「大丈夫だぞ、八?。八?と八?の媽媽も一緒にお引越しさせてあげるから。」
俺は八?を抱っこしてあげる。
「・・・ホント?」
「ああ!??が約束してあげる!」
とたんに八?は笑顔になって美羽と七乃の顔をキョロキョロと交互に見た。
「主さまは本に子供に甘いのぉ・・・・・」
「よかったね〜、八?。??にお礼を言うんですよ〜♪」
「うん!ありがとう!??、だ〜いすき♪」
抱きついて来る八?の背中を優しくポンポンしてあげた。
「こ、これ!顔が涙と鼻水でグチャグチャではないか。ほれ、妾が拭いてあげるのじゃ。」
俺が抱っこしたままの八?の顔を美羽がハンカチで綺麗にしていく。
その最中に俺は七乃に顔を向けた。
「七乃。八?をダシに使うの止めろよ。可哀想だろ。」
「はて?何の事でしょう〜♪」
相変わらずだなぁ、七乃は・・・・・。
「でも、これで八?の中で??の評価はまた上がりましたよ♪」
ああ、もう!そんな事言われたらこれ以上怒れないじゃないか!
この策士め!
おまけ弐
香斗 五歳
本城 蜀区画 桃香居室 (時報:桂花 六人目妊娠五ヶ月)
【香斗turn】
「媽媽おきて!お外がまっ白だよ!」
「・・・ん〜・・・なにぃ、香斗ちゃん・・・・・」
媽媽ねぼけてる〜。
きのうは寒かったから媽媽といっしょのおフトンで寝たの。
香斗がさきにおきて窓の外をみたらお庭がまっ白になってた。
「雪でお庭がまっ白できれいだよ♪」
「ゆき・・・・・?どれどれ・・・・・」
媽媽が窓を開けた。
「「うひゃあ!さむーーい!!」」
つめたい風が入って来てビックリ!
でも・・・・・。
「うわあ!ホントに綺麗だねぇ♪起こしてくれてありがとうね、香斗ちゃん♪」
「えへへ♪」
媽媽がよろこんでくれた♪
媽媽にも見てほしかったからスゴくうれしい!
「香斗ちゃん!雪遊びしちゃおうか!?」
「雪あそび?どんなことするの?」
「そうだな〜・・・・・まずはうさぎさん作ろう!」
「うさぎさん♪やってみた〜い♪」
雪でつくるからホントにまっ白なうさぎさんだ!
「「はっくちゅん!!!」」
「あはは・・・とにかくお着替えしよっか。」
「う、うん・・・そうだね、媽媽・・・」
香斗と媽媽はおきがえをはじめた。
毛糸のくつした、毛糸のてぶくろ、毛糸のセーター、毛糸のおぼうし、毛糸のマフラー。
ぜんぶ媽媽があんでくれた♪
それと毛糸のおパンツも。
ぜんぶ媽媽とおそろい♪
媽媽はおりょうりはちょっとダメだけど、あみものはとくい。
華琳媽媽が『編み物は桃香の方が上手よ♪』ってほめてたから、きっといちばん♪
「これうさぎさん?」
なんか思ってたのとちがう・・・・・。
「ふふ〜ん、まだ完成じゃないよ。この笹の葉を・・・」
「あっ!おみみがついた!」
「それからこのナナカマドの赤い実で・・・・・はい!」
「うわあ♪ホントにうさぎさんだぁ・・・・・かわいい♪」
「へえ、雪うさぎの実物って初めて見たな。」
「あ、??!」
??も来てくれた♪
「ご主人様、いつの間に来たの?声かけてくれればいいのに。」
「いや、熱心に作ってたからさ。」
「??も雪のうさぎさんはじめてなの?」
「ああ、??が生まれた所も綺麗に雪が積もらない場所だったんだ。雪のことは媽媽の方が得意だぞ。」
「へ〜、媽媽スゴ〜い!」
「えへへ♪ねえ、香斗ちゃんもっとうさぎさん作ろうか?ひとりぼっちじゃ可哀想だし。」
「うん♪」
「ようし、??も一緒に作るぞ!」
「わあーい♪」
それから香斗と媽媽と??でたくさん雪うさぎさんをつくったの。
でもおへやにもどったら、三人そろってかぜひいちゃって、愛紗媽媽に三人ともおこられちゃった。
あとがき
七乃は公式の美羽&七乃√で結構能力が高い所を見せていました。
この外史では女子力もかなり高くしてあります。
美羽のお世話をしてたら、きっと高くなると思いましたので。
ですが性格が全てを残念にしてしまってますねw
そして今回は後宮内の出来事を中心にしてみました。
前回が街中の話でしたので。
後宮の日常をこれから少しづつ出していきたいと思います。
おまけ壱は
三?? 其の十 美羽の回の挿話です。
七乃の愛は我が子に対しても歪んでいますw
おまけ弐は
以前、きたさん様から頂いた雪の話のリクと
イナバウアー様から頂いた三王の娘視点の話のリク
今回は香斗視点で挑戦させて頂きました。
ちなみに香斗はボケ担当のアホっ子キャラになります。
なにしろ『劉禅』ですからw
《次回のお話&現在の得票数》
☆数え役満☆シスターズ19票
という事で次回は数え役満☆シスターズに決定しました。
以下、現在の得票数です。
白蓮 18票
秋蘭 17票
流琉 16票
詠 16票
月 16票
朱里+雛里14票
ニャン蛮族14票
小蓮 14票
明命 13票
亞莎 12票
猪々子 12票
焔耶 12票
音々音 10票
二喬 9票
穏 8票
春蘭 8票
斗詩 7票
華雄 5票
星 4票
璃々 4票
稟 2票
真桜 1票
※「朱里と雛里」「美以と三猫」「数え役満☆シスターズ」は一つの話となりますのでセットとさせて頂きます。
リクエスト参戦順番→ 朱里+雛里 猪々子 穏 白蓮 亞莎 流琉 ニャン蛮族 小蓮 詠 焔耶 明命 数え役満☆シスターズ 秋蘭 月 斗詩 二喬 春蘭 音々音 華雄 稟 星 璃々 真桜
過去にメインになったキャラ
【魏】華琳 風 桂花 凪
【呉】雪蓮 冥琳 祭 思春 美羽 蓮華 七乃
【蜀】桃香 鈴々 愛紗 恋 紫苑 翠 蒲公英 麗羽 桔梗
引き続き、皆様からのリクエストを募集しております。
リクエストに制限は決めてありません。
何回でも、一度に何人でもご応募いただいても大丈夫です(´∀`)
よろしくお願い申し上げます。
説明 | ||
得票数18の七乃のお話です。 懐妊、つわり、出産のお話+おまけ二本となります。 引き続き、どの恋姫メインの話が読みたいのかリクエストを募集しております。 リクエストの多い恋姫(TINAMI、Pixiv双方の合計)を優先的に書きたいと思いますのでよろしくお願いいたします。 リクエストに制限は決めてありません。 何回でも、一度に何人でもご応募いただいても大丈夫です(´∀`) ご意見、ご感想、ご指摘などもご座いましたら是非コメントをお寄せ下さい。 |
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rin様 いえいえ!そんな事になっているとは露知らず。この様なご返事まで頂いてこちらこそ申し訳ないです(´・ω・`)ネット環境が変わるとトラブルとか発生しますもんね。(雷起) いやぁ、すいません(-ω-;) ネットの環境を変えて、色々ありまして。いや 本当すいません。これからはちゃんとコメント出来るかと思います(rin) ぎてぃー様 美羽はまともになりましたが、八?の将来が心配ですw 秋蘭・春蘭・稟に追加頂きました___φ(。_。*)カキカキ(雷起) アルヤ様 お姉ちゃんの眞琳達が言っているので下の子達も自然とそうなってしまいましたw大人達もきっと陰で『桂花の家』って言ってると思いますw月・詠・朱里+雛里・二喬・璃々に追加頂きました___φ(。_。*)カキカキ(雷起) ガルーダ様 真桜・稟・星・月・詠・流琉・白蓮・朱里+雛里に追加頂きました___φ(。_。*)カキカキ(雷起) ロードスネーク様 一刀に対して心の中でデレても、やることが変わらないので困りますw 穏・流琉・焔耶・亞莎・白蓮・秋蘭に追加頂きました___φ(。_。*)カキカキ(雷起) 神木ヒカリ様 美羽と昼間、無理矢理離されてしまった反動ではないかと・・・それとも本当にMに目覚めたしまったのか・・・。 小蓮・ニャン蛮族・音々音に追加、そして季衣の参戦頂きました___φ(。_。*)カキカキ(雷起) rin様 遂に文字数が五文字にw 雛朱に追加一丁!___φ(。_。*)カキカキ(雷起) 殴って退場様 歪んだ愛が更に歪んで、もう修復不可能ですw 秋蘭・白蓮・斗詩・星・璃々に追加頂きました___φ(。_。*)カキカキ(雷起) hiro様 七乃は想像以上に手強かったです・・・・・orz 二里・シャオ・ニャン蛮・二喬に追加頂きました___φ(。_。*)カキカキ(雷起) メガネオオカミ様 母親になった事とあのメンバーで後宮で一緒に暮らしているので鍛えられているようですw 猪々子・明命・焔耶・華雄に追加頂きました___φ(。_。*)カキカキ(雷起) ゆぎわ様 この時報のおかげか現在『三??』で桂花のお話が閲覧ユーザー数でトップを走っていますw 詠・月・朱里+雛里に追加頂きました___φ(。_。*)カキカキ ご期待に添えるよう頑張りますね(^-^)(雷起) 七乃は媽媽になっても変わりませんね、これで美羽がまともになっているから、教育ってホントに素晴らしいと思う・・・リクエストは、秋蘭・春蘭・凛でお願いします(ぎてぃー) 八?も後宮を金桂の家って認識してる・・・・・・もしかして子供たちの共通認識?月・詠・朱里+雛里・二喬・璃々でお願いします・(アルヤ) 真桜・稟・星・月・詠・流琉・白蓮・朱里+雛里でお願いします(ガルーダ) 七乃は相変わらずの平常運転ですねw穏、流琉、焔耶、亞莎、白蓮、秋蘭でお願いします。(ロードスネーク) 七乃何気に昼夜問わずのフレーズ気に入っているのか? リクは、小蓮・ニャン蛮族・音々音・季衣でお願いします。(神木ヒカリ) 雛朱に一票(rin) 七乃の腹黒さは悪質というよりは巧妙化されているなwww。リクは秋蘭、白蓮、斗詩、星、璃々でお願いします。(殴って退場) 七乃は平常運転ですか。リクは、二里、シャオ、にゃん蛮、二喬でお願いします。朱里達がトップにこない(hiro) 七乃は言うまでもないけど、他の恋姫の皆さんもかなりフリーダムになってきてますねwww リクエストはいつもの通り、猪々子、明命、焔耶、華雄の四人でお願いします!(メガネオオカミ) 桂花の時報をいつ見ても笑ってしまうなぁw リクは詠、月、朱里+雛里で。楽しみに待っています!(ゆぎわ) |
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